11月19日、野田首相は、インドネシア・バリ島での東アジアサミット後の記者会見で、消費増税について年内をめどに結論を出すとした上で、消費増税法案は法案提出の期限とされる来年3月末までに閣議決定し、その前から与野党と政策協議をしたいと発言した。
どうして、こう野田首相は、国内でいう前に勝手に海外で発言して約束するのか。
先日のフランス・カンヌでのG20首脳会議でも、消費税率の10%への引き上げを表明したこともそう。尤も、G20での消費税率引き上げ発言については、自民公明の両党から「国際公約をした」と反発を受け、11月7日の衆院本会議で「国内で方針として示したことを国際社会で説明し、アクションプラン(カンヌ行動計画)に入れた。できなかったら責任を取るという話はしていない」と、「国際公約」ではないと言い訳していたけれど、説明するのであれば、海外の外国人に説明するより、国内の日本国民に説明することのほうが先のはず。
これでは、野党から“逃げ口上”だと反発されても仕方ない。
それ以前に、約束だろうが、説明だろうが、来年3月中に消費増税法案を提出するという方針は全く揺らいでいない。デフレ待っただ中で震災復興に力を注がねばならないときに、更に景気を冷やす消費税増税なんて正気の沙汰とは思えない。
野田首相は11月8日の衆院予算委員会で、消費増税法案について「与野党が共通認識が持てればありがたいが、そうでない場合も閣議決定して提出する」と、野党と合意しなくても今年度中に提出する考えを述べているから、TPPよろしく何があっても提出する積りであると思われる。
11月16日、藤村官房長官は記者会見で、消費税増税を含む税制抜本改革に関する法案の国会提出について「経済状況の好転は提出時期の前提条件とはなっていない」とし、経済状況に関わらず、2011年度中に法案を提出する考えを示した。
というのは、2009年度の税制改正法で、その付則104条に消費税増税をめぐって「11年度までに必要な法制上の措置を講ずる」とあり、政府がこれを、2011年度までに法案を国会に提出することが政府に義務づけられていると"解釈"しているため。
2009年度の税制改正法の付則104条を次に引用する。
所得税法等の一部を改正する法律(平成21年法律第13号)(抄)
附 則
(税制の抜本的な改革に係る措置)
第104条 政府は、基礎年金の国庫負担割合の2分の1への引上げのための財源措置並びに年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用の見通しを踏まえつつ、平成20年度を含む3年以内の景気回復に向けた集中的な取組により経済状況を好転させることを前提として、遅滞なく、かつ、段階的に消費税を含む税制の抜本的な改革を行うため、平成23年度までに必要な法制上の措置を講ずるものとする。この場合において、当該改革は、2010年代(平成22年から平成31年までの期間をいう。)の半ばまでに持続可能な財政構造を確立することを旨とするものとする。
2 前項の改革を具体的に実施するための施行期日等を法制上定めるに当たっては、景気回復過程の状況、国際経済の動向等を見極め、予期せざる経済変動にも柔軟に対応できる仕組みとするものとし、当該改革は、不断に行政改革を推進すること及び歳出の無駄の排除を徹底することに一段と注力して行われるものとする。
3 第1項の措置は、次に定める基本的方向性により検討を加え、その結果に基づいて講じられるものとする。
一 個人所得課税については、格差の是正及び所得再分配機能の回復の観点から、各種控除及び税率構造を見直し、最高税率及び給与所得控除の上限の調整等により高所得者の税負担を引き上げるとともに、給付付き税額控除(給付と税額控除を適切に組み合わせて行う仕組みその他これに準ずるものをいう。)の検討を含む歳出面も合わせた総合的な取組の中で子育て等に配慮して中低所得者世帯の負担の軽減を検討すること並びに金融所得課税の一体化を更に推進すること。
二 法人課税については、国際的整合性の確保及び国際競争力の強化の観点から、社会保険料を含む企業の実質的な負担に留意しつつ、課税ベース(課税標準とされるべきものの範囲をいう。第五号において同じ。)の拡大とともに、法人の実効税率の引下げを検討すること。
三 消費課税については、その負担が確実に国民に還元されることを明らかにする観点から、消費税の全額が制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用に充てられることが予算及び決算において明確化されることを前提に、消費税の税率を検討すること。その際、歳出面も合わせた視点に立って複数税率の検討等の総合的な取組を行うことにより低所得者への配慮について検討すること。
四 自動車関係諸税については、簡素化を図るとともに、厳しい財政事情、環境に与える影響等を踏まえつつ、税制の在り方及び暫定税率(租税特別措置法及び地方税法(昭和25年法律第226号)附則に基づく特例による税率をいう。)を含む税率の在り方を総合的に見直し、負担の軽減を検討すること。
五 資産課税については、格差の固定化の防止、老後における扶養の社会化の進展への対処等の観点から、相続税の課税ベース、税率構造等を見直し、負担の適正化を検討すること。
六 納税者番号制度の導入の準備を含め、納税者の利便の向上及び課税の適正化を図ること。
七 地方税制については、地方分権の推進及び国と地方を通じた社会保障制度の安定財源の確保の観点から、地方消費税の充実を検討するとともに、地方法人課税の在り方を見直すことにより、税源の偏在性が小さく、税収が安定的な地方税体系の構築を進めること。
八 低炭素化を促進する観点から、税制全体のグリーン化(環境への負荷の低減に資するための見直しをいう。)を推進すること。
この中ではっきりと、「平成20年度を含む3年以内の景気回復に向けた集中的な取組により経済状況を好転させることを前提」と規定している。
だけど、政府は、この3年間、景気回復に向けた集中的な取組もしていないし、経済状況を好転していない。だから、この附則104条が適用される条件にはなっていない。
それなのに何故、藤村官房長官は法案提出について、「経済状況の好転は提出時期の前提条件とはなっていない」と発言したのか。
この、所得税改正法附則第104条第1項に「平成二十三年度までに必要な法制上の措置を講ずるものとする」とあるのだけれど、これについて、2009年2月24日衆議院予算委員会で与謝野財務大臣(当時)が「(景気の好転が)うまくいかない場合でも、2011年までには法律だけはつくっておきましょう、だけれども、実際それでやる、具体的にスタートするのは、それは別の判断ですよと。ただ、法律としての、税法としてのフレームワークはそれまでにつくっておく必要があるでしょう」と答弁していることから、この考えを引き継いでいるものと思われる。
この法案成立と実施は別だというロジックは、同じく第104条第2項で、「前項の改革を具体的に実施するための施行期日等を法制上定めるに当たっては、景気回復過程の状況、国際経済の動向等を見極め、予期せざる経済変動にも柔軟に対応できる仕組みとするものとし、当該改革は、不断に行政改革を推進すること及び歳出の無駄の排除を徹底することに一段と注力して行われるものとする。 」となっていて、実施期日はまた別の法律が必要となっている。
所得税改正法附則第104条については、2009年2月23日に民主党の峰崎直樹議員から質問主意書が提出されていて、その中で、これらについての質問がなされている。該当の質問と政府回答については、つぎのとおり。
質問:平成二十三年度までに「法制上の措置」を講じなかった場合、これは法律違反となるのか。政府の見解を明らかにされたい。
政府回答:所得税法等一部改正法案附則第百四条第一項においては、「平成二十三年度までに必要な法制上の措置を講ずるものとする」とされていることから、当該措置を講じなかった場合には、この規定に違反したことになると考えている。
質問:法案附則第百四条第二項において、「改革を具体的に実施するための施行期日等を法制上定める」として、実施時期を別法で定めることとした理由を明らかにされたい。
政府回答:経済状況の好転が消費税を含む税制の抜本的な改革を行うための前提であることから、その見通しが立たないような場合には消費税を含む税制の抜本的な改革の具体的な内容を定める法案について、その施行期日等を別の法律で定めることもあるものと考えている。
このように、今年度中に法案を提出しないと規定違反になるものの、実施期日は別の法律で定めるとここでも回答していることから、来年3月中に消費増税法案提出は既定路線なのだろう。
だけどそれは、歳出削減と増収の手立てをしてからの話の筈。
「所信表明の僅かな変化とステルスモード」のエントリーでも触れたけれど、今年10月の所信表明演説で、野田首相は、まず政府全体の歳出削減と税外収入の確保、および経済成長を通じた「増収の道」を追及して、それでも足りない部分について増税をすると述べている。
だから、消費税増税法案提出するのなら、同じく、歳出削減と税外収入の確保、および経済成長の政策も打ち出してしかるべき。
それなしに、消費税増税で突っ走るのなら、どこかの"口だけ番長"よろしく、口だけの政権であったと自ら証明することになる。
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消費増税「法案提出前に与野党協議」 野田首相が会見
野田佳彦首相は19日、東アジアサミット後の記者会見で、消費増税について年内をめどに結論を出すとしたうえで、消費増税法案は「法案提出するときが閣議決定だ。その前から与野党と政策協議をしたい」と語った。首相の発言は、法案提出の期限とされる来年3月末までに与野党協議をめざす考えを示したものだ。
首相は来年度予算案での新規国債発行額について「中期財政フレームに基づいて予算編成する」と強調。そのうえで「44兆円以内に抑えることを順守できるように最大限努力していくことが基本的な姿勢だ」と語り、今年度と同額以下に抑制する方針を示した。
また、サミットに米国のオバマ大統領が初参加したことについて「アジア太平洋地域に米国の関心が高まり、関与を深めていくことは歓迎すべきこと。日米同盟を通じて、この地域における平和と安定に貢献していきたい」と強調した。
首相はアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の実現を改めて主張。その途中段階として環太平洋経済連携協定(TPP)やアジア大経済圏構想を位置づけ、「わが国が先頭に立って貢献することを主張し、多くの国から賛同を得た」と語った。(ヌサドゥア=野上祐)
URL:http://www.asahi.com/politics/update/1119/TKY201111190503.html
「経済好転は前提でない」 消費増税法案提出で藤村官房長官 2011.11.16 14:51
藤村修官房長官は16日午前の記者会見で、消費税増税を含む税制抜本改革に関する法案の国会提出について「経済状況の好転は提出時期の前提条件とはなっていない」と述べ、経済状況が改善しなかった場合でも2011年度中に法案を提出する考えを示した。
藤村氏は、09年度税制改正法の付則104条が消費税増税をめぐって「11年度までに必要な法制上の措置を講ずる」としていることについて「11年度までに法案を国会に提出することが政府に義務づけられているという解釈だ」との政府見解を説明した。
URL:http://sankei.jp.msn.com/economy/news/111116/fnc11111614520010-n1.htm
消費増税法案、野党同意なくても提出 首相が言及
野田佳彦首相は8日の衆院予算委員会で、消費増税法案について「与野党が共通認識が持てればありがたいが、そうでない場合も閣議決定して提出する」と述べ、野党と合意しなくても今年度中に提出する考えを示した。「(増税の)実施時期も書き込む」とも強調した。自民党の野田毅税調会長らに答えた。
消費増税の方針は菅政権がまとめた税と社会保障の一体改革案に盛り込まれたが、政権内の反発で閣議報告にとどめられた。野田税調会長は「消費増税法案だけ閣議決定され、社会保障が置いてけぼりになる」と指摘し、改革案全体を閣議決定するよう要求。首相は「子育て支援システムの法案ができたら提出するなど、社会保障改革は個別に進めていきたい」と述べるにとどめた。
また、自民党の吉野正芳氏は原発事故について、汚染土壌の最終処分場を福島県外に置くとする政権の方針について「法律をつくって担保を」と要請。細野豪志原発相は「法律で規定すべきか検討しなければならない」と答えた。
URL:http://www.asahi.com/politics/update/1108/TKY201111080506.html?ref=reca
「消費増税やるなら総選挙で信を」 経団連との会合で谷垣自民総裁 2011.11.15 09:02
谷垣禎一自民党総裁は15日、東京都内のホテルで米倉弘昌経団連会長との意見交換のなかで、民主党の野田佳彦政権が明言している消費増税について、「以前の民主党は否定していた。国民の信を問わなければならない」と述べ、消費税の是非を問うための解散・総選挙が必要だとの認識を改めて示した。ただ、復興対策のための今年度の第3次補正予算については協力する意向を示した。
米倉会長は円高の定着や高い法人税などで企業が厳しい経済環境におかれているとして「国民のための政治をお願いしたい」と要望した。
自民党と経団連の意見交換は野田政権下では初めて。関係国との協議入りを表明した環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)や円高など経済対策も議題にのぼる見通しだ。
URL:http://sankei.jp.msn.com/politics/news/111115/stt11111509030001-n1.htm
首相、消費増税の「国際公約」打ち消しに必死 野党は“逃げ口上” 2011.11.8 00:20
野田佳彦首相は7日の衆院本会議で、フランス・カンヌでの20カ国・地域(G20)首脳会議で消費税率の10%への引き上げを表明したことについて「国内で方針として示したことを国際社会で説明し、アクションプラン(カンヌ行動計画)に入れた。できなかったら責任を取るという話はしていない」と述べ、「国際公約」ではないと強調した。首相は国際公約を「説明」に格下げしようと必死だが、野党側は首相の“逃げ口上”だと反発している。
首相は、年末にかけて「社会保障と税の一体改革」に伴う消費税率引き上げ時期を具体化させ、来年3月までに関連法案を提出、次期通常国会で成立させたいとしている。
会期内の法案成立を目指すには自民、公明両党の協力が欠かせない。しかし、両党は関連法案提出前の衆院解散・総選挙を求めている。その上、「2010年代半ばまでに消費税率を10%に引き上げる」というスケジュールを既定路線と思っていた首相にとって、カンヌでの発言を両党が「国際公約をした」と責任追及に出てきたことは想定外だったようだ。
こうなると、与野党合意の障害となるような要因を摘んでおく必要がある、と首相は判断した。カンヌでも同行記者団に対し「国際公約というと飛躍のある言葉だ。法的拘束力があるわけではない」と予防線を張っていた。
衆院本会議では、消費税率引き上げ時期の具体化にあたり「政府・与党の議論や、与野党協議を踏まえて決定したい」と低姿勢を見せながらも、衆院解散の時期に関しては「関連法案提出後は成立に全力を尽くし、(増税)実施前に総選挙で民意を問うのが筋だ」と突っぱねた。
これに対し、自民党の西村康稔氏はアドリブで再質問に立ち、「首相は国際的に公約された。実現しなかった場合には当然、責任を取る。内閣総辞職か衆院解散と考えるが、いかがか」と追及した。
首相は、唐突の質問に目を泳がせ、再び演壇に立つと「実現に全力を尽くすのが責任だ」と答弁した。語気を強めた割に、内容は曖昧だった。
騒然となった本会議場で、続く公明党の竹内譲氏も「海外で表明するとは何ごとか」と批判した。野党が質問に立つ8日以降の衆院予算委員会で集中砲火を浴びることは必至だ。
公明党の山口那津男代表は、7日のBS朝日の番組で「首相が『増税法案を成立させて、実施前に信を問う』と強硬に来るのなら、(増税を)決める前に信を問えと言わざるを得ない」と突き放した。
URL:http://sankei.jp.msn.com/politics/news/111108/plc11110800220001-n1.htm
この記事へのコメント
ちび・むぎ・みみ・はな
それより, どうして, こんな出鱈めな嘘付政権を
政府与党として対処せねばならないのか.
国民の不満はたまっている. 自民党はどうするのか.
とおる
http://www.youtube.com/watch?v=svxFLIjQ02k