中国紙の表と裏

 
「現在、特に我々が懸念しているのは、日本と同じように一部のメディア及びインターネット上における若者の過激な言論である。中国政府は東シナ海を巡る日中双方の協議や交渉を大変重視しており、この問題が両国間における大きな問題とならないよう対応している。理解いただきたいのは釣魚島(尖閣諸島)問題に関して、力を示すべきであるとの人民からの圧力である。」
中国・人民解放軍高官 於:2009.5.20 人民解放軍との対話にて


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1・人民日報と環球時報

中国には読売、朝日、毎日のような一般紙がなく、大衆紙か、党機関紙、そして経済専門紙しかない。その代り地方発行の新聞が沢山ある。

その中でも、代表的なものをいくつか取り上げると、経済専門紙には「経済参考報」や「新華毎日電訊」。大衆紙としては「参考消息」、「南方週末」など。そして、党機関紙として有名な「人民日報」や「環球時報」などがある。

まず、経済紙についてだけれど、「経済参考報」は、新華社系の経済紙で、読者層の大部分は大・中都市で生活している、高等教育を受けた高所得者やビジネスマン、企業経営者などで、年齢層も25~44歳程度と比較的若い。発行部数は毎号45万部(発売日は毎週月~金)

「新華毎日電訊」は、新華社の発行する日刊紙で、新華社通信のネットワークから中国国内の情報を集約している。読者層は、政府関係者とリタイヤ層が多く、年齢層も25~55の間が多く、リタイヤ層が約1/3を占め、教育レベルも比較的高い。発行部数は105万部/日。

次に大衆紙について、中国国内最大の発行部数を誇るのは、「参考消息」で、発行部数は毎号400万部(発売日は毎週月~土)。読者規模2000万弱で、バラ売り量は100万部。120万近くの部門に影響力を持つと言われている。

この「参考消息」は、海外新聞社の中国評価が多く、中国国民にとっては、客観的に海外情報を取得できるメディアと認識されているようだ。

「南方週末」は、1984年に文化娯楽紙として出発した新聞で、創刊当時は、中国共産党広東省党委員会の機関紙であった、「南方日報」の多角化戦略の一環として始まった。1992年には、「南方週末」と名を変え、文化娯楽紙から総合的な週報と内容も変わっていった。創刊当時はわずか4面の記事で発行部数も7000部。それが今では、20面に拡大され、発行部数も150万部に及ぶ。

因みに、中国の文化人や知識人向けに創刊された新聞である「光明日報」と、「南方日報」が北京進出をかけて、それぞれ共同出資して2003年に創刊した都市報に「新京報」(公称80万部)というのがあるのだけれど、今年の7月23日に浙江省温州市で起きた、例の高速鉄道事故の報道統制にあからさまに抵抗したことを受けて、北京市党委宣伝部に“接収”されたと言われている。(同じく抵抗した「京華時報」も同じく接収されたとされている)

そして、最後に党機関紙なのだけれど、日本でもよく知られている「人民日報」は、1948年6月に湖北省の党地方支部で創刊され、8月に党の公式機関紙となった。1985年7月には国外向け版の発行もはじめ、中国語版に加えて、英語版、日本語版、フランス語版、スペイン語版、ロシア語版、アラビア語版の7か国語で配信されている。

「人民日報」は、昔でこそ、1000万部以上の発行部数があったのだけれど、近年では100万部までに落ち込んでいるという。そして、党機関紙というだけあって、メディアとしての信頼性は低く、中国国内でも「題名と日付しか合っていない」と揶揄されることもあるそうだ。その代り、党の公式見解や方針を知るにはよいという見方もある。

また、「人民日報」と日本の朝日新聞は提携関係にあり、朝日新聞のWebサイトではCNNやロイターと並んで人民日報の記事を特別コーナーにて常時掲載し、人民日報のWebサイトでは朝日新聞の記事を常時掲載している。

ところが、中国国内では、この「人民日報」は、街角の新聞スタンドにはなく、手軽に入手できる新聞ではないそうだ。その代り、中国人民が党機関紙として目にするのが、「環球時報」。

「環球時報」は、「人民日報」が発行する国際問題専門紙で、「人民日報」と異なり、見出しの付け方など編集方法がセンセーショナルで、大衆の人気が高い。発行部数は200万部で、「人民日報」よい多い。もちろん「環球時報」は、「人民日報」の姉妹紙であり、党機関紙でもあるから、人民日報と同様に中国政府の検閲を受けている。畢竟その内容は、中国政府の代弁になる。

ただ、「環球時報」が大衆向けの「人民日報」という性格を持っているということに着目すれば、「人民日報」と「環球時報」とで取り上げる記事やニュアンスの差分は、そのまま中国政府の国外に対する顔と国内に対する顔の違いを表すことになる。

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2.恫喝する「環球時報」

さて、その「環球時報」だけれど、最近とみに強硬論が目立っている。

11月1日には、中国現代国際関係研究院の林利民研究員の寄稿記事を掲載し、南シナ海の関係国と日米印豪の連合を阻止し、中国は個別対応で反撃すべし、と述べている。

これは、おそらく、最近の日本やASEAN、アメリカが構築しようとしている「中国包囲網」に対するものと思われ、その方法として、各個撃破せよという。

彼らの認識では、ベトナムとフィリピンが中心になって、その周りに日本、インド、オーストラリアが後押しして、さらにアメリカが「大ボス」として控え、中国に対抗しようとしている構図を描いている。

そして、それに対抗するためには、ベトナム、フィリピン、日本、アメリカ、インド、オーストラリアの6ヶ国と"個別に"同盟関係を築いて、6ヶ国を”合従"させないことだという。その中でも鍵を握るのはアメリカで、アメリカを6ヶ国から排除することができれば、その他5ヶ国は拠り所を失い、瓦解するだろう、と述べている。

では、具体的にどうするかといえば、それには触れていないのだけれど、ただ、アメリカをリーダーの座から降ろさせ、ベトナムとフィリピンに、「中国に刃向ってもなんの得にもならない」ことを思い知らせればよいと指摘している。

この「中国に刃向ってもなんの得にもならない」という表現は実に上手いというか狡いというか、硬軟どちらにも取れる表現で、"武力を背景にした恫喝"とも取れるし、"経済的利益を失う"とも読める。

つまり、ベトナムとフィリピンには、武力および経済力、或いは両方を使って、アメリカの影響から引き剥がしていくということを意味している。

また、10月31日には、「韓国とフィリピンは中国漁船を抑留し返さない。もし、これらの国々が中国に対しこうした態度を正さないなら、彼らは大砲の音を聞く準備をしなければならないだろう」と、先日あった、漁船拿捕事件を引き合いに、恫喝している。

そして、これが中国国内向けの報道でもあることを考えると、中国人民に対して、こうした民族主義的というか強硬な世論を作っていることには一定の留意は必要だと思う。

だけど、10/28のエントリー「ヘタれた中国とステルス・ノダ」で述べたけれど、一方、中国外交部は定例会見などで、武力行使はやらない意思を示している。

対外的には、「武力行使しない」といいつつ、国内には「武力行使を辞さない」と、真逆の態度をとっている。だから、党が国内を抑え込んでいる間は兎も角、中国国内の世論が戦争だと湧き立てば、中国政府がそれを抑えられなくなる可能性だってある。

中国国内が荒れるのは、向こうの勝手だけれど、その捌け口に戦争されたら堪らない。一層の注視と警戒が必要になるだろう。

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画像<南シナ海>関係国+日米印豪の連合を阻止せよ、中国は個別対応で反撃を―中国紙

2011年11月1日、中国紙・環球時報は中国現代国際関係研究院の林利民(リン・リーミン)研究員の寄稿記事「南シナ海問題の関係国が日米と連合して中国を抑え込もうとしている、中国は個別に対応を」を掲載した。以下はその内容。

米パネッタ国防長官はインドネシアを訪問した際、南シナ海問題の行動規範を早急に策定し、11月に行われる東アジア首脳会議(EAS)に提出するよう求めた。日本メディアも故事成語「合従連衡(がっしょうれんこう)」を引用し、中国を当時の強大国・秦に、ベトナムやフィリピン、そして日本・米国・インド・オーストラリアを周辺6カ国に例え、南シナ海情勢を分析している。

こうして見ると、南シナ海問題はもはや単なる領有権争いの範疇を超え、アジア太平洋地域さらには世界の平和問題にまで発展していると言える。今のところ、この「合従論」はマスコミや学者らが騒ぎ立てているだけで、どこかの国が明確に戦略を打ち立てたわけではないが、決して根拠のない作り話ではない。

彼らが唱える「合従論」とはベトナムとフィリピンを主体とし、その延長戦上に日本・インド・オーストラリア、さらに米国が「大ボス」として控え、中国に対抗しようとしているというもの。こうした構図が出来上がってしまえば、南シナ海問題の平和的解決はさらに困難となり、戦争勃発の可能性も高まる。中国の平和的台頭にも直接影響が出るだろう。

そのため、中国はこの6カ国と個別に同盟関係を築く「連衡」作戦を講じる必要がある。そのカギを握るのが米国だ。米国が「合従」に参加しなければ、リーダー不在となった彼らの行動力は限られてくる。

実はベトナムやフィリピンも中国の実力と「隣国は変えられない」という現実を分かっているはずだ。その場しのぎで外の力を借りたとしても、長続きはしない。米国がリーダーの座から降り、この2カ国に「中国に刃向ってもなんの得にもならない」ことを思い知らせることに成功すれば、日本・インド・オーストラリアも拠りどころがなくなる。そうすれば、彼らの「合従」も自然に瓦解していくだろう。(翻訳・編集/岡田)

URL:http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=55644&type=



画像「大砲で撃たれる覚悟でもしてろ」 周辺国脅す中国英字紙

 「韓国とフィリピンは中国漁船を抑留し返さない。もし、これらの国々が中国に対しこうした態度を正さないなら、彼らは大砲の音を聞く準備をしなければならないだろう」

 インターネット上に飛び交う強硬な戦争論者の言葉ではない。中国紙「環球時報」がこのほど、中国語版と英語版の「グローバル・タイムズ」に掲載した社説の内容だ。米外交専門誌フォーリン・ポリシーは「環球時報は超民族主義的な報道により中国の強硬な世論を導き、中国政府の『マウスピース』的な役割をしている」と先月31日に報じた。

 環球時報は中国共産党機関紙・人民日報の姉妹紙として1993年に創刊された。「人民日報が中国政府の公式的な見解をお決まりの退屈な表現で記述するのに対し、環球時報は人民日報では言いにくいことを大衆をあおるような表現で記述するという、それぞれの任務がある」とフォーリン・ポリシーは伝えている。だが、人民日報と同様に中国政府の検閲を受けているため、環球時報の記事や社説も中国政府の見解を代弁していることには違いない。

 環球時報はこのところ、南シナ海の領有権争い、チベット僧侶による連続焼身自殺事件、欧米メディアの中国報道などに対し激しい言葉をぶつけ続けている。南シナ海の領有権をめぐり対立しているフィリピンやベトナムに対しては「その癖は戦争で正さなければならない」という寄稿文を掲載した。これらを攻撃し、ほかの国々が騒動を拡大できないよう教訓を与えるべきだというものだ。宗教の自由や独立を要求し焼身自殺したチベットの僧侶たちに対しては、社説で「ダライラマ勢力の政治的利益のための醜い陰謀」と書いた。

 米国や英国などの西欧側メディアが中国の現代美術家・艾未未氏の釈放を要求すると、「彼は法の限界に挑戦してきた人物。西側諸国が彼のことを人権の闘士と褒めたたえるのは、中国の法律を無視する行為」と糾弾した。また、韓国がこのほど領海に侵入した中国漁船を拿捕(だほ)したことについては「李克強副首相がまず北朝鮮を訪問してから韓国に行ったことに対し、韓国当局が復讐(ふくしゅう)したもの」という陰謀論を展開している。このような報道姿勢について、総編集人の胡錫進氏は、環球時報編集局を訪れた米国人ジャーナリストや学者たちに「私達はありのままに述べる。あなたたちを驚かせることを恐れない」と言った、とフォーリン・ポリシーは伝えている。


李恒洙(イ・ハンス)記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

URL:http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2011/11/03/2011110300938.html

この記事へのコメント

  • 福島農産物を安全だと認められない理由

    東京電力福島第一原子力発電所2号機で放射性キセノンが検出された問題で、東電は
    3日、検出されたキセノンが極微量なことなどから核分裂反応が連鎖的に進む臨界は起きて
    いないと結論づけた。

     原子炉内では、運転時に生成した放射性物質キュリウムが単独で分裂する「自発核分裂」が
    散発的に起きており、極微量のキセノンはキュリウムの分裂で説明できるとした。一方、
    経済産業省原子力安全・保安院は「局所的な臨界の可能性は否定できない」との見方を変えて
    おらず、東電は保安院に改めて詳しい解析結果などを報告する。

     キセノン133とキセノン135は、1日に格納容器から採取したガスから検出された。
    濃度はともに1立方センチ当たり約10万分の1ベクレルと極微量だったが、それぞれの
    半減期は約5日、約9時間と短く、直近に核分裂反応が起きたとみられ、東電は2日、
    小規模な臨界が一時的にあった可能性もあるとの見方を示していた。

     だが、詳しく解析したところ、小規模な臨界であっても検出量の1万倍のキセノンが発生
    することがわかった。臨界を防ぐホウ酸水を2日未明に注入した後もキセノンが検出
    2015年08月10日 15:26
  • 八目山人

    名無しさんのは強健付会と言うものでしょう。無理やりこじつけています。
    戦前、日本の軍隊が憲法上内閣の下に無かったので、軍をコントロールする事が難しかったわけですが、同じように今、人民解放軍が誰の命令で動いているか分からないところが不気味です。
    2015年08月10日 15:26

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