新建材革命

 
今日は、久々に技術系のエントリーを。

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1.呼吸するコンクリート

今年9月に東京国際フォーラムで開催された世界建築会議「UIA2011東京大会」で、新素材のブロックを積み上げたドーム状の構造物が展示された。「チルドレンズ ガーデン」と名付けられた、この構造物は、圧縮強度はコンクリート並み、引っ張り強度は2.5倍という強度を持ち、新たな建材として注目されている。

「CO2エコストラクチャー」というこの素材は、二酸化珪砂(SiO2)に二酸化炭素を注入して、ウレタン薬液に浸すことによって作られている。

硅砂(けいしゃ)とは、二酸化ケイ素(SiO2)成分の多い石英砂の総称なのだけれど、主に、ガラス製品の原料として使われ、鋳物砂や建材砂としても利用される。

珪砂に二酸化炭素を注入すると、珪砂は炭化硅砂となって固化する性質があり、それを利用しているのだけれど、作り方は到って簡単で、まず、型枠に粒状の珪砂を押し込めて密閉し、型枠に開けた穴から二酸化炭素をボンベで注入するだけ。型枠の中身は瞬時に固まって、炭化珪砂の固体になる。

この状態でも、既にレンガ並みの強度があるのだけれど、引っ張りとか曲げに弱いので、エポキシやウレタン樹脂をしみこませてやる。こうすることで、圧縮強度約27ニュートン(N)、曲げ強度約16ニュートン(N)という一般コンクリート並みの強度の素材が出来上がる。

だけど、何と言っても、この建材の凄いところは、出来上がりまでの時間。

普通コンクリートは、打った後、「養生」といって、硬くなるまでの間、一定の期間、必要な温度および湿度に保ってそのままにしておかなくちゃならない。通常その期間は28日、およそ1ヶ月もかかる。

だけど、この「CO2エコストラクチャー」は、二酸化炭素の注入に1分弱、樹脂を浸み込ませて、硬化するまで5時間半。一日あれば全然OKという。

今のところ、単価はコンクリートの約3倍になるそうなのだけれど、鉄筋が要らないので、工事費全体ではこれまでの鉄筋コンクリートと同程度と見られている。また、生コン工場のような大がかりな製造設備も要らないし、固化する際の化学反応で、CO2を取り込む一方で、酸素を排出するというオマケつき。

なんと言っても、出来上がりまでが早いので、外部での部材製作が必要な仮設住宅などを災害の被災地で迅速に設置することが可能。低層住宅や医療分野などでの利用も見込めるという。筆者としては、陸自の工兵部隊にでも持たせてやればPKOなんかでも随分と威力を発揮するのではなかろうか。

珪砂なんてありふれた材料なのだから、現地で手に入れることができるだろうし、あとは二酸化炭素のボンベとシリコン樹脂を持っていけば、簡単な建物やトーチカなんか直ぐ作れてしまうと思う。

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2.自然治癒するコンクリート

また、コンクリートとて、新素材が開発されている。それが自然治癒するコンクリート。

自然治癒なんていうと、何やら生き物を連想してしまうかもしれないけれど、このコンクリートは自分のひび割れを自分で治してしまう。

普通、コンクリートは硬化する過程で収縮する。これは、コンクリートに含まれる水分(余剰水)が乾燥して蒸発し、空隙となった部分に表面張力が発生するから。例えば、長さ10メートルの梁のような形状のコンクリートでも、僅か半年で6~8ミリ収縮するという。

ところが、この自然治癒コンクリートは、ひびが入っても、数日から1ヶ月の間にほぼ自己修復する。

その仕組みは、コンクリートに予め混ぜられている、「混和材」と呼ばれるもので、水に触れると10倍に膨らむ性質を持っている。コンクリートにひびが入ると、やがてそこに、コンクリートに含まれる水分などが入ってくるのだけれど、そのとき、混和材から、炭酸カルシウムが析出して、ひび割れ箇所を修復する。炭酸カルシウムはほぼ鍾乳石と同じ成分で止水性が高く、非常に安定した物質なので、コンクリートの修復にも適しているし、修復後の強度も問題ないという。

もちろん、ひび割れに入ってくる水分が多ければ多いほど修復は早くなり、実験レベルでは、作製したセメントペーストを120日~200日後放置した後、わざとひびを入れて、それを水に浸すと、わずか3日でひび割れが自己治癒する結果を得ている。

まだ、この自然治癒コンクリートは、開発途中ではあるけれど、実用化されれば、たとえば、高架下への雨漏り防止が期待できるほか、地下鉄のトンネルなんかでも、コンクリートだけで、地下水の浸入を防ぐことができるようになるから、防水工事がいらなくなる。

素材も日々進歩している。

この自然治癒コンクリートの開発者である、東京大学の岸利治教授は、2016年の実用化を目標としているようだ。期待したい。

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画像建物が光合成? コンクリートに変わる新素材登場

 二酸化炭素を吸い、酸素を吐き出す

 二酸化炭素を吸って酸素を吐き出す、いわゆる光合成と同じ働きをするコンクリートのような素材があるという。日経BPが27日報じた。

 秘密は化学反応の利用

 今年9月に開催された世界建築会議「UIA2011東京大会」で展示されたこの新素材は、東京電機大学教授でTIS & PARTNERS代表の今川憲英氏らが開発した。

 使い方は簡単だ。型枠に粒状のケイ砂を押し込め密閉し、型枠に開けた穴から二酸化炭素をボンベで注入する。型枠の中身は瞬時に固まり、炭化ケイ素の固体となる。

 これにエポキシ樹脂を浸透させて5時間程度置くと、圧縮強度はコンクリート並み、引っ張り強度は2.5倍ほど強い物体が出来上がる。エポキシ樹脂を塗ってあるため、耐久性も高いという。
 この素材は、形成時に二酸化炭素を吸収するだけではない。その後も植物の光合成のように、二酸化炭素を吸収し酸素を吐き出す。

 高価なエポキシ樹脂を使用するので、単価はコンクリートの約3倍になるが、鉄筋が不要なため、工事費全体では同程度の価格に抑えられる。またコンクリートと異なり、すぐに固まるため、工期の短縮にも役立つなど施工面でのメリットも大きい。

URL:http://jp.ibtimes.com/articles/23408/20111027/943479.htm

この記事へのコメント

  • almanos

    珪藻土とウレタン樹脂駅と二酸化炭素ですか。長七翁の人造石みたいですな。耐久性がどの程度あるんでしょうか? 後耐候性は。おむつに使われている吸水性樹脂を発展させて、百度くらいでも融けない氷とか作れればメガフロートが簡単に作れると思ったりしますが、流石にそういう研究はしてる所無いですよねぇ。もしできたら沖縄の基地問題とか解決の見込みが出るけど。無理かな。人口氷山で移動できる島を作れれば軍事基地のロケーションの制約を回避できますから。
    2015年08月10日 15:26
  • 白なまず

    硅砂、これは、、、中東やアフリカ、中央アジア、中国、南米、オーストラリアの砂漠を資源として世界貢献出来る技術を日本人に託して頂いたような気がします。例えばトルコ等の地震が多い国と耐震構造の建物+硅砂ブロックなんかのプロジェクトをODAとか民間(募金で出来たりして)で始めて欲しいものです。修復するコンクリートの方も勿論同様でしょう。今後起きる世界中の災害後の復興に必要な物ですよね。先ずは日本で実用化し世界の復興事業を世界中で展開できるようになればいいですね。
    2015年08月10日 15:26

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