2012年度の政府予算案決定


「民主党議員の陳情攻勢は自民党時代と同じか、それ以上」
財務省幹部

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12月24日、2012年度の政府予算案が決まった。

一般会計の総額は、11年度当初より2兆777億円少ない90兆3339億円。ただし、震災復旧・復興対策費の3兆7754億円は「東日本大震災復興特別会計」を新設することで別枠管理。

新規発行国債は、44兆2440億円で前年度より微減しているけれど、国債の発行額を増やさないために、一般会計から年金の国庫負担2.6兆円を外し、特別会計で扱うという前例のない措置を取っている。

予算編成の焦点だった診療報酬改定では、当初、財務省が診察や治療にかかる本体部分を据え置き、薬価部分を合わせた全体でマイナスという線でいこうとしていたところ、厚生労働省と民主党の厚生労働関係議員らが猛烈に巻き返して、本体部分で1・379%、全体では0・004%の引き上げとなった。

予算編成の期間中、民主党議員が財務省を訪れる姿もたびたび見られ、財務省幹部は自民党以上と漏らす。民主党の自民党化もここに極まれりというところだろう。

今回の予算では、凍結していた大型公共事業の着工にも相次いで踏み切っている。八ッ場ダムの本体工事や、東京外郭環状道路の未着工区間の新規着工、そして、整備新幹線の未着工3区間も着工を認める見通しだという。

デフレの折、こうした公共事業を進めることは経済を活性化させる上では大切なことだし、筆者も評価したい。だけど、ここにたどり着くまでの2年間はムダになったことは否めない。

まぁ、民主党が自民党化することの是非は置いておくとしても、民主党の政権運営能力が自民党以下であることは、もう誰の目にも明らかになった。それは法案成立数の少なさとなって現れている。それは、畢竟、必要な政策の決定も実施も遅れることを意味する。実際、八ッ場ダムは2年遅れてしまった。

こうした民主党の政策決定の遅さや政権運営能力の低さによって、八ッ場ダムのように"機会損失"をしている部分が、他にも数多く発生しているのではないか。震災復興や円高対策なんかでも、政権運営能力がもう少しあったならと思えてならない。



今回の予算では、野田政権が重視する「特別枠」は3000億円増やして、一兆円に拡大しているけれど、その中身の多くは公共事業で、全国の道路整備に1440億円、水害・土砂・津波対策に644億円、港湾整備に303億円。やっと政府もインフラに着手する気になったようだ。

ただ、この特別枠に沖縄振興費があるのだけれど、当初の内閣府要望の273億円から773億円と3倍近く拡大している。
また、本体での沖縄への一括交付金も321億円から1575億円と5倍増となっている。これはもう、普天間問題を少しでも進めようとするために政府が金を積んだとしか思えない。

実際、24日に、野田首相と沖縄県の仲井真知事が、首相官邸で開かれた沖縄政策協議会で、年内に環境影響評価書を提出する野田政権の方針について、「県も行政機関であり、関連する法令にのっとってやる以外ない」と黙認する姿勢を示している。

2010年11月の「沖縄県知事選挙について」のエントリーで、ン筆者は、"仲井真氏は結構したたかで「タヌキ」なところがあると見ているので、最終的に辺野古移設を呑む可能性はあると思っている。ただし、たとえそうなったとしても、政府に対しては、相当に条件闘争をするだろうと見る。"と述べたことがあるけれど、今回の沖縄振興費の大幅増額と環境影響評価書提出黙認もその条件闘争の一環ではないかと思う。

まぁ、評価書なる文書を出す出さないだけで予算を増額して貰えるのなら、普天間容認では何倍の予算になるのやら見当もつかないけれど、これも元を辿れば、鳩山元首相が、普天間問題を拗れさせ、無茶苦茶にしたことに原因がある。

その意味では、野田政権は、普天間問題については、鳩山政権の尻拭いをしているともいえ、気の毒だとも言えなくもない。だけど、民主党が自民党化し、現実路線に舵を切るにつれ、党内の軋みは激しさを増してゆく。

12月24日、八ツ場ダムの建設継続決定に反対して民主党の中島政希衆院議員が離党届を提出した。中島議員は「民主党は変節した」と厳しく批判し、「同憂の士は少なからず存在する」と、「離党予備軍」がいることを示唆している。

野田首相が進めようとしている消費税増税についても、強引にやれば離党の動きが出るとの観測もあり、予断を許さない。それでも、野田首相が"不退転"の決意で増税を進めると言っているのだから、言葉通りに受け止めるのならば、たとえ民主党が崩壊しても進めるつもりでいるということなのだろう。

もっとも民主党が崩壊すれば、消費税増税法案もくそもないのだけれど。




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画像「復興除けば緊縮」…自由度狭まる予算編成

 野田政権による初の予算編成となった2012年度予算案は、財政の悪化で政策に使える経費の自由度が狭まる中、どこまで歳出にメリハリをつけられるかが問われた。

 しかし、予算を付けた事業には迫力不足の感が否めず、無駄減らしも徹底できないなど歳出改革には甘さが目立った。

 財政の苦しい台所事情の中で、野田政権が精いっぱい予算編成のメリハリづけを演出しようとしたのが、成長戦略などに重点配分する特別枠「日本再生重点化措置」だ。とくに野田首相が執着したのが、日本版GPS(全地球測位システム)を構築するための準天頂衛星の整備で、特別枠の41億円を含む106億円が計上された。特別枠は概算要求段階の7000億円から1兆578億円まで広がった。

 しかし、菅前首相は11年度予算編成で「元気な日本復活特別枠」に2・1兆円を確保した。今回は、税収が伸び悩む中で社会保障費など必要な歳出が膨らみ、野田首相の自由度は半分に狭まった形だ。

 「復旧・復興を除けば緊縮予算にならざるを得なかった。それもこれも厳しい財政状況の中でやむを得ないことだった」

 安住財務相は24日の臨時閣議後の記者会見で、財政悪化のため予算編成の自由を奪われた苦しい胸の内を明かした。

 一方、歳出の切り込みも中途半端な結果となった。政府は、行政機関職員定員法が制定された1969年以降、初めて全省庁で定員増を見送った反面、国家公務員給与の削減までは踏み込めなかった。

 政府が歳出見直しの切り札とした「提言型政策仕分け」は、原子力発電所事故を背景に高速増殖炉「もんじゅ」の予算削減にはつながった。ただ、あとは生活保護受給者の医療扶助に対する後発医薬品の利用促進(124億円)など小粒な内容にとどまった。

(2011年12月25日13時40分 読売新聞)

URL:http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20111225-OYT1T00166.htm



画像「変節政権」に痛撃=消費増税にも暗雲-中島氏離党

 野田政権が民主党マニフェスト(政権公約)をほごにする形で決めた八ツ場ダムの建設継続は24日、所属議員の離党問題に発展した。離党届を提出した中島政希衆院議員は記者会見で「民主党は変節した」と厳しく批判。週明けから素案取りまとめがヤマ場を迎える消費増税でも「公約違反」に反発する議員の離党が取り沙汰されており、野田佳彦首相が「不退転の決意」で突き進む増税路線に暗雲が垂れ込めた。
 「八ツ場ダム建設は国民の信頼を裏切るものだ。到底容認できない」。中島氏は24日の会見で、首相と党執行部の最終判断を非難。「同憂の士は少なからず存在する」と、「離党予備軍」がいることを示唆した。同じ党群馬県連所属の石関貴史衆院議員は「気持ちは全く同じだ」とのコメントを発表した。
 八ツ場ダム建設中止は、民主党がマニフェストで掲げた「コンクリートから人へ」の理念の象徴だった。同党政権はこれまでも子ども手当、高速道路無料化、農家への戸別所得補償などで公約の撤回・修正を繰り返してきたが、公約違反への不満を理由とした離党表明は初めてで、党内の許容限度を超えつつあることを示すものだ。
 実際、野田政権が公約にない消費増税に踏み切ろうとしていることに、党所属議員は地元の風当たりを身にしみて感じている。ある若手議員は、支持者から離党を促されていると明かし、消費増税の素案づくりについて「強引にやれば離党の動きが出る」と警告した。
 首相は24日、八ツ場ダム建設継続についてようやく言及したが、「予断なく検証した結果だ。苦渋の決断だった」と述べるにとどめ、詳しい説明や謝罪の言葉はなかった。中島氏は首相が前面に出て指導力を発揮しないことに強い不満を示したが、首相には届かなかったようだ。(2011/12/24-20:35)

URL:http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&rel=j7&k=2011122400288



画像無駄削減より「ばらまき」…民主も「自民党化」

今回の予算編成では、来年中の衆院解散・総選挙もささやかれる中、「ばらまき」圧力が強まった。

 民主党が2009年衆院選の政権公約(マニフェスト)で掲げた「無駄減らしによる財源捻出」などはすでに破綻し、露骨な歳出増の要求ばかりが目立った。

 予算編成の焦点となったのは診療報酬の改定だ。

 安住財務相は「本体部分プラスは難しい」と歳出抑制を訴えたが、小宮山厚生労働相は「本体部分を切り込むということはあり得ない」と反発した。

 財務省は当初、診察や治療にかかる本体部分を据え置き、薬価部分を合わせた全体でマイナスという落としどころを考えていた。だが、日本医師会が背後に控えた厚生労働省が猛烈に巻き返した。

 民主党の前原政調会長らが全体のプラスを求め、党として意見書をまとめたことが決定的となった。前原氏は「消費税に賛成してもらわないといけない。負担ばかり議論できない」と周囲に話した。

 21日夜、この日3回目の大臣折衝で本体部分で1・379%、全体では0・004%の引き上げが決まった。小宮山厚労相は「約束通りだ」と胸を張り、財務省幹部は「惨敗だった」と肩を落とした。

 政府・民主党は凍結していた大型公共事業の着工にも相次いで踏み切った。八ッ場(やんば)ダム(群馬県)の本体工事費用を計上し、東京外郭環状道路の未着工区間の新規着工を決めた。整備新幹線の未着工3区間も着工を認める見通しだ。

 マニフェストの「コンクリートから人へ」の方針は形だけになり、公共事業費は、復興特別会計分を合わせて前年度比6・6%増やした。

 予算編成の期間中、民主党議員が財務省を訪れる姿もたびたび見られ、財務省幹部は「民主党議員の陳情攻勢は自民党時代と同じか、それ以上」と漏らした。民主党はかつて自民党に「地元や支持基盤への利益誘導」との批判を浴びせていたが、今や「自民党化」に拍車がかかっている。

(2011年12月25日16時15分 読売新聞)

URL:http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20111225-OYT1T00124.htm

この記事へのコメント

  • ちび・むぎ・みみ・はな

    仲井知事のしたたか(愚か)さ.

    猫だって旨いものを一旦やれば止められない.
    明確な名目をつけない予算増額は沖縄の政府依存
    を強め, 沖縄の産業をますます駄目にするだろう.

    ゆすり・たかり・ワイロはヤクザ悪徳商人の商法.
    まともな人のやることではない.

    自民党政権の元で沖縄が駄目になってきたが,
    嘘付党政権はそれを10倍位に加速している.
    どんなにまともな地方でもこれをやれば没落する.

    猫だって, 駄目なものは駄目としつけるのだが.
    2015年08月10日 15:26

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