12月22日、金正日の死亡状況について、北朝鮮が偽装した疑いがあることが明らかになってきた。
１．金正日は列車内で死亡していない
これは、米韓当局の分析から分かったことで、アメリカの偵察衛星の映像解析の結果から、金正日の３つの専用列車のいずれも停車していたことが確認されている。
勿論、列車に乗り込む際に発病した可能性のあるのだけれど、これまで金正日の視察には医師団を含む数百人が同行するとされていることから、列車内で急変した場合は秘密保持が難しいことと、急変に際して急増するはずの通信量も変化がなかったという。
韓国の情報機関である国家情報院の元世勲院長は２０日、韓国国会で「金総書記の専用列車は平壌・竜城１号駅から動いていない。発表をうのみにできない」と、専用列車は１５日以降動いていないとの見解を述べている。
また、日韓などの情報当局者も、金正日は、列車内で死亡したのではなく、死亡時刻も公表されたものより早いとの見方をしているようだ。
12月23日になって、朝鮮労働党指導部に近い関係者は毎日新聞の取材に対して、「１７日午前１時に平壌郊外の別荘で発見された」と証言している。それによると、金正日は別荘で水を１杯飲んだ後、寝室で横になってそのまま亡くなったのだという。
１９日の北朝鮮の「特別放送」では、金正日は、17日朝に現地指導に向かう途中、走る列車内で心筋梗塞を起こし、死亡したとうことになっているのだけれど、この証言が本当だとすると、金正日が死亡したのは、列車内ではなく、少なくとも17日の午前１時前に死亡していたことになる。
また、２３日付の朝鮮日報によると、未確認情報とした上で、15日の時点で金正日の健康に深刻な異常が発生し、指導部が緊急会議を開催したと報じているし、韓国の宋永仙議員は22日のＫＢＳラジオ番組で「金総書記は１６日午後８時に死亡した」と発言している。また、同じく韓国の朴宣映議員は「１６日午前１時に平壌郊外の慈母（チャモ）山の別荘で死亡」と発言しているから、彼らは何らかの裏情報を得ているのかもしれない。
こうしたことから、韓国では「金正日暗殺説」が飛び交っているという。
12月20日付の韓国各紙は、金正日の列車内死亡発表に対して、一斉に疑いの目を向けている。東亜日報は「（北朝鮮の）発表で最も疑問が残る点は列車内で死去したことだ」と指摘。金総書記の健康維持は北朝鮮にとって「最優先課題」であり、体調の変化に北朝鮮当局が全く気付かないまま総書記が現地指導を続けたことは理解し難いとした上で、強硬派の仕業ではないかとする脱北者出身の専門家の見方を伝えているし、毎日経済は「誰かに殺害されたのではないか、という可能性が提起されている」と、暗殺説を掲載している。
更に、金正日の病理解剖によって、病死であったことが確定されたとする北朝鮮側の発表についても、東亜日報は「死因などをめぐり、臆測が出る余地が多いということを自ら認めたものだ」としているし、毎日経済も「（詳細な検査を同時に発表したのは）死因は他にあるのではないかという疑心があるためだ」という見方を述べている。
ことほど左様に、北朝鮮の発表に対して韓国は疑いの目を向けている。
また、北朝鮮でも公演したこともあるプリンセス天功さんは、「金総書記には専属の医療チームもついており、健康面には配慮されていたので、こんなに早く亡くなるなんて思ってもいませんでした。」とサンケイスポーツの取材に答え、２００９年にプライベートで北朝鮮に行き、金正日と会ったときの印象について、健康も回復し、元気そうだったと述べている。
まぁ、一般に心筋梗塞は突然起こるものだから、金正日が、突然列車内で発病して亡くなるということも可能性としては無くはないのだけれど、当日列車が動いていなかったとか、北朝鮮関係者から、別荘で亡くなったなんて証言が出てくることを見ると、北朝鮮側の発表は大いに疑問があると言っていい。
日本の大手マスコミは金正日暗殺説をそれほど取り上げてはいないのだけれど、唯一、国内で、金正日暗殺説を唱えているところがある。それは、幸福実現党及び幸福の科学。
２．金正日は金正恩に暗殺された
幸福の科学については以前、「天使の鼓動 ～Angel Beats!～」のエントリーで取り上げたことがあるのだけれど、今回も同様に、金正日霊と金正恩守護霊をそれぞれ呼び出して、真相を語らせるというスタイルをとり、その証言から、金正日は暗殺されたのだ、としている。
一部内容は、こちらのサイトで紹介されているのだけれど、それによると、なんと、金正日は息子であり、後継者でもある金正恩氏に注射で殺されたとしている。
何でも、金正恩守護霊によると、もうそろそろこの辺りで金正日に死んで貰わないと、自分の活躍の場がないのだそうだ。
その真偽は、筆者には分からないけれど、これが本当のことだとすると、大変なこと。自分の父を殺してしまうような人物が北朝鮮のトップになるのだから、自国民はもとより、外国の国民の命など鴻毛の如し。日本としても、最大限の警戒を要する。
こうしたことを嘘っぱちだと、笑い飛ばすのは簡単だけれど、国家は国民の生命と財産を守る義務がある以上、可能性として有り得るのであれば、そのための備えはちゃんとしておかなくちゃならない。
ただ、「天使の鼓動 ～Angel Beats!～」のエントリーでも述べたのだけれど、こうした情報は、それを信じる信じないに関係なく、内容そのものが広まることに抑止効果があると筆者は考えている。
日本国内で、金正恩氏による金正日暗殺説が広まると、少なくとも北朝鮮に対する警戒度が緩むことはないだろうし、北朝鮮にとってもこうした情報が、広まることは嫌な筈。
なぜなら、金正日死去後まもなく、金正恩氏への権力委譲がなされる途上で、その正統性に疑いを持たせるような情報が発信されることは、北朝鮮の体制を大きく揺るがす可能性があるから。
３．「しおかぜ抑止力」を利用せよ
北朝鮮の国営メディアは、金正恩氏に対する呼称を毎日グレードアップさせている。金正日の死亡が発表された１９日には、それまで金正日固有の尊称だった「偉大な」や「領導者」をいきなり正恩氏に使い、24日には、「最高司令官」「将軍」の肩書までつけた。
これは、北朝鮮当局が、金正恩氏の重要ポスト就任を報道によって既成事実化させ、いつ就任してもおかしくない状況を作ろうという狙いがあると見られている一方、金正恩氏が後継者となる正統性に疑いを持たせるような情報は封鎖・隠蔽しようとしている。
というのは、金正恩氏の母の故高英姫氏は、元在日朝鮮人であるのだけれど、朝鮮労働党中枢は、その在日朝鮮人という出自は金正恩氏の神格化の妨げになると判断し、これを「最高機密」に指定して口外すれば厳罰に処す方針を固めたとの内部情報が明らかになったから。
この情報は、ＮＰＯ「救え！北朝鮮の民衆／緊急行動ネットワーク」（ＲＥＮＫ）が党中枢部から入手したもので、党中枢が金総書記死去後、金正恩新体制出帆に向けて正恩氏をどう奉っていくかを協議する中で、方針が打ち出されたのだという。
故高英姫氏は、大阪生まれの元在日朝鮮人で、１０代前半の１９６０年代初頭に一家で北朝鮮に渡り、金総書記との間に三男の正恩氏のほか、次男の正哲氏をもうけ、２００４年に死去している。
北朝鮮国内では、故高英姫氏の出自については触れられてこなかったのだけれど、北朝鮮国内の在日出身者の間では公然の秘密のようで、口外した在日出身者が厳罰の対象となる可能性が高いと見られている。
それでも、故高英姫氏の出自は、日本に住む在日朝鮮人には周知の事実であることから、朝鮮総連を「危険な秘密を知る組織」と見做し、重要拠点としての存在意義を格下げするとみられている。
まぁ、北朝鮮のことだから、この手の情報をどこまで信じていいのかという疑問はあるのだけれど、実際に朝鮮総連が"格下げ"されたら、総連自身の動揺は隠せないだろうから、今後の朝鮮総連の動きをマークすることで、その真偽はある程度明らかになっていくものと思われる。
このように金正恩氏の神格化に躍起になっている北朝鮮に対して、幸福実現党及び幸福の科学が発信している「金正日は金正恩氏が暗殺した」説が伝わったらどうなるか。
次の将軍様は父殺しだった、なんてのが北朝鮮国内に伝われば、金正恩氏の権威は大きく傷つき、神格化は難しくなっていくだろうし、北朝鮮国内が動揺することは勿論、北朝鮮軍部、特に、金正恩氏に反対する勢力にとっては、願ってもない口実を得ることになる。つまり、内部クーデターの圧力が高まるということ。
2009年7月に「しおかぜ抑止力」というエントリーで、北朝鮮に対する抑止力として、短波放送か何かで、金正日の居所を天気予報風に毎日流してプレッシャーを与えてはどうかといったことがあるけれど、同じことを金正恩氏に対して行うことで、北朝鮮の体制を揺さぶることが出来るかもしれない。
たとえば、「金正恩の母であった高英姫は、大阪生まれの元在日朝鮮人だ」とか「金正恩は金正日を注射で暗殺した、父殺しなのだ」とか流してやれば、その正統性は大きく揺らぐだろう。
面白いことに、幸福の科学が行った金正日霊へのインタビューで、金正日霊が北朝鮮には非公式で色々な情報が電波で入ってきていて、それが地下活動となって火を噴くことを懸念しているという部分がある。
これは、まさに"しおかぜ抑止力"が北朝鮮の反体制派を刺激して、日本の抑止力として働くことを示唆している。
こうしてみると、金正恩体制は、結構、情報の部分で隙というか綻びがあって、ここを上手く突くことで、北朝鮮を瓦解させていく可能性は十分あると思う。
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激震・金王朝：「１７日午前１時、別荘に遺体」 関係者、公式発表を否定◇総書記「水１杯飲み、お亡くなりに」
北朝鮮の金正日（キムジョンイル）総書記の死亡時刻について、朝鮮労働党指導部に近い関係者は２３日、毎日新聞に対し「１７日午前１時に平壌郊外の別荘で発見された」と証言した。関係者は「将軍様（金総書記）は別荘で水を１杯飲んだ後、寝室で横になってそのままお亡くなりになった」と明らかにした。日韓などの情報当局者も「列車内ではなく、死亡時刻も公表されたものより早い」との見方で一致しており、北朝鮮当局が発表した「１７日午前８時半」「列車内で死亡」を否定する情報が流出している。
北朝鮮指導部が「金総書記が生涯、休息を考えず国民のために働いた」という神話作りのため、事実とは異なる記述をしている可能性が強まった。
党機関紙「労働新聞」（電子版）は２２日付で、金総書記が視察先の咸鏡南道（ハムギョンナムド）から平壌に戻った際、後継者・正恩（ジョンウン）氏が準備した公演を「現地指導を終えてから見る」と言い残し、再び北方に向かう列車に乗り込み息を引き取った、と描写。だが、韓国の国家情報院は、専用列車は１５日以降動いていないと判断している。
中国在住の北朝鮮当局者にも１７日早朝、死亡情報が伝わり、池在竜（チジェリョン）駐中国大使は午後１時過ぎ、北京発便で緊急帰国した。「午前８時半死亡」なら、北朝鮮での通信状況などを考慮すると、この便に搭乗するのは無理がある。また北朝鮮大使館関係者の一人も同じ時刻に「急用で年内は日程を入れられなくなった」と中国側関係者に説明したという。
２３日付の韓国紙・朝鮮日報は、韓国政府が日本政府から入手した未確認情報として「１５日に金総書記の健康に深刻な異常が発生し、指導部が緊急会議を開催した」と報じた。
平壌で今月開かれた国際会議に出席した日本側関係者によると、１５日午後７時に予定された晩さん会に元東淵（ウォンドンヨン）党統一戦線部副部長が４０分余り遅刻。元副部長は深刻な表情で「非常会議のため遅れた」と語った。１５日午前中の金永南（キムヨンナム）最高人民会議常任委員長との面談まで予定変更はなかったという。１６日朝、北京に戻るために移動した空港で、元副部長はクリスマスツリーの電飾を見て「今はこんなものをつけている場合じゃない。すぐ消せ」と怒ったという。
韓国国会の国防委員会に所属する宋永仙（ソンヨンソン）議員は２２日のＫＢＳラジオ番組で「金総書記は１６日午後８時に死亡した」と紹介。朴宣映（パクソンヨン）議員は「１６日午前１時に平壌郊外の慈母（チャモ）山の別荘で死亡」と指摘する。
朝鮮中央テレビの番組予告にも異変があった。１８日午後１１時３分、１９日の番組予告を報じ、午前９時に金日成（キムイルソン）将軍の歌、９時１２分に金正日同志の現地指導番組を放映するとした。ラヂオプレスによると、中央テレビの放送開始は通常、午後５時。番組では金総書記が１０月に港建設現場などを指導した様子が３２分間映し出され、その後の午前１０時、「正午の特別放送」が予告された。この番組の初放送は１７日の午後６時。実はその前夜に番組予告があった。
１６日夜の番組予告時点で、既に“死亡発表で過労死を国民に印象づける”というシナリオが動き出していた可能性がある。【北京・米村耕一、ソウル西脇真一、ロサンゼルス堀山明子】
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◇金総書記の死亡時刻をめぐる証言
１５日 以降 専用列車の動き止まる
１５日 午前 金永南委員長は予定通り行動
１５日 「金総書記の健康に深刻な異常」
１９時 統一戦線部副部長「非常会議」
１６日 １時 「別荘で死亡」（朴議員）
朝 同副部長が電飾に激怒
夜 現地指導番組予告
１７日 １時 「別荘で死亡」（朝鮮労働党筋）
８時半 北朝鮮発表死亡時刻
１３時過ぎ 駐中国大使出国
１８時 現地指導番組初放映
１８日２３時 １９日の番組予告
１９日 ９時 金日成将軍の歌
現地指導番組
１０時 「正午の特別放送」予告
正午 特別放送
毎日新聞 2011年12月24日 東京朝刊
URL:http://mainichi.jp/select/world/news/20111224ddm001030059000c.html
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