「大変お待たせしました。この2年間、ご迷惑をかけ、つらい思いをさせた。さらに60年近くにわたり生活を翻弄し、心からおわび申しあげる」前田武志国土交通相 於:12/22 群馬県長野原町
八ツ場ダム問題が民主党に混乱を引き起こしている。
12月22日、国土交通省は、八ツ場ダムの本体工事再開を発表した。記者会見の席で、前田国土交通相は、再開の理由として、「継続が妥当」とした国交省関東地方整備局の検証が適切だと同省有識者会議が認めたことや、ダム下流に人口が集積する利根川水系の治水の重要性、流域6都県の知事らの建設要望などを考慮したことを述べた上で、来年度予算案にダム本体工事費を計上することを明言した。
八ッ場ダムは、吾妻川中流に位置し、総貯留量107,500,000m3、有効貯留量90,000,000m3で、主に次の4つを目的として建設を計画されていた。
(1) 洪水調節 :建設地点における流入量3,900m3/sの内、2,400m3/sの洪水調節。
(2) 流水の正常な機能の維持:吾妻川における流水の正常な機能の維持の増進。
(3) 都市用水の補給 :群馬県および下流都県の新規都市用水及び農業用水の確保。
(4) 発電 :建設に伴って新設される八ッ場発電所にて最大出力11,700kWの発電を行う。
国土交通省関東地方整備局の八ツ場ダムについての検証報告書によれば、先の4つの目的のうち、発電を除いた3つについて複数の候補案を挙げ、それぞれについて、評価をしているのだけれど、"洪水調節"はコスト、実現性で「ダム案」が最も有利で、"流水の正常な機能の維持"は、八ツ場ダムから利水放流をする場合は、コスト、実現性で「ダム案」が最も有利になり、利水放流しない場合は、より上流の堰から維持流量を放流する「ガイドライン案」が有利になるとしている。
そして、"都市用水の補給"でもコスト、実現性で「ダム案」が最も有利となり、総合的にダム案が最も優れているとしている。この国土交通省の検証について、有識者会議で議論して、妥当であるとの結論を出した。これについて、前田国交大臣は、12月2日の会見で次のように述べている。
検討の中身が、これまで関東地整で行ってきたプロセスに瑕疵が無かったかをしっかり見ていただいた他に、有識者としてのいろいろな貴重な御意見が出ていました。その結果として、ダムに頼らない治水のあり方についてもいろいろな御意見を出していただいております。
多少踏み込んで言うと、利根川流域の特性のような事について指摘された方々もおられました。
もともと、利根川というのは3本流れていました。そのうちの2本が東京、隅田川のような所に流れ込んでいた。それを家康入府以来、東に東に追いやって、今、利根川は関宿で分派して江戸川が一つ東京湾に流れているわけですが、大半は銚子の方、東の方に付け替え、付け替えて、江戸を守るような形にしていったということです。
もともとは利根川、中川、綾瀬川、荒川、隅田川だとか、要するに関東平野の低湿地、武蔵丘陵の高台以外は江戸に至るまで低湿地であったものを東に追いやっていったという流域特性をよく考えなくてはならないという印象は持ちました。前田大臣会見要旨 質疑応答 於:12/2 国土交通省会見室
と、国土交通省は、それなりに検証、議論した上で、八ツ場ダム本体工事継続の判断をしたものと思われる。
前田国交相は、22日夜に建設予定地である群馬県長野原町を訪れ、大沢正明知事や地元の首長、住民ら約50人と面会し、これまでの混乱の謝罪と建設継続の方針を報告したのだけれど、出席者から拍手が湧き上がったというから、地元は建設継続方針に安心したに違いない。ただ、同時に「民主党だから、どうなるか分からない」と不安視する声も根強くあるようで、民主党の罪深さを感じずにはいられない。
また、埼玉県の上田知事も、八ツ場ダム建設継続について、「(事業凍結から)この2年4カ月、先の見えない生活を送っていた人々が安心して正月を迎えられる」と述べ、前田国交相の決断を評価する一方、最後まで建設中止を主張していた前原政調会長について、「子供のケンカだね。組織人としておよそ失格」と厳しく非難している。
更に、埼玉県議会の「八ッ場ダム建設事業の推進を求める県議会議員連盟」は、12月22日に行われた総会で、ダムの早期完成を求める緊急決議を全会一致で可決し、一刻も早くダム本体工事に着手することと、予算を集中投下し、計画通り平成27年度までに完成させる、の2点を政府に求めることとしている。
さて、その"子供のケンカ"と酷評された前原氏はというと、「本体工事に予算をつけてくるということになると、我々としては国交省の予算そのものを認めることができない」と、恫喝にも似た発言をして、工事再開を牽制していたのだけれど、前田国交相は再開を決断した。
22日夕方に国会内で行われた民主党の国交部門会議では、「これでは与党は何なんだといわれる」などと国交省批判が相次いだそうなのだけれど、"党内の政策を纏めることができない政調会長殿"とて無傷ではいられない。
前原氏は20日の記者会見で「国土交通省から明確な説明がない限り、党として着工は認められない」として、単に国交相が決めることではなく、政治的判断を要するテーマだと述べているのだけれど、政調会長なのだから、ふんぞり返って国交省が説明に来るのを待っていないで、自分からアプローチして調整をしたのか。
少なくとも、国交省は八ッ場ダム建設について、省内で検討して報告書を提出し、それについて有識者会議で内容を確認するという手順を踏んでいるのだから、その政策の中身について理解・吟味した上で調整するのが"政務調査会長"の仕事ではないのか。もしも、前原氏が国交相の検証結果に疑問があるのなら、その箇所と理由についてきちんと説明する必要がある。
結局、前原氏は、調整することができず、藤村官房長官に直談判しているのだけれど、藤村官房長官が裁定案を出そうが、担当大臣の判断に一任しようが、前原氏が八ッ場ダムを自分で捌けなかったことには変わりない。
威勢よく、国交省の予算を認めないと言ってみたものの、国交省は、建設再開を決め、予算を計上した。前原氏はその横面を張り倒された。
八ッ場ダム建設予算については、23日の政府・民主三役会議、24日の閣議を通して最終判断されるのだけれど、もしも予算が了承されれば、前原氏の"口だけ番長"の二つ名は不動のものとなるだろう。
前原氏は野田首相の次の首相を狙っていると、まま言われることもあるのだけれど、ここまで党内を纏める力がないとなると、党内の支持や発言力も低下して、次の首相の座は厳しくなるのではないかと思う。
石原慎太郎都知事は、22日の記者会見で、前原氏にこんな厳しい言葉を投げかけている。
「何様なんだよ、あの人はいったい。彼一人が反対するんだったら、政調会長を辞任せざるを得ないだろう。ちょっとのぼせてるんじゃないですか」石原慎太郎都知事
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八ツ場ダム建設再開表明 国交相、地元町長にも伝達 2011.12.22 19:17
政府は22日、政権交代後に中止を表明した八ツ場ダム(群馬県)の建設再開を決めた。前田武志国土交通相が記者会見で、来年度予算案にダム本体工事費を計上することを明言。同日夜には建設予定地のある同県長野原町でこれまでの混乱を謝罪した。
建設中止は民主党が2009年の衆院選でマニフェスト(政権公約)に掲げており、相次ぐ公約の見直しに党内外から厳しい目が向けられそうだ。
首相もメンバーの政府・民主三役会議が23日午後に開かれ、建設再開を最終決定する見通しだ。
前田氏は会見で、「公約通りの結果が得られなかったのは残念だが、苦渋の決断をした」と強調。その上で再開の理由として、「継続が妥当」とした国交省関東地方整備局の検証が適切だと同省有識者会議が認めたことや、ダム下流に人口が集積する利根川水系の治水の重要性、流域6都県の知事らの建設要望などを考慮したと説明した。
URL:http://sankei.jp.msn.com/politics/news/111222/stt11122218190010-n1.htm
「言うだけ」前原氏、メンツ丸つぶれ 2011.12.23 00:17
国土交通省が22日、八ツ場ダム(群馬県)の本体工事再開を発表したことで、工事中止を訴えてきた民主党の前原誠司政調会長は完全にメンツを潰された。前原氏はなおも「最高意思決定機関である政府・民主三役会議がどのような決断をするかにかかっている」と“逆転裁定”に望みをかけるが、これまでにも数々の「言うだけ番長」ぶりを指摘されてきた政調会長。進退も含めた厳しい決断を迫られそうだ。(杉本康士)
22日昼、前原氏は“勝利”を確信していた。
「本体工事に予算がつけば、国交省の予算そのものを認めることができない」
首相官邸で藤村修官房長官と会談した前原氏は、記者団にこう言い切った。
藤村氏からは(1)利根川水系の河川整備計画を早急に策定(2)建設中止で影響を受ける住民の生活再建を支援する法律の次期通常国会への提出を目指す-との「官房長官裁定」を示された。前原氏は「これではただちに本体工事を再開できない」と踏んだのだ。
しかし藤村氏はその後、工事再開の可否を判断するのは国交省だとして調整役を降りた。前田武志国交相も当初方針通り工事再開を決断した。前原氏の“勝利宣言”は早合点だった。
23日の政府・民主三役会議での逆転にいちるの望みをかける前原氏だが、そこでも自身の主張が通るような状況ではない。
22日夕に国会内で行われた党国交部門会議。「これでは与党は何なんだといわれる」などと国交省批判が相次いだが、その不満の矛先は今後、「頼りない政調会長」に向けられる可能性が高い。
「前原さんの発言について、言ったことで実現しないものもあるなという評価がありまして…」
22日午後、日本記者クラブで講演した前原氏にこんな質問が飛んだ。
前原氏は「某産経新聞だと思うが、それを言ったのは」と述べ、自分の言ったことが実はいかに実現していたか力説したが、その舌も乾かぬうちに、八ツ場ダム問題も「言行不一致」となった。党の政策責任者としては致命的な失態だ。
八ツ場ダムの建設再開を求めてきた東京都の石原慎太郎知事は22日の記者会見で、前原氏にこんな厳しい言葉を投げかけた。
「何様なんだよ、あの人はいったい。彼一人が反対するんだったら、政調会長を辞任せざるを得ないだろう。ちょっとのぼせてるんじゃないですか」
URL:http://sankei.jp.msn.com/politics/news/111223/stt11122300210000-n1.htm
この記事へのコメント
almanos
ちび・むぎ・みみ・はな
> 上で、八ツ場ダム本体工事継続の判断を
> したものと思われる。
何だろうね, 財テクOといい, ルーピーHといい,
ヒトデナシKといい, 増税Nといい, 口だけMといい,
挙げていったら, 前田国交相がまるで人徳者
の様に見えてくるではないか. 結局は嘘付党
に迷った一人なのに.
それにしても, 初言はないのではなかろうか.
昔はそう考えていたが, 嘘付党のゴタゴタと,
マスコミの偏向振りを嫌と言うほど見せられれば,
自民党政権時代には有意性判定も, アセスメント
も, 住民への周知もしっかりと行なっていたと
判断せざるを得ない.
だから, 最初に戻ったと言うことは,
「それなり」ではないのだろう.
過去の政治を振り返れば, 見識のある政治家が
公共心ある官僚とともに日本の明日のために
努力していたのに, 苦労知らずの分からず屋が
どんどんと毀損していったことが良く分かった.
良い人も多いことは承知しているが, 全体として,
全学連世代には早く引退して欲しいと思う.
口だけH氏は若いのだろうが, 全学連世代の
非論理世界に惑わさ