朝人69

 
12月19日、野田首相は、金正日総書記の死亡情報を受け、予定していたJR新橋駅前での街頭演説を急遽中止した。

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1.危機に対する感度

もちろん、官邸に対策室を設置して、政府の安全保障会議で対応を検討することは、当然の措置で、街頭演説などやっている場合でないことは自明のことなのだけれど、問題視されているのは、北朝鮮で重大な事態が起こったかもしれないと予め分かっていたにも関わらず、街頭演説に向かった野田首相の対応。

北朝鮮は19日午前の段階で、特別放送を正午から行うと発表していたのだけれど、 外務省は北朝鮮の重大放送の内容に関し米国などと連絡を取り合っていて、実際、訪米中の玄葉外相には、外務省から金正日の死去も想定した報告を受けていた。

また、内閣情報調査室も、19日午前10時8分に「正午から特別放送がある」とのニュースを官邸、関係省庁に配布。同39分には、過去の「特別放送」と「重大放送」の内容を記した一覧表を官邸の首相秘書官室に送付したという。

その資料には、「特別」と銘打つ放送は94年の金日成主席死去以来であることが明示されており、内調幹部は「特別放送があるとのニュースは秘書官が首相に報告したと聞いている」と指摘している。

だけど、資料送付から、金正日の死去放送までの間、首相秘書官室からは何の問い合わせもなく、公明党の北朝鮮問題対策本部での会合で、内閣官房幹部は特別放送が94年以来との認識があったのかを公明党幹部に問われ、「知らなかった」と答えているから、北朝鮮の「特別」を官邸は左程、特別視していなかったことになる。

野田首相は、11時59分に、新橋での街頭演説に向かうため、秘書官に「遺漏なきように」と言い残して官邸を出発したのだけれど、12時03分に、金正日の死去を首相に連絡。同05分には、藤村官房長官からも「戻ってください」との電話を受け、街頭演説を取りやめ、同9分に官邸に戻っている。

筆者は、内調から資料が送られてきた時点で、事の重大さを認識して、街頭演説など、とっととキャンセルして必要な措置を取るのが普通ではないかと思うのだけれど、野田首相は、そうしないどころか、何の問い合わせもしていない。

更には、官邸を出発したあと、金正日死去の報を秘書官から受けても動かず、藤村官房長官から戻ってくれと連絡を受けてからようやく官邸に戻っている。

こうしたことを見ると、野田首相は危機に関する感度が鈍いのではないかとさえ思えてしまう。内調から、特別放送が94年以来という情報を得てから、金正日の死去が放送されるまでの一時間半。官邸は一体何をやっていたのか。

今回は放送だったから、まだ良かったけれど、これがテポドンの発射だったら、どうするのか。テポドンが日本に向けて発射されたら、10分やそこらで着弾する。一時間半もあったら、官邸なんか黒焦げになる。

まぁ、テポドンであれば、発射前に液体燃料を注入しなければならないから、数日前から発射の兆候をキャッチできるけれど、日本を狙う程度であれば、射程約1000~1300kmのノドンで十分間に合う。

ノドンが使用する燃料の非対称ジメチルヒドラジンは、毒性が高いもの常温での長期保存が可能で、酸化剤の赤煙硝酸も、抑制剤を添加することで、それぞれ別の貯蔵タンクに予め充填しておけることから、直ぐに発射体制が取れる可能性がある。

だから、やっぱり、こうした東アジアの不安定要素が取り除かれていない以上、日本の首相には、危機に対する感度は高くあるべきだと思う。




2.北朝鮮の暴発と陽動

そして、午後1時から行われた、政府の安全保障会議では、山岡国家公安委員長が政務のため地元の栃木県に戻っていて、会議に遅刻している。それも、山岡氏に事前に特別放送が行われるとの情報が届いていなかったらしく、官邸は事務方の連絡ミスのせいにしているけれど、ミサイルに黒焦げにされてしまってから、事務方のせいにしてもどうにもならない。最終の権限を持つ官邸はそれも含めて責任を持つ必要がある。

実際、金正日死去放送のあった、19日の午前8時台と10時以降に、北朝鮮は日本海にむけて弾道ミサイルを少なくとも2度発射している。ミサイルはその飛行形態の分析から 「スカッド」又は「ノドン」と見られている。

このミサイル発射に関しては、その兆候を数日前から把握していたそうなのだけれど、折角の情報も生かすことができなければ意味がない。

昨日のエントリー「金正日死去」で、韓国政府系のシンクタンク「統一研究院」は、金正日の死後に権力の空白が生まれた場合、食糧不足や汚職が加速し、デモや暴動が起こる恐れがあり、それを抑えるために、軍が出動して武力行使するか、国民の不満を国外に向けさせるため、朝鮮半島で局地戦を起こす可能性があると指摘していることに触れたけれど、もしも、朝鮮半島で局地戦が起こったとしたら、日本の介入及び後方支援を"させない"ために、日本及び日本近海にミサイルを撃ち込んで陽動する可能性もあると思う。

東日本大震災の救援活動と、福島原発事故に対する対応と混乱をみると、たとえば、柏崎や敦賀、松江といった、日本海側の原発のすぐ近くの沖合にでもノドンを撃ち込めば、日本は大パニックになって、何も出来なくなる可能性があるし、日本の後方支援が受けられない状態では、果たして、在日・在韓米軍がどこまで動けるか分からない。

もちろんアメリカ軍も空爆くらいはやれると思うけれど、北朝鮮軍が韓国の市街地に入ってゲリラ戦をやってきたら、韓国の市街地を空爆するわけにもいかないから、対応に苦慮することが予想される。

金正恩氏をめぐる北朝鮮メディアの一連の報道では、核保有国となったことなど軍事面での金総書記の業績を強調し、軍重視の「先軍政治」の継続を訴える論調が目立っているそうで、金正恩氏の後継体制も権力基盤を軍に置いた統治体制を敷いて、強硬路線は維持されるとみられている。

独裁政権では、その権力を維持するために、独裁者の偶像化をよくやるものだけれど、12月19日、北朝鮮の朝鮮中央通信は金正恩氏について「傑出した思想理論家、不世出の統帥者だ」と称える記事を配信し、早くも、後継体制を固めるための金正恩氏の偶像化を始めている。

過去には、金正日も、三歳のとき、銃で二十発二十中を達成したとか、五歳から漢詩を嗜み、父親の創った漢詩を書き写して父を喜ばせたとか、生まれて初めてのゴルフラウンドで、11回のホールインワンを含む38アンダーの世界記録を樹立したとか、まるで、金正日が"超人"であるかのように偶像化されていた。

ネットなどの一部では、過去の独裁者が死去した年齢は、不思議と69歳なのだと指摘されているけれど、確かに、サダム・フセインもカダフィもポルポトも、そして金正日も69歳で亡くなっている。まぁただの偶然だとは思うけれど、偶像化された"超人"には、69(ろっく)が鬼門なのかもしれない。




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この記事へのコメント

  • 白なまず

    >偶像化された"超人"には、69(ろっく)が鬼門なのかもしれない。
    まだまだ「いろは」の時期です。2010年は「い」2011年は「ろ」です。
    69の鬼門とは=♋=☯=ふ=ロ=②
    ①②③④、、、ひ、ふ、み、よ、、、イロハ、、。⨀☯♵⨁
    2010、11、12、13です。
    2012=♵=③=参いる年です。参が道と申して、、、

    ひふみ神示 第21巻 空の巻 第八帖
     衣類、食物に困った時は竜宮の音秘(オトヒメ)様にお願ひ申せよ。五柱の生神様にお願ひ申せば災難のがらせて下さるぞ、ゆわ、あれ、地震、風、雨、の神様なり、いろはに泣く時来るぞ、いろは四十八ぞ、四十九ぞ。神示はその時の心にとりて違はん、磨けただけにとれて違はんのであるから、我の心通りにとれるのであるから、同じ神示が同じ神示でないのざぞ。悪の世が廻りて来た時には、悪の御用する身魂をつくりておかねば、善では動きとれんのざぞ、悪も元ただせば善であるぞ、その働きの御用が悪であるぞ、御苦労の御役であるから、悪憎むでないぞ、憎むと善でなくなるぞ、天地にごりて来
    2015年08月10日 15:26
  • とおる

    菅首相も原発事故があった時に、SPEEDI情報が官邸に届いていたにも関わらず「知らなかった」。
    野田首相(菅内閣の財務相)も、北朝鮮の重大情報が官邸に届いていても、「知らなかった」。
    小沢代表が「民主党には政権担当能力が無い」と言いましたが、日本国民には「政権選択能力が無い」ということが、またしても分かってしまったようです。
    2015年08月10日 15:26
  • ちび・むぎ・みみ・はな

    嘘付党の個々が如何に素人かを如実に表す出来事.
    嘘付党政治家は自分の事ばかり考えているが,
    秘書を含む周囲のオツムもあっちを向いている.
    官僚は証拠作りモードに既に入っているのだろう.
    通常なら, 事の重要性を強調したに違いない.

    腹が立つのは, 経済会のトップを含む全学連世代
    がこれほど劣った連中に一度は期待したこと.
    生死がかる苦労をせずに偉くなったためか,
    経済界トップは物事を知らないのだろう.

    自民党首脳部は嘘付党政権の正当性を(意識上)
    否定してかからなければならない. 総裁!
    2015年08月10日 15:26

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