12月19日、北朝鮮の朝鮮中央テレビは特別番組で、金正日総書記が17日に死去したと伝えた。享年69歳。
金正日総書記は、午前8時半、現地指導に向かう列車の中で疲労で倒れ、そのまま社内で亡くなったと伝えている。金総書記の死亡の翌18日には、解剖が行われ、「死因は心筋梗塞」と明確に発表していることから、ブラフではなく本当に死去したと見ていいと思われる。
葬儀は28日に平壌市内で行われ、29日までは喪に服するという。
金正日死去に伴い、後継は三男の金正恩中央軍事委員会副委員長に決定したと朝鮮中央通信は報じており、葬儀委員会の名簿でも、正恩氏は、その筆頭に名を連ねているのだけれど、まだ、28歳と若いうえに、後継作業も十分進んではいないのが正直なところ。
北朝鮮関係筋などによると、正恩氏はジュネーブで学んだ後、金日成軍事総合大学に籍を置いたいたけれど、専ら、個人教授形式で学習したとされ、北朝鮮の他の学生とは接触しなかったようで、人脈や権力基盤の弱さが指摘されている。
したがって、正恩氏への権力移行には、まだ時間がかかると見られ、それまで北朝鮮国内の混乱が加速するという観測もある。
アメリカのクリストファー・ヒル元東アジア太平洋担当国務次官補は、英BBCに出演し、「正恩氏は、現時点ではまだ後継の準備ができていないのではないか。軍は、正恩氏に注文を付けたいことが沢山ある。正日氏に気に入られて復権した、義理の弟の張成沢(チャン・ソンテク)氏が、当分は大きな役割を果たすことになるだろう。だが、現時点で誰が本当のリーダーシップを持つかは、はっきりしない。正恩氏が本当の後継者だと認識されるまでには、あと数年かかるのではないか」と述べている。
すると、しばらくは、この張成沢氏が、正恩氏の後見役となって権力を握るのかといえば、必ずしもそうは言えないようだ。
2010年11月に、軍のナンバー2だった趙明禄氏が死去した時の国会葬儀委員会の名簿では、張氏の序列は22位で、正恩氏は2位だった。今回の名簿では、正恩氏の序列は1位となったものの、張成沢氏の序列は19位で、ほとんど変わっていないから、北朝鮮内部での立場はそれほど大きくはなっていないものと思われる。
韓国政府系のシンクタンクである「統一研究院」(KINU)は、今後起こりうるシナリオとして、次の3つを挙げている。
(1)正恩氏が権力を継承して世襲
(2)軍部が中心の集団指導体制
(3)軍から新指導者が登場する
そして、金正日の死後に権力の空白が生まれた場合、食糧不足や汚職が加速する可能性があり、デモや暴動が起こる恐れもあるとしている。その際、軍が出動して武力行使し、流血の事態を招くか、又は、国民の不満を国外に向けさせるため、朝鮮半島で局地戦を起こすといった可能性があると指摘している。
また、韓国の北朝鮮研究者である金永煥氏は、最近、北朝鮮の世襲問題について、その可能性が低い理由として次の5つを挙げている。
(1)金正日総書記のリーダーシップは衰えが見え始め、幹部の世代交代もタイミングを逸した。息子金正恩氏に強い指導力の力量はみえない。金総書記が再び強力な指導力を取り戻す可能性も低い。
(2)金総書記の世襲はパルチザン世代が支えた。だが金正恩氏を支える人材は老幹部しかいない。老幹部は経験もカリスマもない正恩氏に真の忠誠心など持ちえない。
(3)金正恩氏は民心を全く理解しない環境で育った。幼いころは家庭教師、十代はスイスで過ごした。金日成軍事総合大学では軍人エリートとだけ接した。そのような正恩氏に党幹部の人心をつかむ能力は育まれていない。
(4)社会主義を標榜する北朝鮮で3代世襲への共感を得ることは、もともと根本的に矛盾がある。現在は「当然」といった雰囲気のなかで進んでいる世襲作業だが、中国ではすでにインターネットなどで北朝鮮の世襲批判は始まっている。いずれこうした批判は北朝鮮でも顕在化するだろう。
(5)父子の間で権力の葛藤が起きる可能性がある。幹部の野心家が父子を引き裂く可能性もあるし、金総書記が死亡後、野心家が一気に正恩氏を攻撃する可能性もある。
とまぁ、金永煥氏は正恩氏が、北朝鮮幹部からまだ十分な忠誠心を得ていないとして、「われわれは金正日がなぜ息子を後継者に選んだかを分析してきた。その結果、世襲の成功という可能性は10%以下、当面維持が20-30%、『致命的な危機に陥る』が60-70%という結論となったのだ」と述べている。
それがクーデターによるものかというと、金永煥氏は、北朝鮮の高級軍人は「自発的な忠誠心」はすでに失っているものの、さりとて「反乱軍」を組織する意欲はないのが実情なのだと述べているから、クーデターの線は薄いかもしれないけれど、金永煥氏は、北朝鮮の集団指導体制は現実的には困難であり、金正日の死後、北朝鮮の体制崩壊は数カ月といった短い期間で起きるとしている。そして、その後北朝鮮は中国に寄り添うだろうとも。
その中国は中国で、正恩氏を北朝鮮の後継者として迎えるには慎重な意見がある。
中国軍の動向に詳しい北京の中国外交筋によれは、中国人民解放軍の一部には軍事的に挑発的は行動を起こしかねない金正恩氏よりも、金総書記の長男の金正男氏のほうが後継者にふさわしいとの見方があり、もしも、今後、正恩氏の軍事的挑発行為などで朝鮮半島情勢が悪化して中国にも大きな影響を与えかねないと判断すれば、中国指導部は、正恩氏に代わって、正男氏を担ぎ出す可能性も否定できないと見ているようだ。
早速、中国は難民の流入や不測の事態の発生に備えるために、北朝鮮との国境地帯に計約2千人規模の部隊を増派し、更に、瀋陽と済南の両軍区から計3万人が増派される予定だという。
国境を越えて難民がなだれ込んでくることを、許さない構えを取りつつある。要するに、これから北朝鮮国内が混乱する可能性があるとみているということ。
12月10日、日本政府は、中国の求めに応じて、脱北者に対して「公館外から公館に脱北者を連れ込まない」との誓約書を提出していたことが発覚したけれど、これさえも、今回の金正日死去を中国が予測しての先手だったとしたら・・・。
結果として、既に中国は、北は中朝国境線を封じ、南は日本に対して、脱北者を受け入れないように手を回すことで、北朝鮮を封鎖しつつある。韓国も警戒レベルを引き上げるだろう。
※尤も、北朝鮮軍自身も国境封鎖を始めたようだ。
もしも、今の時点で、北朝鮮で内乱が発生すれば、権力移行が十分でない正恩氏では捌ききれない可能性がある。もしかしたら、中国はそれを待っているのではないか。
たとえば、北朝鮮の内乱が激しくなれば、北朝鮮内部から中国に対して支援要請することだって十分考えられる。もしそうなれば、中国は、これ幸いと中国軍を治安維持の名目で北朝鮮に侵入させて、正恩氏では北朝鮮を安定させることは出来ないとして排斥し、金正男氏を後継者に立てての傀儡政権を樹立させるとか。
いよいよ、動乱の時代が近づいてきているような気がしてならない。
←人気ブログランキングへ
この記事へのコメント
白なまず
釈尊は、『寿量品』において、
「五百千万億那由他(なゆた)阿僧祇(あそぎ)もの三千大千世界(さんぜんだいせんせかい)を擦(す)って塵(ちり)にし、この塵を東方に五百千万億那由他阿僧祇の国土を過ぎるごとに一粒ずつ落としてことごとく尽くし、その過ぎ去ったすべての三千大千世界を集めて微塵に砕き、その一塵を一劫(いちごう)としたものに過ぎること百千万億那由他阿僧祇劫の昔より成仏している」と明かした。この長い時間を五百塵点劫という。
almanos
ちび・むぎ・みみ・はな
とは思われないので, 支那対策が第一の問題.
実力は軍部. 従って, 軍部が馬鹿でない限りは,
金正恩を奉り上げて暫定政権を作り当座を凌ぐ
のではないか. 騒乱が起きれば支那の人民開放軍が
「開放」に来る可能性があり, 好ましくない.
取り敢えずは表面上は静穏にしておかなければ
米国や支那との交渉ができない. おかしな国では
あるが, アフリカの国々のような混乱を起こす
ほど劣った民族ではないと思う.