12月15日、自民、公明の両党は、「子ども手当」に代わる新手当の民主党案を拒否する考えを表明した。
1.3党合意を破る民主党
これは、平成24年度から実施される、児童手当法の改正に伴う子どものための現金給付について、その名称を「子どものための手当」にし、所得制限の対象である年収960万円を超える世帯に子供1人当たり5千円支給する案のこと。
民主党案での手当の支給は、制限所得以下の世帯に対する1万~1万5千円との2本立てになり、また名称も、省略すれば「子ども手当」になることから、先の衆院選でのマニフェストで謳っていた「子ども手当」が継続していると印象づける狙いがあると見られている。
だけど、これは、民主と自公とで交わされた、今年8月の3党合意に反している。
8月19日のエントリー「ビラと連立」でも触れたけれど、当時の3党合意では、ざっと次の点について合意されている。
1.実施時期:平成24年2月支給分から
2.所要額 :2.2~2.3兆円程度
3.支給額 :0-3歳 15000円(児童手当1万円)
3-12歳(第1、2子) 10000円(児童手当5千円)
3-12歳(第3子以降)15000円(児童手当1万円)
中学生 10000円(児童手当なし)
※扶養控除の廃止による減収に対する必要な措置を講ずる
4.所得制限:年収960万円程度とする
5.税制改正:扶養控除の有り方について、平成24年度税制改正までに検討する
6.法制上の措置:平成24年度以降の現金給付については、児童手当法に所要の改正を行う
とまぁ、基本は児童手当の復活。ところが、今回の民主党案は4の所得制限の合意を破り、かつ、手当の名称を「子どものための手当」として、省略すれば「子ども手当」と、3党合意では、児童手当の復活であるところを、あたかも、子ども手当の継続であるかのような名付け方をしている。
まぁ、3党合意文書の題名が「子どもに対する手当の制度のあり方について」となっていることを盾にとって、「子どものための手当」にしたんだと言い張ることもできなくはないけれど、いずれにせよ姑息。
民主党は関連法案を来年の通常国会に提出して、その後、実務者による修正協議を始めることを3党の政調会長間で確認したようなのだけれど、自分で合意を破っておいて、すんなりいく訳がない。
12月15日、自民党の谷垣総裁は記者会見で、手当の新名称について「児童手当が適当」とし、所得制限世帯への給付に関しては「自助を重んじる観点から扶養控除を復活すべきだ」と発言しているし、公明党の山口代表も会見で「所得制限を超えた世帯には東日本大震災復興に協力してもらうのが3党合意の基本精神だ。手当支給は趣旨から離れる」とし、名称は児童手当にすべきだと主張している。
自民と公明の反発について、単に報道だけを読むと、また野党が反対しているよ、なんて受け取ってしまうかもしれないけれど、3党合意の合意文書を踏まえれば、当たり前の話。自公両党は、「子どものための手当」との新名称案も受け入れない方針だそうだけれど、まぁ当然そうなるだろう。
民主党は、来年1月16日の党大会で採択する12年度の活動方針案の中で、次期衆院選の目標について「政権を継続して担うことが最大の課題」とし、「『常在戦場』の体制を早期に整備する」という内容になっているそうだけれど、たとえば、"日本の未来像を示して、国民への説明と理解を求める"とでも言うのなら兎も角、"政権維持が目的"としている時点でもう終わっている。
そんなに政権維持がしたいのなら、極端な話、選挙制度を廃止すればそれで達成できてしまう。勿論、今の日本では、そんなことはできないけれど、票を集めるためにバラマキをして歓心を買うことくらいはやろうと思えばできてしまう。穿った見方をすれば、「こども手当」の名称をなんとか残して、かつ、3党合意した所得制限を破ってまで、手当を支給するところなんて、国民に子どもをダシにしてばら撒くのか、とさえ思ってしまう。
2.カイと昭王と野田首相
野田首相は、首相官邸の公式サイトに新たなブログ「官邸かわら版」を創設し、内閣の仕事ぶりや自身の思いなどと掲載しているけれど、12月15日付の「まずは隗より始めなければ」の記事で、次のように述べている。
「≪前略≫…発足から100日を越え、新聞やTV、あるいは一般の方々から官邸に寄せられるご意見などの端々に、国民の皆さんが野田政権に対して向けておられる視線に厳しさが増していることを感じます。
私自身にも閣僚にも、ご期待に応えられていない部分があります。懸念や批判は真摯に受け止め、心を正し、改めるべき点はしっかりと改め、課題にひとつひとつ答えを出すことによって使命を果たしていくしかありません。
昨日、民主党に新たに「行政改革調査会」が発足し、私からも挨拶をしました。その場でも申し上げましたが、「まだまだ歳出削減と税外収入確保に取り組め!」というのが、国民の大多数の皆さんの共通した声なのではないだろうか、と私は受け止めています。
私は、22年度と23年度の予算編成にも、累次の補正予算にも、財務副大臣、財務大臣として関わってきました。
リーマンショック後、税収が大きく落ち込む中で、どうすればマニフェストの主要事項を実現できるのか。大震災後の巨額の復興予算にどうやって道筋を付けるのか。そうした厳しい課題が突き付けられましたが、責任ある政策運営を行うために、懸命に努力をしてきたつもりです。8つの特別会計の積立金や剰余金を苦労してかき集め、平成22年度には過去最大規模の10.6兆円の税外収入を作りました。
しかし、「それではまだまだ努力が足りない!」というのが国民の皆さんの声です。
特に、先の臨時国会では、復興財源の税外収入としても期待されていた郵政改革関連法案、臨時異例ではありますが国家公務員の給与を7.8%削減する法案について、残念ながら成立させられませんでした。前回も申し上げたとおり、年内にも引き続き与野党間の協議を続け、来年の通常国会の早い時期に成立を期します。
そして何よりも、「国会議員こそ、まずは隗より始めよ」です。議員定数削減の問題にも「力こぶ」を入れ、民主党がイニシアティブを取って、来年の通常国会の早い時期に成立を期していかなければなりません。
≪以下略≫首相官邸オフィシャルブログ 官邸かわら版 12/15付「まずは隗より始めなければ」より引用
と、内閣支持率の低下の影響もあるのか、国民からの厳しい声に答える決意を述べている。「まずは隗より始めよ」なんて、言葉は綺麗だけれど、国民にばら撒くことが"隗より始める"ことではないし、自ら合意を破って、信頼を落とすような党に、改革ができるのか。
中国の春秋戦国時代、十二列国のひとつ燕国の第2代国王カイは、宰相の子之に国政を任せっきりにして、表舞台から身を引いたのだけれど、絶大な権勢を掌握した子之により燕は数年で乱れ、騒乱状態となった。そこを、隣国の斉が付けこんで、侵攻し、燕は、一時滅亡状態となった。
その後、第2代国王カイの太子である平が子之を倒して、斉軍も撤退させ、太子平は即位して昭王となったのだけれど、「まず隗より始めよ」を行ったのは、この昭王であって、先代じゃない。
財務省の言いなりとも批判され、国民に説明もしないで、ステルスしている野田首相が、「隗より始める」のであれば、まず自身が"昭王"になる必要があるだろう。
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自公、民主案を拒否 子ども新手当、名称も
自民、公明両党は15日、「子ども手当」に代わる新手当で所得制限対象世帯にも月額5千円を給付する民主党案を拒否する考えを表明した。自民党は給付ではなく税の軽減措置で対応するよう要求。両党は「子どものための手当」との新名称案も受け入れない方針だ。
民主党は関連法案を来年の通常国会に提出する予定。3党政調会長は国会内で会談し、法案提出後に実務者による修正協議を始めることを確認したが、難航は必至だ。
自民党の谷垣禎一総裁は15日の記者会見で、手当の新名称について「児童手当が適当」と強調。所得制限世帯への給付に関しては「自助を重んじる観点から扶養控除を復活すべきだ」とした。
公明党の山口那津男代表も会見で「所得制限を超えた世帯には東日本大震災復興に協力してもらうのが3党合意の基本精神だ。手当支給は趣旨から離れる」と批判。名称は児童手当にすべきだと主張した。
3党は8月、子ども手当を廃止する代わりに児童手当を拡充して復活させ、夫婦と子ども2人の世帯で年収960万円程度から所得制限を導入することで合意した。
また3党政調会長会談で自公両党は、国家公務員給与削減の臨時特例法案をめぐり、両党の対案を受け入れるか回答するよう民主党に要求。自民党は、郵政改革法案を取り下げることも求めた。
農家への戸別所得補償制度については、2012年度予算案の提出後に協議する方針で一致した。
URL:http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp201112150175.html
民主党:来年度方針案 「政権継続が課題」
民主党が来年1月16日の党大会で採択する12年度の活動方針案が14日、明らかになった。
政権の厳しい状況を踏まえ、次期衆院選の目標について
「政権を継続して担うことが最大の課題」とするにとどめ、
「『常在戦場』の体制を早期に整備する」として危機感を強調する内容となっている。
方針案では、「国民からの厳しい叱咤(しった)を真摯(しんし)に受け止める」と反省。
党運営については「税と社会保障の一体改革」など野田政権の主要課題で党内議論が二分されていることを踏まえ、
「党内融和・一致結束」を柱に掲げた。【高橋恵子】
毎日新聞 2011年12月15日 東京朝刊
URL:http://mainichi.jp/select/seiji/archive/news/2011/12/15/20111215ddm005010061000c.html
この記事へのコメント
クマのプータロー
英明な昭王ですら、後継者選びに失敗したのですから、我々有権者は次の選挙に真剣に取り組む必要があります。其の選択によっては冗談抜きで日本が日本でなくなる可能性が高いです。自らの選択で終止符を打つ事にならないようにしたいものです。