次期FXはF35に決定

 
12月13日、政府は、航空自衛隊の次期主力戦闘機に、F35を選定する方針を固めた。

画像


16日の安全保障会議で正式決定し、2012年度予算案に4機分の取得費551億円を計上する。日本は2016、17年度にそれぞれ4機ずつ導入し、最終的に約40機を取得する予定。

これまで、このブログでは、2009年から次期FX選定やステルス機についてのエントリーをしてきたけれど、F35に関する記事もいくつかある。下記にリンクしているので、参照されたい。

F22とF35はガンダムとジムくらい違う  
F22はニュータイプ仕様 
F35を選ぶなら
武器輸出3原則の見直し発言について
F35とアンチステルス技術 

筆者としては、航続距離の短さや、スーパークルーズができないこと、ウェポンベイが小さいことなど、気になる点もなくはないけれど、国防上、アメリカとの共同作戦を行うことも踏まえ、アメリカ軍との相互運用性も選定に大きく寄与したのではないかと思われる。それでも、F35が性能通りの力を発揮してくれるのであれば、日本の防空能力は格段に上がることは間違いない。

ただ、F35の開発遅延や本当に実戦運用できるところまで持っていけるのかどうかという不安がなくもない。

12月になって、F35の開発計画担当のデービッド・ベンレット海軍中将は、軍事専門誌・AOLディフェンスのインタビューで、F35の金属疲労試験の結果、機体に多数の亀裂が生じる恐れが明らかになり、対策を講じられるよう、今後数年間は生産ペースを落とすよう提言している。

亀裂問題とは、金属疲労試験を行った結果、機体の部品の強度が8000時間の飛行時間に耐える基準を満たさず、亀裂が発生する可能性が高いことが分かったということで、これまでに実施した金属疲労試験ではF35Aで目標の20%、F35Bでは、わずか6%にとどまっているそうだ。これによって、2011年度の年間生産機数は当初計画の42機から30機に減少している。

ロッキード・マーチン社は12月8日に、日経新聞の取材に応じ「見つかった亀裂への対応はすでに進めており、日本に納入予定の2016年度までに一通りの問題点は対処できる」としているけれど、こんな問題が見つかった以上、直近の開発が更に遅れることはいうまでもない。



12月9日には、アメリカのデンプシー統合参謀本部議長が、機体に生じた多数の亀裂に加え、英国、イタリア、オランダなど欧州の共同開発国が受けた債務危機の影響で、調達計画がさらに遅れる可能性を示唆する発言をしているのだけれど、アメリカ国防総省の諮問機関「国防調達委員会(DAB)」は、F35の開発遅延に関する米国防関係者の相次ぐ問題点の指摘を受けたことで、来年1月の会合を開き、F35の開発を2年間延長する方針なのだという。

DABは、国防予算を管理するナン・マッカーディ法の規定で設置が義務付けられていて、連邦議会には当初予算比25%以上増額した計画を中止にできる権限がある。

開発延長が決まれば、F35の運用開始は、当初の2017年から19年以降にずれ込むことになるから、いくら亀裂問題が解決したとしても、日本が予定している2016年度からの導入は無理なのは当然として、もっと気になるのは、F35の開発費が膨らんで、F35さえも途中で開発中止となってしまうこと。

F35調達見送りの可能性」のエントリーでも触れたけれど、既に、オーストラリアはF35の早期購入を断念し、カナダも慎重姿勢に転じている。

更には、アメリカのゼネラル・エレクトリック社(GE)と、イギリスのロールス・ロイス社は、12月2日、「F35の機体の開発、生産スケジュールが不確実で、自費開発による利益確保に影響を及ぼしかねない」という理由で、F35の代替エンジン自費開発を断念すると発表している。

F-35のエンジンには2種類ある。ひとつはプラット・アンド・ホイットニー社が開発したF135エンジンで、推力18,100kgあまり。これは、同じくプラット・アンド・ホイットニー社が開発したF22のエンジンであるF119をベースに開発したもの。F119エンジンの推力は一基、15876~17690kgとされているから、単体ではF22より強力なエンジン。尤も、F22はF119エンジンを双発搭載しているから、トータルの推力ではF22がF35に勝る。

もうひとつは、GEとロールス・ロイス社が、F135の代替エンジンとして、共同開発していたF136エンジン。GEとロールスロイスはこの大体エンジンの開発を断念するということは、F135エンジンに何かあったときに、バックアップが無くなるということになるから、運用上不安を抱えることになる。

もしも、日本が、F35の共同開発に参加できていれば、もしかしたら、違っていたかもしれないけれど、武器輸出三原則の縛りがあってできなかった。

そろそろ日本もそうした縛りを解くことを考えて、F35の代替エンジンくらい国産で作れるくらいにまで、国防産業を立ち上げていくことを考える時期がきているのではないかと思う。




画像 ←人気ブログランキングへ

画像次期戦闘機はF35、政府決定へ 12年度予算で4機取得 2011年12月13日 09:57

 政府は13日、航空自衛隊の次期主力戦闘機(FX)に、米国主導で国際共同開発中の最新鋭ステルス戦闘機F35を選定する方針を固めた。16日に安全保障会議(議長・野田佳彦首相)で正式決定し、2012年度予算案に4機分の取得費を計上。最終的に約40機(2飛行隊分)を取得する。

 F35は候補の3機種のうち、レーダーに探知されにくいステルス性能を備えた唯一の次世代(第5世代)戦闘機で、最新のレーダーや僚機と情報共有する「データリンクシステム」を備えている。性能面で最有力視されたが、開発が遅れ、空自が求める16年度中の納入が不安視されていた。

URL:http://www.nnn.co.jp/knews/111213/20111213045.html

この記事へのコメント

  • ちび・むぎ・みみ・はな

    外圧で戦闘機の自主開発を止めたが, その結果,
    全てが米国頼みになった.
    軍事技術の自立化を進めるためには, まず,
    政治家が成長する必要がある.
    心ある日本国民が落胆しない政治を勇気を持って
    行なって欲しいもの.

    嘘付党の議員? ありゃ政治家とはちゃいまっせ,
    左翼利権屋集団.
    2015年08月10日 15:26

この記事へのトラックバック