特典付き復興国債

 
12月2日、財務省は来年1月から発行する個人向け復興国債の概要を発表した。

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今月5日から30日にかけて募集する、来年1月発行分の復興国債は、従来の個人向け国債と同じく、変動10年、固定5年、固定3年の3種類を設定。

3年物は固定金利で年利率0.18%、5年物は固定金利で年利率0.33%、10年物は変動金利で初回利率0.72%で半年ごとに実勢金利に応じて見直される。10年物と3年物は発行から1年経過後、5年物は発行から2年経過すれば中途換金可能。

財務省は今年度中に復興債を11兆5500億円発行する予定で、そのうち1万円から購入できる個人向け国債は、1兆5000億円販売するとしていて、購入者には安住財務相からの感謝状を贈るそうだ。

復興国債は、5日から、銀行や証券会社など金融機関の窓口で始まっっていて、大手銀行では今年9月に発売した通常の個人向け国債と比べて初日の販売額が2倍に達するなど好調な滑り出しだという。

中でも、三菱東京UFJ銀行では、初日の申込件数は9月の通常の個人向け国債発行時の4倍に達していて、小口の購入者が目立つというから、個人レベルで復興支援したいという人が多いのだろう。

更に、6日になって財務省は、この「個人向け復興国債」の新商品として、3年間持ち続けると残高に応じて記念金貨、銀貨をもらえる「復興応援国債」を来年3月に発売すると発表した。

個人向け国債に何某かの特典をつけるという意味では、2009年3月に自民党が景気対策の一つとして、「無利子国債」を提言したことがあるのだけれど、実施には到っていなかったから、今回の金貨や銀貨を貰える「復興応援国債」は初の特典付き国債ということになる。

2009年3月の「無利子国債」というのは、本来、国債を償還するときには利子がつくところを、利子がつかないかわりに、遺産相続税を免除するという案で、当時の麻生政権が、経済活性化のために打ち出していた。ところが、中川昭一財務相(当時)の辞任や解散総選挙で立ち消えになっていた。

次に「無利子国債」が話題に上ったのは2010年の民主党代表選の時で、小沢氏が経済立て直しのための財源対策のひとつとして提案した。このアイデアを出したのは海江田万里氏と言われている。

政府の立場から無利子国債を発行するメリットに何があるかというと、何といっても、利息を払わなくてよくなること。無利子国債が長期になればなるほど、政府にとってはお得になる。その代り、相続税収入が無くなるデメリットがある。

逆に、国債を買う立場の国民にとってみれば、無利子国債は、相続税を支払わなくてよくなる代わりに、利息もないから、双方比較してどっちが得かという話になる。

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専門家は、資産1億円以上を持つ高齢層は、無利子国債で相続税を免除したいと考えるのではないかと見込んでいて、東京三菱UFJ銀行・経済調査室の2009年4月のレポートによると、無利子国債の需要は、70歳以上かつ資産総額1億円以上の世帯とし、その資産合計の推定額である85.1兆円を潜在的な無利子国債の市場規模としている。そして、その中から無利子国債の購入に向かいやすい現金や預貯金等の合計額が17.5兆円であることから、実際には、数兆円規模の需要があるのではないかとしている。

また、そもそも相続税が云々されるのは、上述のとおり、億単位の資産を持つ金持ちが対象なのだから、無利子国債を発行しても、相続税免除の対象が一部に限られ、税の不公平感を生むのではないかという指摘もある。

過去には、フランスが、1952年にインドシナ戦争の戦費調達の時と、1958年のアルジェリア動乱時の自国防衛のために、それぞれ、相続税と贈与税の非課税特典をつけた「ピネー国債」と呼ばれる無利子国債を発行したことがあるのだけれど、相続の寸前に財産をピネー国債に替えて、相続後にピネー国債を売却して他の資産を購入する行動が横行したために、結局、1973年にピネー国債は、相続税非課税の特典が無いジスカール・ピネー債に強制的に借り換えさせたのち、廃止された経緯がある。だから、こうしたことにも留意しなくちゃいけない。

2010年9月に無利子国債のアイデアが出た時、菅改造内閣で経済産業相に就任した海江田氏は、無利子国債について前向きだったのだけれど、当時財務相だった野田氏は「国債発行・償還のルール変更が市場に与える影響を含めて検討しなければならない」と慎重な姿勢に終始していたし、藤井裕久前財務相も「相続税の公平感という意味からは、やはり一つの抵抗があるのは事実」と消極的だったから、財務省側としては、無利子国債はやりたくない腹なのではないかと思われる。

そういう観点からみると、今回の感謝状が貰える復興国債にしても、金貨銀貨が貰える復興国債にしても、なんとは無利子国債を発行せずに、国債を買って貰おうという苦肉の策なのかもしれない。

それでも、今後、値上がりが期待される金や銀を、貨幣にして、民間に流しておくのは選択としては、悪くはないと思うし、5日から販売されている復興国債の順調な滑り出しからみて、金貨・銀貨が貰える復興国債も、それなりに人気を集めると思う。

ひとつ蛇足ながら、感謝状が貰える復興国債についていえば、安住財務大臣の感謝状よりも、遥かに効果のある感謝状を出すという手はあるかもしれない。

まぁ、こんなことは不敬にあたるかもしれないけれど、たとえば、復興国債を購入した人に、今上陛下の感謝状が送られるとしたらどうか。きっと、みんなこぞって復興国債を購入するだろう。

そうすれば、国家元首である天皇陛下と国民が一体となって、復興にあたる何よりの象徴になると思うし、世界に向けての力強いメッセージになるのではないかと思う。

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画像個人向け復興債、購入者には財務相から感謝状

 財務省は2日、1月から復興債として発行する個人向け国債の概要を発表した。

 1月発行分は今月5日~30日に募集する。従来の個人向け国債と同様に変動10年、固定5年、固定3年の3種類があり、金融機関の窓口などで購入できる。変動10年の場合、初回の利率は年率0・72%となった。

 財務省は今年度中に復興債を11兆5500億円発行し、うち1万円から購入できる個人向け国債として1兆5000億円販売する計画だ。

 購入者には安住財務相からの感謝状を贈る。また、安住氏は2日の閣議後記者会見で、自身も復興債を100万円分購入する考えを明らかにした。

(2011年12月2日22時30分 読売新聞)


URL:http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20111202-OYT1T00938.htm



画像「大臣の感謝状」か「金貨・銀貨」か 財務省がまた特典付き復興国債 2011.12.6 12:50

 あなたが欲しいのは、安住大臣の感謝状ですか、金貨・銀貨ですか? 財務省は6日、東日本大震災の復興財源にあてる個人向け復興国債で、記念に金貨・銀貨がもらえる新タイプの商品を来年3月から発売すると発表した。同省はこの5日、安住淳財務相の感謝状がもらえる特典付き復興国債を発売したばかり。さて、人気のほどは-。

 新しく発売される復興国債の名称は「復興応援国債」。償還年数は10年で、利率は初めの3年間、0・05%の固定金利となる。

 金貨・銀貨は平成27年度に限定発行され、購入から3年間換金しなければ記念の金貨・銀貨がもらえる仕組み。国債1000万円分の保有で1万円金貨を1枚、国債100万円分の保有で千円銀貨を1枚もらえる。デザインは今後公募。復興応援国債の購入者以外にも抽選で販売する。

 金貨・銀貨は流通市場で値上がりする可能性もあるため、財務省では、幅広い個人投資家に復興国債の購入を促す記念品になるとみている。

 5日から発売した安住大臣の感謝状付きの個人向け復興国債は、半年ごとに利率を見直す変動金利型の10年物と、償還まで利率が変わらない固定金利型の5年物、3年物の3種類。今回とは性格の異なる商品となっている。

URL:http://www.sankeibiz.jp/macro/news/111206/mca1112061251009-n1.htm

この記事へのコメント

  • ちび・むぎ・みみ・はな

    復興国債は,
    銀行に当たり前に引き受けさせれば良いものを.
    財務省は早く償還できる国債に御執心.
    麻生氏も財務省懷柔に苦労した.

    復興が自然との戦いなら, 復興国債は日露戦争
    の時の国債並の長期償還期間を設定すれば良い.

    国民に買わせる発想は理解できない.
    GDPに寄与するのか?
    2015年08月10日 15:26
  • せみまる

    国債購入者に天皇が感謝状をおくる。なんということか。それは、天皇の政治利用である。政府の借金、政府の経済行為になぜ天皇が出てくるのか。感謝とは、天皇が国民に感謝するということか。そして、一体何を感謝するのか。天皇を政治利用するのは明治時代では薩長の官僚であり、戦前の昭和では官僚と軍人であった。天皇は、政府の手先でもないし、政治それ自体になってはならない。
    2015年08月10日 15:26
  • settsua

    すばらしいご意見です。そのような感状がいただけるなら自分もきっと購入しますね。今の大臣の感状ではむしろ購入する気を損ないます。
    2015年08月10日 15:26
  • sdi

    税制面で優遇する建設国債発行を言い出したのは、故田中角栄がだったかな?
    その時は、有利子債で利子に掛かる税金をチャラにする、と言うもの。
    当然、大蔵省は無視。
    2015年08月10日 15:26

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