米中プレ冷戦時代の幕開け

 
時代が大きく動き始めています。

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1.56年ぶりのミャンマー訪問

11月30日、アメリカのクリントン国務長官が、56年ぶりにミャンマーを訪問した。

12月1日に首都ネピドーでテインセイン大統領と会談した後、最大都市ヤンゴンで、12月2日に民主化運動指導者であるアウンサンスーチーさんと会談する。

ネピドーは、ヤンゴンから北に約320キロ離れたミャンマー中部の高原地帯なのだけれど、2006年10月、ヤンゴンから突然遷都され首都となった。ネピドー(Naypyidaw)という名はこの時つけられた。ネピドーは、ビルマ語で"王の都"を意味する。

遷都当時から、ネピドーには、外国人は立ち入り禁止だったため、「秘密首都」と話題になったことがある。

ミャンマー政府によれば遷都した理由は、「現在の首都ヤンゴンよりも国土の中心に近く、国民のニーズに応えるためにはより適切な位置にある」とのことだけれど、巷では、「軍事政権の指導者が占星術で決めた」とか、「首都防衛を強化するため」といった憶測が流れたりしていたのだけれど、タイ・チュラロンコン大学アジア研究所・ポンピモン研究員は「首都移転は安全上の理由からでしょう。国の安全保障ではなく、体制を守るためです」という見方をしている。

当時はミャンマー政府は内戦や革命運動が沸き起こるのを恐れていたから、海に近く、高い教育を受けた国民や海外留学からの帰国組が多く住むヤンゴンに首都を置くのは具合が悪いという判断があったのかもしれない。

2011年3月30日に、テイン・セインを首班とする新政権が発足してからというもの、民主化の流れを加速させてきていて、アメリカ国務長官のミャンマー訪問は、両国の関係改善のみならず、ミャンマーの本格的な国際社会復帰へ向けた第一歩となると期待されている。



クリントン国務長官は、ミャンマー政府に対して、10月に200人余りが釈放されたものの、いまなお数百人に上るとみられる政治犯すべての釈放や、少数民族勢力との和解を求め、更には、軍人や与党議員が議席の大半を占める今の議会のシステムを改革するよう求める方針だという。

議会システムの改革というのは、昨年、ミャンマーで行われた総選挙において、アウン・サン・スー・チーさんが率いるミャンマーの旧最大野党である国民民主連盟(NLD)が、受刑者らの党員資格を認めない政党登録法は不公正だとして、総選挙をボイコットしたのだけれど、それを理由に政府から、NLDを解党させられていた。

ところが、民主化政策を打ち出す、テイン・セイン新政権は今年の11月18日に、この政党登録法を改正して、この規定を削除したことを受け、NLDは政党として再登録して、年内にも実施予定の国会補選に参加することを決めたという動きがある。

また、テイン・セイン新政権は軍事政権時代には認められていなかった労働組合の結成とストライキの権利を認めた労働法を制定し、最近でも、これまで禁じられていた政治集会やデモ行進を制限付きながら認める法案を可決するなど、急速な民主化を進めている。

アメリカは、今回の会談を通じて民主化の進み具合を確かめ、経済制裁をしているミャンマーへの今後の対応を決めるとみられているけれど、大きくは、ミャンマーが国際社会に復帰する流れに入っていると言っていい。

こうなると、焦るのは中国。




2.米中プレ冷戦の時代に突入

ミャンマーの民主化と焦る中国」のエントリーでも触れたけれど、これまで中国は、中東から運ばれる原油をミャンマー西部の港を経由して中国国内へ運ぶパイプラインを建設したり、雲南省など国内の電力確保のためにミャンマーで発電所開発計画を進めていた。

そこへきて、このミャンマーの中国離れの動き。面白かろうはずはない。

11月30日、中国紙の環球時報は、社説で「米国は中国のアジアの仲間を一人ずつさらっていこうとする」とアメリカへの不快感を顕わにし、「ミャンマーの中国離れが進むことは、中国にとって重要な盟友を失うだけではなく、これまでの支援と投資が無駄になり、対アジア外交政策の全般の見直しが迫られるほど重要な意味を持つ」と結論づけている。

それはそうだろう。ミャンマーの民主化が進めば、中国は一段と自由主義圏に包囲される。しかも、御丁寧なことに、TPPも連動して進められているから、中国が受けるプレッシャーは相当なものだと推測される。



今年の9月12日、アメリカのクリントン長官は中東と中央アジアからアフガニスタン、パキスタンを経由してインドへ到る「新シルクロード構想」を打ち出しているけれど、これなんかは、麻生元総理の「自由と繁栄の弧」構想と軌を一にしているのは勿論のこと、実現すれば、中国包囲網がますます構築されることになる。

11月30日、アメリカ国務省の記者会見で、マーク・トナー副報道官は「中国とアメリカのミャンマーに対する影響力争いではないか」との質問に対して、「アメリカとミャンマーの接触は中国とは関係ない。ミャンマーの情勢についてアメリカは中国と協議してきた」と答えて、ミャンマーとの接触は中国へのあてつけではないと強調したそうだけれど、わざわざそう言わなければならないほど、バレてしまってる。

中国は、アメリカが中国を封じ込めようとしているとハッキリ自覚している。11月30日の人民日報で、「米国が中国を封じ込めようとするのは、アジアで中国が米国を上回る強国になることを阻止するためだ。米国の「新シルクロード構想」が実現した場合、中央アジアと南アジアにおける中国の安全保障情勢は一層厳しくなる。」と警戒を強めている。

いよいよ、米中プレ冷戦の幕開けを迎えたのかもしれない。




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画像ミャンマー大統領と会談=米国務長官、一層の改革直接要請

 【ネピドー時事】ミャンマーを訪問中のクリントン米国務長官は1日、首都ネピドーでテイン・セイン大統領と会談した。米国務長官の同国訪問は約57年ぶりで、テイン・セイン大統領が3月の就任以来、米高官と会うのは初めて。クリントン長官は大統領に対し、民主化への一層の取り組みを求めたもようだ。
 テイン・セイン大統領は会談の冒頭、「歴史的な訪問であり、両国関係の新たな一章となる。友好のための雰囲気をつくり出してくれたことに感謝する」と述べた。これに対しクリントン長官は「オバマ大統領も私も、あなた方の取った措置に勇気づけられた」と応じた。
 米政府はミャンマー政府に全政治犯の釈放や少数民族弾圧の中止を求めており、長官が改めて大統領に直接要請したとみられる。長官は大統領に先立ち、ワナ・マウン・ルウィン外相と会談。北朝鮮との軍事関係の深化について懸念を表明したもようだ。
 同日午後にはトゥラ・シュエ・マン下院議長らと会う予定。同日中にヤンゴンに向かい、2日午前に民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんと面談する。(2011/12/01-13:32)

URL:http://www.jiji.com/jc/c?g=int&rel=j7&k=2011120100080



画像米国務長官、ミャンマー訪問 中国「アジアの仲間をさらっていく」  2011.11.30 22:24

 【北京=矢板明夫】クリントン米国務長官のミャンマー訪問に対し、ミャンマーの長年の盟友、中国はいらだちと不満を覚えている。米国の影響拡大によりミャンマーの中国離れがますます加速することを警戒しているからだ。30日付の共産党機関紙、人民日報傘下の環球時報は社説で「米国は中国のアジアの仲間を一人ずつさらっていこうとする」と米国への不快感をあらわにしている。

 今年3月に民政移管されたミャンマーは、軍事政権時代に中国と蜜月関係を構築してきた。北朝鮮、パキスタンと並んで、中国の3大盟友の一角を占め、中国からは経済、インフラ建設、軍事など多くの分野で支援を受けてきた。ミャンマーが人権や民主化問題などで、国連など国際社会から批判にさらされたときも、かばってきたのは中国だった。

 一方、中国は、中東から運ばれる原油をミャンマー西部の港を経由して中国国内へ運ぶパイプラインを建設。雲南省など国内の電力確保のためにミャンマーで発電所開発計画を進めるなど、ミャンマーに対し絶対的な信頼を寄せていた。中国海軍の将来のアジア展開をにらみ、中国はミャンマーの港湾整備にも積極的に関わってきた。

 しかし、中国資本がミャンマー経済を牛耳るようになり、中国系住民の影響力が拡大するのにともない、ミャンマー国民の反中感情が高まったのも事実。中国が主導する一連の建設プロジェクトが環境破壊につながったとの批判もある。

 こうした状況を受け、ミャンマーの新政権は中国と距離を取るようになり、国際社会との融和を目指し始めた。

 ミャンマーの中国離れが進むことは、中国にとって重要な盟友を失うだけではなく、これまでの支援と投資が無駄になり、対アジア外交政策の全般の見直しが迫られるほど重要な意味を持つ。北京の政府系シンクタンクの研究者は「ミャンマーに裏切られた気持ちはあるが、今は米国とどこまで接近できるのか静観するしかない」と話す。

 クリントン長官訪問に先立つ11月28日、中国の習近平国家副主席は、訪中したミャンマー国防軍のミン・アウン・フライン総司令官と会談、軍事交流を深めることのほか、「中国はミャンマーの民族団結と経済発展を支持する」と語った。

 「民族団結を支持する」とはミャンマーの少数民族である中国系住民の武装勢力を支援しないとの意味が込められ、ミャンマーへの懐柔を始めたと受け取られている。

URL:http://sankei.jp.msn.com/world/news/111130/asi11113022280003-n1.htm



画像シルクロードを復興し、米国の封じ込めを打破

 悠久の昔からミャンマーは中国の同胞・兄弟だった。中国の戦略にとって極めて重要なのは、ミャンマーが南中国海とマラッカ海峡を避けて、中国南西部からインド洋へ直接抜ける近道であるということだ。昨年11月、ミャンマーの政局に変化が生じた。西側はこの機会を極力利用して、親中国のミャンマーを「中国路線」から引き離そうとしている。ミャンマーの新大統領は就任後間もなく、中国とのミッソン水力発電所協力プロジェクトを一方的に停止した。西側メディアは「テイン・セイン大統領がなぜこのような驚くべき決定をしたのか誰も知らない。背後で誰かが操っているのかも知れない」と報じた。クリントン米国務長官はこの決定を直ちに歓迎し、1カ月後には同国訪問を発表した。(文:李希光・清華大学国際伝播研究センター主任。「環球時報」掲載)

 これは米国の新アジア政策における重要な行動だ。イラクとアフガニスタンでの戦争終結後、米国は戦略の重心を中国周辺へシフトしている。標的は中国だ。

 今年9月12日、クリントン長官は中国を避け、中東と中央アジアからアフガニスタン、パキスタンを経由してインドへ到る「新シルクロード構想」を打ち出した。構想は「トルクメニスタンの石油・ガス田がパキスタンとインドの高まり続けるエネルギー需要を満たし、アフガニスタンとパキスタンに相当の貿易収入をもたらす。タジキスタンの綿花がインドで綿布になる。アフガニスタンの家具や果物がアスタナ、ムンバイ、そしてさらに遠く離れた場所で売られるようになる」としている。

 これと同時に、オバマ大統領は「環太平洋経済連携協定」(TPP)を始動した。このいわゆる「21世紀の貿易条約」は、完全な市場経済国ではないとの理由で世界最大の貿易国である中国を除外する一方で、自由市場として中国に遠く及ばないベトナムを引き入れている。オバマ大統領は来年夏以降、イラクとアフガニスタンの戦争終結で浮いた軍事費をアジア太平洋地域にまわすことも決定した。

 米国が中国を封じ込めようとするのは、アジアで中国が米国を上回る強国になることを阻止するためだ。米国は東では日韓に軍を駐留し、朝鮮問題を利用して中国を牽制。南東では、台湾問題を利用して中国を牽制。南中国海では中国と領土紛争を抱える国と絡み合って挑発を続けている。さらに南では、オーストラリアを「第二列島線」の重点としている。

 米国は中央アジア諸国やアフガニスタンへの軍の長期駐留により、中央アジアにおける中国の影響力拡大を防ぐとともに、中国西部に対する安全保障上の圧力を形成することができる。米国の「新シルクロード構想」が実現した場合、中央アジアと南アジアにおける中国の安全保障情勢は一層厳しくなる。

 中国は地政学戦略を見直すべきだ。例えば、中国は米軍とNATO軍がアフガニスタンから撤退した後、戦争に蹂躙され続けてきたこの隣国と戦略的パートナーシップを構築する意向を明確に示すべきだ。同時に、ワハーン回廊を開放し、アフガニスタンとの経済・貿易協力をカシュガル経済大特区に組み入れることを検討する。また、アフガニスタン、パキスタンと3国戦略協定を締結し、パミール地域3国グループを結成する。長期的には、中国はアフガニスタン、パキスタン、イラン、インド、中国の5カ国による対話枠組みと経済協力組織の構築を提唱し、歴史上のシルクロードを真に復興すべきだ。(編集NA)

 「人民網日本語版」2011年11月30日

URL:http://j.people.com.cn/94474/7660506.html



画像米国、「ミャンマーとの接触は中国と無関係」 2011-12-01 15:45:39

アメリカのクリントン国務長官が米国務長官としては約50年ぶりにミャンマーを訪問していますが、これにより引き起こされた様々な推測に対して、アメリカ国務省のマーク・トナー副報道官は30日、「アメリカとミャンマーの接触は中国へのあてつけではない」と改めて強調しました。

 この日行われたアメリカ国務省の記者会見で、「中国とアメリカのミャンマーに対する影響力争いではないか」との質問に対しトナー副報道官は、「先日も言った通り、アメリカとミャンマーの接触は中国とは関係ない。ミャンマーの情勢についてアメリカは中国と協議してきた」と語りました。

 中国外務省の洪磊報道官はこれ以前に、アメリカとミャンマーが接触を強化することがこの地区における中国の影響力に影響をもたらすかどうかについて言及し、「西側諸国がミャンマーと相互尊重の基礎の上で接触を強化し、関係を改善することを中国は歓迎する。ミャンマー政府の内外政策がミャンマーの安定と発展にプラスとなることを期待している」と述べていました。(玉華、中原

URL:http://japanese.cri.cn/881/2011/12/01/142s183705.htm

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