普天間を知る権利と知らせる責任
今日は、普天間ネタです。
11月29日、防衛省沖縄防衛局の田中聡局長が、記者団との懇談の席で、一川防衛相が普天間飛行場移設先の環境影響評価書の年内提出を断言しないことに関して「犯すときに『これから犯しますよ』と言うか」と発言したとされる問題で、一川防衛相は田中局長を更迭する方針を固めた。
くだんの田中局長の発言は、那覇市内の居酒屋で懇談の席だったのだけれど、沖縄防衛局は毎月1回程度、在沖縄の報道各社を対象に非公式の懇談会を開催しているそうだ。
これは、基地問題などを巡る防衛局側の考え方や背後関係、水面下の交渉経過などについて正確な報道に役立てるのが目的で、発言内容を報道しない、すなわちオフレコを前提に、局長以下の幹部が出席し、各社と意見交換をしている場。
懇談会は、各社負担する会費制で、問題発言があったとされる、28日夜の懇談会は、防衛局から田中聡局長と池田欽吾報道室長の2人が出席し、報道側は、県内外の9社の記者が参加した。午後8時ごろから始まった懇談は、テーブル中央に座った田中局長を記者が取り囲み、飲食を伴いながら、基地問題について意見を交わし、防衛局は田中局長だけが発言していたそうだ。
懇談の中で、政府が年内提出を予定する環境影響評価の評価書提出問題に話題が移った時、琉球新報の記者が「政府はなぜ『年内提出する』と明言しないのか」と問いただしたときに、田中局長は女性を乱暴することに例えて「これから犯す前に『犯しますよ』と言いますか」と応じたとしている。
田中局長はほかにも「400年前の薩摩侵攻のときは軍がいなかったから攻められた。『基地のない平和な島』はあり得ない」とか、普天間移設が沖縄の反対で進まないことについて、「何もなかったかのようにそのまま残る」と普天間固定化の可能性にも言及していたらしい。
筆者としては、非常に率直な発言をしているな、という印象を受けたのだけれど、オフレコの場であれば、これくらいの事は言いそうではある。まぁ、それでもくだんの発言は譬えが悪い。たとえば、「鵯越えの逆落としの前に、これから攻めるぞと平家に教える義経はいない」くらいであれば、また反応は違ったかもしれない。
ただ、これまでオフレコとされていた場での発言が、なぜ表沙汰になったのか。田中局長の問題発言は、琉球新報が29日付朝刊で報じたことが発端だとされているから、琉球新報がこれまでの禁を破ったことになる。
勿論、こんな発言は不適切だし、地元の反発の強さを考えると更迭も止むを得ないのかもしれないけれど、こんな発言が公になたら、大騒ぎになることくらい誰にでも分かる。
ということは、穿った見方をすれば、琉球新報は、政府が進めようとしている普天間移設を潰そうとしたのだと見ることもできる。
琉球新報は30日の記事で、専修大学の山田健太准教授は「メディアはオフレコを守る信義則はあるが、国民の知る権利はそれに優先される」という発言を取り上げて、田中局長の問題発言は、「読者に伝える責任があると判断して報道に踏み切った。」としている。
琉球新報が、本当に"国民の知る権利"を守り、「読者に伝える責任がある」と思っているのなら、辺野古問題にしても、反対ばかりではなくて、賛成の意見もあることをきちんと伝える必要がある。
たとえば、去年の1月、辺野古の地元、名護市で辺野古移設賛成デモが行われていたし、同じく去年の1月24日に行われた、名護市長選挙では、辺野古受け入れが争点となり、受け入れ反対派の稲嶺氏が1万7950票を集めて当選したのだけれど、容認派の島袋吉和氏との差はわずか1600票だった。要するに地元でも賛成・反対が半々くらいいるのであって、決して反対一色というわけじゃない。
ジャーナリストの櫻井よしこ氏は、『週刊ダイヤモンド』の2011年7月2日号のコラムで、辺野古地区の『本当の地元』は米軍の飛行場移設に賛成していると述べている。
また、10月26日には、辺野古への移設を容認する野党系市議などが主催する、「辺野古移設に賛成する北部振興推進・名護大会」が名護市民会館で開かれ、2000名以上の参加者を集めた。
さて、地元でも辺野古移設に賛成する人がいるという事実について、「読者に伝える責任」を琉球新報はどう果たしたのか。
これについては、こちらの「狼魔人日記」殿のブログで取り上げた記事があるので、参照いただきたいのだけれど、ここには、琉球新報が辺野古移設賛成派の意見を極力小さく見せようとしていることが綴られている。
こんなことをしていて、琉球新報が、読者に"正しく"伝える責任を果たしているとは思えない。片方の意見に肩入れした記事ばかり載せるのなら、それは機関紙であって、報道機関ではない。
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沖縄防衛局長の失言、地元紙報道で公的問題に
. 沖縄防衛局は毎月1回程度、在沖縄の報道各社を対象に非公式の懇談会を開催している。
基地問題などを巡る防衛局側の考え方や背後関係、水面下の交渉経過などについて正確な報道に役立てるのが目的で、発言内容を報道しないことを前提に、局長以下の幹部が出席し、各社と意見交換をしている。
28日夜の懇談会は、防衛局からは田中聡局長と池田欽吾報道室長の2人が出席し、田中局長だけが発言。読売新聞を含む9社の記者9人が参加した。
田中局長の不適切発言は非公式の会合での発言だったが、地元紙・琉球新報が29日付朝刊で報じたことを受けて、一川防衛相や藤村官房長官が内容を確認して厳正に対処する方針を表明したことで、発言は公的な問題として扱われるようになった。
(2011年11月30日00時55分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20091215-481540/news/20111129-OYT1T01046.htm
沖縄局長不適切発言で首相おわび…評価書提出へ
野田首相は30日午前、沖縄県の米軍普天間飛行場移設問題を巡り、防衛省の田中聡前沖縄防衛局長が不適切発言で更迭されたことについて、「更迭は当然の措置だった。県民に大変ご迷惑をおかけし、誠に申し訳ない。心からおわびを申し上げたい」と陳謝した。
そのうえで、同県名護市辺野古への移設の前提となる環境影響評価書を県に提出することに関し、「準備はしている」と述べ、年内提出の方針に変更はないとの考えを強調した。首相官邸で記者団に語った。
田中氏は28日、那覇市での記者団との非公式な懇談で、評価書提出に絡み、女性を乱暴することに例えた発言をした。防衛省の中江公人次官は30日午後、沖縄県庁で仲井真弘多知事と面会し、田中氏の発言をおわびし、対応を説明する。
首相は、田中氏の発言を受けた29日の記者団の問いかけに無言を貫いたことには、「まずは担当(の防衛)大臣から記者会見して対応を知らせるのが先だろうと思った」と釈明した。
(2011年11月30日11時42分 読売新聞)
URL:http://www.yomiuri.co.jp/feature/20091215-481540/news/20111130-OYT1T00531.htm
沖縄知事、防衛次官との面会5分で打ち切る
沖縄の米軍普天間飛行場移設問題をめぐって防衛省の田中聡前沖縄防衛局長が不適切発言で更迭されたことを受け、中江公人防衛次官は30日、沖縄県庁を訪ねて仲井真弘多知事と会い、「心からお詫びする」と陳謝した。
仲井真氏は「県民は傷つけられた。信頼関係の回復はなかなか簡単ではない」と述べ、県民世論の厳しさは極めて深刻だとの認識を示した。
会談は15分間の予定だったが、仲井真氏側が約5分で打ち切った。
会談後、中江氏は記者団に、名護市辺野古への移設の前提となる環境影響評価書を予定通り年内に県に提出する考えを強調。仲井真氏は記者団に「作業だけは強引に進めたいという状況判断は、ピタッと来ない。(政府は)状況判断を間違えないように(してほしい)」と不快感を示した。
この問題をめぐり、30日の衆院外務委員会では、沖縄県への謝罪を事務方にゆだねた政府の判断に批判が集中した。自民党の河井克行氏は、「なぜ一川防衛相自らが沖縄に足を運ばないのか。問責決議案の材料になるのを逃れるためでないか」などと追及。渡辺周防衛副大臣は「まずは事務の責任者が行くことで対応した」と述べたが、政府内からも「すぐに大臣が行くべきだった」(外務省幹部)と対応のまずさを指摘する声が出た。
(2011年11月30日19時33分 読売新聞)
URL:http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20111130-OYT1T00755.htm?from=tw
この記事へのコメント
sdi
一言で言えば。
ちび・むぎ・みみ・はな
琉球新報を含め沖縄二紙は有名なデマゴーグ紙.
嘘付党になってから日本の官庁の規律は
ガタガタになり, 日本のためを思う官僚は
肩身が狭くなっている. この件も防衛省内部
でのゴタゴタが原因しているに違いない.
こんなことより議論することは他にあるだろうに.
嘘付党政権は存在するだけで日本を駄目にする.
今月の正論にもあったが, 日本があって皇室
があるのではなく, 皇室があって, それを
中心とする国を日本と呼ぶことにした.
だから皇室=日本. これを認めないイデオローグの
集大成である嘘付党が日本をどんどんと毀損
するのは日を見るより明らか.
げに全学連世代のしでかす罪悪は恐ろしい.
親のすねをかじって親の命も危うくする.
せみまる
そして、社会主義はもちろん今や問題ではない。本土にいる高みの見物者が沖縄には米軍基地が必要だといくら言おうが、政府のカネでは決して豊かにはなれないと徐々に住民は知り始めているのである。
また、選挙やデモが「民意の現れ」と短絡するのもこれまたばかげている。程度の低い論理だ。デモには胡散臭いのがあまたある。表象の背後にあるものを追求するのがメディアの神髄であろう。沖縄の苦悩を直視しようとしない(あるいはその能力がない)者に対し、少なくとも地元メディアは徹底して、その苦悩、沖縄の強いられた「闇」と「分裂」を示し続けている。日米政府と利権の機関誌になるよりマシである。