隠蔽する民主党の年金制度改革

 
「当時、毎年のように年金制度が変わることに対して、国民は大きな不満を感じていた。こんなにコロコロ変わっては、将来どうなるかわからない。だから、持続可能な年金制度を早くつくって欲しいという声が上がった。その声に応えようとしたのが、年金改正のスタートだった。」
坂口力・元厚生労働大臣

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1月30日、参議院本会議での代表質問で、野田首相は、先の衆議院選挙で民主党が掲げた最低保障年金制度について必要となる財源の試算は、当面、公表しない考えを示した。

野田首相は、「具体的な制度設計は、まずは民主党内で検討していく」と党に委ねた形にしたけれど、先の衆院選なんて3年も前の話。それを今頃になって、党内で制度設計を検討するなんて、今まで一体、何をしていたのか。それでいて、社会保障と税の一体改革に不退転の決意とか何度も強調するのはチグハグもいいところ。

試算公表見送りについて、公明党の山口代表は、「試算の一部が報道されて、膨大な消費税が別に必要になるとか、受け取る年金額が現行制度より減る人がいると言われたぐらいで隠さないでほしい。『不退転の決意』が泣くし、『正心誠意』を主張する野田総理大臣らしくない。堂々と全体像を示して協議できる環境を整えてほしい」と批判するのも無理からぬこと。

1月30日に行われた、民主党の党役員会で、樽床伸二幹事長代行が「60年後の話を2、3年後の話と混同されるのは良くない」と非公表の理由を説明したそうだけれど、今の民主党では、60年後が2、3年後の話になりかねない。

なぜなら、年金については、既に2004年の法改正で、大きくその仕組みが変わっているから。

2004年の改正で大きく変わったのは次の4つ。
1.上限を固定した上での保険料の引上げ
2.負担の範囲内で給付水準を自動調整する仕組みの導入
3.積立金の活用
4.基礎年金国庫負担割合の2分の1への引上げ

1は、保険料を段階的に引き上げつつ、2017年度以降、その水準を固定するもので、厚生年金保険料については、2004年10月から0.354%ずつ引き上げて、2017年以降は、18.30%で固定し、国民年金保険料については、2005年4月から毎年280円ずつ引き上げて、2017年以降は、16900円に固定する。

2は、マクロ経済スライド方式と呼ばれるもので、少子高齢化の影響を加味して、年金加入者の減少や平均寿命の延びなどのマクロ経済全体の変化に追随して、年金給付額を変動させる制度。

平たくいうと、2004年度以前の年金制度で採用されていた、物価の動きによって年金額が見直される"物価スライド制"に新たに、「スライド調整率」と呼ばれる、公的年金被保険者数の減少率と平均寿命の延びを勘案した一定率の和を差し引いた額にするというもの。

スライド調整率がどれくらいになるかについては、今のところ、公的年金被保険者数の減少率が0.6%。平均寿命の延びを勘案した一定率が0.3%とされていて、2025年までは、これらの合計の0.9%くらいになるとされている。仮に、物価上昇率が年1%だとすると、そこから、このスライド調整率0.9%が引かれて、差し引き+0.1%と殆ど年金額は変わらないことになる。

3については、2004年度以前までは、年金の財政計算は、無限の将来まで想定して給付と負担のバランスをとるという、「永久均衡方式」を取っていたのだけれど、2004年の年金改正で、無限の将来は止めて、向こう100年について給付と負担のバランスを考えるという方式に切り替えることで、これまで積み立ててきた年金を100年かけて少しづつ取り崩していって、100年経った後は、1年分の年金支払い額だけキープしましょうというもの。

現在、年金積立金が総額でどれくらいあるかについては、正確には分からないのだけれど、おおよそ144兆円あると言われている。これは、2009年度の公的年金の支給総額が、50兆3000億円だったから、大体3年分はストックしていることになる。



そして4についてなのだけれど、これは、定額の基礎年金の国庫負担割合を2004年改正以前の3分の1から2分の1に段階的に引き上げ、2009年度からは義務化するというもので、所要財源は年間でおよそ2兆5000億円程度。

2009、2010年度については、財投特会からの特例的な繰入金を臨時財源として確保していたのだけれど、2011年度は、事業仕分けで「国庫返納」の判定を受けた、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄建機構)の利益剰余金と、外国為替資金特別会計(外為特会)の剰余金を充てることで財源とした。

ところが、こうした剰余金による"臨時財源"には限界があることから、鉄建機構や外為特会の剰余金を財源とするのは2011年度限りの措置として、2012年以降については、税制抜本改革により確保される財源を活用するよう、必要な法制上・財政上の措置を講ずることとなっていた。

そして、2012年度の年金国庫負担の財源については、当初確保していた臨時財源2.5兆円は震災復興のための一次補正予算に回されて無くなったことから、消費税増税による、将来の消費税収を償還財源とする「つなぎ国債」発行を考えていたのだけれど、政府のグダグダ振りから無理となり、結局、年金積立金を取り崩して穴埋めすることとなっている。

2004年の法改正を主導し、今の年金制度を構築した、坂口力・元厚生労働大臣によると、2004年の年金の法改正に当たっては、いくつもの要素を念頭に入れてシミュレートした上で、基礎年金の国庫負担を2分の1に引き上げることも決めたという

2004年の法改正に当たっては、少なくとも5年ごとに、年金財政の現状及び100年程度の間にわたる年金財政の検証を行うことが決められたのだけれど、2009年に行われた最初の検証結果は、「最初に予定した通りの進行をしている」というものだった。

だから、現行制度のままでも、基礎年金国庫負担割合の2分の1への引上げ分の財源、約2.5兆円を毎年きちんと確保できさえすればよいことになる。

現在、消費税による税収額は年間10兆円くらいだから、2.5兆円を全部消費税で賄うためには、消費税率に比例して税収が増えると仮定した場合、2%上げるくらいで十分足りる筈。
※過去、消費税を上げると逆に税収が減っていることから、この計算通りにはいかない可能性が高いと思われる。

その意味では、試算結果を公表できない民主党案は、もしかしたら現行制度よりも悪い制度なのではないかとさえ。

それならば、やはり、消費税がどうこういうよりも、景気を回復させて、税収をアップさせた方が早い。景気回復策の強化を求む。

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画像財務省、年金積立金取り崩しへ 国庫負担維持、「つなぎ国債」断念  2011年12月14日

財務省 財務省は13日、2012年度予算編成で、基礎年金の国庫負担を50%に維持するための約2兆6千億円の財源について、保険料を原資とする年金積立金を取り崩して充当する方針を決め、厚生労働省に伝えた。12年度予算案を決める24日までに消費税増税案を政府が固めるのは困難と判断、将来の消費税収を償還財源とする「つなぎ国債」発行での穴埋めを断念した。

 財務省は、取り崩した積立金を消費税増税による税収で返還すると法律に明記することで理解を得たい考え。積立金を取り崩しても、国民への年金給付の水準は変わらない。

URL:http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/277720


画像試算非公表、党に丸投げ=自公は追及に勢い-野田首相

 野田佳彦首相は30日の参院本会議で、自民、公明両党が求める最低保障年金の財源試算の公表について、民主党に対応を委ねる姿勢を鮮明にした。消費増税をめぐる与野党協議を閉ざしかねない重要な判断を、党に「丸投げ」した格好だ。これに対し、自公両党は「野田政権は隠蔽(いんぺい)体質」(大島理森自民党副総裁)などと批判のトーンを強めた。
 「2013年の法案提出に向け民主党内で検討する。どのように議論を深め、整理するかは党が判断する」。首相は試算の扱いについて、党に委ねる考えを強調。これに対し、公明党の山口那津男代表は、大幅な消費増税に加え、年金受給額が現行制度より減る人が出る民主党の試算内容に触れ、「隠さないでください」と攻め立てた。
 野田政権の実権を握る民主党の輿石東幹事長は当初、年金抜本改革の財源について「どのくらい必要か示さないと通用しない」と公表に前向きだった。しかし、国民に負担増・給付減を強いる内容と知ると、一転、非公表に傾いた。30日の党役員会では樽床伸二幹事長代行が「60年後の話を2、3年後の話と混同されるのは良くない」と非公表の理由を説明。輿石氏はその後の記者会見で「試算は今はない」と言い募った。
 試算公表を拒んだ首相答弁は、29日の政府・民主三役会議で輿石氏らと協議した結果を踏まえたものだ。首相が消費増税の推進役と頼る岡田克也副総理は「いずれ出さなければならない」と公表を主張していたが、慎重論を唱える輿石氏ら党側に押し切られたようだ。民主党の若手は「首相も岡田氏も輿石氏の言いなりだ」と指摘する。
 首相は党内の増税反対派の離党の動きにもひるまず、消費増税を主導してきただけに、腰砕けの感は否めない。自民党の山本一太前参院政審会長は記者会見で「事前協議、政党間の談合は不可能になった」と宣言。公明党の山口代表は本会議後、「逃げて自らの年金の案を隠している印象だった」と首相を切り捨てた。(2012/01/30-21:20)

URL:http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&rel=j7&k=2012013000933

この記事へのコメント

  • ちび・むぎ・みみ・はな

    本日の議論とは全然関係ないが,
    地球は小氷河期に向かうと言う記事を見た.

    http://biglizards.net/strawberryblog/archives/2012/01/post_1353.html

    さてはて, ルーピーの言い訳や如何に.
    それより, 太陽活動が低下するなら
    太陽光発電はどうなるのだろうか.
    寒冷化すると化石燃料は高沸するから
    原子力発電に戻らざるを得ないと思う.
    2015年08月10日 15:26

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