1月24日、2012年の通常国会が開会し、衆院本会議で野田首相が就任依頼初の施政方針演説を行なった。
施政方針演説とは政府の長が議会でその年一年間の政府の基本方針や政策についての姿勢を示すために行われる演説で、政府の長が自分の考えを述べる演説である、所信表明演説とは、形式上区別されている。
その施政方針演説で野田首相は、『決められない政治』から脱却することを目指すとして、自民党の福田康夫、麻生太郎両元首相の施政方針演説を引用しながら、野党に対して協議に応じるよう求めた。
特に麻生元総理が09年1月に行った演説で「消費増税を含む税制抜本改革を行うため、11年度末までに法制上の措置を講じる」と言及したことを取り上げ「私が目指すものも同じだ。今こそ立場を超えて、素案の協議に応じることを願ってやまない」と呼び掛けた。
施政方針演説で、野党に協議に参加するよう求めるということは、政府の基本方針が与野党協議にあることになってしまうのだけれど、それをオープンな討論の場である国会の冒頭で話してしまうところが既に倒錯している。
そして、そんなに与野党協議に参加してほしいと呼びかけているのにもかかわらず、野党と協議する責任者で、法案可決の鍵を握る参院幹事長に問責決議をされた一川氏を持ってくる人事を見ると、本気で与野党協議をしたいのか首を傾げざるを得ない。こんな人事をされたら、野党が反発するのは目に見えている。
もしや、表向きでは、与野党協議を呼びかけておいて、野党が協議を拒否する人事をして、悪いのは野党だというイメージをつけてから解散総選挙する姑息な作戦ではないかとさえ。
野田首相は、麻生元総理の演説を引用して、消費増税を含む税制抜本改革を行うと決めたのは移民党じゃないか、と上手く逆手にとった積もりかもしれないけれど、麻生元総理は、施政方針演説で、「経済状況を好転させることを前提として、税制抜本改革を行う」と景気回復が前提になると述べている。その上での税制抜本改革。
これについては、筆者は何度も述べているけれど、「消費税増税法案提出について」のエントリーでも示したように、2009年の税制改正法附則104条にある「3年以内の景気回復に向けた集中的な取組により経済状況を好転させることを前提」とあるし、実際、野田首相が麻生元総理の言葉を引用した部分は「経済状況を好転させることを前提として、遅滞なく、かつ段階的に消費税を含む税制抜本改革を行うため、11年度までに必要な法制上の措置を講じます」と、自分でも経済状況の好転を前提の部分を引用してる。
実際、麻生元総理は、1月14日、福岡県飯塚市内で記者団の質問に答え、「民主党政権は増税よりも前にまずは景気回復をやるべきで優先順位が違う。今ではなく、景気が良くなってからやるべきだ」とも述べているし、1月19日の為公会の例会では、「増税時期について与野党で国会で決めよう」とコメントしている。
だから、野田首相が、麻生元総理の演説を引用して、目指すものも同じだとういう以上、経済状況を好転させて見せなければならない。
だけど、野田内閣は、景気回復の手立てを打つどころか、景気回復策さえ提示しない。景気を回復させるという認識に欠けているとしかいいようがない。
1月12日、安住財務相は都内の日本記者クラブでの記者会見で、今回の増税が消費に及ぼす悪影響は小さいとし、税率を5%に上げた1997年に景気が悪化したのはアジア通貨危機や山一証券破綻などが重なったためだと指摘しているけれど、やるべきことは景気を"好転"させることであって、悪影響を小さくすることじゃない。マイナスはどんなに縮小したところでゼロより上にはいかない。大切なことはプラスを生み出すことであって、マイナスをゼロにすることじゃない。
そして、消費税を上げて、景気が悪化した1997年について、アジア通貨危機や山一証券破綻などが重なったためと言い訳しているけれど、今だって、ユーロ通過危機やリーマン破綻に加え、東日本大震災など当時以上の危機が重なっている。
いくら財務省に操られているといっても、ちょっと状況認識がおかしいと言わざるを得ない。
今国会で、野党は、就任当初から問題発言と修正を繰り返す、"素人"防衛大臣の田中直紀氏を「問題閣僚」候補として照準を合わせていると言われているけれど、田中氏は1月13日の就任記者会見で、「前提は景気回復がなされるかどうかというのが大変重要な状況ではないかと思いますから、消費税増税になるまでに全力を挙げて景気回復する・・・名目2%の成長を実現しながら消費税の問題に入るということが大事ではないか」と名目成長率2%の達成が増税の条件になるという認識を示している。
この、景気回復が前提になると公式の場で発言しているのが、首相や財務相ではなく、防衛相というところが、なんともやるせないところではあるけれど、一応現職閣僚が、こうした発言をしたこと自身は評価できる。
野党も国会の場で、田中防衛相に問題発言だけではなくて、景気回復の点についても質して欲しいと思う。


野田佳彦首相は24日午後の衆院本会議で、就任後初の施政方針演説を行った。消費増税を柱とする社会保障と税の一体改革に関し、首相は「『決められない政治』から脱却することを目指す」と述べ、今国会で結論を出す決意を表明。野党に対し「この国の未来を切り開くため、『決断する政治』を共に成し遂げよう」と、協議に応じるよう重ねて求めた。消費増税関連法案の成立が困難になった場合などに、衆院解散に踏み切るかには言及しなかった。
首相は「社会全体の希望を取り戻す第一歩を踏み出せるかどうかは、一体改革の成否に懸かっている」と言明。引き上げ後の消費税収については「全額を社会保障の費用に充て、官の肥大化には決して使わない」とし、理解を求めた。
首相は、消費税率を「2014年4月に8%、15年10月に10%」とする政府・与党の一体改革素案を基に、与野党協議を経て大綱を策定し、3月に消費増税関連法案を提出する方針。
演説では野党の協力を引き出すため、自民党の福田康夫、麻生太郎両元首相の施政方針演説を引用。特に麻生氏が09年1月に行った演説で、「消費増税を含む税制抜本改革を行うため、11年度末までに法制上の措置を講じる」と言及したことを逆手に取り、「私が目指すものも同じだ。今こそ立場を超えて、素案の協議に応じることを願ってやまない」と呼び掛けた。
国家公務員給与削減などの行政改革に加え、衆院議員定数削減など、一体改革と同時に取り組むとする政治改革についても「政治家自身が身を切り、範を示す姿勢が不可欠。私もリーダーシップを発揮する」と決意を示した。
URL:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120124-00000077-jij-pol

麻生太郎元首相は14日午後、消費税増税を柱とした社会保障と税の一体改革に関する与野党協議を実現するべきだとの認識を表明した。「増税時期について与野党で協議する方が国のためには役立つ」と述べた。福岡県飯塚市内で記者団の質問に答えた。
ただ、政府が消費税増税関連法案提出後に国会を中心として協議するのが望ましいとし、同市内の会合では「民主党政権は増税よりも前にまずは景気回復をやるべきで優先順位が違う。今ではなく、景気が良くなってから(増税を)やるべきだ」とも述べた。
麻生内閣は平成21年1月、23年度にも消費税率を引き上げる方針を付則に盛り込んだ税制改正法を閣議決定。実際の施行期日は景気回復の状況を見極めた上で別の法律で定めるとした。
URL:http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120114/stt12011419140013-n1.htm

安住淳財務相は12日、都内の日本記者クラブで記者会見し、社会保障と税の一体改革に伴う消費増税について「社会保障の安定に近づくことは安心して消費を行える社会の構築に役立つ」と述べ、今回の増税が消費に及ぼす悪影響は小さいとの認識を示した。その上で、税率を5%に上げた1997年に景気が悪化したのはアジア通貨危機や山一証券破綻などが重なったためだと指摘した。(2012/01/12-19:08)
URL:http://www.jiji.com/jc/zc?k=201201/2012011200852
この記事へのコメント
とおる
・相手(自民党)が「助けてくれ」と言ってもボコボコに殴っておいて、形勢逆転になり、今度は相手からボコボコに殴られそうになると、「助けてくれ」と発言。
・相手を殺しておいて、被告として裁判になると、「死刑は残忍で、人権を大切にしていない」と発言。
するような感じです。
他人の痛みを感じず、自分だけのことを考えて言動する卑怯者です。
一見、もっともらしい正当な発言に見えても、全体を考えると、嘘つきの言葉を信用してはいけません。
相手に協力を求める前に、自らの言動を反省し、政治的な責任(議員辞職、民主党解党、政治家引退、政治活動の放棄)を取ってから言うべき演説です。
ちび・むぎ・みみ・はな
不景気感の漂う終末的世相が平常なのだろう.
麻生氏の考える平常と違うのだから話にならん.
民の幸せとは何かを聞いてみると良かろう.
民は幸せであるべきでないとか言うかも.