今日は簡単に…
1月22日、自民党大会で、来賓として招かれた経団連の米倉会長が、TPP参加について「21世紀の世界の成長センターはアジア太平洋地域だ」と述べた上で、「自民党はぜひとも推進に尽力いただくようお願いする」と呼びかけたところ、反TPP派の議員数人が「駄目だ!」「こんなやつに話をさせるな!」とヤジを浴びせかける一幕があった。
来賓に対してヤジを飛ばすなんて、ちょっと普通ではないのだけれど、自民党内でもTPPの扱いを巡っては、意見集約しきれずに、民主党の情報提供不足だけを批難して、様子見に徹している。
経団連の米倉会長は、1月16日に、民主党定期大会でも挨拶していてTPPに関しては「TPPはアジアの成長を取り込むために必要不可欠なステップだ。大変意義深い」と政府のTPP参加方針を支持している。
ところが、同じくその大会で、米倉氏の直前に挨拶した国民新党の亀井代表と社民党の福島党首はいずれもTPP参加への反対を表明しているから、与党内でも意見が纏まっていない。
TPPの交渉参加については、アメリカの通商代表部と事前協議が進められているけれど、訪米中の自民党の西村康稔衆院議員によると、USTR日本担当のカトラー代表補が、西村氏に対して「日本の皆保険制度について米国が何かを言うことはない」と公的保険に“介入”しない意向を示したという。
皆保険制度については、昨年11月に日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤医師会の3医師会がTPPの交渉参加について「国民皆保険を守ることを表明し、国民の医療の安全と安心を約束しない限り、TPP交渉への参加は認められない」との共同声明を発表しているから、本当にアメリカが公的保険に介入しないのであれば、ひとまずは安心できるかもしれない。
その代わりといってはなんだけれど、現時点の事前交渉では、どうやら、自動車市場の開放や米国産牛肉の輸入規制緩和、日本郵政への優遇措置見直しなどが焦点になるようで、中でも自動車について市場開放を求めてられているようだ。
アメリカ通商代表部は、日本のTPP交渉参加の是非をめぐって、国内での意見公募をしていたのだけれど、アメリカの自動車各団体は、アメリカ自動車の輸入枠を設けるとか、軽自動車の規制を撤廃するよう要求しているという。
筆者は、日本の自動車輸入関税は、1978年以降ゼロになっていることから、一番TPPに対する障壁が少ないのは自動車分野なのではないかと思っていたけれど、アメリカにしてみれば、どうやらそうでもないらしい。
だけど、元々、あらゆる規制を撤廃して自由貿易を進めるというのがTPPの主旨の筈。アメリカ自動車輸入枠を設けろという要求には首をかしげざるを得ない。
もしも、アメリカ自動車の輸入枠を設けたら、その分他国の自動車輸入が減ってしまうことになる。これでは自由じゃない。また、軽自動車にしても、別に日本国内の軽自動車市場と輸入アメリカ車の市場が競合しているわけじゃない。
日本自動車輸入組合(JAIA)のデータによると、2010年度の輸入車の排気量別シェアは1000~2000CCまで小型車で、6割を占めていて、アメリカ車がラインナップしている3000cc以上となると、9%足らず。
だから、アメリカもリッターカーで魅力的なものを作って売ればいいじゃないかと思うのだけれど、軽自動車規格を廃止しろという。
軽自動車規格とは、道路運送車両法施行規則で定められた日本独自規格で、次のような規格がある。
全長 3,400mm(3.40m)以下
全幅 1,480mm(1.48m)以下
全高 2,000mm(2.00m)以下
排気量660cc以下
定員 4名以下
貨物積載量 350kg以下
とまぁ、文字通り、"小さくて軽い"自動車なわけで、車体が小さく取り回しが容易という特徴がある。また、最大のメリットと言えるのが、維持費の安さで、自動車取得税や重量税などが、普通車と比べて安くなっている。
軽自動車規格を廃止するとなると、こうした優遇税制が無くなることになるだろうけれど、そうしたとき消費者の選択は3つしかない。ひとつは、そのまま軽に乗り続けるか、普通車に乗り換えるか、それとも自動車に乗ることを止めるか、の3つ。
日本国内で軽自動車に乗る理由はいろいろあるだろうけれど、軽自動車に乗りなれた人は、優遇税制は別にしても、軽自動車の取り回し安さや、燃費の良さになじんでいる筈で、それが軽自動車規格がなくなったから、いきなり大排気量のアメ車に乗り換えるとは思えない。精々、燃費のよいリッターカーへ乗り換えるくらいだろうと思う。
だから、もしも、アメリカの要求どおり、軽自動車規格を廃止したとしても、それでアメリカ車の販売台数が伸びるなんて単純な話にはならないと思われる。
アメリカの自動車に対する要求は、ちょっと筋が良いとはいえない。ごり押ししてきても、"普通に"交渉すればいい。


この記事へのコメント
日比野
>「アメリカ自動車の輸入枠を設ける」なんて、どこが自由貿易なのでしょう?
そうなんです。昔、日米貿易摩擦のとき、確かアメリカの半導体を枠を決めて無理矢理買わされたことがありましたけれども、あれと同じですよね。
>クマのプータローさん
>個別で一長一短があるから受け入れても良い、ここで向こうが譲歩しているからあれは受け入れなければならない、という流れを作られているような感じで気持ち悪い
なるほど、この観点は気づきませんでした。意外と有り得るかもしれないですね。
>白なまずさん
>環境税的な発想を入れて、運転時の車の重量/馬力、運転時の車の重量/燃料消費量のような指標を出させて、トータルで効率の良い車種や運用形態の利用者の税金を安くするようにすればアメリカも何も言えなくなる
これは面白いですね。トータルの税収がどうなるか気になるところですけど、消費者側としては、より安く、より便利な車がつかえればいうことありませんからね。
ちび・むぎ・みみ・はな
> 対して「日本の皆保険制度について米国が何かを
> 言うことはない」と公的保険に“介入”しない意向
> を示したという。
「意向」は意向, 個人的見解と同じだと思う..
米国相手では外交文書に書いてなければ何時ひっくり
返るか分からない. 総理大臣は皆苦労してきている.
自動車より金融の保険会社の方が発言力が大きい筈だ.
土壇場で「やはり」と言い出すのは目に見える.
自動車の記事が出ているのは官庁側のブラフだろう.
白なまず
かなべえ
WJFプロジェクトの支持者
WJFプロジェクト
http://wondrousjapanforever.cocolog-nifty.com/blog/
sdi
TPPの流れに掉さす主張としか思えない。アメリカの自動車企業団体はTPPに賛成なのか?むしろ、TPPを邪魔しあわよくば流産させようと考えているのではないか?
とおる
「アメリカ自動車の輸入枠を設ける」なんて、どこが自由貿易なのでしょう?
21日、BS11の「田中康夫のにっぽんサイコー!」に自民党の小野寺五典議員が昨年12月に米国議会へ行った時の話をしていましたが、その中で、(私の記憶違いで無ければ)
・米国議会の外交委員会の議員に聞いても、TPPのことを知らない・関心がないようであった。議員が政策担当者に聞いてやっとTPPの話が通じた。
・民主党議員は、訪米して(権限を持つ)議会とは接触をして無いようだ。
・オバマ大統領の再選のための選挙が過ぎれば自然消滅しそう。
というような話をしていました。
クマのプータロー
交渉が一見うまくいっているかのような報道の扱いには注意を要したいところです。
ス内パー
米のミニマムアクセスのように輸入を強要したところでGMの日本法人と販売代理店が色々搾り取られて消耗するだけでしょうね(ノルマクリアと税的な意味で)。