中国のゲートキーピングと門番

 
1月19日、領空侵犯の恐れがあるとして、中国機に対してスクランブルした回数が2011年度で、既に143回に上り、国別に公表を開始した2002年度以降で最多となったことが分かったとの報道がマスコミ各社で報道されている。

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これだけだと、如何にも中国が直ぐにも攻めてきそうにも見えるのだけれど、これまで、スクランブル回数が一番多いのは、中国ではなくてロシア。

次の表は、防衛省から公表されている、緊急発進回数のデータなのだけれど、明らかにロシアが多い。今年度についてみても、第1~第3四半期までの累積で対中国が143回であるのに対して、対ロシアでは175回ある。

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報道では、中国機に対するスクランブル回数が、これまで最も多かったのは2010年度の96回だったとしているけれど、防衛省のデータでは、2005年に107回スクランブルしているとあるから、間違いだろうと思われる。

また、スクランブル対象となった、中国機とロシア機の飛行パタンを比較してみても、中国機が尖閣辺りをちょろちょろ飛んでいるのに対して、ロシア機は日本列島をグルリと取り囲むように飛行している。

だから、スクランブルに関しては、まだまだ対ロシア機が中心なのが現実。尤も、2006年から2009年あたりまでは中国機に対するスクランブル回数が30回くらいだったことを考えると、ここ2年で急速に増えてきているのは確かなことなので、それなりの警戒は必要だろう。

ただ、やはりなんといっても、中国の動きで警戒すべきは海のほうだろうと思われる。

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これまで中国は、潜水艦などで度々、日本近海で活動をしているのだけれど、正式に公表されているものとしては次のような事例がある。

2003年11月 明級潜水艦が大隅海峡を浮上航行
2004年11月 漢級潜水艦が石垣島と多良間島の間の日本領海を潜没通航
2006年10月 宋級潜水艦が沖縄沖でアメリカ空母「キティホーク」の近傍で浮上
2010年 4月 キロ級潜水艦2隻がソブレメンヌイ級駆逐艦等の水上艦艇部隊に同行し、沖縄~宮古間の海峡を通過

中国の潜水艦及び艦艇が日本の南西諸島の海峡を通過して太平洋に進出する理由としては、次の3つが考えられる。

A.威力偵察
B.示威行動
C.ゲート・キーピング

Aの威力偵察は、通過する海域の海底地形や海流の流れ等を調査して、今後の潜水行動にフィードバックするものと思われるし、Bの示威行動は、日本の対潜能力を探ることと、日中中間線のガス田付近を航行して、自国のものだと牽制する意図が考えられる。そして、Cのゲート・キーピングなのだけれど、これは、東アジアにおける有事、特に台湾関連の紛争に備えて、自国潜水艦の行動能力の確保及び確認をすると同時に、日本とアメリカのこの海域での行動抑止のための牽制行動が考えられる。

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スタンダード・ブルー」のエントリーでも触れたけれど、中国はアメリカに対してA2/AD戦略(接近阻止/領域拒否戦略)を採っているから、こうした、ゲート・キーピング行動をして、いつでも太平洋に出られるんだぞと見せ付けることで、アメリカに対して容易に近づけさせないよう牽制する効果がある。

ここで、鹿児島から沖縄及び南西諸島の海域で、東シナ海から太平洋に出るために、日本の領海で塞がれていない、つまり、中国船舶が通過可能な水道には次の4箇所がある。

1.大隅海峡(約8NM[nautical mile:海里]=14.8km)
2.奄美大島北側(約6NM=11.1km)
3.沖縄本島~宮古島間(約86NM=159.3km)
4.与那国島~台湾間(約36NM=66.7km)

細かいことを言えば、これら4箇所以外にも、通ろうと思えば通れなくないところもあるのだけれど、それらの島と島の間の水域は、各島の領海と領海が重なっているために間隔も狭く、また海底地形が複雑で比較的水深も浅いという事情があり、実際上、通過は難しい。

事実、中国の潜水艦や艦艇が太平洋に出るときは殆ど3の沖縄本島~宮古島間を通過している。これは勿論、この水道が4つの中で一番幅があって通りやすいからで、その意味では、この沖縄本島から宮古島の間の水道は、中国のA2/AD戦略のチョークポイントに当たるといえるかもしれない。

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逆に日本からみれば、中国のA2/AD戦略を阻止したければ、この水道を常時監視してきちっと押さえることができればいいことになる。

地図をみれば、分かるけれど、尖閣諸島は、中国側からみて、沖縄本島と宮古島間の水道の前に位置していて、ちょうど門番にあたるような位置関係にある。

だから、尖閣を日本が押さえているだけでも十分意味があるし、できれば灯台なり何なりの設備を作るだけでも、中国にとってプレッシャーになるだろう。

仮にそこまですることが無理なのであれば、尖閣周辺の海域の島々は確実に日本領土なのだと対外的に示すだけでも牽制になる。

1月3日、石垣市議会の3人の議員が尖閣諸島の魚釣島に上陸したことがあったけれど、行為の是非は兎も角、あれも尖閣が日本領土だと対外的に示したことになる。

国土地理院によると、沖縄の尖閣諸島周辺の7つの島には、まだ名前がついておらず、日本政府が調査を進めていたのだけれど、その結果、排他的経済水域を決める基準の島のうち、名前を把握していない無人島が、全国に39あることがわかったという。

そこで、2011年中にこの39の島の名前を確定させて、地図や海図に載せることになった。今だにそんな大事な島に名前が付いていなかったなんて驚く他ないけれど、速やかに名前をつけて、領土を守るよう動いて欲しい。

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画像中国機への緊急発進が最多 尖閣接近のパターン増加

 航空自衛隊が、領空侵犯の恐れがあるとして中国機に対し緊急発進(スクランブル)した回数が2011年度、既に143回に上り、国別に公表を開始した02年度以降で最多となったことが19日、防衛省統合幕僚監部のまとめで分かった。これまで最も多かったのは10年度の96回だった。

 防衛省によると、中国機への緊急発進は、10年度後半から急増。防衛省の担当者は「沖縄県の尖閣諸島に近づくパターンが増え、飛行時間の長い情報収集機が目立つ」としている。

 4~12月に外国機に緊急発進した回数は335回で、前年同期比で45回増。いずれも領空侵犯はなかった。

URL:http://www.47news.jp/CN/201201/CN2012011901001432.html



画像尖閣諸島に石垣市議ら4人上陸 海保の立ち入り検査後 2012.1.3 22:37

 3日午前9時半ごろ、沖縄県・尖閣諸島の魚釣島に、同県石垣市の仲間均市議ら3人が上陸したのを、第11管区海上保安本部(那覇)の巡視船が確認した。約20分後には仲嶺忠師・同市議も上陸した。4人は午前11時55分ごろ同島から離れ漁船に乗り込み、3日夜に石垣市の石垣港に到着した。これを受け、中国外務省は3日「中国政府は既に日本側に厳正な申し入れと抗議を行った」との談話を発表した。

 11管によると、海上保安庁職員が安全確認のため漁船に立ち入り検査した後、市議らは「上陸はしない。釣りをする」と話して、ゴムボートに乗り換えて島の南西端から上陸したという。石垣市は尖閣諸島の行政管轄権を持つが、国は同諸島への上陸を禁止している。市議らは2日午後10時40分ごろ、魚釣島から約170キロ離れた石垣港を漁船で出発、3日午前9時ごろ同島付近に到着したという。

URL:http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120103/plc12010322380007-n1.htm



画像政府、全国の排他的経済水域の基準となる無人島のうち公式名のない39の島の名前確定へ フジテレビ系(FNN) 1月16日(月)14時22分配信

政府は、全国の排他的経済水域の基準となる無人島のうち、公式な名前がついていない39の島に、名前をつけることを決めた。
国土地理院によると、沖縄の尖閣諸島周辺の7つの島に、名前がついていないことがわかり、政府が調査を進めていた。
その結果、日本の排他的経済水域を決めるうえで基準となる島のうち、名前を把握していない無人島が、全国に39あることがわかった。
このため、管理強化や国外などへ領域を明確にするため、2011年度中にも39の島の名前を確定させて、地図や海図に載せるという。.最終更新:1月16日(月)19時34分

URL:http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20120116-00000353-fnn-soci

この記事へのコメント

  • 白なまず

    三井海洋開発などの海上プラントを防衛目的の基地や灯台、気象観測などに使えそうな技術はあるので、本気だしたら何とかなると思いますが。その為には邪魔者には消えて頂かないと、、、。本当の日本の由来認識や日本復活の足かせになりそうなので、あえて書きますが、左翼が否定している記紀を歴史資料として考慮しないと古代の歴史解釈が行き詰まっていて、見直されつつあります。しかし記紀の理解不能な内容を解釈するのが問題でしたが、最近「竹内文書」の謎を解く 2 ―古代日本の王たちの秘密が出たので読み謎が少し解けた感じです。それと第七三世武内宿禰さんが襲名された事がビックリでした。
    2015年08月10日 15:26
  • NGA

    日本の領空侵犯に対する対応はまさに日本の外交力のあられではないでしょうか。
    ついて行くことはできてもそこから先は撃墜するわけでもなく中途半端なところがあるように思います。
    常に起きている状態では有事の際に正しい判断ができすとりかえしがつかなくなるのではないかと少し不安になります。
    日本の教育の場ではこのような日本の現実が問題視されていないことがあり将来この問題に対して人々が関心を持たなければそれをいいことに更に大胆かつ巧妙になってしまうのではないのか…
    自衛隊の存在意義を明確にして警戒を強めなければいざという時には手遅れ・・・になるのではないのでしょうか。
    2015年08月10日 15:26
  • ちび・むぎ・みみ・はな

    アクティブとパッシブの音響ソナーを配置し,
    そして通る度にアクティブソナーで牽制すれば
    心理的・戦術的にかなり日本に有利になる.
    海上自衛隊の装備の程度は分からないが,
    このようなソナーシステム配置の話は聞かない.
    日本ではソナー単体等の要素技術は進んでいるが
    システムとして組み上げる技術に弱い.
    それは国が関与しないからだ.

    海洋資源開発や海洋防衛についても, 本来は,
    国が率先して行なうべきことだ.

    GHQ洗脳教育で祖国を失った政治家達には
    早々に退場願いたいものだ. 祖国防衛に
    他国の気持ちなぞ関係あるものか.

    嘘付党は問題外だが, 自民党谷垣総裁から
    それ以上の年代が祖国非防衛に邁進してきた.
    2015年08月10日 15:26
  • sdi

    ロシアの洋上航空部隊と中国のそれとは、装備に違いがあり同列比較は難しいでしょう。ロシア空軍やロシア海軍航空部隊にしても、バジャーという機体を持っていなければ日本列島周遊コースは実現不可能で稚内、根室、石狩湾あたりを飛行するのが精一杯です。ただ、中国空軍が同種の機体をもっているからといって日本周遊コースをやるとは思えません。その必要も感じてないでしょう。
    南西諸島近辺をうろつく潜水艦は確かに問題です。最強の対潜兵器はやはり「潜水艦」です。次点で対潜哨戒機でしょうか。そういう点で海自の潜水艦隊増強は必要最低限度の措置ということになります。南西諸島の海峡防衛について「投下したコストに見合わんだろ」というのが最近までの感想です。中国海軍が南西諸島をうろうろし始めたのはつい最近10年以内です。先日の漢級の騒ぎなどは、結局P-3Cで「対応済」でした。今後を見据えての計画は必要でしょうが、台湾が大陸側についてしまったらそれどころじゃない。対潜防備の前に陸戦力増強と制空権確保が先になります。南西諸島問題は、台湾への外交努力が最重要ではないでしょうかね。
    2015年08月10日 15:26
  • (^o^)風顛老人爺

    http://taiyou.bandoutadanobu.com/?eid=1235013&guid=ON

    拝啓、管理人さんお久しぶりです。
    矢張りチャイナ中国は相変わらずの無法国家でごり押しです。
    加えて日本中で在日中国人が増え続ける一方です。

    宣伝ご容赦下さい、
    本日1月28日土曜日夕方
    東京は日本橋の公会堂で元通訳捜査官 坂東忠信氏講演会が行わます。演目は
    「 激増、在日中国人の脅威 」です。付記URLから坂東忠信氏サイト「 外国人犯罪の増加からわかること 」にアクセス出来ます。ご高覧下さい。m(_ _)m 敬具
    2015年08月10日 15:26

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