衆院定数削減と一票の格差

 
1月18日、民主党の政治改革推進本部は、衆院選挙制度改革について、小選挙区は自民党の「0増5減」案を採用し、比例代表定数を80削減する改革案を決定した。

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これは、現行の小選挙区比例代表並立制のままで、「1票の格差」を2倍以内に抑える内容なのだけれど、一票の格差については、憲法第14条、法の下の平等に反するとして、これまでも度々各地で訴訟が行なわれていた。

衆院の一票の格差については、1980年頃までの最高裁判決では、大体格差4倍くらいは"違憲"で、3倍以内は"合憲"とされていたのだけれど、年々その基準は厳しく見られるようになり、2009年8月の衆院選については、2.3倍の格差も"違憲状態"とした。

更に、衆院小選挙区300議席の割り振りで、まず47都道府県にまず1議席ずつ割り振ってから残り253議席を人口比で配分する、いわゆる「一人別枠方式」について、最高裁は、2011年3月の判決で次のように判断している。
(5) 国民の意思を適正に反映する選挙制度は,民主政治の基盤である。変化の著しい社会の中で,投票価値の平等という憲法上の要請に応えつつ,これを実現していくことは容易なことではなく,そのために立法府には幅広い裁量が認められている。

しかし,1人別枠方式は,衆議院議員の選挙制度に関して戦後初めての抜本的改正を行うという経緯の下に,一定の限られた時間の中でその合理性が認められるものであり,その経緯を離れてこれを見るときは,投票価値の平等という憲法の要求するところとは相容れないものといわざるを得ない。

衆議院は,その権能,議員の任期及び解散制度の存在等に鑑み,常に的確に国民の意思を反映するものであることが求められており,選挙における投票価値の平等についてもより厳格な要請があるものといわなければならない。

したがって,事柄の性質上必要とされる是正のための合理的期間内に,できるだけ速やかに本件区割基準中の1人別枠方式を廃止し,区画審設置法3条1項の趣旨に沿って本件区割規定を改正するなど,投票価値の平等の要請にかなう立法的措置を講ずる必要があるところである。
2011.3.23 最高裁判決主文より抜粋

とまぁ、最高裁は、1人別枠方式は、"抜本的改正を行う"までの暫定的な処置として許しているだけで、いつまでも改正しないのは違憲であるとし、1人別枠方式は廃止せよと厳しく迫っている。

したがって、1人別枠方式を止めない限り、最高裁は一票の格差の基準をどんどん厳しくしていくと予想され、いずれは格差2倍をも違憲状態と判断するだろうと思われる。



民主党は、最高裁判決を受けて、小選挙区については、格差を2倍未満に抑える「5増9減」または「6増6減」案を検討していたのだけれど、菅内閣で棚上げ状態になったまま、現野田内閣に引き継がれ、次回衆院選のための新たな選挙区の区割り案を勧告する期限である2月25日が目の前に迫ってきたのが現実。

そこで民主党は、野党の合意を取り付けるために、当時の自民党案だった「0増5減」を丸呑みすることに転換し、それに2009年衆院選での民主党マニフェストをくっつけたのが今回の案。

この案では、現在3選挙区ある山梨、福井、徳島、高知、佐賀の小選挙区をそれぞれ1つ減らして2選挙区とし、区割りも変更し、「0増5減」を行い、一人別枠方式を廃止。それに伴って、区割りの見直しを検討する衆院選挙区画定審議会の勧告期限を2月25日から半年延長する。更に、歳費や政党助成金などの削減のために比例定数を180から100に削減するという内容になっている。

これが実施されると、衆議院の定数は現行の480から395と85減になるのだけれど、その削減の殆どを占める比例は、北海道ブロックが8から4に、東北が14から7に、北関東が20から11に、南関東が22から13に、東京は17から10に、北陸信越は11から6に、東海は21から12に、近畿が29から16に、中国が11から6に、四国が6から3に、九州が12から21へと、各ブロックで定数はほぼ半減する。

この「0増5減」案とセットで出した、「比例定数80減」は、野党から猛反発をうけている。なぜなら、今の小選挙区制度で、比例定数だけを大幅削減すると、民主・自民の二大政党は依然として、小選挙区で議席を確保できるけれど、ほとんど比例配分でしか議席を確保できない中小政党はその議席を大きく失うことが予想されるから。

公明党の山口代表は、「抜本改革をどうするのかという点について、何の言及もないのは不思議に思う。あまりにも独断が過ぎると思う」と反発し、「のっけから協議の土俵を自ら壊すような強引な進め方はするべきではない」と消費税増税の与野党協議にも影響を及ぼすとの認識を示しているし、自民党の谷垣総裁も19日の記者会見で、「比例だけで削減する案になると、中小政党のダメージは極めて大きい。非常に考えが足りない案ではないか」と批判し、「中小政党が理解できるのか。問題点を認識して対応しなければ、なるものもならない」と公明党に同調する発言をしている。

そして、共産党に至っては、身を削るのであれば、政党助成金を削減すべきだ主張している。共産党の志位委員長は、19日に挨拶回りに訪れた、岡田副総理に対して、政党助成金の削減に意欲をしめしたテレビでの発言について、「本気か」と繰り返し真意を質したのだけれど、岡田副総理は「閣僚としては権限外の話なので」と逃げていたので、共産党の印象は良くないだろう。

19日の与野党幹事長・書記局長会談で野党側は、「国会で正々堂々と議論しよう」と、社会保障と税の一体改革に関する関連法案提出前の協議の参加を拒否している。

元々、法案は、国会で議論するのが本筋で、与野党協議は国会審議を円滑に進めるための下準備的なものに過ぎない。それほど重要でない法案ならいざ知らず、国民の多数が反対をしている消費税増税のような大きな課題であればこそ、国会の場でオープンに議論しないで、どうやって国民の理解を得るというのか。

本筋の議論を避け、身を切ったフリだけして、法案を通そうというのは筋が違う。



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画像衆院の定数削減「少数政党のダメージ大きい」と批判 自民・谷垣総裁 2012.1.19 18:03

 自民党の谷垣禎一総裁は19日の記者会見で、衆院の「一票の格差」是正に向けて民主党が決めた選挙区を自民党提案の「0増5減」とし、比例代表定数を80削減する選挙制度改革案について「比例だけで削減する案になると、中小政党のダメージは極めて大きい。非常に考えが足りない案ではないか」と批判した。

 谷垣氏は、選挙区の0増5減案に関し「われわれも1つの有力な解決だと思ったから出した。定数削減を図りながらやっていくのは当然の方向だ」と強調。一方で、比例代表定数80削減案については「中小政党が理解できるのか。(民主党が)問題点を認識して対応しなければ、なるものもならない」と述べ、中小政党への配慮を求めた。

URL:http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120119/stt12011918040007-n1.htm



画像議員定数削減 自民案丸のみの民主に公明が猛反発 (01/17 23:24)

 民主党が、衆議院の1票の格差を解消するため、山梨など5つの県で定数を1削減するとした自民党案を取り入れる方針を固めたことに対し、抜本的な選挙制度改革を求める公明党が猛反発しています。

 公明党・山口代表:「抜本改革をどうするのかという点について、何の言及もないのは不思議に思う。あまりにも独断が過ぎると思う」
 山口代表は、民主党が自民党案を採用したことに対して「小手先に過ぎない」と厳しく批判しました。また、民主党がマニフェストに掲げている比例代表80議席削減の方針を確認したことにも反発を強めています。山口代表は、「のっけから協議の土俵を自ら壊すような強引な進め方はするべきではない」と述べて、民主党の対応次第では、消費税増税の与野党協議にも影響が出るという見方を示しました。

URL:http://news.tv-asahi.co.jp/ann/news/web/html/220117063.html

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