野田改造内閣への期待度

 
内閣改造についての続きを…

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1.野田内閣支持率浮上せず

内閣改造を受けて、今月13、14日に大手マスコミが全国緊急世論調査を行った。それによると、内閣改造による政権浮揚効果は殆ど見られなかったようだ。

読売新聞の調査では、内閣支持率は37%で、昨年12月10~11日に実施した前回調査の42%から5ポイント下がり、不支持率は51%と上昇。内閣改造についても、「評価しない」が49%で、「評価する」35%を上回った。

また、朝日新聞の調査でも、内閣支持率は29%で、昨年12月10~11日の前回調査から2ポイント減。不支持率は47%と4ポイント増。内閣改造についても、「評価しない」が49%で、「評価する」35%を上回った。

そして、先週7,8日に世論調査を行ったばかりの共同通信の調査でも、内閣支持率は0.1ポイント増の35.8%、不支持率は2.7ポイント減の47.8%と殆ど変化がなかった。

続いて消費増税については、読売が「賛成」39%、「反対」55%。朝日新聞が「賛成」34%「反対」57%。そして共同通信は、国会議員定数と国家公務員給与の削減が実現しない場合には「増税すべきでない」が79.5%だった。

ここでひとつ注目すべきは、マスコミによって、設問の設定に差があること。

たとえば、朝日新聞の世論調査は次のとおり。
◆野田内閣を支持しますか。支持しませんか。

支持する  29(31)
支持しない 47(43)

◇それはどうしてですか。(選択肢から一つ選ぶ=択一。左は「支持する」29%、右は「支持しない」47%の理由)

首相が野田さん  22〈6〉 1〈0〉
民主党中心の内閣  22〈6〉 18〈9〉
政策の面  22〈7〉 38〈18〉
実行力の面  20〈6〉 38〈18〉

◆いま、どの政党を支持していますか。

民主19(20)▽自民18(16)▽公明1(2)▽共産1(2)▽新党きづな0(―)▽社民0(0)▽みんな3(4)▽国民新0(0)▽新党大地・真民主1(―)▽たちあがれ日本0(0)▽新党日本0(0)▽新党改革0(0)▽その他の政党1(1)▽支持政党なし44(50)▽答えない・分からない12(5)

◆野田首相のこれからの仕事ぶりにどの程度期待しますか。(択一)

大いに期待する  8
ある程度期待する  35
あまり期待しない  42
まったく期待しない  15

◆野田内閣の改造についてうかがいます。野田首相は、参議院で問責決議を受けていた、一川保夫防衛大臣と山岡賢次消費者担当大臣を退任させました。野田首相のこの人事を評価しますか。評価しませんか。

評価する 51   評価しない 28

◆野田首相は、民主党の岡田克也さんを副総理に起用し、税と社会保障の一体改革や行政改革を担当させることにしました。野田首相のこの人事を評価しますか。評価しませんか。

評価する 50   評価しない 33

◆政府は、社会保障の財源にあてるために、消費税を2014年4月に8%に、2015年10月に10%に引き上げる案をまとめました。この政府の案に賛成ですか。反対ですか。

賛成 34   反対 57

◆野田首相は、消費税引き上げの前に、国会議員の定数削減や、公務員の人件費削減を実施する考えです。野田首相は、こうした削減ができると思いますか。できないと思いますか。

できる 19   できない 67

◆消費税を引き上げる場合には、景気の状況をどの程度考慮する必要があると思いますか。(択一)

大いに必要がある 32
ある程度必要がある 48
あまり必要はない 13
まったく必要はない 4

◆野田首相は、消費税を引き上げる法案を国会で成立させる前に、衆議院を解散して、総選挙を実施するべきだと思いますか。その必要はないと思いますか。

実施するべきだ 49
その必要はない 38


見て分かるように、朝日新聞の世論調査では、消費増税について賛成か反対かの設問の後に、「消費税を引き上げる場合には、景気の状況をどの程度考慮する必要があると思いますか」という質問をしていて、「大いに必要がある」32%、「ある程度必要がある」48%、「あまり必要はない」13%、「まったく必要はない」4%と、必要があると考えている人が80%になっている。

一方、 共同通信は、"国会議員定数と国家公務員給与の削減が実現しない場合には"、と但し書きをつけての質問で、あたかも削減すれば、増税してもよいかのような印象を与えかねない設問になっている。

これは、「世論調査による世論誘導」で指摘した、NHKの世論調査で、議員定数削減や公務員の総人件費削減をするなら消費税増税してもよいかどうかを質問しているのと同じ。こっそりと世論誘導を忍び込ませている。

では、朝日新聞では、国会議員定数と国家公務員給与の削減についてどうしてしているのかというと、増税には景気を考慮すべきか否かの質問の直前に、国会議員の定数削減や、公務員の人件費削減をできると思うか思わないかの質問を置いている。

だけど、この設問は、増税の前に削減を実施するとの前置きがあるものの、質問そのものは、削減できるのかできないのかだけを問うていて、増税と削減とが切り離されているような印象を与えている。そして、その直後に増税には"景気を考慮する必要があるか"と、ダイレクトに増税と景気を結び付ける質問をしていて、明らかに、増税の前提には景気回復があるべきではないのかと暗に仄めかしている。

これは、質問の仕方で結果を受け取る人の印象が変わるよい例で、NHKや共同通信の世論調査と比較するとその違いがよく分かる。

これまで何度も触れているけれど、増税の前に景気回復があるべきだと考えているので、景気と増税についてしっかりと触れた今回の朝日新聞の世論調査はある程度評価はできる。

このように、消費税増税については、マスコミ各社の扱いに微妙な温度差らしきものが現れてきたのは注目してもよいかもしれない。




2.増税以外の懸案事項

それでも、マスコミ各社で、軒並み増税反対が賛成を上回り、内閣改造の政権浮揚効果もないとなると、野田首相もいよいよ追いつめられてしまった。

朝日新聞の世論調査でもあるように、一川、山岡両氏の退任と岡田氏の副総理に起用した人事が、それぞれ5割以上の評価を受けたにも関わらず、内閣支持率が上がらず、国会議員定数と国家公務員給与の削減もできないだろうと過半数の人が考えているということは、野田首相のやる気だけは買うけれど、やり切るだけの実力はないと見透かされているということなのだろう。

だから、いくら、"ネバー、ネバー"と連呼したところで、それだけでは白けた目で見られるだけで、何らかの実績を上げて目にもの見せないと、内閣支持率には結び付かないだろうと思われる。

ところが、一番力瘤を入れて頑張りたい消費税増税は、国民の反対が多数になっていて、一部マスコミの世論誘導のお蔭で、なんとか、国会議員定数と国家公務員給与の削減をやるのならとの条件付きで、消費税増税の目が残っているのが現状。

そして、その削減も無理だろうと見られている。だから、財務省が本当に増税をしたいのならば、まず財務省内の職員給与の一部返上から始め、各省庁の職員給与削減と地方公務員の給与削減など、それこそ身を切る動きをしなければならなくなってしまう。そんなことを自ら進んでやるとは思えない。

となると、野田政権は、消費税増税関連で実績を上げて、支持率を上げる目は殆どないことになるから、その他で何か実績を上げるしか方法はない。そんなものに何があるのか。

今、野田政権が抱えている課題について、支持率という視点からみると、大きく2種類に分かれる。ひとつは、実施することができればプラスになって、実施できなければゼロまたは緩やかにマイナスになるという、やればやっただけプラスになる課題。もうひとつは、上手く対処することができて当たり前と受け取られ、支持率の浮上効果は殆どないけれど、対処に失敗すれば、支持率が大幅にダウンする課題。

前者の代表的なものは、景気回復に被災地復興や放射能汚染地域の除染。そして、拉致被害者問題になるだろうし、後者については、原発再稼働を含めた、石油資源確保などのエネルギー安保に、北朝鮮核開発や尖閣、普天間などに代表される外交・国防問題。

前者については、たとえ、現状のまま有効な手が打てなくても、いまのままダラダラを支持が落ちていくだけだけれど、後者については一度でも対応を誤ると致命的になる。それは単に政権がどうこうというレベルではなくて、国民全体が生き残れるのかどうかという問題に直結する。

イランのホルムズ海峡危機にしても、マスコミは少しも報道しないけれど、一朝ここで何かあろうものなら、日本が大ダメージを受けることは疑いない。

なのに、この辺りについての動きが殆ど見えない。裏ではやっているのかもしれないけれど、裏できちんと手当できるだけの国家運営能力があるのなら兎も角、いざその時になって慌てふためいてももう遅い。

今回の内閣改造で、一川氏の後任となった、田中直紀氏についても、素人の次はまた素人と、田中氏の答弁能力を不安視する声もある。

今の野田首相は増税に重きを置きすぎていて、その他が疎かになってはいないかと危惧している。「積み木な内閣改造」のエントリーでも触れたように、筆者は内閣改造で、野田首相の負担が益々増えたと考えている。

であるにも関わらず、外交安保が相変わらず弱いままだと、有事の際には後手後手を踏むことになる。もう少し増税以外の課題にも広く目をいきわたらせて、必要な手を打っておかないと危険だと思う。




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この記事へのコメント

  • ちび・むぎ・みみ・はな

    > 野田首相もいよいよ追いつめられてしまった。

    もう一人, いよいよ追い詰められてしまったのが
    自民党谷垣総裁.

    これで政権が倒せなければなんのこっちゃねー.
    2015年08月10日 15:26
  • NGA

    本気さが伝わってこない。
    増税で天下りとかその他もろもろあやむやにしたいのか。
    増税しても国民が苦しむんだからまずは自分の身を切ることぐらいしないと支持率は下がりつづける・・・
    増税するならそれで何をするのかを明確に!!
    2015年08月10日 15:26
  • 日比野

    NGAさん、こんばんは。コメントありがとうございます。

    >増税するならそれで何をするのかを明確に!!
    同感です。今日付のエントリーで同じ内容を上げたあと、NGAさんのコメントをみました。やはり皆さん、考えることは同じですね。
    2015年08月10日 15:26

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