
「ネバーネバーネバーネバーギブアップ。私は大義のあることをあきらめないでしっかりと伝えていくならば、局面は変わるというふうに確信しています」野田首相 於:1/4 年頭記者会見
1月6日、政府は、首相官邸で社会保障改革本部の会合を開き、社会保障と税の一体改革の素案を決定したと発表した。
素案では、2014年4月に消費税率を8%に、2015年10月に10%へと段階的に引き上げ、消費税収のうち、国の分は全額を社会保障に充当する社会保障目的税化を図ることとしている。
政府は来週から与野党協議を開始する意向で、野田首相は年度内の法案提出に意欲を見せているのだけれど、自民党の大島副総裁は「消費税を上げないと言って政権与党になった。うそをついた政権に協力するのは、民主主義の根本をないがしろにすることだ」と、与野党協議に応じない考えを示し、重ねて消費増税関連法案提出前の衆院解散・総選挙を求めている。
また、公明党の山口代表も、「社会保障の全体像を明確にすることが重要なのに、中途半端な改革案で実りある結論は難しい」と与野党協議に否定的。
早くも、苦しい立場に立たされた野田首相は、局面打開を図って手を打ち出した。
社会保障改革本部後、政府・民主党は三役会議を開いて、一体改革素案を巡る与野党協議には前原政調会長を当てると共に、並行して進める国会議員の定数削減は樽床幹事長代行、郵政改革は輿石幹事長、国家公務員の人件費削減は前原氏がそれぞれ担当することを決めた。
同じく1月6日に、野田首相は「各府省連絡会議」に出席して、社会保障と税の一体改革とともに行政改革も「やり遂げなければ ならない課題」だとして、官僚側の抵抗が強い出先機関の廃止や、公務員人件費の削減などの行政改革を進めるよう指示。また、今月24日になると見られている通常国会召集前に、参院で問責決議を受けた一川防衛相と山岡消費者担当相の交代を含めた内閣改造を13日にも行う方針を固め、更に、夕方、帝国ホテルで行われた、時事通信社・内外情勢調査会などが主催する新年互礼会での挨拶で、同席した自民党の谷垣総裁に対し「国家国民のために一緒に議論していただきたい」と協議参加を直接訴えた。
まぁ、これだけみれば、野田首相は、色々やれることをやっているなと思うかもしれないけれど、筆者には、これまで何度も指摘しているように、追いつめられてからようやく動き出す、「リアクション」対応に見えて仕方がない。
各府省連絡会議にしても、これは元々、東日本大震災後の3月22日に、被災者支援策を円滑に進めるため、被災者支援特別対策本部の下に、各省庁の事務次官らをメンバーとして、省庁の連携を円滑化するために設けられたもので、 野田政権になってから定例化されていた。
だけど、野田首相が各府省連絡会議に出席したのは、今回が初めてで、行政改革をやらないと、にっちもさっちも行かないと判断してのことだろうと思われるし、去年はあれ程、問責を受けた一川、山岡両氏を交代させる内閣改造をやろうとしているのも、与野党協議をやるためのもの。
やはり「リアクション」の域を出ていない。野田首相は、周りに配慮する余り、やるべきことが1テンポ、2テンポ遅れているように見える。
それに、一体改革素案を巡る与野党協議を担当することになった、前原政調会長が、上手く取りまとめられるのかどうかも怪しい。昨年、復興債の償還期間を巡って、民主・自民・公明の与野党協議が行われたことがあったのだけど、協議に当たっていた前原氏は、当初の民主党案である15年を主張して譲らず、60年を要求していた自民党と真っ向対立して協議は暗礁に乗り上げていた。業を煮やした輿石幹事長は、前原氏から交渉の主導権を握ると償還期限を25年と譲ることであっさりと合意に漕ぎ着けたという過去がある。
しかも今回は、民主党がお願いする立場。口だけ番長ではどうにもならない。
実は、1月5日に、民主、自民、公明3党の政調会長は消費増税を巡る与野党協議の「前哨戦」となる政策協議を行っている。前原氏は、6日に決定する社会保障・税一体改革素案の原案を自公両党に提示して自公両党の出方をうかがったのだけれど、自民党の茂木政調会長は「閣議決定前に協議を持ち出されても困る」とけんもほろろ。公明党の石井政調会長も一体改革の内容に不満を示した。
また、この日の政策会議で議論された、国家公務員給与削減の問題についても、給与を平均0・23%引き下げる人事院勧告の実施を巡って、対立し、結局平行線のまま終わっている。
このような状態では、いくら頭を下げて与野党協議に持ち込めたとしても、自公両党が、早期解散を求めている以上、話し合い解散を約束するのでもない限り、合意を得るのは難しい。
1月6日、民主党の藤井税制調査会長はTBSの番組収録で、 9月の民主党代表選で野田佳彦首相が再選される可能性について 「(消費税増税などで)退いたらない。貫いたら再選だ」と述べたそうだけれど、そんなことを言わなければならないところに、野田政権の窮乏が垣間見える。
ネバー、ネバー、ネバー、ネバーギブアップと、否定を"4乗"したら、それは肯定になる。

この記事へのコメント
ちび・むぎ・みみ・はな
嘘付党の程度の悪い妄言がまるでまともな
政治主張かのように議論されるこの状況は.
ルーピー→ヒトデナシ→増税と
日本の政治レベルをひたすら落している.
もう, 「首相が何か言っているな」のレベル.
新聞も信頼できないことは殆んど周知の事実.
田中英道氏曰く, 全てが信頼できなくなる状況
になると社会不安が生じ易くなる.
実際, 日本以外なら内乱→共産革命のレベルだ.
GHQが蒔いた革命の種が芽をふいたとも言える.
あちこちで利益誘導の策略が行なわれている.
日本が戻るべきところは仁徳天皇の慈しみの
心が保たれている皇室しかないかも知れない.
日比野
雪斎さんのブログ読んできました。なるほど、「決して諦めない」ではなくて、「決して降伏しない」なのですね。降伏するかもしれない状況にあると無自覚に認めているのが今の状況を端的に表していますね。
仰るように、日本人の変化対応力はすごくて、世の中が何某かのトレンドに流れたとき、それに乗っかって、またそれに合わせて、調和を作っていくという不思議な力を持っているように思いますね。
税収増やすなら、富を生み出して、成長を目指す。仰るとおりです。この方向でのビジョンをもっと打ち出さなくてはなりません。TPPを進めるのであれば、TPPをすることで、具体的に日本をどうする/どうなるという見取り図を示せなくてはいけないと思います。
白なまず
SAKAKI
実は雪斎さんのブログに「ネバーネバーネバーネバーギブアップ」の引用を「野田政権の窮乏」とみるエントリーがありまして、世間の知識人が感じておられるのは、同じなんだなぁと改めて思う次第です。ちなみに英語圏での「ドジョウ」って「ズルい奴」というニュアンスだそうで、野田さんはもう少し、政治家としての言葉の使い方に気を配ったほうがよいかなぁと思います。
まぁ財務省の説明を受けたら、増税以外に道がないように思えるし、経済産業省と農林省の説明を受けたらTPPは農民捨ててまで交渉参加という図式になってしまいますよね。
しかしながら日本人の変化に対応する適応力は凄まく、フェラーリーに乗っている金持ちを不幸な奴らだと哀れむ文化がある不思議な民族性と、思想を宗教に支配されない人々が大部分なワケで、大部分の人たちはお役所にモノ申しません(笑)
税収増やすなら、富を生み出す仕組みをたくさん作ることで、まさにで国内でエネルギー産み出す仕組みに対し、ネヴァーギブインで臨むことと思います。