昨年、12月19日、アメリカのIBMは、社会のトレンドや調査にもとづいて2017年までに実現が期待される革新技術の年次予測「IBM 5 in 5」を発表した。
これは、人々の働き方、生活、遊び方を一変させる可能性を持った一連のイノベーションを挙げたもので、今年で6回目となる。それは次の5つ。
1)あなたの作ったエネルギーが誰でも使えるように
2)もうパスワードは不要に
3)人の心を読むことが空想から現実に
4)デジタル・デバイドのない世界に
5)迷惑メールが価値あるお知らせに
1については、たとえば、自転車を漕ぐことで点灯するライトのように、車輪のスポークに取り付けた小さなデバイスによって、ペダルを漕ぐとバッテリーに充電する装置など、身の回りのちょっとしたことから発電した小さなエネルギーを他の人が使えるようにする仕組み。
2は、マルチファクター生体認証と呼ばれる技術のことで、指紋、声紋、網膜パターン、掌の形状、顔立ちといった、生まれながらの身体的特徴によって合成された生体情報が、そのままオンライン・パスワードとして利用できる仕組みだそうなのだけれど、既に、銀行のATMなんかでは指紋認証機能付きのものがあるから、それに更に声紋や網膜パターンなどを加味していって、単に指紋を盗んだだけでは破れないパスワード技術のことと思われる。
3は、人間の脳と機械をリンクさせる技術のことで、たとえば、話したい相手を思い浮かべるだけで、電話をかけられるようになるとか、カーソルの移動先を思い浮かべるだけで、画面上に表示されているカーソルを操作できるようになるとのことだけれど、これも、脳波で動く義手なんかが開発されているから、実現可能性はかなり高いと思われる。
4は、モバイル端末の出荷台数が、5年後には56億台に達し、世界人口の80%が1台ずつモバイル端末を持つことになると予測されることから実現されるとしている。
最後の5は、スパム・フィルターの精度が上がり、事実上スパムは根絶されると同時に、未承諾広告もよりパーソナライズされた内容になることから、迷惑メールが価値あるお知らせになるとしている。たとえば、カレンダーに登録しているスケジュールに合わせて、お気に入りのバンドのチケットを発売開始と同時に予約できるようになったり、搭乗予定の飛行機が大雪の影響を受けそうな場合に通知を受け、航路を変更することができるようになるという。
これは、ソーシャル・ネットワークやインターネットのユーザー嗜好など、生活のあらゆる側面から得られるデータを解析して統合し、各ユーザーに最適な情報を提供できるリアルタイム・アナリティクスを活用した技術によって実現されるとしているけれど、確かに、googleなどで検索すると、知りたい情報のみならず関連情報も拾ってくれるし、スマートフォンでも本人の位置情報を拾っているとされているから、こうしたこともやがては可能になると思われる。
だけど、革新技術のその奥には、革新的発想、創造的想いがあることを忘れてはいけない。
技術は確かに社会を革新させ得るものだけれど、その前に、革新した未来の姿、イメージが先行してあって、それを実現したいという思いと努力が、それを現実のものとする。
「攻殻機動隊」を例にとるまでもなく、生体認証とか、人間の脳と機械をリンクさせる技術とか、SF小説や漫画の世界では既にあったもの。まず、"あんなこといいな、出来たらいいな"という願いがあることが全ての出発点。技術は後でついてくる。
「未来イメージは国家を繁栄させる」のエントリーでも触れたけれど、未来イメージが一杯詰まったSF小説や漫画・アニメが広く普及している日本では、これからもどんどん革新的技術が生み出される余地がある。
日本の成長は限界に達したなんてことは、断じてない。
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「思考読む機械」まもなく登場か、IBMの近未来予測 2011年12月20日 16:57 発信地:サンフランシスコ/米国
【12月20日 AFP】米IBMは19日、社会のトレンドや調査にもとづいて2017年までに実現が期待される革新技術の年次予測「IBM 5 in 5」を発表した。機械が人の考えを読み、目の前にいる相手を認識するという近未来像が示された。
この中でIBMは、コンピューターやスマートフォン(多機能携帯電話)などの機器と脳をつなげる方法が研究されていると説明し、電話をかけようと考えるだけで電話をかけたり、コンピューター画面上のカーソルを動かそうと思うだけでカーソルを動かしたりする例を示した。
またパスワードを入力するのではなく、網膜スキャンや顔認識、声認識などの生物的特徴が個人識別の主流になるだろうと予測し、ATM(現金自動預払機)の前で自分の名前を言ったり、小さなセンサーをのぞき込んで網膜を認識させたりして安全に現金を引き出せるようになるかもしれないという。
さらに、歩行や自転車、あるいは自宅の水道管を流れる水の流れなどで発電する技術もでき、携帯電話による情報のアクセスはもっと容易になり、「持つ者と持たざる者」との間のデジタルディバイド(情報格差)が縮小するだろうと予測している。(c)AFP
URL:http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2846711/8218457
この記事へのコメント
ちび・むぎ・みみ・はな
> 1)あなたの作ったエネルギーが誰でも使えるように
これは自然エネルギ利用の時にも出てくる言葉.
小さなエネルギを利用するには
1.そのまま必要なところへ運ぶか,
2.集約して大電力として利用する.
の二つしかないが, 前者は搬送経路の問題,
後者は熱エネルギのエントロピと同じ問題
があるから不可能だと思う.
新しい技術とは, 全く新しいものではなく,
現存技術の洗練化だろう. 全く新しいものが出る,
という発想の下には一種の革命思想がある.
物事はゆっくり進むのが「吉」
Google や IBM の研究所には本当に頭の良い
人達が多いが, 頭の良い人達は自分達が
社会を変えられると思いがちだから
庶民不在の革命思想に進む.
革命で一般庶民が幸福になることはあり得ない.