民主党の底に残るもの
2月23日、野田首相は衆院予算委員会で、社会保障と税の一体改革大綱に衆院議員定数80削減を明記したことを陳謝した。
理由は、自公両党が「三権分立の観点から見て、内閣による国会への不当な介入だ」と、政府の越権行為であるという理由。 確かに行政府の長である内閣が、立法府の専権事項である、法律制定に関わる部分について大綱に明記したのは越権になる。野党側はこれを理由に予算案の日程協議を拒否していた。
結局、野田首相は、立法府の在り方に深く踏み込んだ表現があり、国会の議論に迷惑を掛けた、と詫びたのだけれど、大綱の修正については明言しなかった。野党側は、大綱から定数削減部分を削除するよう求めていく構えを崩していないから、まだ問題が完全解決したわけじゃない。
ただ、自民党の馳浩衆議院議員によれば、野田首相の今回のお詫び答弁書は、自民党の石破氏が書いたのだそうだ。何故、与党党首で首相のお詫び答弁を野党が書かなくてはならないのか理解に苦しむ。首相補佐官や民主党の党3役は一体何をやっているのか。書く気がないのか、それとも書く力がないのか。どちらにしても問題であることには変わりない。
野田首相の陳謝で、自公両党はとりあえず軟化して、2012年予算案採決に向けた中央公聴会を3月2日に開くことになったようなのだけれど、これまた馳議員によれば、事態が全く動かないので、中井予算委員長が、午後3時になって、民主党の城島国対委員長を自民党岸田国対委員長に派遣して、それでようやく日程が決まったのだという。だけど、この日程では、予算案の衆院通過は3月の第2週以降となってしまう。
予算案は衆院を通過すれば30日後に自然成立する憲法上の規定があるのだけれど、採決前に必ず、中央公聴会を開催することが国会法で定められている。従って、今年度中に予算案を確実に成立させようとしたら、3月2日には衆院を通過させなくてはいけなかった。だけど、3月2日の公聴会開催で、自然成立は無くなった。
尤も、民主党は公聴会の開催を2月29日か3月1日を提案していたのだけど、野党が回答を留保していた。そこへ、この大綱への議員定数80削減明記問題が重なった。結果論かもしれないけれど、不手際もいいところ。
ほんの小さなことであっても、それが積み重ねると大きなものになる。ちょっとした不手際や不注意が後々になって響いてくることがある。今回の野田首相のお詫び文を野党が書いたことにしても、後になってどんなしっぺ返しになって返ってくるかも分からない。
さて、その議員定数削減については、「ぶれる、逃げる、嘘をつく、そんな政権」のエントリーで触れたように、暗礁に乗り上げている。そこで民主党は、今度は国会議員の歳費削減を持ち出してきた。
2月27日、輿石幹事長は国会議員歳費削減について「わが党としてどうするか野党に提案しないといけない。早急に考える」と前向きな姿勢を示しているけれど、輿石氏は先月の21日の時点では、「政治家にも生活がある。自分の生活ができなくては政治ができないという現実もある」と議員歳費削減に反対していた。それが、早急に考えるとなるのだから、相当に追い込まれている。
だけど、そこまでしたとしても、国会で法案が通る見通しもはっきりしない上に、消費税増税法案の閣議決定についてさえも、2月25日、国民新党の亀井代表が、消費増税法案の閣議決定に反対する可能性を示唆した発言をしていて、早くも暗雲が立ち込めている。
仮に本当に、自見金融・郵政改革担当大臣が閣議決定に反対した場合、野田首相は、彼を解任してまでも閣議決定できるのか。ある意味、それは、野田首相の「不退転の覚悟」がいかほどのものなのか、試されるときだと思うけれど、本当にそんなことをすれば、野田首相の本気度が分かる反面、世論はそこまで本気なのであれば、身を切る改革をしろよ、という声が一層高まることになるのではないかと思う。
だから、やはり順序としては、身を切る改革が先で、そのあとに増税を持ち出さないと世論はそれを許さない。はっきりしているのは増税だけで、定数削減はやれません。解散総選挙も違法状態だからやりませんでは通らない。
そんな中、2月25日、岡田副首相は三重県四日市市での講演で、マニフェストに記載した「配偶者控除廃止」撤回の可能性に言及し、政府与党内で波紋を広げている。問題なのは、岡田氏が政府・与党内の調整をしないまま発言したことで、党内で批判の声が相次いでいるという。
首相周辺は「この政策こそ民主党政策の『一丁目一番地』だ。『何のための政権交代だったのか』と有権者にまた言われる」と青ざめていると報道されているけれど、結局は、あっちで叩かれ、こっちで叩かれ、出したり引っ込めたりの途中経過は脇に置いて、最後に何が残って、何が決まったかの結果をみれば、その答えは自ずから明らかになる。
パンドラの箱には希望が残っていたけれど、民主党という箱には何が残るのか。
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一体改革大綱 早くも不備 「定数80削減」で首相陳謝
野田佳彦首相は二十三日の衆院予算委員会で、社会保障と税の一体改革大綱に衆院議員定数八十削減を明記したことを陳謝した。自民、公明両党の反発を受けた対応だが、不退転の決意で十七日に閣議決定したばかりの大綱に不備があったと自ら認めた。今後も野党側に主導権を握られる展開が続きそうだ。 (城島建治)
「立法府の在り方に深く踏み込んだ表現があり、国会の議論に迷惑を掛けたことを遺憾に存じ、深くおわびする」。予算委で首相は、沈痛な面持ちで陳謝した。
自公両党が反発したのは、国会の領域である議員定数削減を大綱に明記したのは「政府の越権行為」という理由。両党は、政府が適切な対応を取らなければ、二十八日以降の審議日程をめぐる協議に応じない姿勢を示し、圧力をかけた。
首相としては、消費税率引き上げに理解を得るため、国会議員が自ら身を切る覚悟を示そうと大綱に定数削減を明記したが、思ってもみない野党の反発だった。
首相が陳謝したことで、自公両党はとりあえず軟化。民主、自民両党は二十三日の国対委員長会談で、二〇一二年度予算案を採決する前提となる中央公聴会を、三月二日に開くことで合意した。しかし、衆院通過は三月の第二週以降となり、政府・民主党が目指していた年度内の自然成立を事実上断念するはめになった。
これで問題が終わったわけではない。野党側は、予算案の日程協議には応じたが、今後も、大綱から定数削減部分を削除するよう求めていく構え。
公明党は、衆院選挙制度改革をめぐる与野党協議に関し「定数の問題が解決するまで協議に応じない」(幹部)との姿勢さえ見せる。
首相もこうした状況は承知しており、予算委で「批判があることは十分に分かる。対応を政府、与党で検討している」と答弁した。今後の展開次第では、削除に応じざるを得ない可能性もある。
しかし、定数削減部分を削除すれば、民主党内の消費税増税反対派から突き上げられるのは確実。党執行部からも「大綱の一部だけ切り取るやり方には賛成できない」という声が出ている。
URL:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2012022402000057.html
“決壊マニフェスト”にさらに火だね 岡田氏「配偶者控除廃止」撤回の可能性に言及 2012.2.27 23:16
多くがほごになった民主党の平成21年衆院選マニフェスト(政権公約)で、今度は「配偶者控除廃止」が党内の新たな火だねになりつつある。きっかけは、幹事長時代に自民、公明両党と3党合意で子ども手当縮小の道筋を付けた岡田克也副総理の発言で、配偶者控除の廃止を撤回する可能性に言及した。国会対策の点から撤回を主張する自民党にまたしても擦り寄る姿勢をみせたのだが、政府・民主党からは事前調整をしないままの岡田氏の「暴走」に批判の声が相次いでいる。
「配偶者控除の廃止は、たしかにマニフェストに書いた。しかし、自民党は大反対なので、法律は通らない。次のマニフェストにどう書くか党できちんと議論しないと…」
岡田氏は25日、三重県四日市市での講演でこう訴えた。
民主党が掲げた配偶者控除廃止は、民主党のスローガン「控除から手当へ」の象徴であり、子ども手当の代償でもあった。
3党合意で子ども手当制度が縮小になれば、配偶者控除廃止も見直さざるを得なくなる。しかし、「配偶者控除廃止」には女性の社会進出促進という大きな目的もあり、党として容易に撤回できる政策ではない。
首相周辺も「この政策こそ民主党政策の『一丁目一番地』だ。『何のための政権交代だったのか』と有権者にまた言われる」と青ざめる。
また、岡田氏が今回も政府・与党内の調整をしないまま発言したことも波紋をさらに広げた。
岡田氏は、副総理として国会議員歳費の削減を訴え、小平忠正衆院議院運営委員長から「行政府の立法府への越権行為だ」とおとがめを受けた。
2月13日の衆院予算委員会では、3党合意を受けた高校授業料無償化の見直し作業が進んでいないことに、3党合意当時の幹事長として答弁を求められたが「発言する立場にない」と説明を拒否し、野党が態度を硬化させた。岡田氏の度重なる「暴走」発言に政府・民主党はすっかり神経質になっている。
小沢一郎元代表を党員資格停止に追い込んだことで岡田氏への恨みが鬱積している小沢氏側近からは「岡田氏が原理主義者というのは間違っている。都合がいいだけだ」と感情論にも似た批判が漏れる。
城島光力国対委員長も「慎重な党内論議が必要だ」と苦言を呈した。
URL:http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120227/plc12022723180010-n1.htm
この記事へのコメント
ちび・むぎ・みみ・はな
> して、2012年予算案採決に向けた中央公聴会を
石破氏を含め自民党執行部は事態を理解していない.
陰謀しかできない山賊どもが政府に居座っている.
これで何時まで日本国が持つのか.
その間, 優良な企業は立ち行かず, 工場も移転する.
支那は領土を広げようと既成事実を作り上げる.
米国は日本の足元を見て, TPPと沖縄で攻勢をかける.
嘘付山賊どもが引き上げた時, 困難な事態のみが残る.
自民党がやるべきことは嘘付即時退散の国民運動.
それが不可なら, 谷垣総裁は躓ずきの石に過ぎず.
日比野
>日比野庵殿はこれに対して, 完全否定も含めて,事実関係の整理をする義務がある様に思うが, 如何だろうか.
なぜ私にそのような義務が発生するのか、さっぱり分からないのですけれども、渡部氏の論文については、エントリーをしてみたいと思います。(ついさっき書き上げたとこですけれども…)