デフレ脱却政策とインフレターゲット
2月23日、民主党の円高・欧州危機等対応研究会は円高の抑制とデフレ脱却に向けた政策提言をまとめた。
内容は、日本銀行に対して、明確なインフレ目標を設定した上で、物価上昇率の目標値を2%超とするよう求めるもの。目標達成に向け、首相と日銀総裁による定例会談の開催も要請するという。
実際、14日の日銀の金融緩和発表以来、円売り・ドル買いの流れが続いて、23日もドル相場は80円台をつけた。日銀は、昨年何兆円だか使って何回か円売り介入をしたのだけれど、介入効果は数日しか続かなかった。
それが今回は、発表から1週間経過してなお、円安基調はづついている。市場関係者によれば、なんでも、アメリカの景気が改善傾向を見せる中、アメリカの金利上昇局面が近づいて、将来の日米金利差拡大が意識され始めていることの他に、日銀に対する見方が変わりつつある影響もあるのだという。
東海東京調査センター・シニアストラテジストの柴田秀樹氏によれば、「日銀は金融緩和でいつも後手に回っていた印象があったが、今回の追加緩和で将来のリスクに先手を打って金融緩和を行うスタンスに軸足が変わったとの見方が強くなっている」としている。
2月23日の衆議院予算委員会に出席した白川日銀総裁は、「当面物価上昇率1%を目指して強力に金融緩和を続ける固い決意」と述べているのだけれど、同時に、「日本で目標、ターゲティングという言葉を使うと、機械的に物価上昇率だけを目指してやっていくとの誤解が生じてしまう。機械的な運営ではなく、長期的にどういう状況を目指すのか、さんざん考え、目途という言葉を使った」とも述べている。
物価上昇率1%を目指して強力に金融緩和を続けるとする一方で、目標というと物価上昇だけと誤解されるから"目途"にする、という。
為替介入でも殆ど効果がなかった円相場が、日銀が本気になったと市場が受け止めてくれたことで一銭も使わずに円安になったのだから、固い決意だけ述べておけば、市場が美しき誤解をしてくれるかもしれないのに、なぜ、こう目指すのか目指さないのかよく分からない発言をしてしまうのか。
機械的な運営をしないということは、その時々で柔軟に判断するという意味になるのだけれど、判断をする為には、現状をなんと認識するかが大事になる。
インフレならインフレ対策、デフレならデフレ対策するのが当たり前なのだけれど、それは今現在がインフレなり、デフレなり、の状態にあると認識できなくちゃいけない。
本当は、デフレなのに、日銀総裁がインフレだと「認識」してしまったら、デフレ化のインフレ対策をされてしまうことになる。機械的に何々の指標が一定のラインを超えたら、こうする、と予め決めておけば、そうした、"勝手な認識による"判断をする余地は少なくなるのだけれど、機械的に運営しないのであれば、そこを注意しなければならない。
その歯止めとなり得るのは、ひとえに結果。誰にでも分かる数字で判断できる基準を設けること。
今回でいえば、"物価上昇率1%"がそれにあたる。つまり、機械的だろうが、柔軟に運営しようが、物価上昇率1%が達成されていなければ、その運営は間違っていると判断される。
だから、この数字目標というのは物凄く重要なことなのだけれど、もうひとつそれに負けず劣らず重要な要素がある。それは、何時までにという期限。
目標は数字(水準)と締切の二つを定めて、始めて目標足り得る。なぜなら目標とは言葉のとおり、目指すべき地点だから。
地図で特定の場所を緯度と経度で示すように、目標も、目指す数字(水準)と期限の2つの軸で座標を固定してやらなきゃいけない。数字だけで締切がなければ、1年後でも100年後でも1万年後でもいつでもいいことになるし、締切だけで数字がなければ、締切までにプラス10%でも、プラス1億分の1%でも、はたまたマイナス100%でもいいことになる。
だから、1%の物価上昇率を長期的な目途だといっても、その長期ってどれくらいなのかをちゃんと決めておかないと、いくらでも言い逃れできてしまう。白川総裁の「機械的な運営ではなく、長期的にどういう状況を目指すのか」という言葉には、そうした"逃げ"がある。
日銀に先立って、インフレターゲットを表明したFRBは、何年までに何%とは言ってないけれど、物価上昇率2%をゴールとして、2014年後半までゼロ金利政策を続けると言っているから、まぁ、実質上、2014年中までに物価上昇率2%を目標にしていると言っているようなもの。
だから、日銀がインフレターゲット政策に舵を切ったこと自体は評価できるけれど、やはりもう一歩踏み込んでいつまでにという期限をそれこそ、「目途」でもいいので明確にしてほしい。
そのためにも、政府は、大々的な財政出動でもして日銀を後押しをする必要がある。どう見ても、消費税増税なんかにかかずらっているときじゃない。
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インフレ目標2%超に…民主研究会
民主党の円高・欧州危機等対応研究会(会長・小沢鋭仁元環境相)は23日、円高の抑制とデフレ脱却に向けた政策提言をまとめた。
提言は、日本銀行に対し、明確なインフレ目標を設定した上で、物価上昇率の目標値を2%超とするよう求めた。目標達成に向け、首相と日銀総裁による定例会談の開催も要請した。来週にも政府・日銀に提出する。
さらに、日銀が3月に開く金融政策決定会合で追加金融緩和に踏み切るよう求めた。4月に任期満了を迎える日銀審議委員2人の後任候補のリストを研究会として作成し、政府に提出することも盛り込んだ。
インフレ目標は、政府などが定めた目標の達成を目指して中央銀行が金融政策を運営する手法だ。
(2012年2月23日18時30分 読売新聞)
URL:http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20120223-OYT1T00936.htm?from=popin
「インフレ目標」では誤解生じる…日銀総裁
日本銀行の白川方明総裁は23日の衆院予算委員会で、消費者物価の前年比上昇率で当面1%を目指すとした新たな金融政策の枠組みについて、「日本で目標、ターゲティングという言葉を使うと、機械的に物価上昇率だけを目指してやっていくとの誤解が生じてしまう」と述べた。
目標が達成できない場合、政府に理由を説明する義務を負ったりする「インフレ目標」政策とは違うとの認識を示したものだ。
日銀は、新たな枠組みで「目標」を使わず、「物価安定の目途」と名付けた。白川総裁は、英イングランド銀行がインフレ目標を2年間達成できないのに、その間に金利を下げたりしたことを例に挙げ、「機械的な運営ではなく、長期的にどういう状況を目指すのか、さんざん考え、目途という言葉を使った」と語った。
(2012年2月23日18時20分 読売新聞)
URL:http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20120223-OYT1T00934.htm
この記事へのコメント
ちび・むぎ・みみ・はな
究極の対策は嘘付党政権のひきずり下ろし,
これ以外にないだろう.
社会(主義)原理主義とは恐ろしいものだ.
しかし, 誰が見ても無能な総裁が日銀に居座り,
誰が見てもやはり無能な首相達が政府に居座る.
しかも, 嘘付達が政権を盗んだ道具は嘘八百
マニフェストと嘘八百選挙標語「生活が第一.」
税金を資産運用に使った「大」政治家もいる.
合法なのかも知れないが, 「道理」が通らない.
日本の社会は元来が嘘つきが大きな顔をする
ことを前提としていない. 何故なら,
嘘つきはお天当様に顔向けができないから.
道理がなければ, 社会主義という律令政治を
行なうしかないが, 社会主義で国民が幸福に
なった例は一つもない.
やはり, 日本の「道理」の回復が重要.
「軍靴の音が....」という聴覚障害新聞は
ほっておいて, 一人一人が考えるべきだろう.
いざという時に国民を守るものは何か?
困った時に社会を守るモラルは何か?
opera
財政健全化に関する政府の目標が、プライマリーバランスの黒字化という意味不明・実現不可能なものから、対GDP比削減という常識的なものに変更されたのは麻生政権下でしたが、デフレであるかどうかを判定するGDPデフレーターを経済学的に常識的なモデルから、小泉・竹中時代にデフレを判定しにくくなる特殊なものに変更されたと言われていますね。
まず、これを元に戻す必要があります。でなければ、実際にはデフレであっても、政府はデフレを認識せず、デフレ対策をする必要が無いということになりますから。
次期政権は、民主党政権はもちろん、橋本行財政改革及び小泉構造改革の後始末もしなければならないのですから、本当に大変です。
この点に関して、某ブログに興味深いコメントがあったので引用します。
「デフレ不況問題が自民党が支持されない最大の要因です。
国民は間違った情報の中からでも原因を特定していて、それが、橋本財政改革と小泉構造改革である事までは分からずとも、自民党の政策の失敗である
sdi
それゆえ、バブルの兆候が見えたとたんにそれを潰しにかかるのが(彼らにとっての)正義、ということではないかと私は考えています。