植物工場と陸上養殖

 
食糧生産技術は日々進化しているようです。

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1.TPAC-PPS

2012年3月から「植物工場」で生産された野菜について、安全性を評価する民間の第三者認証制度が始まるという。

この認証制度は、工場跡地などの土壌の第三者評価を行うNPO法人「イー・ビーイング」が設けている「生産物及び生産システム第三者評価委員会(TPAC-PPS:Third Party Accreditation Committee on Products and Product System)」が行なう。

TPAC-PPSは、植物工場で作られた野菜についての安全性や機能性や栄養面でのメリットを評価するのだけれど、大きく分けて、生産物(野菜)と溶液の評価と工場側の生産システムの2つの評価を行う。

認証は、野菜と溶液の評価認定については、野菜中の一般生菌、大腸菌や糖度、抗酸化力、ビタミンや放射性物質について、更に、養液中の一般生菌、大腸菌、硝酸イオン、有害重金属等について検査機関の検査を受け、その結果をTPAC-PPSに提出して評価・認証を受ける流れとなっている。

また、工場側の生産システムについては、再現性システム文書として、工場運営マニュアル一式を提出したものに対して、TPAC-PPSがその再現性を実査する。

評価は、TPAC-PPSで討議し、基本的に全員一致で結論を出すのだけど、何処まで評価を受けたかの範囲によって、3つの認証レベルがあり、野菜と溶液の評価と再現性システムおよびISO22000準拠の審査全てに合格すればゴールド認証、野菜と溶液の評価と再現性システムに合格すればシルバー認証、野菜と溶液の評価に合格すればブロンズ認証となる。

ゴールド認証を受けた野菜は、TPACマークを商品毎に添付することができ、TPACマークにつけられたQRコードからTPACマークの認定の基準をクリアーしたことや、その野菜のメリット・評価内容などの情報が得られるようだ。

認証の有効期間は3年で、その間は半年毎に確認評価又は認証継続評価を行うことになっている。

福島第1原発事故で、村は一部が警戒区域、残りも緊急時避難準備区域に指定された福島県川内村は、基幹産業が農業だったこともあり、村内の除染を進めているものの、農地の復活は容易ではなく、営農を再開しても作物が売れるか分からないという不安がある。

そこで、復興の手立てとして、植物工場に目をつけ、村営で来年4月の操業を目指し、失業した農家を30人程度雇う予定だという。また、南相馬市も導入に向けた調査に乗り出しているようだ。

これについては、昨年3月25日のエントリー「電気と水と野菜の問題を全部解決する方法」で福島第一原発の避難地域に植物工場を建ててそこで野菜を作ったらどうか、と提案したことがあるのだけれど、ほぼその通り実現することになる。

TPAC-PPSで、放射性物質含めて水も野菜も安全だと確認、認証されれば、野菜工場で出来た野菜ということを前面に押し出して販売することもできるだろう。これは大いに進めるべきだと思われる。

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2.アクアポニクス

人工環境で作るという意味では、或いは、魚なんかの養殖もそれに当たるかもしれないけれど、海上に生簀や筏などを設置して行なう海面養殖ではなくて、最近は海から遠く離れた内陸で養殖を行なう技術も開発が進んでいる。

これは、「閉鎖型循環システム」と呼ばれるもので、従来の海面養殖だと、残餌や養殖魚から発生する糞や尿、アンモニアなどの有機物が海洋を汚染して、赤潮などを引き起す原因となっていたのだけれど、この閉鎖型循環システムでは、汚染原因となる有機物を濾過・殺菌して清浄な海水を飼育水槽に戻して使用する。これだと海水を汚さない上に、広大な敷地も必要ない。更に外気に触れないようにすることもできるため、外からの病気の持ち込みを防ぎ、薬品を使用しない安全な成魚を生産できる利点がある。


日本でも近年、こうした閉鎖型循環システムによる、養殖も増えていて、フグやオコゼの養殖から、ヒラメやクエ、果ては鮑や海老まで陸上養殖できるようになっている。

海外でも陸上養殖は進んでいて、韓国は、ソウルの中心部に地下4階、地上13階の魚の養殖ビルを建設する計画を進めていて、来年にも予算計上するという。地上1、2階には養殖された魚を買える販売店やレストランを設け、3階以上の階に長さ45メートル、幅1メートル、深さ20センチの水槽を2000個置く予定で、一部は水族館のように観覧できるようにするようだ。



また、アメリカでは、アクアポニクスの研究も行なわれている。「アクアポニクス(aquaponics)」とは、魚の養殖「アクアカルチャー(Aquaculture)」と水耕栽培「ハイドロポニクス(Hydroponics)」を融合させたもので、魚の養殖と野菜の水耕栽培を一体化させたシステムのこと。

このシステムでは、魚の養殖水槽や野菜の栽培ベッドにバクテリア増殖させるのだけれど、このバクテリアが、魚にとって有害なアンモニアを硝酸塩や亜硝酸塩に分解する。硝酸塩は栄養素として植物に取り込まれ成長を促進すると同時に、植物の根がフィルターの役割を果たして、養殖水槽の水を濾過する仕組み。

このシステムを使うと、土壌栽培よりも野菜の成長スピードが高く、多少であれば栄養価を高めることも可能なのだという。

ただし、アクアポニクスは、養殖水槽の水を野菜栽培に流用するシステムだから、たとえば、海水魚を養殖している場合、養殖水槽には当然、海水が使われるのだけれど、野菜に塩水は使えない(例外として、塩水でも育つアイスプラントという野菜がある)。従って、アクアポニクスで養殖する魚は主に淡水魚になってしまうという制約がある。

また、同じ栽培ルーム内に魚の養殖と植物の栽培を行うと、個別の最適環境を実現することが難しくなるという弱点があることから、日本ではあまり広まっていないようだ。

だけど、 「海洋汚染を乗り越える方法」のエントリーでも触れたけれど、淡水魚と海水魚が一緒に飼える、「好適環境水」を使った野菜の水耕栽培が出来るのであれば、アクアポニクスの可能性も広がるだろうと思われる。

未来には、こうした陸上養殖が広く普及して、ビルで魚の養殖をするなんて当たり前になっているかもしれない。

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画像植物工場:「安全」認証、来月スタート 被災地で活用も 2012年2月22日 2時30分

光や温度を人工的にコントロールして野菜を育てる「植物工場」について、来月から安全性を評価する民間の第三者認証制度が始まる。東日本大震災により、日本の食料供給基地だった被災地の農地が、津波による塩害や原発事故に伴う放射能汚染に直面し、全国の消費者は食品の安定供給と安全に関心を払う。復興の手立てとして植物工場の活用に乗り出す被災地もあり、認証制度には利点アピールの狙いがある。

 「消費者の要望に沿った安全な作物を届けたい」。農業が基幹産業だった福島県川内村の猪狩健一・企画財政係長は、切実な思いを吐露する。

 福島第1原発事故で、村は一部が警戒区域、残りも緊急時避難準備区域に指定された。準備区域は昨年9月末に解除され、1月末には役場や学校を4月から再開する「帰村宣言」をした。村内の除染を進めているが、農地の復活は容易でなく、営農再開しても作物が売れるか分からない。

 着目したのが、閉鎖空間で土を使わずに野菜を栽培する植物工場だった。放射性物質の影響を抑えられ、消費者に安全性を強調できる。村営で来年4月の操業を目指しており、失業した農家を30人程度雇う予定。同県南相馬市も導入に向けた調査に乗り出している。

 認知度の不足や高コストのため、多くの企業が参入と撤退を繰り返してきた植物工場。植物工場研究の第一人者、村瀬治比古・大阪府立大教授(機械工学)は今後、被災地で定着すると予測する。「場所を選ばず安全な食料を生産でき、雇用も生まれる。被災地のニーズに合う」

 認証制度は、村瀬教授の助言を受け、工場跡地などの土壌の第三者評価を行うNPO法人「イー・ビーイング」(大阪市)が準備を進める。太陽光を一切使用しない工場が対象で、作物と栽培に使う養液に含まれる大腸菌や重金属、放射性物質などの量を調べる。野菜の糖類、ビタミンを調査するほか、常に同じ品質で作られているかも評価する。

 認証の可否は専門家でつくる委員会で決める方針。消費者は商品の包装に付いたQRコードなどで検査情報を得る。80年代後半から植物工場を手がける「エスペックミック」(愛知県大口町)は「一般の野菜と差別化できるなら有効」と取得に意欲を示す。

 どこかで衛生面のトラブルがあれば、植物工場全てに風評被害が広がりかねない。村瀬教授は認証制度を業界全体に広げていきたい考えで、大阪府立大が研究で提携する民間企業約120社に取得を働きかける。

URL:http://mainichi.jp/select/today/news/20120222k0000m040117000c.html



画像ソウル中心部に高層養魚場ビル=世界初、韓国政府が計画

 【ソウル時事】韓国農林水産食品省が、ソウルの中心部に地下4階、地上13階の魚の養殖ビルを建設する計画を進めている。来年にも予算計上して建設に着手したい考え。海沿いでの低層建物形式の養殖場は例があるが、都心の高層ビル形式は世界初という。
 地上1、2階には養殖された魚を買える販売店や、その場で刺し身などで食べられるレストランも設ける。3階以上の階に長さ45メートル、幅1メートル、深さ20センチの水槽を2000個置く予定で、一部は水族館のように観覧できるようにする。養殖魚はヒラメ、カレイなどを検討している。
 韓国では国産の水産物の42%(2011年)を養殖が占めるが、海での養殖は、自然災害に弱い上、海洋汚染の一因と指摘されている。これに加え、生産性の向上や都心への輸送費を軽減できるメリットから、都心での養殖ビルが考案された。13年予算に建設費として50億ウォン(約3億5000万円)を計上する見通しで、海水の再利用技術の開発も並行して進める。(2012/02/17-14:26)

URL:http://www.jiji.com/jc/zc?k=201202/2012021700514&g=int

この記事へのコメント

  • クマのプータロー

    この手の技術は衛生管理が肝ですね。これらを支える技術や運営管理マニュアル等のソフトウェアは結局どこの国が押さえるのでしょうか…。中には何十年というスパンで教育が必要な国もありますし、それが出来る余裕のある国って…。
    近所の大学ではマグロ養殖の実験を閉鎖空間で行っております。50センチくらいにはなっていたかな?
    2015年08月10日 15:25
  • 白なまず

    いつの日か、観賞用の水槽、花壇、庭、屋根には太陽光発電、全てを繋げてお魚、野菜、果物、電気を全て作れる庭なんて出来そうですね。穀物は休耕地や空き地を会社が借りて大規模化して、年数回収穫できるプラントとか、、、
    2015年08月10日 15:25
  • ちび・むぎ・みみ・はな

    韓国のビルに水槽をおく件では建物の
    耐久性に注目が当てられているようだ.
    大雑把に見積もって, 人間8万人分の重量
    になるから, エアロビックで揺れるような
    建物では持たないのではないか.

    植物工場.
    近場で消費するなら良いだろうが,
    大都市に持っていくとすればコストが問題.
    地方の農協レベルではコスト削減は難しい.
    大手の資本参加が可能な法整備が必要だろう.
    カゴメのトマト工場栽培ではコスト削減と
    法規制の問題が最後まであったと言う.
    2015年08月10日 15:25

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