防衛省来年度予算案と素人大臣

 
「田中防衛大臣を相手に質問を組み立てるのは実にしんどい作業です。やっていて虚しいことこの上ないのですが、自民党なら何をやるかを明確に示したうえで、何か少しでも生産的な議論となるよう、心がけたつもりですが、判断は皆様方にお任せいたします。」

画像


2月17日の予算委員会で、自民党の石破氏が質疑に立ち、防衛省および自衛隊において、東日本大震災を踏まえての教訓というか予算上の指摘があった。ちょっと重要な点だと思うので取り上げてみたい。

石破氏の指摘は次の4点。
1.輸送能力の問題
2.偵察能力の問題
3.原子力災害に対する対応の問題
4.隊員の人員構成の問題

1は、被災地への物資補給に関して、元々、自衛隊には「おおすみ」型の輸送管は3隻しかなく、被災当時は、1隻はドックに入っていて、もう1隻は海外に出ていた。従って被災地への隊員及び物資輸送には1隻しか使えなかった。

そこで政府は民間のフェリーをチャーターして対応したのだけれど、石破氏の指摘によると、高速道路無料化した影響でフェリー業者の経営が厳しくなり、フェリーを東南アジア各国に売却してフェリーそのものの数が減ってしまっているのだそうだ。ゆえに、自衛隊としての輸送艦艇を増やす必要があるのだ、と。

今回の東日本大震災では、史上空前の規模となる自衛隊員10万人を動員したのだけれど、肝心の自衛隊員を輸送する輸送機が全く足りなかったことからも、輸送機の増強も必要と指摘している。

2については、空自の戦闘機等が被災地現場を空から確認して救援に必要な情報収拾していったのだけれど、その中で退役寸前のRF4偵察機機(F-4ファントム戦闘機がベース)には映像伝送装置搭載されておらず、現場を撮影しても、一旦基地に帰還して、フィルムを降ろして現像しなければならなかったため、リアルタイムな情報収集ができなかった問題。

3については、改めて指摘するまでもないけれど、自衛隊には原子力災害に対する装備がなく、対応も後手後手に回っていた。水素爆発した1、3号機に自衛隊のヘリから散水するという、効果があるのかないのか判らないような対応もそうだし、放射能汚染されている地域へ投入できる無人偵察機やロボットなんかも持っていなかったことが明らかになった。

4については、防衛予算が増やせないという事情から隊員の人員削減を進めていたのだけれど、減らしたのは、一士、二士といった若年隊員で、幹部が増えている実態があるのだけれど、石破氏は災害復旧を考えると若い隊員を増やすべきだと指摘し、また、予備役の拡充・活用などを指摘している。

確かに、こんな状況では、有事の際、東日本大震災のように、何県にも渡る広域災害のときには対応できず、所々に孤立化する地域が続出しかねないから、これらに対する対策は必要だし、2012年度予算に組み込むべきだというのも理解できる。

"

筆者が見る限り、石破氏は、まず質問のテーマに関する事実を並べ、そこから導かれる簡単な疑問点を取り上げて質問し、答弁者の認識を確認又は引き出した上で、自らの見解を述べ、それについての更なる答弁を求めるという二段構えの質問をするスタイルが多いという印象が強い。

この時の質問も、石破氏は平成24年度予算に、東日本大震災を踏まえて色々な予算が計上されているとした上で、田中防衛相に対して、まず、東日本大震災の教訓、反省とは何かを3点挙げてくれと質問した。

当然、石破氏としては、後で自分が指摘している4つの問題点の中から3つ挙げてくれることを期待していたと思われるのだけれど、石破氏の質問に対して、田中防衛相は、自衛隊の装備面・人員面の充実を図り、情報収集能力、輸送力、原子力災害への対応能力など自衛隊の能力の向上を図る、と対応策を答えるというチグハグな答弁をした。

石破氏が、教訓は何かを質問している、と重ねて答弁を求めると、田中防衛相はあろうことか、質問が届いてなかったなどと答えた。

流石にこの出鱈目な答弁にキレた石破氏は、質問通告をしていると告げた上で、防衛副大臣に答えさせるよう求めたのだけれど、答弁に立った、渡辺周防衛副大臣は、北部方面隊(北海道)の移動に対する輸送手段の確保および準備が出来ていなかったことが教訓としてあるとし、原子力災害等についても対応できるだけの装備品の拡充を図り、予算計上していると、すらすら答えている。

防衛省の「平成24年度予算の概要案」を見ると、そのトップページに平成24年度防衛予算の考え方というのがあり、そこには、「一層厳しさを増す安全保障環境や東日本大震災における教訓を踏まえ、「平成23年度以降に係る防衛計画の大綱」及び「中期防衛力整備計画(平成23年度~平成27年度)」に基づき、動的防衛力の構築に向けた、効果的かつ効率的な防衛力整備を着実に実施」とあり、更に、「大規模災害、原子力災害への対応能力向上を図るほか、各種の活動に活用し得る機能、非対称的な対応能力を有する機能及び非代替的な機能を重視」とあり、それぞれについての予算計上がなされている。

たとえば、東日本大震災の教訓を踏まえた災害対処能力の向上の為の予算として、被災時の自衛隊航空機による輸送力の強化や、新野外通信システムの取得、災害対処機能の向上などを計上しているし、除染車や除染装置、および線量計の購入まで計上している。

画像


だから、防衛省は、今回の東日本大震災に対する自衛隊の対応に、多くの反省と教訓があり、それに対応しようという認識が、平成24年度予算案に反映されていると見るべきで、石破氏が「平成24年度予算編成において、大震災の教訓を踏まえて…」と質問通告していたのであれば、防衛省は、当然そのための答弁資料を用意し、防衛大臣、副大臣に事前にレクチャーしている筈。

それなのに、田中防衛相は石破氏の質問の意味を理解していなかった。石破氏の通告している質問に対して、事務方(防衛官僚)が用意した答弁メモをただ読んでいるだけだった。

石破氏の質問は、まず、東日本大震災の教訓についての認識のすり合わせをして、そのあとで、対策を聞くという段取りであったと思うのだけれど、田中防衛相は、認識のすりあわせの部分をすっ飛ばして、対策だけをメモを読んで答弁した。問題を理解していないのが一発でバレた。

だけど、有事は待ってくれないし、答弁した通りの場面がそのまま起こる保証は全くない。その時々の問題について、その場で独自に判断しなければならないのが基本。とりわけ、国民の命を預かる国防の長となれば尚のことそう。

だから、ただ国会で、無難に答弁できればOKなんてものでは全然なくて、今、日本の国防で何が問題で、その解決に何をしなければならないかをしっかりと認識して、必要な対策を迅速に打っていかなくちゃならない。

だから、田中防衛相は、石破氏の質問について、対策よりも、教訓の部分、問題点の認識についてこそ、よりしっかりと答弁できなくちゃいけなかった。

それを質問通告がないといって逃げた。有り得ない。

日本が、いざ、どこかの国と戦争になったとき、これから日本にミサイルを打つぞと通告してから発射してくれる奇特な敵国なんて何処にもいない。

だから、防衛相は、通告があろうがなかろうが、日本の国防の問題点を把握・認識した上で、有事の際には、常に瞬時の判断を下さなければならない立場にある。

それなのに、質問通告がないから答えらないというのであれば、防衛大臣の席には狸の置物でも置いておいて、防衛次官か制服組のトップに大臣の判子を預けておくべきだと思う。

まだ、渡辺副大臣に防衛大臣になってもらったほうが数倍マシに思える。田中防衛相は自身の認識を改めないといけない。自衛隊員や国民の命が失われてからでは取り返しはつかない。


Twitter
画像 ←人気ブログランキングへ

この記事へのコメント

  • opera

    これは昨日のエントリーとも関係するのですが、次期総選挙後の政権(おそらく自民党を中心にした政権になると思います)がやるべきことは、それがまともな政権なら、ほぼ決まっています。それを標語風に言うなら『後始末』と『立直し』でしょう。

     今回の石波氏の質問は、震災の教訓を自衛隊という側面から見た場合のものですが、ほぼ重複する問題について、別の側面から指摘することも可能です。

     たとえば、自衛隊の輸送能力の問題以前に、日本の物流インフラの不足の問題があります。
     震災から一週間程した頃から、東北内陸部でのガソリン不足が深刻になりましたが、それは大動脈である東北自動車道が不通になっていたためです。日本海側に、新潟・酒田・秋田といった立派な港があっても、貨物列車は廃止され、道路は寸断ないし未完成であるため、そこからの輸送ルートが充分でなく、タンクローリー車自体も圧倒的に不足していました。

     また、仮に自衛隊員の人員構成や装備を米軍並みにした場合、情報収集や港や空港などのピンポイントな復旧は可能でしょうが、それ以外の被災地での被害者の救助や初期復旧をを行なうには、自衛隊が活動する以前に地元の
    2015年08月10日 15:25
  • ちび・むぎ・みみ・はな

    石破氏の習慣に縛られた思考には危惧を覚える.
    伝統は大事だが, 何も考えないのも困る.
    そもそも, 無能な防衛大臣を据えざるを得ない
    嘘付政権そのものに最大の危機感を覚えるべき.
    のんびりと国会で議論している場合ではない.
    自民党の総力を上げて「国民に訴えるべし.」
    国民意志が動けば, 嘘付党も政権維持は不可能.

    自民党執行部の思考様式は原理主義に固着.
    議会原理主義, 財政均衡原理主義, 自由貿易原理主義.
    それはまるで朱子学だ.
    そこまで支那と仲良くなることはない, 石破さん!.

    日本古来の思想はプラグマティズム. 道理だ.
    自民党は政治の道理を国民に訴えるべきだ.
    2015年08月10日 15:25

この記事へのトラックバック