2月10日、岡田副首相は記者会見で、民主党が先の衆院選マニフェストで記載していた、2013年度までの国家公務員総人件費2割削減について、達成は難しいとコメントした。
公務員人件費2割削減なんて無理ということについては、「不退転の決意の中は増税だけ」のエントリーの中で、野田首相の発言を取り上げて、首相自ら、削減はできないと白状しているも同然と指摘していたから、今更、岡田氏が出来ないといったところで別になんの驚きもない。これで本当に増税しか残らなくなってしまった。
さて、同じく10日、民主党は、先日来、公表する、公表しないで揉めていた、年金制度抜本改革の財政試算を発表した。民主党案の大きな特徴は、これまで、税と保険料半々で賄っている現行の基礎年金を廃止して、低所得者向けの最低保障年金に税を集中投入するようになっていること。
民主党案では、2016年度から40年程度かけて新年金制度に移行することを前提として、「基本ケース」として、生涯平均年収260万円までの人には7万円を満額支給。年収が上がるにつれ減額し、690万円を超える人には支給しないという方式。
この試算では、4通りの支給範囲を設定しているのだけれど、例えば、夫の年収520万円、妻年収0円の夫婦平均年収260万円の「基本ケース(2000年度生まれの65歳時の年金額)」では、支給範囲の狭い順に以下の給付額になる。
支給範囲1.夫 所得比例年金4.8万円+最低保障年金1.9万円
妻 所得比例年金4.8万円+最低保障年金1.9万円
合計 13.2万円
支給範囲2.夫 所得比例年金4.8万円+最低保障年金2.9万円
妻 所得比例年金4.8万円+最低保障年金2.9万円
合計 15.3万円
支給範囲3.夫 所得比例年金4.8万円+最低保障年金3.6万円
妻 所得比例年金4.8万円+最低保障年金3.6万円
合計 16.7万円
支給範囲4.夫 所得比例年金4.8万円+最低保障年金5.8万円
妻 所得比例年金4.8万円+最低保障年金5.8万円
合計 21.1万円
これが同じケースで、現行の年金制度だと支給額は次のようになる。
夫 基礎年金5.3万円+厚生年金7.4万円
妻 基礎年金5.3万円
合計 18.0万円
民主党は、何やら4通りの支給範囲を出してみたのはよいのだけれど、標準ケースでも、現行の年金制度よりも多くの年金を支給して貰えるのは、尤も支給範囲を広くした(支給範囲4)しかない。それ以外は現行制度よりも年金額が減ってしまう。
そのくせ、追加財源に消費税をあてるとすると、2015年度に消費税を10%に引き上げたとしても、そこから更に上乗せの消費税が必要となり、2075年には、支給範囲の一番広い(支給範囲4)では7.1%、支給範囲の一番狭い(支給範囲1)でも、2.3%の上乗せが必要になるとしている。
これでは、支給範囲が一番広くする以外では、消費税増税された上に年金支給額が減るという踏んだり蹴ったりの年金制度になる。
また、支給範囲を一番広くして現行より年金額を増やすケースでも、月あたりの年金額が3万円増える代わりに消費税は17%になるから、消費税17%がいいのか、毎月3万円くらいの年金増額がよいのかの二者択一になる。
これでは、現行制度のほうがよい(マシ)ということにならないか。
しかも、この最低保障年金の満額である7万円(試算での最低保障年金の満額5.8万円を見なし運用利回り[2016-2065年度累積で2.8倍]で現在価値に割り戻した額)が貰えるのは40年後の話。
2009年の総選挙で民主党は、最低保障年金がもらえるのは40年後の話です、なんてちっとも言わなかった。それどころか、"すぐに貰える"かのように語っていた。
2月5日、仙谷政調会長代行はNHK番組で、「選挙戦の際には『明日から7万円渡す』みたいな議論になっていたのではないか。謝罪というか、『誤解を生んで申し訳ございません』と言わないといけない」と謝罪しているけれど、こんな出鱈目を見せられて、国民がすんなり納得するとは思えない。
世論調査でも増税反対の意見が増えてきている上に、野党は協議に応じる気配を見せない。政府は、社会保障と税の一体改革の大綱を17日に閣議決定する方針を固め、国会には与党単独で関連法案提出する構えだという。
野党が反発している上に、与党内にも増税反対派を抱えている。現状のままでは、法案成立の見込みは少ない。野田政権もどん詰まりを迎えている。
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公務員人件費2割削減は困難の認識…岡田副総理
岡田副総理は10日の記者会見で、民主党が2009年の衆院選政権公約(マニフェスト)に明記した2013年度までの国家公務員総人件費2割削減について、達成は難しいとの認識を示した。
岡田氏は「2割と書いたが、これを数で出そうとすると解雇しないといけない。今の公務員制度のもとでは出来ない」と述べた。
民主党の小沢一郎元代表が消費税率引き上げ関連法案に反対する姿勢を示していることについては、「政党人として党できちんと決めたことには従っていただけると思っている」とけん制した。
(2012年2月11日11時04分 読売新聞)
URL:http://www.yomiuri.co.jp/feature/20100806-849918/news/20120210-OYT1T01195.htm
消費税、最大7・1%追加増税も…民主財政試算
民主党は10日、月7万円の最低保障年金を柱とする年金制度抜本改革の財政試算を発表した。
高齢化がピークの水準となる2075年度に必要な税財源は、現行の年金制度を維持した場合に比べて年25・6兆円増え、消費税に換算すると、野田政権が目指す「消費税率10%」に加え、最大7・1%の引き上げが必要とした。
試算は昨年、民主党幹部が策定したもので、党厚生労働部門会議の長妻昭座長が10日の党社会保障・税一体改革調査会の総会で説明後、記者会見で発表した。それによると、16年度から40年程度かけて新年金制度に移行することを前提とし、「基本ケース」として、生涯平均年収260万円までの人には7万円を満額支給し、年収が上がるにつれ、減額する。690万円を超える人には支給しない。
この場合、高齢化がピーク水準となる2075年度で25・6兆円の追加財源が必要で、消費税率7・1%分の引き上げを迫られる。これは政府が社会保障・税一体改革で実現を目指している「2015年に10%」とは別の追加増税で、世論の反発は必至だ。
このため、今回発表した試算では、最低保障年金の支給範囲について、基本ケース以外にも、三つのパターンを設けた。最低保障年金は、消費税を財源とするため支給範囲に見合うだけの増税が必要となるため、増税幅を圧縮しようと、より支給範囲を絞った案も検討した。
(2012年2月10日20時14分 読売新聞)
URL:http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20120210-OYT1T01071.htm
この記事へのコメント
sdi
そこで、こんなストーリーを考えました。
「将来、年金財政は悪化し支給額はここまので悪化します」
→「現状のまま行って地獄を見るより、ベーシックインカムで福祉を一本化しましょう」
というパターンに持っていく準備だったのではないか、というものです。
民主党の方々はTPPとベーシックインカム(以下BI)の導入に熱心な方が多いですからね。(他にもこのふたつの実現を公約にしているところはありますが)恐らくですが「消費税増税もそのための手段だ」というつもりだったのではないでしょうか。BIも以前話題になった消費税の割戻しも国民全員の所得状況を確実に把握してい施行の大前提ですから、そちらを先に実現せねばならないのですが聞こえてきません。
もうひとつ、BIを導入するのと引き換えに既存の失業保険や年金、生活保護、障害者支援、自動手当、様々な控除etcは全て廃止ということになります。もうおわかりと思いますが「とっても」乱暴な手法です。現時点で
ちび・むぎ・みみ・はな
そこに自衛隊や警察, 保安庁などを含むから.
嘘付党の本音は国を守る部分で減額したい.
だからできないに決まっている.
メディアはそんなことは書かないのだろうが.
大災害であれほどお世話になっておきながら,
抜け抜けと給与減額, 予算減額, 人員整理
を主張するのは, 彼らの社会主義的思考が
国の存続に如何に危険であるかを示している.
高校授業料無料化で自民党が予算委員会を
ストップさせたのは良い判断.
全審議をストップさせ国民運動開始の時期だ.
自民党は, 長年政権にあったためか,
党の大きさに関わらず, 広報が大変に弱い.
野党にあっても地方末端組織を利用した
情報戦略の見直しをしていない.
これは守備用員の谷垣氏が行なうべきなのに,
自分の役割を理解せずに大向うを張るから困る.
今後の対嘘付党攻略において, 弱体な宣伝力
が自民党の足枷になるだろう.
SW
これは保険制度の崩壊。
保険と扶助は全く別の社会保障制度。社会保障論を無視した暴挙です。
年金制度は自民党案の方が良かったのに…民主党が勝つとは思いませんでした。