民主党の年金制度改革案に伴う財源の試算についての問題が尾を引いている。
1月31日の衆院予算会議で、野田首相は、試算結果を公表しないことについて、「一定の人たちが参考、研究のために使ったもので党の意思決定をしたものではない。試算を隠滅、隠蔽しているのではなく、責任ある公表を、今検討している」と述べた。
そして31日、産経新聞によると、民主党は、30日に厚生労働省が発表した将来人口推計を基に、新たに試算して、2月末に公表する方針を固めたとしている。
今回、問題となっているのは、民主党が去年の3月に、民主党がこれまで主張してきた月額7万円の最低保障年金を導入した場合の財源として、どれくらい必要になるかを厚生労働省に試算させた結果のことなのだけれど、分かっている範囲では、最低保障年金の支給対象をどうするかについて、民主党内で次の4つの案が検討されたようだ。
1案:「生涯平均年収380万円で最低保障年金ゼロ」
2案:「生涯平均年収520万円で最低保障年金ゼロ」
3案:「生涯平均年収690万円で最低保障年金ゼロ」
4案:「生涯年収260万円まで給付額を増やし、690万円で最低保障年金ゼロ」
この4案について、必要額を算出したところ、2075年度では、4案の場合、61兆3000億円にもなるのだという。この61兆円を消費税に換算すると、現行制度に上乗せして、4.7%必要となり、更にこの間の高齢化に伴う必要財源もとなると、更に2.4%上乗せされ、トータルで最大7.1%増税が必要となる試算結果となっている。
しかもその4案ですら、年収420万円以上の人への支給額は現行制度よりも下回るというから、これはもう、改悪の部類に入るといっていい。
つまりは、マニフェストで行っていたことは、国民をより不幸にする無茶苦茶なものだったということ。
民主党は2月末に結果を公表するとしているようだけれど、その試算は、1月30日に厚労省が出した、最新の将来人口推計を基に再計算して出しなおすもの。
試算し直したものと一緒に前の試算結果も参考で出すのであれば、兎も角、新しく計算し直しましたから、過去の試算なんてもういいでしょうというのは、やっぱり、自らのミスを隠蔽することにはならないか。
その厚労省の将来人口推計によれば、長期の合計特殊出生率が、1.6人と多めにみたときでも、2055年には総人口が9880万人と一億を割り、1.35人と真ん中あたりでみると、2055年には9193万人。低めに見積もった合計特殊出生率1.12人となると、なんと2055年には日本の総人口は8593万人にまで減少するとなっている。
この結果を受けて、民主党幹部は「試算の前提になる出生率も平均寿命も変わる。試算のやり直しはすぐにはできない」と指摘する声もあるようなのだけれど、だからといって、民主党が去年試算した結果を公表しないことの理由にはならない。
なぜなら、厚労省の人口推計結果は、前回2006年に計算したときのほうが、もっと人口が減っている予測だったから。
厚労省は5年ごとに、人口推計調査を出しているのだけれど、前回2006年の調査時では、合計特殊出生率は真ん中でも1.26人と、今回調査の少な目程度の見積もりであり、前回調査における2055年の人口は8993万人と今回調査より更に少ない結果となっていた。
マスコミは、今回の人口推計について、悲観的な論調で記事にしているのが多いけれど、悲観的な記事にするのであれば、それは5年前の話であって、今回は、出生率が上がって少し回復した、というものでなくてはならない。
もっといえば、更に5年前(2002年)の調査での合計特殊出生率は1.39人と今回並みだったから、もっと長期のトレンドでみないと本当のところは何ともいえないのではないかと思う。
少なくとも、去年、民主党が試算したときの将来人口推計はおそらく、2006年の調査のものを使っていると思われるから、今回の結果で再計算すれば、前回の試算結果よりは、良い数字が出るのではないかと思う。
「隠蔽する民主党の年金制度改革」のエントリーで触れたけれど、現行の年金制度とて、将来人口を予測して、あらゆるシミュレートをした上で制度設計をしているし、2009年時点で、年金財政の検証をしても、予定通りだというから、現行制度はそれなりにしっかりとした枠組みで決められていると見ていいように思う。
だから、民主党がいう年金制度改革は、この現行制度を更に上回る制度でなければ、変える意味がないし、勿論、支給額が現行制度より下回るなんてのは論外になるだろう。
2月末の試算結果がどういうものかは分からないけれど、少なくとも、更なる増税が必要ですなんて数字を出してくるのであれば、余程しっかりと国会で議論しなければ、国民を納得させることは出来ないだろう。
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年金財源試算を月末公表 政府・民主 人口推計基に作成 産経新聞 2月1日(水)7時55分配信
政府・民主党は31日、国民、厚生、共済の各年金を一元化し、最低保障年金を創設する年金抜本改革の財政試算を新たに作成し、2月末に公表する方針を固めた。1月30日に厚生労働省が発表した将来人口推計を基に作成する。消費税率17・1%をはじいた昨年3月の財政試算の公表を見送ったことに野党が反発を強めており、このままでは消費税増税を含む社会保障と税の一体改革の関連法案の3月提出が難しいと判断した。これに伴い、一体改革に関する与野党協議は早くても3月に持ち越された。
民主党は1日に厚労部門会議幹部らが協議し、最低保障年金の給付水準など試算に必要な前提条件を含め、新たな財政試算の具体的な実施方法を決める。
最新の将来人口推計では、平成18年の前回推計で1・26(平成67年)だった合計特殊出生率(女性1人が生涯に産む子供の推定人数)が1・35(平成72年)に上方修正された。子供が従来の想定よりも多く生まれ、若年世代が増えることにより、前回推計の出生率を基に作成した昨年3月の財政試算に比べ、増税幅を抑えられる可能性もある。
一方、政府では、厚労省が実施した1万人を対象にした所得分布のサンプル調査を基にした追加試算を3月末までに公表することも検討。将来人口推計の発表後に厚労省が2年ほどかけて行う年金財政検証の前倒しも検討している。
年金抜本改革は民主党の先の衆院選マニフェスト(政権公約)の目玉の一つ。厚労省は昨年3月、民主党の指示を受け、年金抜本改革に伴う財政試算をまとめた。
必要財源は平成87年度で年61兆3千億円に達し、消費税率は17・1%となることが判明。しかも生涯平均年収690万円以上で最低保障年金を打ち切ると年収420万円以上の人の支給額は現行制度より下回ることが分かった。
このため、政府・民主党は1月29日、昨年3月の財政試算を公表しないことを決めたが、自民、公明両党など野党は「隠蔽(いんぺい)だ」と反発を強めていた。
URL:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120201-00000084-san-pol
驚愕数字に民主飛びつく 封印の年金財源試算 前提覆る 2012.1.30 23:52
関東分の人口が消滅、4割が高齢者…。30日に発表された将来人口推計には、日本の将来にとってショッキングな数字が並ぶ。しかし、野田佳彦政権にとっては、逆に“渡りに船”ともいえる絶好の資料だった。
どういうことか。政府・与党は、野党から年金抜本改革に必要な財源を割り出すための財政試算の公表を迫られていた。試算では消費税換算で最大7.1%分の財源が必要との結果が出ており、できれば公表したくない内容だ。そこに、将来人口推計という新たな条件が加わった。
民主党幹部は「試算の前提になる出生率も平均寿命も変わる。試算のやり直しはすぐにはできない」と指摘する。実は、人口推計の内容は27日時点で党幹部に伝えられていた。試算を公表しなくても済む“口実”ができたというわけだ。
「国民には、平成27年に消費税が10%に上がって、2、3年後にまた7%上がるかのようにみえてしまう。マスコミもそう書きたがっているんだから…」
民主党の輿石東幹事長は29日の政府・民主三役会議でこう強調した。「増税政権」との印象が定着することを懸念した野田政権はこの会議で、試算公表を見送ることを決めた。
■安請け合いから迷走
試算の公表をめぐる政府・民主党の迷走は、19日の与野党幹事長・書記局長会談から始まった。公明党が一体改革の与野党協議に応じる条件として社会保障改革の全体像を提示するよう求めたからだ。
「環境整備していこう」
与野党協議の開催を急ぎたい民主党の輿石氏は気安く応じてしまったが、一体改革の経緯を知っている政府・民主党の一部は頭を抱えた。
昨年3月にまとめた年金抜本改革の財政試算では、重い税負担に加え、生涯平均年収約420万円以上では現行制度よりも年金支給額が減少。このため、試算結果は隠蔽(いんぺい)され、全額税財源の最低保障年金と公的年金一元化を柱とする年金改革案は事実上、棚上されていた。
ところが、輿石氏の安請け合いで事態は一変した。政府関係者は「民主党の年金改革は安楽死扱いにしていたが、ゾンビのようによみがえった」と指摘する。
もともと前原誠司政調会長ら党幹部は試算公表に消極的だった。「保険料率や最低保障年金を打ち切る所得水準など、前提条件によって試算結果は変わる」というのが表向きの理由だ。
ただ、昨年3月に厚生労働省に指示して試算させたのは、ほかならぬ民主党だ。藤村修官房長官は30日の記者会見で「出生率が上がってますよね? だからあんまり先のことはなかなか言いにくい」と開き直ったが、苦しい言い訳で国会論戦を乗り切れる保障はない。
■野党に新たな大義名分
公明党幹部は政府・民主党が公表を見送ったことに「かねてからの作戦が大当たりした」と小躍りした。
政府・民主党が試算公表を拒み続ければ「隠蔽体質」を攻撃し、与野党協議に入れない新たな大義名分が得られる。試算を公表すれば、さらなる増税が必要になることは明らかで「民主党=増税推進の党」と印象づけられる。民主党がどっちに転んでも損はしなかったのだ。
公明党の山口那津男代表は30日、参院本会議で試算の公表を見送った野田首相に「逃げるな。隠すな」と攻撃。自民党の大島理森副総裁も、自公両党が一致結束できたことにニンマリしながら「都合の悪いものを隠して本当に一体改革ができると思っているのか」と野田政権を批判した。(杉本康士、佐々木美恵)
URL:http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120130/stt12013023530009-n1.htm
この記事へのコメント
sdi
「現状のままだと将来危ない(かもしれない)」
「現状を変えて将来の来る(かもしれない)危機を回避しなくてはならない」
「とにかく現状を変えなくてはならない」
こんな強迫観念、もしくは思い込み一直線という気がしてならないのです。
記事の内容を見ると「現状を変える(壊す)」ことしか頭になく、「変えた(壊した)らどうなるか」という方向への考慮があまり感じられませんね。こういう方々は「とにかく現状のままよりましだ。変えるんだ」としか考えないのでしょうか。
「現状を変えなくてはならない」というところで思考停止してしまって「何故、現状のような事態になってしまったのか?」という原因分析について考慮が足りないか、その必要性を感じていないのではないかという疑問を持ちました。原因分析がされてなければ、結果に対する予想も当然不十分なままですね。
ちび・むぎ・みみ・はな
働きたくない人には安上がりに暮らせる環境
を整備するしかないだろう.
だから, まずは日本国土への再投資をすべし.
地方自治体は例年やっていた2月の道路工事をやらん.
だから, 道路がへこんでいて走り難いのだがね.
日本の国土整備に大きく投資すれば,
老人向きの仕事もできるだろうし,
老人に住み易い環境もできるだろう.
何もしなければ, 生活費のかかる街中で
金が足らんとぶつぶつ言わなけりゃならんし,
生活保障の金も限界がない.
それこそギリシャへの道だ.