小沢切りを決意したノダ

 
3月30日、野田内閣は消費増税関連法案を閣議決定した。内容は、御存知のとおり、現行5%の消費税率を2014年4月に8%、15年10月に10%に引き上げる内容。

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連立を組む国民新党の亀井代表は、法案に反対し連立を解消する意向を野田首相に伝え、自見金融相を始めとして、国民新党から出している政務三役4人について、辞任させる考えも示したのだけれど、国民新党の対応は割れた。

自見金融相は、閣議決定の当日朝に、国民新党の下地幹郎幹事長、中島正純氏と接触して、連立維持を再確認した後、閣議に出席し、法案の閣議決定に賛成した。自見氏は閣議後の記者会見で「国民新党の副代表としてサインした」と、国民新党として連立に残るという意思表示をし、また下地幹事長も、同日、民主党の樽床幹事長代行や藤村官房長官と会って、「党として連立に残ると決めた」と伝えている。

一方、国民新党の亀井代表自身は、藤村官房長官と輿石幹事長に電話し、党を代表する意思は幹事長ではなく、代表がやっている、と改めて連立離脱を念押ししている。どちらが本当なのか。

30日夜、亀井代表と下地幹事長が都内で会談したのだけれど、双方の主張がつかり、和解には至らなかった。国民新党は、衆参両院での計8人の議員のうち、亀井代表と、亀井亜紀子政調会長は連立離脱を主張し、残りの6人は連立維持を決めている。

亀井代表は野田首相との会談に先立って、党本部で開いた両院議員懇談会で、連立解消に反対する議員に対して「俺の腹は固まっている。好きな道を行け」と言ったというから、もう国民新党の分裂或いは解党をも覚悟していると思われる。

法案の閣議決定前は、民主分裂かと囁かれていたのだけれど、その前に国民新党が分裂してしまった。

藤村官房長官は記者会見で、「連立関係に変化はない」と、国民新党との連立しているという認識を示していて、亀井代表の主張は、国民新党の意志ではないとしている。何やら、亀井代表の方が、国民新党を抜けるのだといわんばかりの扱い。

とはいえ、法案を閣議決定したことで、民主党自身にも亀裂が入り始めている。30日の夜には、小沢氏に近いとされる政務三役4人が、閣議決定に抗議して辞表を提出し、同じく小沢氏に近い12人も党の役職の辞表を提出した。

この、小沢グループに所属する政務三役らが集団辞任することについては、以前から囁かれていたので、予定通りといえば予定通りの行動。

読売新聞は、小沢グループの政務三役や党役員ら数人が、対応を協議した結果、集団辞任は見送り、個別の辞任になったことを受け、集団辞任構想は不発になったとして、小沢グループの結束に陰りが出たと報道しているのだけれど、個別の判断で、政務三役4人と党役職者12人の合わせて16人も辞表を提出したことは、外からは立派に"集団辞任"に見えてしまう。

ある意味では、小沢グループとしての行動による集団辞任よりも、個別の辞任で集団辞任に到ったことの方が、事態はより深刻と言えるかもしれない。



今後、小沢グループが国会での法案採決で反対あるいは棄権に回るかどうかについて、以前、産経新聞が野田政権の倒閣ラインについて、小沢グループ議員の小沢氏に対する忠誠度を示した記事を載せたことがある。この忠誠度リストで、今回辞表を提出した議員を重ねると次のとおり。
【小沢系民主党衆院議員の小沢氏への「忠誠度」】産経調べ
★…消費増税法案の閣議決定に抗議し、辞表を出した衆院議員
<高い>
↑ 東  祥三(5) 山岡 賢次(5) 萩原  仁(1) ★樋高 剛 (3)
| 岡島 一正(2) 相原 史乃(1) 石井  章(1) 石原洋三郎(1)
| 太田 和美(2) ★大谷 啓 (1) 大山 昌宏(1) 岡本 英子(1)
| ★笠原多見子(1) 金子 健一(1) 川口  浩(1) 川島智太郎(1)
| ★木内 孝胤(1) 菊池長右エ門(1)木村 剛司(1) 京野 公子(1)
| 熊谷 貞俊(1) 黒田 雄 (1) 古賀 敬章(2) 小宮山泰子(3)
| 坂口 岳洋(1) ★階  猛 (2) 青木 愛 (2) 瑞慶覧長敏(1)
| ★鈴木 克昌(3) 空本 誠喜(1) 高松 和夫(1) 玉城デニー(1)
| 辻  恵 (2) 村上 史好(1) 中野渡詔子(1) 仲野 博子(3)
| 野田 国義(1) 畑  浩治(1) 福嶋健一郎(1) 福田 昭夫(2)
| ★牧  義夫(4) ★松崎 哲久(2) 水野 智彦(1) 皆吉 稲生(1)
| 三宅 雪子(1) 中塚 一宏(3) 柳田 和己(1) ★横山 北斗(2)
| …………………… 「倒閣」ライン ……………………………………………
| 山田 正彦(5) 神風 英男(3) 松宮 勲 (3) 三井 辨雄(4)
| …………………… 「倒閣」ライン ……………………………………………
| ★石山 敬貴(1) 石森 久嗣(1) ★菅川 洋 (1) 奥村 展三(3)
| 村井 宗明(3) ★黄川田 徹(4) 橋本 清仁(2) 石関 貴史(2)
| 梶原 康弘(1) 山崎 摩耶(1) 加藤 学 (1) 大西 孝典(1)
| 橘  秀徳(1) 室井 秀子(1) 山岡 達丸(1) 平山 泰朗(1)
↓ 和田 隆志(3) 高山 智司(3) 岩井 康彦(2) 山口 和之(1)
<低い>
 
この忠誠度リストは、衆院議員を対象にしたものなので、今回辞表を提出した議員全員載っている訳ではないのだけれど、それでも、星印で示された、辞表提出議員は、小沢氏との忠誠度の高い低いにあまり関係なく、分布しているところを見ると、確かに個別の判断が集まった結果の集団辞任であると同時に、それなりに反対議員が居ることを示している。

少なくとも、今回辞表を提出した議員は国会採決でも反対票を投じる可能性が他の議員よりも高いことは容易に予想される。勿論、10人や20人程度の造反では、衆院で法案を否決することは出来ないから、果たして造反議員が倒閣ラインまで伸びるかどうかが焦点となる。

輿石幹事長は29日の記者会見で、法案の国会採決に当たっては党議拘束をかけ、造反議員が出た場合には処分を検討する考えを示していて、反対派議員を牽制している。

また、野田首相は、30日の記者会見で、今国会で法案が成立させられなかった場合の責任の取り方について、明言は避けたものの、「『政治生命を賭ける』というのは文字通りに受け止めていただきたい。その解釈を云々するのは、やぼじゃありませんか、ええ。ただ、『政治生命を賭ける』と言ったことは事実。賭けてます。どうするかは、私の胸三寸。しかも『通らなかったら』という悲観的な『たられば』については、私は今想定していない」 と、法案成立に掛ける決意だけは明らかにしている。

小沢を切るか、財務省を切るか」 のエントリーで、増税を貫くのなら、小沢切りをしないといけないし、党内の反対派を取り込むのなら、財務省を敵に回さないといけなくなるという、小沢を切るか、財務省を切るかの二者択一を迫られていると、言ったけれど、野田首相のこの発言は、小沢グループとの決別宣言、事実上の小沢切りだと、筆者は受け止めている。

増税法案の民主党内での事前審査が大詰めに迎えていた27日、野田首相は公邸で、輿石、前原、岡田氏と会談した際、法案に経済成長率を明記することに、「数字を入れると、増税ができないと市場に誤解される恐れがある」と中々了承しなかったという。更に、会談前には「数字を入れても入れなくても、反対する人は反対する。賛成しない人に譲るのは嫌だ」と周辺に語っていたというから、或いはもうこの時点で、小沢切りを決めていたのかもしれない。

これから、いろんな動きが出てくることが予想される。政局の嵐が吹き荒れる。


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この記事へのコメント

  • とおる

    > 藤村官房長官は記者会見で、「連立関係に変化はない」と、国民新党との連立しているという認識を示していて、亀井代表の主張は、国民新党の意志ではないとしている。

    野田政権の「連立詐欺」スキャンダル。
    代表権のある亀井代表が、「連立離脱」を野田首相に2日連続で通知しているので、連立は崩壊。
    しかし、代表権の無い自見副代表が、亀井代表を罷免する訳でも無く、国民新党を離党する訳でも無く、代表を偽り「国民新党として閣議決定に署名」。
    野田首相・藤村官房長官は、代表権の無い副代表の言葉を利用して、「連立維持」を偽る。
    白昼、国民の前で、野田政権ぐるみで「連立詐欺」をマスコミは批判せず。
    2015年08月10日 15:25
  • ちび・むぎ・みみ・はな

    煽てられ, 鰌さえも木に登る.

    恐るべし財務官僚組織の無定見さ.
    戦前の企画院事件のようなもの?
    2015年08月10日 15:25

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