「基本的には大綱には法案はこの年度内に提出すると書いてあります。その線に沿っての丁寧な議論が今、行われていると思います。年度内になんとしてもこの法案を提出をしなければ、国会の審議で与野党で向き合って決勝を行う前に準決勝敗退です。そんなことはあってはならないと思っています。」野田首相 於:3/24 日本アカデメイア主催「野田総理との第1回交流会」
3月24、25日に産経新聞社とFNNが行なった合同世論調査で、消費税増税関連法案を今国会で成立させるかについて59.1%が「させるべきではない」と答え、「させるべき」の38.2%を大きく上回る結果となった。
更に、平成27年度までに消費税率を段階的に10%へ引き上げることについても、反対が52.4%、賛成は43.2%とこれも反対が上回り、10%引き上げ後に追加増税する方針を法案に明示することについても反対が56%と過半数を超えた。
その一方で、自民党が関連法案に「賛成すべきだ」とするのは66.7%にも及び、法案成立のために民主、自民が大連立をすることについては49.7%が「不適切」と答え、また、法案成立と引き換えの話し合い解散については、賛成が45.5%、反対が45.1%と二分している。
まぁ、このように世論は、増税法案に反対なのだけれど、法案成立には反対多数のくせに、自民が関連法案に「賛成すべきだ」だと6割以上が答えているのは、理解に苦しむ。
与党民主党が増税法案を提出しようとしている以上、それを阻むものは野党の筈なのに、自民には賛成すべきという。訳がわからない。自民が法案に賛成すれば、ほぼ確実に法案は成立する。
だから、自民党が法案に賛成するという前提において、今国会で法案を成立させないためには、法案そのものを提出をしないか、提出しても民主党から大量の造反が出て、衆院で否決するくらいしかない。
とすると、世論は、小沢グループを中心とする、増税反対派を支持しているのかというと、「小沢氏らは社会保障財源や財政再建に向けて説得力のある方策を示していると思うか」との質問には、87.2%が「思わない」と回答していて、全く支持されていない。
従って、世論が求める、法案を成立させない方策としては、"法案を国会に提出しない"ことしか残らない。つまり、世論調査の結果から、世論をロジカルに説明できるものがあるとすれば、それは、"国民の声を聞いて、消費税増税法案を今国会に提出することは止めよ"と野田政権に求めている以外に解釈できない。
それに対して、野田首相は、今国会での法案成立に命を懸けると意気込んでいる。
3月24日、港区で行われた、次世代政治リーダーの育成を目指す有識者らの組織である「日本アカデメイア」の第1回交流会で、野田首相がスピーチして、消費増税法案について、「ここで決断し政治を前進させることができなかったら、野田内閣の存在意義はない。不退転の決意で、政治生命を懸けて、命を懸けて、この国会中に成立をさせる」と述べ、法案の事前審査についても、「年度内にこの法案を提出しなければ、国会審議で与野党で決勝を行う前に準決勝敗退だ。そんなことはあってはならない」と法案成立に強い意欲を示している。
野田首相は、世論の思いとは裏腹に、法案を提出する積りでいる。
だけど、その事前審査が、予想通りというかなんというか、やはり纏まらない。法案を30日に閣議決定するためには、民主党執行部は異論が残っても28日未明までには党内手続きを打ち切らざるを得ない。だけど、反対派との対立は収まらない。
執行部は、反対派の了解をなんとか取り付けようと、26日の合同会議では、4000億円規模の低所得者向け給付と、付則に盛り込まれていた「給付付き税額控除」などの対策を、本則に格上げする修正案も提示したのだけれど、反対派は少しも折れず、「名目3%、実質2%」などの経済成長率を数値目標として盛り込むよう主張した。
筆者はこれまでに、増税法案の事前審査は、景気条項に数値目標を入れるかどうかが最後の焦点になると述べていたけれど、やはりその流れになった。
27日になって、前原氏ら執行部は、とうとう景気条項について、数値を盛り込んだ妥協案を提示した。それは次のとおり。
「消費税率の引き上げに当たっては、経済状況を好転させることを条件として実施するため、物価が持続的に下落する状況からの脱却および経済の活性化に向けて、2011年度から20年度までの平均において名目の経済成長率で3%程度かつ実質の経済成長率で2%程度を目指した望ましい経済成長の在り方に早期に近づけるための総合的な施策の実施その他の必要な措置を講ずる。
この法律の公布後、消費税率の引き上げに当たっての経済状況の判断を行うとともに、経済財政状況の激変にも柔軟に対応する観点から、消費税率の引き上げに係る改正規定のそれぞれの施行前に、経済状況の好転について、名目および実質の経済成長率、物価動向等、種々の経済指標を確認し、前項の措置を踏まえつつ、経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる。」
この妥協案には、"名目3%、実質2%"とあるから、ぱっと見、執行部もとうとう折れて、数値目標を入れるようにしたのか、とも見えなくもないのだけれど、よくよく見ると、"経済成長率で名目3%、実質2%を目指すための施策を実施する"とあるだけで、名目3%、実質2%を達成しないと増税しないとは何処にも書いていない。名目3%、実質2%を目指す施策さえ実施すれば、それが実現しなくても増税できる書き方になっている。
反対派はこの修正案についても、「認められない」とはねつけているようだ。
いくら経済成長率を法案に書いたとしても、それが税率引き上げの条件にならないのなら、実質上、数値目標はないのと同じ。執行部としてはギリギリの妥協案だったのかもしれないけれど、文言で誤魔化すのも限界があったというところか。
反対派の若手議員は「法案の採決時が勝負だ」と息巻いているという。この状態で閣議決定して法案を提出したとしても、野党が賛成に回ることはおそらくないだろう。
増税法案の帰趨は国会審議に委ねられることになる。
←人気ブログランキングへ
この記事へのコメント
ちび・むぎ・みみ・はな
後は参議院勝負.
そこで自民党執行部の価値が問われよう.
なぜ衆議院勝負にならないか?
数もあるが, 総裁が消費税10%を撤回していないから,
衆議院で真正面から反対できまい.
せいぜい, 消費税増の発動の条件闘争のみ.
世論は, 予算が成立しないと困るから, 関連法案賛成
と言っている. 全てを理解して答えている訳ではない.
見通しの悪さの原因は自民党戦略にある.
自民党執行部が財政均衡・自由貿易主義の軛から
自由になっていないことが世論の混乱を招く.
どんな場合でも, 世論の混乱は政治の責任.
とおる
多数決という民主的な決定方式とは異なる方式で民主党は決定します。
「民主集中制」というのが共産国にありましたが、これに似たような体質の民主党が、これと似たような方式を取るのは、当然といえば当然。