「いろいろと意見交換をして、『最後は任せる』と言われたんで」前原政調会長
消費税増税法案が纏まらない。先週、決着が先送りされた消費税増税法案について、3月19日、民主党は、社会保障と税の一体改革に関する政策調査会の役員会を開いて、消費増税関連法案の修正協議を行った。
役員会には、前原政調会長、藤井税制調査会長、細川一体改革調査会長と内閣府の大串政務官出席し、大串政務官が政府の考え方を説明した。
その焦点は、付則に盛り込まれた「追加増税条項」と、「景気弾力条項」の扱いで、政府側が修正案を示したのだけれど、結論が出ず、21日の役員会で再検討するという。
政府の修正案がどんなものかは分からないけれど、政府が修正案を示しても結論が出なかったということは、政府の考え以上に党内反発が強くて、その案ではとても飲めないと、党の役員達が認識しているということ。
事実、消費税増税法案について、政府に「びた一文変えないでくれ」とお願いしていると、自分で発言していた、藤井税制調査会長ですら、「数値でもって 2%成長しなきゃだめだというのはある。私は反対です。何らか、というのは考えます」と、数値目標導入反対の姿勢は崩していないものの、びた二文か三文くらいは修正せざるをえないと後退している。
民主党執行部の間では、現状では法案の付則扱いになっている「景気弾力条項」を条文に格上げして、法的拘束力を強めるという妥協案が検討されているようなのだけれど、そこに数値目標が入っていなかったら余り意味はない。
「消費税増税法案のゆくえ」のエントリーでも指摘したけれど、数値目標の入らない景気弾力条項は、時の政府が、やるやらないの判断を自由にできることを意味している。生活実感として何一つ景気が回復していないのに、政府だけが景気は回復したのだとごり押しして増税することだって出来てしまう。
だから、そんな、ごり押しをOKとさせる数値目標なしの景気弾力条項をいくら条文に格上げしたところで、"ごり押し"の法的拘束力が強まるだけで、景気弾力には何ら資するところはない。
仮に、こんな小手先の妥協案を執行部が出してきても、民主党内の増税反対派がそれなら了承すると矛を引っ込めるとは思えない。
3月19日、前原政調会長は野田首相と会談し、これまでの議論の内容を報告するとともに、今後の対応を協議したのだけれど、その場で野田首相から、増税法案の事前審査の対応について、「政府側とよく話し合って決めてほしい。日程も含めて前原政策調査会長に任せる」と前原氏に一任する考えを伝えている。
だけど、唯でさえ、取り纏めが難しいと思われる、事前審査をあの「言うだけ番長」殿に一任するなんて、本当に取りまとめできるのか。
昨年末の増税法案の素案の決定に際して、野田首相は、インド訪問の日程を早めて29日に帰国し、党内を纏めるために自ら慎重派を説得している。
だから、先週、三日間に渡る議論で決着しなかったのだから、今回もまた野田首相自ら説得に乗り出すことも十分に考えられると思うのだけれど、そうせずに 「言うだけ番長」殿に一任するというなんて、取りまとめする気があるのかさえ疑わしく思えてしまう。
ただ、穿った見方をすれば、もしかしたら、野田首相は増税法案先送りの可能性まで視野にいれ、今回、自分が手を入れるのを避けているのではないかと見えなくもない。
筆者が見る限り、今の状況下では、 「言うだけ番長」殿に一任しても、纏まらない可能性の方が高いと思われる。となると、党内で事前了解が得られない場合の保険として、自民に法案成立の協力を要請したりする動きが出てくる。実際、岡田副首相は、自民に対して、大連立を持ちかけたりして法案成立のために動いている。
だけど、大連立については、自民が断っているし、岡田副首相の大連立の動きが発覚したことで、「大連立は『小沢切り』が目的だ」と、小沢グループ系議員が反発を強めている。
だから、増税法案の国会提出はどんどん難しくなっているのだけれど、前原氏が党内の取り纏めに失敗すれば、今以上に党内の前原氏への支持は落ちるし、岡田氏が法案成立のために、党内事情を考慮せずに"暴走"すればするほど、岡田氏自身の評判も落ちてゆく。
要するに、今の状況下で増税法案を前原氏や岡田氏に任せるということは、その過程で、前原氏や岡田氏自身の党内での評判を落とす可能性があるということ。
これは、とりも直さず、秋の民主党代表選で、野田首相に有利に働く。現時点での民主党の次期代表候補は、小沢グループ系を除けば、岡田氏と前原氏が最右翼。その二人が揃って党内の支持を失えば、相対的に野田首相へ支持が集まることになり、再選の可能性が高まる。
野田首相にとっては、自分が首相でいられる間は、増税法案を提出する権限を握っている。仮に今国会での提出を諦めて、次の国会で提出することを考えると、自分が直接説得に乗り出すリスクは大きい。説得に失敗したら、そこで終り。二度目は無い。だから、前原氏と岡田氏に増税法案を任せる裏で両者の力を削ぐことで、秋の代表選で勝てる仕込みをしているのではないかとさえ。
民主党執行部では、今週23日までの閣議決定は難しいという見方が強くなっているそうだけれど、野田首相は、閣議決定そのものが出来なかったことも視野にいれ、今後いろんな選択肢を持っていられるように、泥鰌が泥の中に隠れるように、身をすくめて様子見する準備を始めているのかもしれない。
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この記事へのコメント
とおる
TPPの時の党内決着のように、言葉を曖昧にして、どちらの側にも都合良く解釈させる手法にするかも。
・約2%成長
・2%成長を目途
・2%成長を目標
クマのプータロー
ヨーロッパの政策評価システムがどうたらこうたらとか、マスメディアとジャーナリズムが正常に機能していたら要らないじゃん、そんなもん!
官僚機構はどこの国も改革が好きなんですね、民主主義を否定するための。
ちび・むぎ・みみ・はな
嘘付どもの目的は次の衆議院選挙までの政権保持.
多分, それ以外にはあるまい.
とすれば, 表に現れていることは意味がない.
影で嘘付党の暗躍部隊, 特に当事務局の革命家達
が何をしているかが重要なのではないか.
もっとも, それほど複雑なことではなく,
自分達の勢力を政府の中に押し込もうとしている
のだとは検討がつく. 官僚にも革命家崩れが沢山.
opera
経済成長と税収増加の関係を考える場合、「税収弾性値」(名目経済成長率が1%増えたら、税収が何%増えるか)が問題になります(財務省はなぜか1.1%という極端に低い数字を主張している)が、経済学では通常は3~4%だと言われていますね。
つまり、インフレ率2%名目経済成長率4%(実質成長率2%)を達成した場合、税収は10%前後増収になることを意味します。これは赤字企業や失業者だった人が納税するようになることを考えると妥当なところでしょう。
したがって、デフレ脱却後に税収増加や諸般の事情を考慮して消費税の増税を議論すべきで、消費税増税とは基本的には「需要の抑制」、過度のインフレに対する対策だということを理解すべきです。
『公共投資悪玉論』のせいで、小泉・竹中時代に「公共投資の乗数効果」も通常の経済モデルより極端に低いものに差し替えられたということは有名ですが、それ