北朝鮮ミサイルと下地島のストラトス

 
3月16日、北朝鮮の朝鮮宇宙空間技術委員会の報道官は、来月15日の故金日成主席の生誕100年に合わせ、地球観測衛星「光明星3号」をロケット「銀河3号」で打ち上げるとの談話を発表した。

画像


北朝鮮は人工衛星と言っているけれど、過去の北朝鮮を振り返ると、まぁ、誰がみても、事実上の弾道ミサイル発射実験。

今度打ち上げるとしている 「銀河3号」は「テポドン2号」か、その改良型とみられ、発射の際に、他国の宇宙科学技術部門の専門家や記者たちを招待し、発射場と衛星管制総合指揮場などを見学させるという。

北朝鮮の発表では、今回の発射は、黄海側の北西部平安北道の「西海衛星発射場」から南方に発射し、ロケットの一段目は韓国の西方沖、二段目は発射地点から約三千キロ南方のフィリピン東方沖に落下すると予告しているようだけれど、人工衛星を打ち上げるときには、打ち上げロケットの加速の為に、地球の自転を利用することが殆どで、通常は射場から真東に向かって打ち上げる。ところが今度は、南方に発射するというから、やはり人工衛星の線は薄いと思われる。

大方の見方は、金正恩の指導力を誇示することで政権基盤を固めつつ、アメリカ・韓国などを牽制する狙いがあるとされている。

発射実験に関しては、今年2月の米朝合意で、ウラン濃縮活動や核実験とともに長距離弾道ミサイル発射実験のモラトリアムを受け入れていた筈なのだけれど、こうして簡単に合意を破るやり方は、先代とあまり変わらないように見える。これで、金正恩氏は先代の故金正日とは違うのではないかという期待は淡くも打ち砕かれた格好となった。

北朝鮮は、前回2009年4月に「光明星2号」発射し、その直後に核実験を行った経緯があることから、今回も発射直後に核実験を行う可能性があり、更なる援助を要求しようとしているとの見方もある。



これに対して、3月17日、田中防衛相は、この北朝鮮のミサイル発射に対して、ミサイル防衛(MD)システムによる迎撃準備を検討していることを明らかにした。田中防衛相は、記者団に対し、「前回の事例を参考に、頭の体操をして準備している」と話していることから、仮に前回2009年と同じ対応をするのであれば、ミサイルの国内落下にそなえ、「破壊措置命令」を出して、海上配備型迎撃ミサイル搭載イージス艦の周辺海域への配置及び、予測飛行ルートに近い地上に地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を展開して、迎撃準備を整えることになる。

ただ、今回のように前もって、発射予告してくれるなら、前もって頭の体操なり何なりいくらでもできるだろうけれど、一朝事が起こって、有事となれば、そんな呑気なことは言ってられない。大所高所から、即断即決で判断し、二の手、三の手を矢継ぎ早やに打てるようでなくちゃいけない。

3月12日の参院予算委員会では、開発が遅れている、次期FXに選定されたF35の調達について、購入できなかった場合の影響を質問されたにも関わらず、田中防衛相は「購入できるように全力を挙げる」を繰り返すばかりで、なんらバックアッププランを用意していないことを露呈していた。

まぁ、おそらく防衛省内部では幾重ものバックアッププランを用意しているものと思うけれど、それらが全く田中防衛相に伝わっていないのは、いかにも拙い。

先日、福島原発事故独立検証委員会が出した報告書では、事故当時、菅氏や官邸中枢が、現場に無用な混乱を招き、事故の危険性を高めた実態が示されているけれど、あの事故から教訓を得るとすれば、組織において、誰がどの部分の権限と責任を負い、都度各人が何を成すべきかを把握しないで、有事にあたる危険性をまざまざと見せつけられたことではないかと思う。

だから、国防に関していえば、有事にあたって、防衛大臣がなすべきことに何があるかを田中防衛相がちゃんと把握しているのか、非常に不安になる。防衛相の職にある者は、せめて、国防に関する様々なケースで、誰がどの部分の権限と責任を負っているかどうかくらいは抑えておかないと、判断が遅れるのみならず、指揮命令系統の混乱を生み、被害が拡大する恐れがある。

画像


朝人69」のエントリーでも指摘したけれど、たとえば、北朝鮮が、原発のすぐ近くの沖合にでもミサイルを撃ち込んで、金と食料を寄越せといったらどうするのか。

今回の北朝鮮のミサイル発射だって、予告通りの軌道を取るなら、沖縄など南西諸島上空を飛び越えることになる。たとえロケット本体が日本に着弾しなくても、1段目、2段目が落下しようものなら、パニックになるだろう。

ミサイルが着弾してからでは遅い。

だから、イージス艦の展開と、MDでの迎撃準備は至極当然のことで、そのためのあらゆるシミュレーションを欠かすことなんて出来ないし、何となれば、今回の北朝鮮ミサイル発射にかこつけて、戦略的部隊配置を考えたっていい。

たとえば、ミサイル迎撃準備だといって、沖縄県宮古島市の下地島に大々的なPAC3迎撃部隊と、陸自を派遣して、ミサイル発射後も、警戒を続けるとかなんとかいって、そのまま陸自が駐屯してしまうとか。

下地島には、現在使用していないけれど、3000m滑走路を持つ下地島空港があるし、ちょっと整備してやれば、簡易基地くらいは出来ると思うし、ある程度の部隊がいれば、そのまま南西諸島の守りにもなる。

日本に迫る国難は何も北朝鮮だけじゃない。軍事拡張を年々拡大し、覇権主義を露わにしている中国にだって当然備える必要がある。国防にだって、災い転じて福となす発想があってもいい。


Twitter
画像 ←人気ブログランキングへ

この記事へのコメント

  • sheltem

    ガレキの広域処理利権は
    田中派の紅白戦です。

    野田、検察、ガッキーのやる気のなさは異常です。

    小沢と創価が解散させない理由は簡単。

    それは小沢と創価が黒幕だからです。

    事実、野田のマズイ政策は
    すべて小沢の利権と結びついています。

    詳細はこちら↓

    ht■tp://blog.livedoor.j■p/sheltem2/
    2015年08月10日 15:25
  • みー

    北朝鮮はタテマエ上「地球観測衛星」て言うてるから、極軌道に入れるんならほぼ真南に向けて発射するのは辻褄あってるんだがなあ
    2015年08月10日 15:25
  • 日比野

    みーさん。コメありがとうございます。
    確かに、極軌道の地球観測衛星なら、南に向けての発射ですね。訂正します。
    2015年08月10日 15:25

この記事へのトラックバック