大連立と水面下の駆け引き

 
水面下での駆け引きが激しさを増している。

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今月上旬に、岡田副首相が自民党幹部と会談し、大連立を打診していたことが分かった。会談では大連立の他に消費増税法案と特例公債法案の成立の協力を要請したそうなのだけれど、自民幹部は「大連立は野田政権の延命になるだけ」と拒否し、消費増税法案の成立前に解散するよう求め、協議は平行線に終わったようだ。

確かに、民主党としては、大連立に持ち込むことができれば、もう増税から来年度予算から何でもやりたい放題になるから、大連立ができれば願ったり叶ったりだろうとは思うけれど、それに比べて大連立するほうの自民にとっては、あまりこれといったメリットは少ない。いいところ法案をいいようにつまみ食いされるのがオチ。野田政権の延命を手助けするだけに終わる可能性が高い。

話し合い解散ならまだしも、大連立はちょっと民主に都合が良すぎて、会談が平行線に終わったのも当然だろう。

それに、その話し合い解散とて、実際、2月25日に行われたとされる野田、谷垣極秘会談でも、谷垣氏は、消費増税法案の成立後に野田首相が解散に踏み切る担保がないことから、先に解散するよう求め、すれ違いに終わったと見られている。

今の消費税政局は、民主執行部、民主増税反対派、自公などの野党との三つ巴の様相を呈していて、それに解散が絡んでぐだぐだになっている。(これに維新の会のパラメータを入れると四つ巴になる。)

現時点での、増税、解散、連立についてのそれぞれのスタンスをマルバツで表現すると大凡次のとおり。
民主執行部  増税=○、解散=×、連立=○ 
民主反対派  増税=×、解散=×、連立=×
自民党     増税=○、解散=○、連立=×

とまぁ、3者とも○になる項目がなく、皆目折り合いがつかない状況。民主執行部は増税、連立は○だけれど、その担保に解散できるかというと、今の状況で解散しても惨敗することが分かり切っているから、なかなか踏み込めない。また、小沢グループを中心とする民主反対派は、増税反対のスタンスを崩していないし、解散されても大量に落選してしまい、小沢グループの勢力が縮小することが見えているので駄目。また、民自大連立をされると、これまた存在意義が薄れてしまうので、これまた駄目。

そして、自民は、先程も述べたように、大連立するメリットも少ないからこれも譲れない。

ということで、3者にとって×の項目は自身の存在を根底から揺るがしかねない項目となっていて、ちょっとやそっとでは譲れないものになってしまっている。

だから、このままでは、時間だけが過ぎていって、何も決まらないまま会期末が迫る可能性だってある。

だけど、予算は待ってくれないし、震災の復興だって、被災地がいつまでも待ってくれるわけじゃない。予算は6月までには決めないといけないし、復興にしても、復興庁をつくったから、はい終りなんて、たとえ政府が思っても、被災地はそう思ってはいない。

復興庁については、宮城県の村井知事は、「半歩、被災自治体に寄るべきだと思うが、現状は完全に国の役所だ。被災地がやりたい事をどう国に認めさせるか、一緒に知恵を出す組織であってほしい。復興庁に査定官は必要ない。」と述べているし、宮城県議会の中村功議長も仙台市の宮城復興局で郡和子復興政務官と会談し「復興が遅れるだけでなく、政治への不信が大きくなる」と抗議していて、早くも、復興庁ではなく査定庁だとの不満の声が出ている。こうしたことにも対応していかなくちゃいけない。

今回の民主党の大連立打診については、小沢グループが「小沢切りの狙いがある」と激しく反発していて、増税法案の事前審議に与える影響も少なくない。

その事前審議とて、「景気弾力条項」と、消費税率を10%に引き上げた後の対応という2つの争点で折り合いがつかず、21日以降に持越しとなっている。現時点では特に反発の強い、消費税率を10%に引き上げた後の追加増税についての表現を弱めるか削除するかで調整をつけようとしているようだ。

仮に、追加増税については削除し、「景気弾力条項」には数値目標を入れない増税法案で民主党内をまとめ、国会提出されたとして、自民が解散総選挙に持ち込みたいとするのなら、法案成立後の解散の確約と「景気弾力条項」に数値目標を入れることを条件に賛成に回るという線はあるかもしれないと見る。

数値目標が入るのであれば、これまで自民が増税賛成の立場を取っていたことと矛盾しない上に、少なくともデフレを脱却しない限り増税できない縛りが発生するから、事実上の増税先送り法案となる。

あとは、民主党が約束通り解散してくれるのかどうかになるのだけれど、そちらについては、公債発行特例法案を盾にとって、もしも解散しなかったら、約束が違うとして、公債発行特例法案を参院で審議拒否して、問責決議を出すという2段構えの戦略で対応することは考えられる。

いずれにせよ、野田政権は、増税法案を事実上諦めるか、解散するか何らかの血を流さない限り事態打開は難しいのではないかと思う。つまるところ、法案を提出できずに次期国会に先送りして、惰性に流される可能性もないわけじゃない。

不安定な政局が続く。


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