惰性の野田内閣
3月15日、「子ども手当」に代わる新手当の名称が昔の「児童手当」に戻ることが決まった。所得制限世帯の扱いについては、夫婦と子ども2人世帯では年収960万円以上が対象で、中学生以下は子ども1人あたり一律5千円を支給する。また、所得制限世帯を除く支給額は、現在と同じで中学生以下の子ども1人あたり1万円。
名称を巡っては、「子ども手当」の看板を少しでも残したい民主党が「子どものための手当」だとか、「児童成育手当」ならどうかとか、さらには、「児童のための手当」ならどうだ、と駄々を捏ねていたのだけれど、野党に全部突き返され、最後は法案の年度内成立を優先して、結局元の「児童手当」になった。
これで、民主党の先の衆院選でのマニフェストは殆ど崩壊した。国民との契約の殆どが反故にされた今、野田政権に残ったものは、増税ただそれだけ。
昨日のエントリーでも触れたけれど、その増税も、党内の了承取り付けで難航している。
党内の事前審査は14日から行われているのだけれど、15日になっても、依然反対派の勢いは衰えない。やはり、「景気弾力条項」について「数値目標を明確にすべきだ」と、具体化を求める声が相次いでいるようだ。
更に、法案の付則に、10%に引き上げた後の追加増税を示唆する内容があることについても反発の声があり、一部の議員は「今回、財務省は調子に乗りすぎた。素案から大綱、法案という流れの中で、自分たちに都合のいい部分を巧妙にツギハギして、既成事実化しようとしている。付則に5年後のさらなる増税を盛り込んでくるなんて、どこからそんな話が出てきたのか。ほとんど捏造ですよ。こういう姑息なやり方は断じて認められません」と反発しているけれど、確かになし崩し的に追加増税の法案も埋め込んだ主犯が財務省であるのなら、相手が民主党とはいえ、ちょっとナメていたのかもしれない。
今回の事前審査で注目すべきは、反対派が小沢グループだけでなくて、いわゆる中間派と呼ばれるグループにまで広がっていること。
中間派とは、いわゆる親小沢でも脱小沢でもないポジションを取っているグループのことで、鹿野氏や馬淵氏のグループがそれにあたる。去年の民主党代表選のときの投票行動を見ると、決選投票では、鹿野グループの全52票の大半が野田氏に、馬淵グループ全24の過半が海江田氏に流れたと見られている。野田氏が代表選を制したのも、この中間派の票があったから。
だから、今回の事前審査の了解についても、中間派を取り込めないと中々厳しいものがある。その中間派が昨日、今日の事前審査会議の席上で、「景気弾力条項」に数値目標を入れるべきだと主張している。
小沢鋭仁元環境大臣は、「経済がよくなければ増税しても税収が下がることも起こりうる。景気対策をしっかりやることが大前提にならないといけない。…もう少し明確に数値を使った、いわゆる条項にしたいと」発言しているし、馬淵氏に至っては、「消費税法案、社会保障と税の一体改革法案に関しては、景気の回復過程の確認 、『停止条項』も含めてしっかり政策的議論を行わないといけない」と、"停止条項"の言葉まで口にしている。
これも、少なからず世論が影響している。
最近の世論調査でも、消費税増税賛成より反対が上回っている状況が続いている。
3月10、11日の両日に行われたANNの世論調査でも、増税を支持しないと答えた人は54%に上り、支持すると答えた37%を大きく上回っている。
また、世論の空気を読むことには定評のある橋下大阪市長も、3月4日のテレビ番組で「今のような国政の状況で消費税率を上げるのでは絶対に国民はついてこない。」と述べている。
世論が増税反対になると、当然、民主党議員も地元から反対の声を受けることになる。反対の声が大きければ大きいほど、安易に賛成できなくなる。
反対派も世論を味方につけることを狙っているようで、今月21日には、「消費税を考える国民会議」発足して、設立総会を開くことを決めている。この国民会議には流通業者や民間消費者団体も加わり、会長には日本チェーンストア協会の清水信次会長が就任する予定だという。
こうなると、執行部も穏やかではいられない。「景気弾力条項」の表現を多少直すことがあるとしても、数値目標を入れるなんて絶対受け入れないだろう。なぜなら、「消費税増税法案のゆくえ」のエントリーでも触れたとおり、数値目標を入れたら、それ自身が増税へのハードルになるから。実際、財務省幹部は「数値目標に縛られたら増税できなくなる」と警戒をあらわにしているという。
執行部、とりわけ、藤井税制調査会長あたりは、数値目標を入れるのには大反対の立場を取っているけれど、果たして、「景気弾力条項」がどのような形で落ち着くのか。非常に重要なポイントになる。
もしも、この消費税増税法案が提出できなかったり、国会で否決さえることになれば、野田内閣はやることが無くなってしまう。どんなに批難されても、これだけはと粘った増税が潰されたら、野田内閣はその存在理由を否定されたも同じ。
そこで、解散や総辞職するのならまだしも、それすらしないのであれば、野田内閣は、惰性でただ居るだけの内閣になるのではないかと思う。
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この記事へのコメント
ちび・むぎ・みみ・はな
影で色々な反日工作ができ, 政治利権もある.
政治は国民のためだが, 嘘付にはその破片もない.
保身のために, こっちにくっつきあっちにくっつく.
支那で政治が行なわれる様が良く分かる.
しかし, こんな輩を何故自民党は追放できない?
逆なら, 自民党はさっさと下野したであろう.
この政治感覚の非対称性はどこから来たのか?
「国民を守る」気概が政治から失われて久しい.
あるのは主義主張のぶつかり合い.