消費税増税法案のゆくえ
消費税増税法案の閣議決定準備が進んでいます。
1.増税法案に反対する国民新党
3月12日、野田首相は、政府と民主党三役との会議を官邸で開いて、消費税増税関連法案についての党内調整を急ぐよう指示した。
民主党は、社会保障と税の一体改革と税制の両調査会に、財務金融、厚生労働、総務、文部科学の4部門会議を加えた、合計6会議による合同総会の初会合を14日に開催、22日までに党内調整を終わらせる方針で、野田首相は今月23日の閣議決定を目指すという。
その原案には、平成26年4月に8%、27年10月に10%へと段階的に消費税率を引き上げることと、地方分を除く全ての消費税収入を年金、医療、介護、少子化の社会保障4経費に充て「社会保障財源化する」と本則に明記するという。ところが、附則として、10%超への追加増税を平成28年度までに法整備する方針をも盛り込んでいるという。
ただでさえ、今の時期の消費税増税だけでもとんでもないのに、更に5年後までに10%以上の増税をやれるよう法整備するという。増税の前にやること、やれること、やるべきことが多々あるはず。それもなしで増税だけしようなんて有り得ない。
3月8日、国民新党の亀井静香代表は、都内で岡田克也副首相と会談した際、消費税増税関連法案への賛同を求められ、「こんな経済状況で消費税を上げるべきではない。法案を提出したら野田佳彦首相と2人で地獄に落ちるぞ」とはね付けたそうだけれど、全くもってそのとおり。地獄に落ちるのは本人の勝手だけれど、国民を巻き込むのは止めて欲しい。
国民新党は、増税には明確に反対している。
3月13日、野田首相は消費増税関連法案を国会提出する調整のため、国民新党の亀井代表と会談したのだけれど、会談は1時間40分以上にも及び、亀井氏が「今は緊急事態だ。庶民が困っている時にお金を召し上げることをしてはダメだ。ちまちました消費税率アップなんてやっている暇はない」と、まくし立て、野田首相は「そうですね」と聞き役に回っていたという。
だけど、これは、去年の12月に、野田首相が韓国の李明博大統領と首脳会談を行った、その時の態度を彷彿させる。
日韓首脳会談では、李大統領が、慰安婦問題について、人道的な支援、感情的な接近が必要だという点を長時間にわたって訴えていたのだけれど、ずっと話を聞いていた野田首相は、最後に 「それはそうと慰安婦(平和)碑を速やかに撤去してほしい」と要求したという。
あれほど、不退転の決意といい、どんなに批難されても増税だけは譲らない野田首相が、たかが1時間や2時間の会談でころっと、止めるなんて考えられない。本当に「そうですね」と思っているのなら、閣議決定など出来るわけがない。
2.反発する増税反対派
亀井氏は、野田首相との会談で、法案について「国民に対する約束、連立政権協定を破るような法案に国民新党として賛成できない」と言って、物別れに終わったそうだけれど、たとえ閣議決定のとき、国民新党の自見金融・郵政改革担当相が署名を拒否したとしても、野田首相はその場で自見大臣を罷免して閣議決定するだろうと思われる。
だから、この増税法案を阻止するのなら、それこそ、国会に提出させるのを断念させるか、国会の場で否決するしかない。
前者については、さっきも述べたように、閣議の場では野田首相の権限で、反対閣僚を罷免してでも、決定に持って行けるから、これは障害にならない。あるとすれば、民主党内の調整がつくかどうか。
実際14日に、民主党は社会保障と税の一体改革調査会と税制調査会などの合同会議を開いて、消費増税法案の事前審査手続きを始めたのだけど、会議には約100人の国会議員が出席し、小沢グループの議員は「法案の説明を聞ける段階ではない」と猛反発。
反対派は、先にも述べた、平成28年度までに10%超への追加増税を法整備する方針を附則に盛り込んだことにも反発し、削除を求めている。
また、「小沢を切るか、財務省を切るか」のエントリーでも触れているけれど、反対派を説得できる鍵となる「景気弾力条項」についても、政府案では、「経済状況の好転について、名目および実質の経済成長率、物価動向などの指標を確認し、総合的に勘案した上で、施行の停止を含め所要の措置を講ずる」という、付則を設ける方針であるのに対して、反対派は具体的な数値目標の明記を求めて、これも対立している。
まぁ、最後の最後には、執行部側が押し切ると思うけれど、ここで、反対派がどこまで"本気"で反対するかが、その後の国会での否決に関わってくると思う。党内手続きで反対派が納得せず、途中で離席して拒否の姿勢を示すのであれば、国会でも否決や欠席といった手段で抵抗する可能性はあるけれど、昨年末の原案作成のときのように、最後の最後で妥協・了承するのなら、国会での抵抗もあまり期待できないのではないかと思う。
また、後者については、衆院での民主党内増税反対派による多数の造反でもない限り否決できないから、食い止める可能性があるとすれば参院しかない。
3.増税法案は「条件闘争」の段階に入っている
3月14日、安倍晋三元総理は千葉市内の講演しで「誠意ある対応に答えてくれる状況にない。当然、重大な決意をするときもある」と、内閣不信任決議案や首相問責決議案を提出で解散総選挙に追い込むべきとの考えを示している。その一方で、2%の物価上昇を条件にした「景気弾力条項」を法案に明記した場合には賛成することはあり得るとしている。
だから、やはり増税法案のポイントは「景気弾力条項」であり、それをどこまで踏み込めるかが全てを決めるように思える。その意味では、消費税増税法案は、やるのかやらないのかといった次元はとうに過ぎて、何時やるのか、どういう条件を満たせばやるのか、といった"条件闘争"の段階にあると見ていいだろう。
今の政府原案の景気弾力条項にあるような「経済指標を総合的に勘案して決める」という曖昧な書き方は、極端なことをいえば、時の政府が、やるやらないの判断を自由にできることを意味する。逆に、何%の物価上昇というように具体的な数値目標を設定する場合は、誤魔化すことができない反面、目標を達成したら、大手を振って増税できることになる。
果たして、どちらが国民にとって良いのか。
前者の場合、時の政府が"善良"かつ、"財務省の言いなりにならない"という条件においてのみ国民に資するところがある。景気が悪くて国民を苦しめてはいけないと、"善良"な総理が判断し、役人を使いこなせる政権がそれをコントロールする余地が残されている。
だけど、今の民主党政権のように、明らかに、財務省の言いなりになっている政権かで、曖昧な「景気弾力条項」を設定されると、消費者感覚ではどうみても景気が良くなってはいないのに、財務省があれこれ理屈をつけて、増税できると政権に吹き込んで、やらせてしまう恐れがある。何せ、東日本大震災のダメージも冷めやらぬのに、復興そっちのけで増税をやろうとするような"普通でない政権"が与党である時に、曖昧な「景気弾力条項」は危ないと思う。
4.明確な数値目標は「言いなり」を牽制する
これまで何度も取り上げているけれど、2009年度の税制改正法の付則104条で記されている、「平成23年度までに必要な法制上の措置を講ずる」というのは"平成20年度を含む3年以内の景気回復に向けた集中的な取組により経済状況を好転させることを前提"としている。
たとえば、この税制改正法案を成立させた麻生政権が今の政権だったとしたら、リーマンショックの惨禍に見舞われながら、景気の下支えをした実績からみて、日本の景気回復判断もちゃんとやるだろうと期待できるし、増税についても過不足ないタイミングで実施するだろうと思われるから、この場合は「景気弾力条項」は逆に曖昧な方が、政策の自由度が持てて都合がいい。
だけど、数値目標が明記される形の「景気弾力条項」となると、これは逆に働いて、麻生政権のような経済が分かる政権にとっては、数値目標は、政策の選択余地を狭める窮屈な縛りになる可能性があるのだけれど、野田政権のように財務省の言いなり政権にとっては、「景気弾力条項」には数値目標があった方がいい。
なぜなら、数値目標で縛ることで、財務省が、本気で景気回復させなければいけない責務を負うことになるから。増税するのは、はっきりと数値目標を達成してからだ、と財務省にボールを投げ返すことができる。数値ではっきりと増税できる条件を明示する以上、恣意的な増税は不可能になる。
だから、単純にいえば、野田政権が続く限りは、「数値目標を明記した景気弾力条項」が望ましく、逆に、麻生政権のような経済が分かる政権になるのであれば、「曖昧な景気弾力条項」の方が後々使い勝手がいいことになる。
先程も述べたように、消費税増税法案は既に「条件闘争」に移っているけれど、その条件をどうするかについては、時の政権によって、毒にも薬にもなり得る。実に悩ましい。
筆者としては、消費税増税法案の国会提出が避けられないのであれば、とりあえず、「数値目標付景気弾力条項」にして、民主党政権および財務省を牽制の手を打ってから、話し合い解散でもなんでもするほうがよりベターではないかと思う。
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この記事へのコメント
ゴンザレス
1.マニフェストの嘘とバラマキで
度重なる嘘を誤魔化して
ごり押し作戦で国会を行く
高く上るは消費税
2.天下りの夢と高額給料
無能な政治家を操って
立場は闇将軍裏首相
増税目指すはダメ役人
3.公金横領泥棒の官僚は
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消費税増税を繰り返す
おんぶに抱っこのミンス政権
4.不景気の波と死体の山
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それでも増税に突き進む
悪徳政権ミンス党
opera
というより、それ以前に、来年度予算案についてすら、予算案自体は衆議院の優越により一応成立しても、予算関連法案とくに財源を定める特例公債法案について否決し、その後野田内閣に対する問責決議案を可決・成立させ、それ以降は一切の審議に応じないという方針を参議院の野党多数派が明言している状況で、消費税を議論する意味があるのか(だからこそマスゴミは野田・谷垣密談を捏造したり、必死に既成事実化のプロパガンダをしている)ということだろうと思います。
もしこの状況が自民党政権下なら、マスゴミは逆に解散総選挙の大合唱をしているでしょうw
次に、「景気弾力条項」的な発想については、おそらく二段階に分けて考える必要があると思います。
第一に、「デフレ脱却」。これについては、仮に自民党政権下であっても、小渕・麻生内閣のような経済の分かる内閣が長期間続く保証はなく、かつ自民党にも前科があるので、明確な数値目標を設定する必要があると思います。例えば、インフレ率2%・名
ちび・むぎ・みみ・はな
日本の民主主義が法律至上主義であるかの様.
これでは律令国家だ.
戦後のGHQ洗脳もここに極まれり.
政府は国民の総意に基づくことを皆忘れている.
日本政府は国民の支持がなければ成り立たない.
従って, 法律が何であろうと, 国民が明確に
政府に反対した時, 内閣は維持し得ない.
従って, 居座る政府を追放するためには
国民の全般の支持を得れば良い.
そのために, 何をすれば良いか.
それは「条件闘争」ではあるまい.
Yes か No しかない.