昨日のエントリーで書き残したことを…。
1.維新八策における重要ポイント
昨日のエントリーで、維新八策には地方分権・地域主権の狙いがあるといったけれど、個々の政策で筆者が気になるのは、やはり経済財政政策。
ざっとみた印象では、筆者には、「税金は、タンスの奥まで調べて重箱の隅までしっかり取るぞ、無駄なものは徹底的に斬るぞ」という政策に見える。
3月10日、維新の会は維新八策のたたき台の概要を維新の会の全体会合で説明しているけれど、そこで配られたと思われる、維新政治塾のレジュメから、経済政策・雇用政策・税制の部分については次のように記されている。
【経済政策】
産業の淘汰を真正面から受け止める=産業構造の転換
産業の過度の保護から競争力の強化=徹底した就労支援⇒衰退産業から成長産業への人材移動
特定分野に税投入する計画政策から、経済活動の自由・消費者の選択を重んじる政策へ
<レクチャー>「既得権と闘う」成長戦略~成長を阻害する要因を徹底して取り除く
徹底した規制緩和による新規参入・イノベーション⇒具体例の研究
<レクチャー>金融政策と実経済政策 国外マーケットの拡大⇒自由貿易圏の拡大⇒TPP/FTA
<レクチャー>為替レートに左右されない経済構造・為替差損益を調整する政府の制度
貿易収支から所得収支・サービス収支の黒字化
高付加価値製造業の国内拠点化
<議論>脱原発依存、新しいエネルギー供給革命~日本の競争力を弱めないか・原発に代わる代替案
【雇用政策】
国内サービス産業の拡大=ボリュームゾーンの雇用創出⇒IR型リゾートなど
徹底した就労支援=消費者のニーズのない雇用を税でむりやり創出しない
労働市場の流動化、自由化⇒衰退産業から成長産業へ・外国人人材の活用
教育機関による人材養成=グローバル人材の養成
女性労働力の徹底活用
【税制】<レクチャー>
少子高齢化国家の税制⇒フロー課税からストック課税へ=お金を民間で回す
フローを制約しない税制=官がお金を集めて使うよりも民間でお金を回す(使わせる)税制
資産課税⇒金融資産以外の資産についての税は資産を現金化した場合又は死亡時に精算(=フローを制約しない)
使った分(設備投資、給料、消費)は消費税以外は非課税
寄付税制の充実⇒民による公共
国民総背番号制によるフロー・ストックの完全把握
国民総確定申告制
超簡素な税制=フラットタックス・特措法の廃止
レジュメのところどころに、<レクチャー>や<議論>の文字が入った項目があるけれど、"レクチャー"は講義、"議論"は他の異なる人と意見を交わすという意味だから、維新の会が本当にやりたい事は<レクチャー>の項目であり、逆に、維新の会としてはっきりとした見解がない、若しくは、党内の意見が分かれると思っているという、いわゆる"生煮え"の部分が<議論>に書いてあるとみていいのではないかと思う。
そういう観点からこのレジュメをみると、維新の会が何がやりたくて、何が曖昧なままでいるのかがよく分かる。このレジュメは維新八策に沿って、8つの大きな項目を掲げて、それぞれについて論点を箇条書きにしているのだけれど、因みに8項目それぞれについて、<レクチャー>と<議論>の数をカウントすると次のとおり。
1)統治機構の作り直し レクチャー:3 議論:3
2)財政・行政改革 レクチャー:1 議論:0
3)公務員制度改革 レクチャー:3 議論:1
4)教育改革 レクチャー:3 議論:1
5)社会保障制度 レクチャー:11 議論:2
6)経済政策・雇用政策・税制 レクチャー:11 議論:1
7)外交・防衛 レクチャー:0 議論:7
8)憲法改正 レクチャー:1 議論:0
と、「レクチャー」の数では、5)社会保障制度と6)経済政策・雇用政策・税制が圧倒的。一方「議論」の数では、7)外交・防衛が突出している。
だから、一言でいうと、維新の会は税制に手を入れ、社会保障の仕組みを変えることを当面の目標にした政党ではないかと思われる。その反面、国家主権に関わる部分である、7)外交・防衛は「生煮え」の段階で、8)憲法改正についても、実はあまり乗り気ではない様子が伺える。
国政に進出し、次期衆院選で200人当選させて、第一党を目指すなんてぶち上げているわりには、外交・防衛が生煮えでは不安が残る。
2.フローからストックへの是非
少し話が逸れたけれど、経済財政政策に論点を戻すと、維新の会は「経済政策」では、3つのレクチャーと1つの議論が挙げられている。
その3つのレクチャー項目には、「既得権と闘う成長戦略」、「金融政策と実経済政策」、「為替レートに左右されない経済構造・為替差損益を調整する政府の制度」があり、議論する項目は「脱原発依存」となっているのだけれど、レクチャー項目の3つを見る限り、「規制緩和」に主眼が置かれている印象を受ける。特に"成長を阻害する要因を徹底して取り除く"とあるから、既得権益に対しては、真っ向から立ち向かう政策を取ると予想される。
これに、議論項目として「脱原発」を挙げていることを重ね合わせると、いわゆる「原発ムラ」を、既得権益だとして徹底的に対立する可能性も捨てきれない。
だけど、大事なことは、創造的破壊であるのか、破壊のための破壊であるのかをしっかりと見極めること。特に電力は、すべての産業の基盤を形作るものだから、安易に壊して、「はいOK」とはならない。現在の技術では、自然エネルギーによる発電は原発の代替にはならない。
次に税制についてだけれど、税制については、全部で8項目挙げているのだけれど、それが丸ごとレクチャーになっているから、経済財政政策の中でも、特にこの税制改革が維新の会が一番やりたいことなのではないかと思う。
その税制のポイントは、レジュメを見る限り、「フロー課税からストック課税への転換」をその中心に置いているように思われる。
フローとは、平たく言えば、何某かの経済活動をすることで発生する"収入(利益)"のこと。また、ストックとは貯金や土地のような"資産"のこと。前者への課税の代表例が法人税や所得税で、後者に対する課税の代表例が固定資産税など。
国家の成長が鈍くなる、即ち、GDPが伸びなくなると、フローの全体量も増えなくなるから、フロー課税による税収も伸びなくなる。その一方、これまでの経済成長によって、庶民はお金や資産を増やしている筈だから、ストックに課税又は税率を上げることで税収も増えるはずだ、ということで、ストック課税の強化を維新の会は考えているようだ。
先日、物議を醸した、不動産を含む遺産の全額徴収なんて、このストック課税の最たるもの。まぁ、多少の累進課税的なものはあっても仕方がないとは思うけれど、遺産の全額徴収は、いくらなんでもやり過ぎ。日本はいつから、共産国家になったのか。
この政策を進めていくようなら、維新の会への支持は広がらない。筆者としては、やはりもっと成長していく方向、お金の流れを良くする方向、それも強制ではなくて自由意思でそれを選んでいけるのが望ましいと考える。
先日、政府は、イギリスと武器・装備品の共同開発に踏み切る方針を固め、155ミリ榴弾砲の「自動装填装置」など4案件の共同開発を呼びかけているけれど、軍事産業なんかもこれから有望な分野だし、軍事にも多いに関連する宇宙開発なんかも、これからの成長産業の視野に入れておいてもおかしくない。
まだまだ、探せば道はある。
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この記事へのコメント
sdi
公務員対策や君が代問題といったや「手段」の達成ではなく、維新の会の政治目標の達成とそれによりどれだけ「目的」に近づいたか、です。
日本人論としてよく言われることのひとつに「手段が目的化する傾向」がありますが、維新の会は始まったばかりの現時点で既にそうなりつつあるように見えます。つまり、本来の意味での「目的」が一致しない呉越同舟集団ゆえにめいめいが勝手に「手段」をもちよって合成したのが「八策」ではないでしょうか?
もしくは、今の日本の社会体制を「壊す」ことでは一致していても「何のために壊すか」「壊したあとどうするか」について不十分すぎます。破壊のあとの建設のプロセスを一切無視して、破壊の際の快感と完成予定図の絵の「素晴らしさ」を眺めて浮かれてるのかもしれません。
とにかく、壊すことしか考えない輩が多すぎます。
日比野
レジュメには、書いてないので、良く分かりませんね。
とおる
ご返答、ありがとうございます。
「大阪維新の会」が書いてないのは、考えてないのか、触れたくないのか、アドバルーンを揚げているだけなのか、注視していきましょう。
白なまず
【参照URL: http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M0UOP36TTDS101.html】
日銀は今月13日の決定会合で、審議委員の1人が示した資産買い入れ等基金のさらなる増額案を反対多数で否決。代わりに長期的な成長基盤を強化するための資金供給の拡大を決めた。白川総裁は会合後、記者団に対し、政治に屈すれば「自殺行為」となると述べた。
SAKAKI
改革って地道な作業の積み重ねなんだよねぇ・・・
ちび・むぎ・みみ・はな
一重に自民党が嘘付党と対決できないから.
谷垣総裁が続く限りは様々な揺さぶりが起き,
その度に日本の土台が緩んでくるだろう.
三橋ブログによれば, 既に建設関係では能力が
足りないそうだ. それはそうだ, 自民党リベラル
が長年痛め付けた上に嘘付党のとどめ.
嘘付党の連中と自民党執行部までが同じ穴の
ムジナに見えてしょうがない.
幾ら能力があっても, 熱意があっても,
徒に嘘付どものお守をしているだけでは
自民党自体も再編に向かわざるを得ないだろう.
日本の不幸の真の原因は自民党が未だに
リベラルな執行部に抑え付けられていることだ.
何時も同じことを書いて顰蹙を買っているようだが,
これから益々このことが明らかになってくるだろう.
opera
ただ、正直に言って、このような真摯な分析は、たとえば民主党のマニフェストを事前に分析することにどの程度意味があったのかと同様に、徒労に終わりかねないような気がしています。
何しろ、まともな政党としての組織・機能が無いどころか、どこで誰が決めているのかもハッキリしない状況なのですから。
以前も若干コメントしましたが、もしかするとこうした政策の分析よりも「維新の会」にどのような連中が集まってきているのかに着目した方が、よりこの集団の本質に迫ることができるかもしれん。
現時点で言えることは、どうも構造改革や新自由主義に親和性がある奴らが中核にいるらしいということ、そしてこうした連中には明確な国家観も情勢認識もなく、相変わらず国家解体とグローバル化への盲信に取り憑かれているらしいこと、くらいかもしれません。
さらに、まともそうに見える個別政策も、他の政策との整合性や全体的な価値観と照らし合わせれば、そこに体系的な合理性はなく、単なる人気取りの思い付き、目眩ましでしかないということくらいでしょう