話し合い解散と苦境に立つ小沢
民主・自民との間での会談が活発になっている。
3月2日、岡田副首相が自民党の町村氏と会談し、また、7日には、民主党の前原政調会長と、自民党の茂木政調会長が極秘会談を行ったと伝えられている。
岡田・町村会談では、消費税増税関連法案への協力について話し合われ、前原・茂木会談では、子ども手当の見直しなどで妥協点を探る詰めの協議がされたようだ。
更に、どちらの会談も、次期衆院選後の大連立を含めた連携や、今後の政局をにらんだ与野党の情勢についても意見交換がかわされたと見られている。
先月25日に行ったとされる野田・谷垣極秘会談報道から、何やら、民主・自民の距離が接近しつつあるように見受けられる。
3月4日、自民党の茂木政調会長は、富山県黒部市で講演し、消費税率引き上げ関連法案について賛成する可能性を口にする一方で、「法案の衆院採決時には造反の動きが出て波乱含みになる。野党の自民党も一定の役割を果たし、混乱が大きくならないように与野党の様々なレベルで胸襟を開いて話す必要が出てくる」し、「『最低でも(民主党内の)7~8割はまとまった。あとの2~3割は出て行ってもらう』ぐらいの意気込みで取り組まなければ、本格的な話し合いはできない」と、小沢氏らが法案に反対する場合は離党させるべきだとの認識を示している。
一方、野田首相は4日のテレビ番組で、消費税増税法案成立前の衆院解散の可能性について問われ、「国民のためにやり遂げなければいけない時には様々な判断がある」とし、「首相として不退転の決意を申し上げたわけだから、強い覚悟、重たい決意だ」と、今国会中の法案成立を図る考えを強調した。
民主・自民とも協調ムードをつくりつつ、互いに相手の腹を探っているように見えなくもないけれど、この流れは、やはり先の野田・谷垣極秘会談であることは疑いない。
日本BS放送報道局長の鈴木哲夫氏によれば、野田首相とは松下政経塾の同期生であり、また自民党・谷垣総裁の側近でもある、逢沢一郎総裁特別補佐が、野田・谷垣極秘会談をセットしたのだそうだ。
ただ、逢沢氏は、極秘会談がリークされたことに立腹しているようで、3月1日の自民党党役員会終了後、「漏れるなんて、官邸は何をやってるんだ!」と吐き捨てたという。
自民党にとっては、リークされたことで、谷垣おろしが加速しているとも言われているけれど、まぁ、谷垣おろしはこれまで何度も取り沙汰されては何も起こらなかったから、今回もどうかは分からない。
野田首相側も、党内の増税反対派、すなわち小沢氏グループにどう対処するのかという課題抱えているのだけれど、民主党内では自民との連携をアピールすることで、小沢氏にダメージを与えられるのではないかという見方が強いようだ。
その小沢氏は、野田・谷垣極秘会談について、3月3日のテレビ番組で、「2人にとって何もいいことはない。いい結果は出ない。何でこそこそ会うのかということになる」と不快感を表明していて、肝心の消費増税についても、「民主党の中でも内閣と執行部が言っているから公然と反対と言わない人がいる。…今すぐの増税には反対の人がほとんどで、突っ込むのは党の中で支持が得られなくなる」と野田首相を牽制している。
ただ、党内には今すぐ増税には反対の人がほとんどと言っておきながら、民主党の中でも内閣と執行部が言っているから公然と反対と言わない人がいるとも言っているから、小沢氏のいう「ほとんど」の中には、彼は反対するに違いない、という思いこみ部分もあるかもしれない。というのは、鳩山由紀夫元首相は、消費税増税関連法案について法案の内容次第で賛成もあり得るとの認識を示したから。
2月18日、鳩山氏は、鹿児島市内で開かれた同党衆院議員のパーティーに小沢氏と共に参加し、「国民に訴えたことをしっかりと守るという小沢元代表の話はその通りだ…経済が万全ではない中で結論を出していいのか不安を禁じえない。まだまだ、その前にやることがあるというのが国民の総意だ」と小沢氏と同調して消費税増税反対の考えを述べていた。
それがここにきての方向転換。まぁ、言ううことなすこと信用できない、鳩山氏のことだから、この発言もどこまで本気なのか分からないけれど、小沢氏にとっては、消費税増税反対で同調してくれると見ていたであろう、鳩山氏の手の平返しには呆れているかもしれない。
6日の衆院予算委員会で、野田首相は、消費増税反対の小沢氏に対して、「どうやって共通理解に持っていくかが問われている。『誰が悪者で、私は正しい』と抵抗勢力をつくる手法は取らない」と述べて融和の方針も述べているのだけれど、その言葉と裏腹に、民主党執行部は、小沢グループの1回生に対して、締め付け始めている。
というのは、民主党執行部は、先月末から1回生全員に対して、個別面談を実施したのだけれど、各議員に地元活動の状況を報告させると同時に、社会保障と税の一体改革について、支持者らへの周知に全力を挙げるよう指示し、通常の活動資金に加え、3月中に300万円の追加支援を行うと伝えている。
その際、「地元活動をしっかりやった人には上乗せするし、さぼったらペナルティーを科す」と語っているという。つまり、消費増税の方針に従う場合は金を積むし、従わない者には金は渡さないと、要するに、札束で頬っぺたを引っ叩く行動に出ている。
なにせ民主党は岡田副首相が幹事長時代に、政党交付金含めて、ほとんどお金を使っておらず、100億円以上の現金があるとも言われている。金に物を言わすなど造作もない。
だけど、執行部が札束で頬っぺたを引っ叩こうが、小沢氏がそれ以上の金を積んで見せたら、執行部の札束作戦も効果はなくなる。
1月16日に、小沢氏は、自身が会長を務める「新しい政策研究会」を立ち上げ、衆院議員会館で会合を開いている。この勉強会には、実に民主党の衆参議員ら合せて109人が参加して、その力を見せつけたのだけれど、小渕内閣で官房長官を務めた野中広務氏によると、この勉強会の帰りがけに金一封として、20万円づつ包まれていたとし、109人は金の力だと述べている。
これが本当であれば、民主党執行部も、小沢氏も、金をばらまくことで、自身の勢力を確保・拡大しようとしていることになる。だけど、小沢氏が党執行部に対抗できるだけの資金、即ち100億以上もの金を持っているとは思えないから、純粋に資金量での勝負となると、小沢氏に勝ち目はない。
だから、小沢氏が勝てる可能性があるとすれば、金ではなく、増税反対という"大義"だけで、小沢氏についていく議員が、消費税増税法案を否決できるくらいの数、つまり50人以上いて、更に、解散総選挙ではなく、内閣総辞職に追い込むという、極めて厳しい条件をクリアしなくちゃいけない。
民主党の若手議員のひとりは「若手議員の多くはシラけている。小沢氏が『消費税増税反対』と叫ぶのも、ウンザリ気味だ。(再選をあきらめて)ひそかに再就職先を探している人も少なくない」と語っているそうだし、今頃になって鳩山氏が、消費増税に賛成するかもしれないと言うのが、今の民主党の姿。だから、小沢氏の増税反対の"大義"とて、今の民主党内では、それほど大きなものではなくなっている可能性がある。
そして何より、当たり前のことだけれど、解散権は野田首相が持っていて、小沢氏が持っているわけじゃない。野田首相が増税法案を否決するなら、解散するぞ匂わせるだけで、若手議員は震え上がる。
これらのことを考えると、小沢氏の有罪無罪に関わらず、非常に厳しい立場に立たされていることは明らか。4月9日には、例の「陸山会」の土地購入をめぐる収支報告書虚偽記入事件での、小沢氏の論告求刑公判が行なわれるけれど、有罪であればいうまでもなく、たとえ無罪であったとしても、現在の厳しい立場がどうかなるとは考えにくい。それほど追いつめられている。
だから、民主・自民の間で、話し合い解散の"うわさ"が上り、それが現実味を帯びるにつれて、小沢氏の求心力はどんどん失われてゆくだろうと思われる。
野田首相、或いは、官邸がそこまで見切った上での、極秘会談のリークだったとしたら、流石という他ない。
←人気ブログランキングへ
この記事へのコメント
ちび・むぎ・みみ・はな
TPP反対と増税反対も主張していたと思うのだが.
岡田氏と町村氏が会談したとしても, 消費税賛成
とはならないと思う.
愛国者であるかれが岡田氏と共通点を持つとは思えない.