3月3日、政府は、日本の排他的経済水域(EEZ)の基準となる島のうち、無名だった39の無人島の名称を決定した。
これは、EEZの外縁を根拠付ける全国99の離島のうち、地図・海図に名称が記載されていない無人島が49島あることを受け、海洋に関する施策を集中的かつ総合的に推進する機関である「総合海洋政策本部」が名称を決定した。
総合海洋政策本部は平成22年度から、EEZの外縁を根拠付ける離島を最優先に、地図・海図に名称が記載されていない島の名称の決定に取り組んでいたのだけれど、命名に当たっては、地元自治体への確認をして、無人島49島のうち10島については、地元での呼称が判明したため、平成23年5月に記載する名称を決定していた。
残りの39島については、引き続き作業を進めていて、今回漸く名称が決まった。 決まった名称は次のとおり。
「名称」 所在地
1 「東小島 ひがしこじま」 東京都所属未定・須美寿島
2 「涙ヶ浜東小島 なみだがはまひがしこじま」 東京都所属未定・(伊豆)鳥島
3 「後東小島 うしろひがしこじま」 東京都小笠原村・嫁島
4 「鮪根南小島 まぐろねみなみこじま」 東京都小笠原村・姪島
5 「松江岬東小島 まつえみさきひがしこじま」 東京都小笠原村・南硫黄島
6 「東小島 ひがしこじま」 東京都小笠原村・南硫黄島
7 「東南東小島 とうなんとうこじま」 東京都小笠原村・南硫黄島
8 「南東上小島 なんとうかみこじま」 東京都小笠原村・南硫黄島
9 「南東下小島 なんとうしもこじま」 東京都小笠原村・南硫黄島
10 「南南東小島 なんなんとうこじま」 東京都小笠原村・南硫黄島
11 「南小島 みなみこじま」 東京都小笠原村・南硫黄島
12 「南南西下小島 なんなんせいしもこじま」 東京都小笠原村・南硫黄島
13 「南南西上小島 なんなんせいかみこじま」 東京都小笠原村・南硫黄島
14 「南西小島 なんせいこじま」 東京都小笠原村・南硫黄島
15 「南西小島 なんせいこじま」 東京都小笠原村・西之島
16 「丸根南小島 まるねみなみこじま」 東京都小笠原村・北硫黄島
17 「南西小島 なんせいこじま」 沖縄県北大東村・沖大東島
18 「北西小島 ほくせいこじま」 沖縄県石垣市・久場島
19 「北小島 きたこじま」 沖縄県石垣市・久場島
20 「北東小島 ほくとうこじま」 沖縄県石垣市・久場島
21 「北小島 きたこじま」 沖縄県石垣市・大正島
22 「北北西小島 ほくほくせいこじま」 沖縄県久米島町・硫黄鳥島
23 「北小島 きたこじま」 沖縄県久米島町・硫黄鳥島
24 「白瀬北小島 しろせきたこじま」 長崎県小値賀町・白瀬
25 「田里生崎西小島 たりうざきにしこじま」 長崎県対馬市・対馬
26 「ノリ瀬 のりぜ」 福岡県宗像市・沖ノ島
27 「見島北オオ瀬 みしまきたおおせ」 山口県萩市・見島
28 「小瀬 こぜ」 石川県輪島市・舳倉島
29 「トド岬西小島 とどみさきにしこじま」 北海道松前町・(松前)大島
30 「西小島 にしこじま」 北海道松前町・(松前)大島
31 「北西小島 ほくせいこじま」 北海道松前町・(松前)大島
32 「トド島 とどじま」 北海道奥尻町・奥尻島
33 「ボウズ岩 ぼうずいわ」 北海道奥尻町・奥尻島
34 「ベンサシ大島 べんさしおおしま」 北海道礼文町・礼文島
35 「三ツ岩 みっついわ」 北海道礼文町・礼文島
36 「種北小島 たねきたこじま」 北海道礼文町・礼文島
37 「水かぶり岩 みずかぶりいわ」 北海道枝幸町
38 「幌内北小島 ほろないきたこじま」 北海道雄武町
39 「エタシペ岩 えたしぺいわ」 北海道斜里町
この中で18番から21番までの島が、尖閣諸島に属していて、これまで名前の無かった島。具体的には、久場島付近の3島を「北西小島」「北小島」「北東小島」、大正島付近の1島を「北小島」と名付けている。
まぁ、北東小島とか北小島とか、なんと芸のない名付け方だとは思うけれど、名前がないよりは全然良い。
なんといっても海図に島の名が載るのだから、EEZはここまでだと対外的にも主張しやすくなる。地味なように見えてとても重要。
総合海洋政策本部によると、EEZは、もっとも潮が引いたときの海岸線である低潮線が設定の基準となるから、低潮線の位置を最新の調査手法によって把握し、海図を更新することと、周辺海域における監視の強化を図るために、名前のなかった離島の名称付を行ったとしている。
以下の図は、マピオンから抜粋した尖閣諸島の久場島の拡大図と久場島付近の海図なのだけれど、久場島の周囲に細かい島が沢山あることが分かる。ところが海図には久場島とだけあって、周辺には何もない。
今回はEEZの基準となる島に名前をつけたということだから、これら久場島の周囲の細かい島の中から、基準となる3島について名前と付けたのではないかと思われる。(もっと遠くに島があると御存知の方はお教えいただければ幸いです。)
この周囲に細かい島があるという意味では、魚釣島や南小島でも同じ様に細かい島があるのだけれど、流石にEEZの基準と無関係な小島まで名前を付けることは、その必然性もないし、やらないのだろう。
さて、予想通りというかなんというか、この日本政府の無人島名称決定について、早速、中国が噛みついてきた。3月3日、中国国家海洋局と民政省は尖閣諸島と周辺の計71の島々について、中国語の公式名称をつけたと発表した。
国家海洋局の公式サイトでは「我が国の海域の島々で名称を標準化した」として、71の島々の名称の一覧表を掲載している。日本が尖閣諸島付近に新しく命名したのはたった4島だけなのに対して、71もの島の名前をつけてきた。
どんな名前を付けたのかについては、こちらの中国の国家海洋局のサイトで確認できるのだけれど、名前をつけた島々の位置についてのコメントをみれば、おおよそ見当がつく。
まず、魚釣島を基準として、そこから東西南北に2番目の基準となる島があり、さらにその2番目の基準の島の東西南北にまた島があるという説明になっている。
そこで、魚釣島と2番目の基準となる島を整理すると次のようになる。
1. 魚釣島(中国名:釣魚島)
16.黄尾島(魚釣島の北約27千米)
37.赤尾島(魚釣島の東約110千米)
48.北小島(魚釣島の東約5千米)
52.南小島(魚釣島の南約5.5千米)
64.北島 (魚釣島の北約6千米)
69.南島 (魚釣島の北約7.4千米)
これらの島を2番目の基準としてさらに、東西南北方向にまた島があると説明している。2番目の基準となる島の魚釣島の距離からみて、これらが、周辺の小島ではないことは明らか。
おおざっぱな距離からしか推定する限り、おそらく16の黄尾島が久場島、37の赤尾島が大正島、48の北小島、52の南小島がそれぞれ日本の北小島、南小島にあたると思われる。
要するに、中国も尖閣諸島の個々の島をまるごと名前とつけて対抗しようとしているということ。
これに対して、山根隆治外務副大臣は3月5日の記者会見で、「中国外務省スポークスマン談話における尖閣諸島に関する独自の主張はまったく受け入れられない。極めて遺憾だ。外交ルートを通じて強く抗議する旨申し入れた」と表明し、藤村官房長官も、同じく、5日の記者会見で「尖閣をめぐり解決すべき領有権の問題は存在しない。中国独自の主張は全く受け入れることができない」と批判している。当然のこと。
特に、藤村官房長官が、尖閣諸島に関して領有権の問題は存在しないと従来の立場を堅持したのは正しい。
また、去年の4月、沖縄の仲井知事が、極秘で尖閣諸島を上空視察した目的について、今年3月2日の記者会見で、視察を公開しなかったのは領土問題を理由に知事の視察中止を求めてきた中国や台湾への配慮かとの質問に対しては、「尖閣に領土問題はないと認識している」と答えている。きわめて真っ当な答え。これを貫かなきゃいけない。
ただ、中国はこれで、また一段と強硬姿勢を剥き出しにしてきている。
3月2日、中国国家海洋局当局者が、「日本の違法な調査活動を阻止するため、東シナ海の監視を強化する」との方針を明らかにしたと新華社通信は伝えている。
先日も、尖閣諸島海域で測量をしていた海上保安庁の船が、中国国家海洋局の船から海洋調査の中止を要求する事件があったけれど、中国が"調査活動を阻止する"と言った以上、実力行使に出てくる可能性がある。
だから、今以上の警戒が必要になるし、きちんとした防衛体制を整えておく必要がある。名前を付けたから安心なんてしていられない。
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尖閣諸島:「島の名前」で日中応酬
藤村修官房長官は5日の記者会見で、中国が沖縄・尖閣諸島などに固有の領土として名称を付けたと発表したことについて「尖閣をめぐり解決すべき領有権の問題は存在しない。(中国の)独自の主張は全く受け入れることはできない」と批判した。一方、中国外務省の劉為民報道局参事官も同日の記者会見で、日本政府が尖閣諸島などの名称を決めたことに改めて抗議。島の名前をめぐり、日中両政府による非難の応酬となっている。
日本政府は2日、日本の排他的経済水域(EEZ)の外縁を根拠づける基点でありながら名称がなかった北海道から沖縄県までの39島に名前をつけ、内閣官房総合海洋政策本部のウェブサイトで公表した。39島には尖閣諸島周辺の四つの島が含まれている。
これに対抗する形で、中国政府は3日、尖閣諸島などに中国名を付けて発表。日本政府は同日、東京と北京の外交ルートを通じて中国政府に抗議した。
もっとも、日中両政府は国交正常化40周年にあたる今年、関係悪化は望んでいないのが本音。藤村氏は5日の会見で「日中関係の安定的発展が阻害されることは決して望んでいない」と強調。山根隆治副外相も同日の会見で「大局的観点から幅広い分野で具体的協力を進め、戦略的互恵関係を深化させる」と表明するなど、事態の沈静化を図りたい考えをにじませている。【西田進一郎】
毎日新聞 2012年3月5日 22時13分
URL:http://mainichi.jp/select/seiji/news/20120306k0000m010103000c.html
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