期待外れの政権と期待を受ける政党

 
「2人のツケを払わされている」
野田首相

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1.国民に期待されていない野田政権

3月3、4日の両日、毎日新聞が実施した全国世論調査で、内閣支持率は28%と、1月の前回調査から4ポイント下落、3割を割り込んだ。不支持率は45%。

中でも、社会保障制度の将来に不安を感じるとの回答が92%になる一方、消費増税で社会保障が安定するかどうかについては、「思わない」が79%を占め、「思う」は僅か17%。また、消費税増税の是非については、「賛成」は38%で、「反対」の58%を大きく下回っている。中でも無党派層は6割が「反対」している。

要するに、社会保障に不安を感じているのに、その解決手段は消費増税ではない、というのが国民の声。だから、国民の社会保障に対する不安を解消するためには、消費増税ではない方法での解決を模索しなければならないということになる。

となると、社会保障の仕組みそのものを変えて、安心できるものにするか、消費増税以外の手段での財源確保を図らないといけないということ。

この間、民主党は最低保障年金の創設を含めた新しい年金制度を公表したけれど、「最低保障年金のウソ」のエントリーで指摘したように、更なる増税が必要になる上に、貰える額も少なくなるという改悪案であることが明らかになっているし、野党からの猛反発を受けて、民主党案は頓挫しそうな情勢。

仕組みを変える形での社会保障の安定が望み薄となれば、あとは、消費増税以外の手段での財源確保ということになるのだけれど、民主党からそういう構想は聞こえてこない。要するに、今の民主党政権では何もできそうにないということ。

実際、毎日新聞の世論調査でも、野田内閣の支持しない理由に「政治のあり方が変わりそうにない」と「政策に期待できない」がそれぞれ38%もある。

だから、逆にいえば、「政治のあり方を変え、政策に期待できる」ような政党が出てくれば、そちらにわっと支持が集まる可能性がある。

となると、やはり注目されるのが、大阪維新の会。

当初、大阪維新の会を率いる橋下氏は、大阪都構想の実現に向けて、まずは既成政党に都構想実現への協力を求め、応じなければ独自候補を擁立するという、2段構えの国政進出を描いていたのだけれど、次第に、独自候補者を立てる方向になっていった。

国政に対して、大量の独自候補を立てるためには、政権公約が要るということで、橋下氏は、昨年末から、維新の会政調会長の浅田均・大阪府議会議長らとメールをやりとりして、92項目の政策を積み上げた。

そして、今年1月18日に、橋下氏は大阪府知事の松井氏や浅田氏ら維新の会幹部と大阪市内で会い、国政に進出する旨を語り、目標議席について「インパクトがある数字が必要だ」というと、松井氏らは「200でしょ」と応じたのだそうだ。

維新の会の政策立案は早い。深夜、橋下氏がメールで問題提起をすると、多い時には30人規模の維新幹部やブレーンが返信して方針が決まっていくという。

また、橋下氏は自分のメールアドレスを市の全職員に公開して、内部告発などをメールや手紙で受け付けていて、多くの情報が寄せられているという。

橋下氏のブレーンによると、維新版・船中八策の原案は、「日常のメールのやりとりをかき集めて、『結構いいじゃん』という感じでぽっと出したもので、私たちは驚いた。生煮えで出してみたら、ばか受けして、お化けになっちゃった」ということだから、これが国政レベルでも通用するかどうかは、「龍馬と維新と橋下と」で指摘したように、橋下氏を補佐する人に掛かっているように思う。




2.吹き始める"変えればよくなる"風

では、大阪維新の会が次期衆院選に大量の候補を擁立したとして、果たしてどれくらい当選するのか。

維新の会には現職の国会議員がおらず、政党要件を満たしていたい。なので、選挙では「諸派」つまり泡沫扱いになる。しかも、大量の候補者を出すとなると、供託金などの問題もある。

仮に重複を入れて、小選挙区に200人、比例に100人候補を立てるとすると、小選挙区の供託金が一人300万円、比例が一人600万円だから、その額は実に12億円にもなる。

3月4日、橋下氏はフジテレビの「新報道2001」に出演し、候補者数について「300とか200とか。ただ、僕らは政党交付金を受けていませんから、全部自己資金で出てもらう」と述べている。

ただ、維新の国政進出について「国会議員が僕らの意思をくんでいただければ、国政に足をかける必要はない。そんなのは絶対やっちゃいけない」と述べる一方で「今の国政の状況では、国民はついてこない」と話している。

だから、一応、維新の会は、表向きでは、国政に出るのか出ないのか、どちらにも行けるスタンスではいる。

このようなことから、小泉元総理の秘書官を務めた飯島氏の見立てでは、当選者はせいぜい30人程度としているのだけれど、その一方では、大量当選するという怪文書がマスコミに送られたりしている。

これは、夕刊フジの編集局に、「解散総選挙したときの党派別獲得数第一報」という“選挙予測”が封書で送られてきたもので、差出人は「R社」とあるだけで、住所や電話番号は書かれていない。

それによると、民主党は現有議席から206を失い85議席、自民党は第1党になるものの130議席の微増で、公明党の23議席を足しても衆院過半数には届かない。一方、大阪維新の会は128議席で第2党になるという驚きの予測。

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まぁ、今のところ、何の根拠も示していない怪文書の選挙予測にしか過ぎないから、それほど気にする必要はないかもしれないけれど、政党内部では、違って受け止められている可能性はなくもない。それは、各政党での内部調査による獲得議席数予測と怪文書の内容が近い場合。

いかなマスコミといえども、今の段階で、維新の会が128議席も獲ると予測しているところはないし、先の衆院選のように政権交代だという煽りもない。ただ、自分達が後押しした民主党を庇いだてするにも限界があるし、かといって自分達の過ちを認めたくないという心理が働いているのか、「民主も駄目だが自民も駄目」という感じで、既成政党を引き摺りおろすような報道が多いから、その分、新政党に追い風が吹くことは有り得る。

ただ、それでも、いきなり128議席はよっぽどのことがないと現時点では厳しいと思う。だけど、このままでは、時間が経つにつれ、維新の会の当選者数が増えていくようになるとは思う。

そんな中、自民党は3月2日の総務部会で、維新の会の「大阪都構想」を実現するための地方自治法改正案要綱を了承し、公明党との調整を得た上で、今国会への共同提出を目指すという。

また、先の「新報道2001」番組内で、橋下氏が大阪市で生活保護受給率が高い西成区で税減免などの特区構想を掲げていることに関して、自民党の芳正政調会長代理が、「これとこれだけ権限でやらせてほしいと(要望を)いただければ、すぐ法案にまとめられるよう厚生労働省と議論する」と協力を約束している。

なんだかんだいって、維新の会の要望に対して、自民党は反応し、着実に動き出している一方、民主党の動きは鈍い。

1月14日、野田首相はテレビ東京の番組に出演し、橋下氏に対して、「若干、劇場型になっている」とし、「大阪都構想はよく分からない」とコメントしている。更に、「国民、府民が見ているだけでは民主主義は成熟しない。府民が1人のスターを仰ぎ見ているだけでは良くない」と指摘している。

確かに、野田首相のいう"1人のスターを仰ぎ見ているだけでは良くない"というのは、その通りなのだけれど、民主党自身が、そういう状況下に国民を追いやっている原因のひとつでもあるということについては、もう少し自覚があってもいい。ただ、鳩山・菅と2代つづいた失政のツケを一身に引き受けている野田首相には、現状はちょっと酷かもしれない。

だけど、世論調査で明らかなように、国民は民主党政権が何かできるとは思っていない。だから、何かできる政治を求めている。だからといって、何でもかんでも「変えればよくなる」という考えには筆者は賛成できないけれど、現実に、またぞろ、"変えればよくなる風"が吹きはじめているようにも感じている。


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画像衆院選擁立「300とか200とか」橋下氏、報道番組で言及 2012.3.4 13:53

 大阪維新の会代表の橋下徹大阪市長は4日、フジテレビの「新報道2001」に出演し、次期衆院選で擁立する維新の候補者数について「300とか200とか。ただ、僕らは政党交付金を受けていませんから、全部自己資金で出てもらう」と述べた。

 橋下氏は古川元久国家戦略担当相、自民党の林芳正政調会長代理らと議論。維新の国政進出について「国会議員が僕らの意思をくんでいただければ、国政に足をかける必要はない。そんなのは絶対やっちゃいけない」と述べる一方、「今の国政の状況では、国民はついてこない」と語った。

 生活保護問題に関する議論では、橋下氏が大阪市で生活保護受給率が高い西成区で税減免などの特区構想を掲げていることに関し、林氏が、自民党で生活保護問題のプロジェクトチームを立ち上げたことにふれ、「これとこれだけ(大阪市の)権限でやらせてほしいと(要望を)いただければ、すぐ法案にまとめられるよう厚生労働省と議論する」と協力を約束した。

URL:http://sankei.jp.msn.com/region/news/120304/osk12030415130005-n1.htm

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