2月29日、与野党党首による党首討論が行われた。
野田首相と自民党の谷垣総裁との党首討論は、いつもと少し違って、かみ合った討論が見られた。これまでは、野田首相が税と社会保障の一体改革について「与野党で協議を」と呼びかけ、谷垣総裁が「マニフェスト違反しているのだから衆院解散を」と拒絶するパターンの繰り返しだった。
それが、今回は、谷垣氏が、瓦礫の広域処理の話から始め、復興予算の執行促進問題、衆院の「1票の格差」と、政策の中身に関する討論をしていた。これ自身は悪いことじゃない。
これは、3月1日に、自民党が次期衆院選公約の骨格となる「基本姿勢」を発表しているけれど、自民の党方針が固まってきたことが影響してのことかもしれないし、あるいは、いよいよ、野田政権側も税と社会保障の一体改革の法案提出が迫ってきたことも関係しているかもしれない。
中でも、筆者が注目すべきと思うのは、既に、いろんな方が指摘していることだけれど、野田首相が、税と社会保障の一体改革について「年度内に法案を提出する。51対49の党内世論でも、手続きを踏んで決めれば、みんなで頑張っていく」と発言したこと。
これは、谷垣氏が野田首相に対して、足元が乱れているではないかと指摘したことに対する答えだったのだけれど、野田首相は党内も民主的なプロセスを得てまとめたと強調し、皆に示すと啖呵を切った。
であるならば、粛々と法案が提出されることになる筈だけれど、小沢氏のように堂々と造反を公言する人物を抱えている現状では、素直に聞ける言葉じゃない。
ただ、51対49でもというからには、場合によっては小沢氏を切ってでもやるという意志の表れだ、とみる向きがいてもおかしくない。そして、それを後押しするかのように、党首討論の最後に谷垣氏は、野田首相に対して、党内を纏め、そして解散をするのなら、自民としても協力する道はいくらでもある、と前向きな発言をした。
これを聞くと、「話し合い解散」の算段でもついているのか、とも思ってしまうのだけれど、そんな折、まるで計ったかのように、野田首相と谷垣総裁が2月25日に都内のホテルで極秘会談していたと報道されている。
これは、複数の関係者が明らかにしたそうなのだけれど、会談では、消費税増税をめぐる与野党協議の在り方や「話し合い解散」の可能性についても話があったのではないかと見られている。
因みに2月25日の首相動静を見てみると次のとおり。
午前8時現在、公邸。朝の来客なし。
午前11時46分、公邸発。同50分、東京・虎ノ門のホテルオークラ着。同ホテル内の日本料理店「山里」で藤村修官房長官と会食。
午後0時47分、同所発。同53分、公邸着。
午後1時55分から同2時16分まで、サッカー日本女子ユース東北選抜メンバーらによる表敬。藤村官房長官同席。
26日午前0時現在、公邸。来客なし。(了)時事通信 2月25日 首相動静より
となっているから、会談をしたとすれば、ホテルオークラ内の日本料理店「山里」でということになるだろうけれど、藤村官房長官も同席していた可能性もある。極秘会談をしていたかについては、野田首相、谷垣氏、そして藤村官房長官の3者ともこれを否定している。
だけど、時期が時期だけに、そして、その後の党首討論での谷垣氏の「話し合い解散」を匂わせる発言も合わせて考えると、そう憶測されても仕方ない。一部には、野田首相、谷垣氏のパイプを断ち切る為に、小沢氏グループが会談情報を流したのではないかとの臆測も飛んだらしいのけれど、極秘会談をしていたとの報道があった、2月29日の夜に、輿石幹事長が、自民党の石原伸晃幹事長に電話で「俺は全然知らない。どういうことなんだ」と問い合わせているから、その線は薄いだろうと思われる。
極秘会談は、会談をしていたことが、ばれた瞬間もう極秘ではなくなる。
話し合い解散などという重要な話を極秘に会談するというのは分からなくはないけれど、であればこそ、最後の最後まで極秘裏に進めていったほうが都合がよいはず。特に自分のところの党内意見が固まっていないのであれば尚更。
ほんの数日前のことが極秘のままに出来ないのであれば、野田政権の情報管理体制は相当甘いと言わざるを得ない。そこまで間抜けな政権だというのか。もしそうでないとするならば、あとは、意図してリークしたか、極秘会談記事そのものがトバシだったかのどちらか。
前者の場合は、消費増税反対の小沢グループ系の多くの議員に、関連法案に反対して離党するか、反対を撤回、または反対を押し殺して賛成に周り、党にとどまるかの決断を迫ることになるし、後者であれば、解散総選挙と政界再編、あるいは大連立を望むマスコミか誰かの仕掛けだったということになる。
党首討論で、谷垣氏が党内を纏めよといい、野田首相が51対49でもやるといったことを考えると、この極秘会談報道が、誰かの意図的なリークであったとしても、マスコミのトバシであったとしても、そこには、小沢氏と小沢グループを排除しようというベクトルが働いている。
民主党党首も自民党党首のどちらも小沢氏排除の方向を向いているということは、もしも解散総選挙があり、政界再編が起こることがあるとしても、それは、小沢抜きのものになるだろうということになる。
いよいよ3月。今年最初の政局の山場を迎えようとしている。
←人気ブログランキングへ
党首討論:野田首相「党内51対49でも提出」/谷垣・自民総裁「解散後に協力も」
◇「小沢抜き再編」見極めも
今通常国会初となった29日の党首討論は、野田佳彦首相と自民党の谷垣禎一総裁が消費増税をめぐる応酬を繰り広げつつ、「民・自」協力の芽を探り合う展開となった。首相は「51対49でも(民主)党で決めたら、しっかり野党と協議する。皆さんもぜひそうしていただきたい」と小沢一郎元代表らの反対論を押し切って消費増税法案を年度内に提出する決意を強調し、今国会での成立へ向けた協力を要請。与野党協議を拒否した谷垣氏も「(次期衆院選後は)協力する道はいくらでも開ける」と述べ、首相が「小沢切り」に踏み切れるかを見極める構えをみせた。
「一緒に消費税を引き上げるために、(法案を)通すために努力しようじゃありませんか」。首相は党首討論で谷垣氏に正面から協力を呼びかけた。その切り口としたのが、野党側の批判する「交付国債」だった。
政府は12年度予算案に基礎年金財源の一部を計上せず、将来の消費増税で償還する交付国債で賄う方針。自民党はこれを「粉飾的」と批判し、赤字国債を発行する対案を示している。首相は「(赤字国債の)償還財源は消費税か」と逆質問。谷垣氏が「その通り」と答えると、首相は「いい答弁をいただいた」と歓迎し、消費増税では共闘できるとの認識を強調した。
自民党内には「小沢切り」や、民主党の掲げる「最低保障年金」の撤回などを条件に法案賛成を模索する動きもくすぶる。
谷垣氏は最低保障年金について「棚上げなのか、撤回なのか」と迫り、与野党協議の糸口となることを示唆。消費増税法案への対応では「まず党内をきちんとまとめてほしい。小沢さんは倒閣も示唆している。説得できるのか」とけん制し、小沢元代表と決別する覚悟を問う発言とも受け取られた。自民幹部は「衆院選後の政界再編では小沢一派のいない民主党の一部と『第2の保守合同』だ」と思惑を語る。
民・自協力のムードを感じ取った社民党の福島瑞穂党首は「谷垣総裁の完敗だ。自民党は消費増税に賛成だから対立軸にならない」と皮肉った。【田中成之、佐藤丈一】
毎日新聞 2012年3月1日 東京朝刊
URL:http://mainichi.jp/select/seiji/news/20120301ddm002010099000c.html
与野党トップ極秘会談の狙いは 記者解説 2012年02月29日23時58分
野田首相(民主党代表)と自民党・谷垣総裁が25日に極秘に会談していたことが、日本テレビの取材でわかった。党内でそれぞれ事情を抱える与野党のトップ2人がこの時期に会う狙いは何か、政治部・佐藤圭一記者が解説する。
消費税のみならず、国会議員の定数削減など直面する政治課題を解決できない今の政治に「何か突破口を見いだしたい」という共通の強い思いが、2人のトップにあるとみられる。しかし、29日夜には、民主党内からは「一筋縄ではいかない」と厳しい見方も出ている。また、自民党内からは「会談するにしても、民主党内がもっと混乱したときに会うべきで、今は早すぎる」などと、谷垣総裁に批判的な声も上がっている。
2人とも会談の事実を認めていないが、こうした批判が強まることも予想されるためだ。
29日には、野田首相と谷垣総裁の党首討論が行われた。これまでと違い、建設的な議論も見られた。野田首相の周辺も29日夜、「討論を終えた野田首相も、充実した感じだった」と話している。
また、谷垣総裁が「民主党内をまとめきれるのか」とただしたのに対し、野田首相は党内の過半数が賛成すれば消費税増税法案の成立を目指す覚悟を表明した。この発言は、民主党・小沢元代表らがたとえ反対しても、突き進む覚悟を示したものと受け止められる。
2人の距離が縮まるかどうか、現時点で政界の見方は分かれているが、こう着した政治状況に変化をもたらす可能性もある。
URL:http://news.livedoor.com/article/detail/6325457/
この記事へのコメント
ちび・むぎ・みみ・はな
状況からすると小沢グループの仕掛けか.
しかしね, 「何で, 今!, 一体改革なの?」
谷垣氏の考えは相当に現状からずれている.
大体, マニフェスト項目は否定すべき事なのだから,
マニフェスト違反で追求するのが変だ. 何故なら,
その通りに法案を出せば反対せざるを得ないから.
それはヤクザの難癖と何が違うか.
消費税反対, TPP反対と言えぬ総裁が混乱の源.
案外に, 自民党内部からの仕掛けであるかも知れない.
それ程, 自民党保守派と総裁の隙間は大きいと見る.