「10万円入っているものもあった。インターネットにも問い合わせや協賛の声があり、ありがたい」石原都知事
1.石原都知事が仕切る尖閣諸島購入
4月27日、石原慎太郎都知事は、尖閣諸島購入の寄付金を受け付ける「尖閣諸島寄附金口座」の開設を発表した。また、現地調査のための上陸許可申請など、実務を担当する専従組織も設置することも明らかにした。
寄付は、都民以外からも受け付けるそうで、ネットなどでは、「1人1万円を寄付しよう」という呼びかけもあり、既に都庁には、現金書留などで計37件、数十万円の寄付金が寄せられているという。
また、石原都知事の尖閣購入案を表明して以来、都庁には都民から25日までに4000件の声が寄せられ、その8割が。「よく決断した」「感激した」などの賛成意見。残り2割が「都が口を出すことではない」などの反対や、賛否不明の意見だったというから、まず圧倒的に賛成だと言っていい。
27日、野田首相と会談した石原都知事は、尖閣購入について、「尖閣諸島は都が購入するから、見守ってほしい。まぁ見ていてほしい。国の方でもよろしく」と伝えていたことが明らかになった。当初は、石原都知事は、上陸許可を求めるのではないかと見られていたのだけれど、見守って欲しいと言ったということは、ぶっちゃけた話、国は口を出すなということ。変な横槍を入れさせないように釘を刺したということなのだろう。
また、それに先立つ、23日には、石原都知事は、中山義隆石垣市長と都庁で会談して、尖閣購入交渉について「私が中心にやっていくので任せてくれないか」と要請。市長は「全面的にお任せする」と応じ、都が交渉を進めることで合意している。
だから、石原都知事は尖閣購入については、自身が全責任を持ってやる積りでいて、誰にも邪魔させない積りなのだろうと思われる。それは、おそらく、今の尖閣所有者である栗原氏との信頼関係にも関わっているのだろうと思う。
2010年、自民党の安倍元総理は尖閣の所有者と会い、所有者の「領土を守りたい」、「国益を守りたい」という強い意識を感じたそうなのだけれど、民主党政権を信用しておらず、「彼らとは交渉できない」という姿勢だったのだそうだ。
つまり、それだけ国を、いや、民主党政権は信頼されていない。
実際、民主党政権は、尖閣購入の件についてやっぱり何のアクションもしていない。4月22日、長島首相補佐官は、フジテレビ「新報道2001」で尖閣購入問題について問われ、「われわれが騒げば騒ぐほど中国はますます『領土をめぐり紛争中だ』と主張し、同じ土俵に乗ってしまう。静かにきちっと抑止力を含めて守りを固めていくのが重要ではないか」と答えているのだけれど、静かでもなんでも、国が守りを固めているようにちっとも見えないからこそ、石原都知事に支持が集まっているとは考えないのか不思議なところ。
実際、23日午前に田中防衛相が中山義隆石垣市長と会談しているのだけれど、中山市長によると、尖閣諸島の購入問題は話題に上らなかったという。会談後、田中防衛相は、記者団に対して「防衛省として特に具体的なことは考えていない」と述べているから、やっぱり何もやってないし、考えてもいない。これで一体どうやって、きちっと抑止力を含めて守りを固めていくのか。
やはり、購入に限らず、何らかのアクションは起こさないと何も起こらない。
その意味では、例えば、大陸棚の拡大申請などは、静かにきちっと守りを固める政策のひとつ。
2.麻生政権が行っていた静かにきちっと守りを固める政策
2008年11月、麻生内閣の時に、政府は、沖ノ鳥島などの南洋の海域の権益を拡大するために、茂木海山海域、四国海盆海域、沖大東海嶺南方海域、南硫黄島海域、小笠原海台海域、南鳥島海域、九州パラオ海嶺南部海域の7つの海域、およそ74万平方キロについて、大陸棚の拡大を申請していた。
大陸棚がどこまであるかについては、国連海洋法条約に基づいて設置される国連の大陸棚限界委員会が認定するのだけれど、海底の地形が自然に延びていると認められれば、沿岸国が最大350海里まで大陸棚の限界を延長できる。もちろん、延長した分の大陸棚はその国の権利が及ぶから、その海域の海底資源なんかも活用できる。
2012年4月27日、大陸棚限界委員会は、日本が延伸申請したこれら7海域の内4海域について、延伸申請を認める勧告を採択したと発表している。
認められたのは、四国海盆海域、小笠原海台海域、南硫黄島海域、沖大東海嶺南方海域で、九州パラオ海嶺南部海域の勧告は先送りされ、茂木海山海域と南鳥島海域は、陸続きになっていないと判断され、認められなかった。
それでも、認められた、4海域の面積は、実に日本の国土面積の約8割に相当する、計31万平方キロにも及ぶから相当な権益の拡大になる。
それに、認定された4海域のうちのひとつである、四国海盆海域は、沖ノ鳥島を起点として、北側に続く海域であるから、この海域の認定は事実上、沖ノ鳥島を国連が"島"と認定したことになる。
沖ノ鳥島については、中国と韓国が「岩であり大陸棚は設定できない」と主張していたのだけれど、その主張は、四国海盆海域の延伸が認められたことで崩れ去ることになった。
また、これら海域を含む太平洋には、「レアメタルの獲得と再生」のエントリーでも触れたように、コバルト・リッチ・クラストなどの海底資源があるとされている。
コバルト・リッチ・クラストとは、深海の海山中腹部の山麓に数千万年という時を経て海水から沈積し、コバルト、銅、白金などの有用鉱物を含む厚さ10cm~20cmの固結した堆積物のことで、古い海山にあるとされる。
小笠原諸島東方や南鳥島周辺の太平洋の海底は、約1億5千万年前に形成され、地球上で最も古い大洋底であると同時に地球上最大の海山密集帯。
これら海域の海山は、約1億5千万年前に、南東太平洋で起こった激しいマントル活動によって生じた無数の海底火山が、太平洋のプレートに乗ってコバルト・リッチ・クラストを沈積させながら日本近海に移動してきたものとされている。
日本は、アメリカと並んで、コバルトリッチクラストの賦存量は世界のトップクラスにあると推定されるから、今回の大陸棚延伸が認められたことで、相当な資源を確保できる可能性が広がった。
これこそが、長島首相補佐官がいうところの、"静かにきちっと守りを固めていく"ことではないかと思う。そうしたこともせず、ただの"口だけ番長"で国益が護れる程、世界は甘くない。

この記事へのコメント
白なまず
親族(wikiより)
大久保利通(高祖父)
三島通庸(高祖父)
麻生太吉(曾祖父)
加納久宜(曾祖父)
竹内綱(曾祖父)
牧野伸顕(曾祖父)
吉田茂(祖父)
加納久朗(大伯父)
竹内明太郎(大伯父)
麻生太賀吉(父)
鈴木善幸(岳父)
鈴木俊一(義弟)
ちび・むぎ・みみ・はな
自民党も信用しないと言わざるを得ない.
仲介は山東自民党参議院議員だが,
同氏は自民党に持ちかけなかったようだ.
安倍元総理も厳しい意見をもらったのでは.
尖閣の状況は全て自民党の政策の結果であり,
現在の自民党執行部もその責任を負う.
国民の目は嘘付の酷さでも曇ることはない.
それでも麻生元首相の仕事は立派だ.
ままならぬ自民党の中でできる事をなした.
しかし, 沖の鳥島が島と認められたなら,
護岸工事も津波対策も可能なのではないか.
つまり, 全体を嵩上げすることも可能ではないか.
sdi
やはり領土問題は堅実で地道な努力の積み重ねが物をいいます。一時的な狂騒はむしろ弊害のほうが大きい。