小沢無罪判決

 
今日は、もうこの話題でしょうね。

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4月26日、資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる事件の判決公判が東京地裁で開かれ、小沢一郎被告に対する判決は無罪となった。

この裁判で争点となっていたのは、次の3つ。
1.検審の起訴議決に基づく起訴の適法性
2.虚偽記載の有無
3.元秘書との共謀の有無

1点目の「起訴は有効か」について、大善文男裁判長は、「手続きが違法で無効とは言えない」として有効と判断。2点目の「嘘の記載があったかどうか」については、元秘書らが、「被告の政治活動への影響をおもんぱかったことが背景にある」と故意に嘘の記載をしたと認定。そして、3番目の「共謀があったか」については、4億円の簿外処理について、元秘書から小沢被告が報告を受けていたことは認定したものの、「元代表は収支報告書に計上する必要性を認識していなかった可能性があり、虚偽記入の故意や共謀は認められない」と元秘書との共謀は否定した。

とりわけ、注意すべきは、裁判長が検察に対して「検察官が事実と異なる捜査報告書を作成して、検察審査会に提出し、判断を誤らせるようなことは決して許されない」と厳しく批判している部分で、「東京地検特捜部が事件の見立てを立て、検察官が、その見立てに沿う供述を獲得することに力を注いでいた状況がうかがえる。検察庁などが十分調査する必要がある」と指摘していること。

これは、平たく言えば、東京地検特捜部が有罪へのシナリオを書き、それに沿うように供述を集めていたということであり、国策捜査そのものだと言っていい。

その意味では、判決の有罪無罪云々は別として、東京地裁が、国策捜査であると指摘したのは、司法としての矜持を守ったと言えるのではないかと思う。

また、「起訴は有効か」という論点に対して、東京地裁は、起訴は有効としながらも、起訴の手続きとその中身は別のものとして切り離していることについては注意しておく必要がある。

なぜなら、検察審査会が、強制起訴を行う拠り所としていた捜査報告書が事実と異なっていたこと。そして、その報告書が、東京地検特捜部のシナリオに沿った疑いがあるとしているから。



この部分について、裁判長は、判決理由の中で次のように述べている。
「検察官が任意性に疑いのある供述調書や事実に反する内容の捜査報告書を作成し、送付したとしても、検察審査会における審査手続きに違法があるとはいえず、また、起訴議決が無効であるとする法的根拠にも欠ける。また、検察審査員の錯誤等を審理、判断の対象とすることは、会議の秘密に照らして相当でなく、実行可能性にも疑問がある。」

このように、東京地裁が起訴の適法性を認めたのは、あくまでも、その手続きであって、捜査報告書の正誤や、検察審査員の錯誤は問題としていない。であるにも関わらず、現在の検察審査会は、審議の中身について外部から全く知ることができないようになっている。従って、捜査報告書の正誤や、検察審査員の錯誤があったとしても、外部からそれを指摘することもできず、全て閉じた中で判断されることになる。

だから、今回のように、検察審査員がその判断の元とする捜査報告書自身が間違っていた場合でも、何もチェックされずに、強制起訴となってしまうケースが今後も出てくることが考えられる。

これは、今後の検察審査会の有り方に議論を呼ぶことになるだろう。

この判決について、小沢氏は文書で、「虚偽記載について共謀したことは断じてない」というかねてからの私の主張に沿うものである。裁判所の良識と公正さを示して頂いたことに敬意を表すると共に、今日までご支援頂いた同志と全国の皆さんに感謝を申し上げたい、とコメントしている。

小沢氏の事務所によると、検察官役の指定弁護士が今回の判決に控訴するかどうかを決めた後に、小沢氏本人が記者会見する予定だという。

今回の判決に控訴するにしても、元々、検察が提出した直接証拠は、小沢氏に収支報告書の内容を報告し、了承を得た、とする元秘書らの供述調書だったのだけれど、取り調べに「利益誘導や圧力があった」として2月の段階で大部分が退けられている。

小沢被告に「収支報告書の内容を報告し、了承を得た」とする元秘書らの供述調書がほぼ唯一の直接証拠だったが、東京地裁は2月、取り調べに「利益誘導や圧力があった」として大部分を退けている。

控訴は、第一審の判決に対して不服がある場合に、上級の裁判所に対してその判決の確定を遮断して新たな判決を求めることだから、第一審で供述調書という直接証拠の殆どが却下された状態で、新たな判決を求めたとしても、余程の決定的な証拠か何かがないと難しいのではないかと思う。

まぁ、これは、ただの素人考えだから、プロの目からみれば、また別の判断もあるかと思うけれど、少なくともこの判決で、小沢氏や小沢グループが活気づくことは間違いない。


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この記事へのコメント

  • ちび・むぎ・みみ・はな

    小沢一郎という人物によって
    立法の理念はどんどんと空疎化していきますな.
    2015年08月10日 15:25
  • sdi

    今回の裁判にからんで「小沢一郎は不正をやってる」と思ってる人は多いでしょう(私もそのひとり)が「小沢一郎に有罪判決がおりる」と本気で考えていた人はどれくらいいたのでしょうか。検審への虚偽報告は論外としても、当事者の地検特捜部が二度も不起訴の判断を下したと言う事は重いです。現在の法規制が問題だらけなのは承知していますが、それでも「有罪を立証できないなら無罪」という法治の根本原則は堅持されねばなりません。
    私は逆に検審の制度改善がなかったことにされることを懸念します。
    2015年08月10日 15:25

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