石原都知事尖閣上陸を直談判

 
先日、石原慎太郎知事が明らかにした、都による尖閣諸島購入について、都による島への上陸許可を得るため、石原都知事が、野田首相に会談を要請していたことが分かった。会談は27日にも行われる方向で調整が進められているようだ。

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都が尖閣を買い取るには、測量などの現地調査をしなければならず、島への上陸は必須。石原知事の周辺は「遅くとも夏までに同諸島に上陸し、現地調査を実施したい」としている。

そこで、石原都知事は、野田首相との会談で、尖閣への上陸許可を直談判するのではないかと言われているのだけれど、アメリカでの発表といい、世論が盛り上がり、都の買取に大多数が賛成しているタイミングを見計らっての会談要請は流石。

これでは、首相サイドとて断れない。まぁでも、会談したらしたで、石原都知事から所有者である栗原氏が尖閣を国に売る意志があるのかどうかの感触を得るチャンスでもあるから、そう悪い話でもない。また、石原都知事は都知事で、国がどこまで本気で買い取りする気があるのか、更には、買い取り後の管理責任およびそこから予測される事態に対応する覚悟があるのかどうかを探るだろうと思われる。

石原都知事は、「本当は国が買い上げたらいい」と発言しているけれど、いきなり都が引き下がって、国にお願いしますということにはならないのではないかと思う。それでは、国ではなく、石原都知事を信頼して売却を決断した栗原氏を裏切ることになってしまう。だから、おそらく、一度都が買い上げてから、国がきちんと国土防衛するための意志と必要な法整備、およびちゃんとした防衛体制を整えるのを見届けてから、国への売却に動くのではないか。要するに、石原都知事から試されているのだと思う。

では、国にその覚悟があるやなしや。



実は、つい先頃、フィリピン沖のある海域で事件があったことを、拓殖大学客員教授の石平氏が自身のメルマガで述べている。

これは、フィリピン本島から西へ約200キロ離れた海域にある、スカーボロー礁と呼ばれる小さな島を巡って、フィリビン海軍の警備艇と中国の準武装化された漁業監視船が睨みあい、ついにはフィリピンが中国の監視船を追い払ったという事件。

4月11日、フィリピン領海を侵犯して違法操業していた中国漁船8隻は、スカーボロー礁で、フィリピン海軍に発見されたのが事の始まり。

フィリピン海軍は領海侵犯の中国漁船への臨検を行ったのだけれど、なんと、その直後に、中国の漁業監視船2隻が現れて、スカーボロー礁の領有権を主張しながら、フィリピン海軍の警備艇との睨みあいを始めたのだという。更に12日には、中国はもう一隻、漁業監視船を送りこんできた。だけど、フィリピンは怯まなかった。

フィリピンは海軍のフリゲート艦を引き揚げる代わりに、沿岸警備隊の巡視船1隻派遣。中国漁業監視船3隻と対峙し続けた。この事態に中国は高飛車に出て、中国国内は「直ちに軍艦を派遣してフィリピンを懲らしめよう」と主戦論が沸き起こり、
フィリピン在住の中国人が大量に引き上げ、一触即発。更には、人民解放軍の現役少将が「中国はお前らフィリピンに平和の最後のチャンスを与えているのだ」と恫喝までする始末。

以前、「南シナ海を最良の戦場とする中国」のエントリーで、中国は、フィリピンとベトナムに狙いを定めて、小規模な戦争数回行うことで、大戦争を回避しつつ、大国の介入を防ぐという"鶏を見せしめに殺して猿を戒める"型の懲罰戦争を人民日報が主張していることを紹介したことがあるけれど、まさにこれを地でいく戦略。

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これについて、筆者はくだんのエントリーで次のように述べた。
「大国と小国で、二国間交渉をやると、大国の意が通ってしまうのが普通。なぜなら、バックに軍事力という裏付けがあるから。だから小国は自身の交渉力を担保するために、他国や大国と連携して、軍事力の均衡を図る。ASEAN諸国にとってみれば、南シナ海の領有権問題を周辺国を巻き込んで、"ASEAN化"するのは当然の選択。」
日比野庵本館 2011.11.17 「南シナ海を最良の戦場とする中国

このように、中国に対して小国にあたるフィリピンは、中国に対抗するために、他国や大国と連携して、軍事力の均衡を図らなければならないのだけれど、果たして、フィリピンはそれを実行に移した。

スカーボロー礁で、両国が睨みあいを続ける中、4月16日に、フィリピン海軍はアメリカ海軍との定期合同軍事演習「バリカタン」を実施。次いで、21日には、スカーボロー礁への2隻の軍艦を増派すると発表した。

この絶対屈しないという姿勢を示したフィリピンに対して、ついに中国は、22日には3隻の監視船のうちの2隻が撤退したと、駐フィリピン中国大使館のスポークスマンが発表した。

ここまでの覚悟を日本政府が見せることがあれば、石原都知事も国に尖閣買取を打診或いは承諾することがあるかもしれない。

その意味では、27日に行われる会談と、その後の石原都知事の発言には注目して置いてもいいかもしれない。

まぁ、昨今、沖縄のアメリカ海兵隊のテニアンへの移転や自衛隊との共同訓練計画など、自衛隊が前面に出つつある動きは、アメリカのバックパッシングの一側面とみることもできるかもしれないけれど、ここでは触れない。

こうした、尖閣購入の動きに対して、もちろん中国も黙っていない。

4月24日、習近平国家副主席は、日本国際貿易促進協会の河野洋平会長と、北京の人民大会堂で会談し、日中関係の現状について、「時々、あれこれ問題が起こるのは不思議ではない。これらは小さな問題で、善意、友好の気持ちがあれば解決できる問題だ…相手にとっての核心的な問題や重要な問題を、両国が適切に処理していくべきだ。こうした考えを大切にしながら、双方が努力していくべきで、コントロールできないようになってはいけない」と、事態をこれ以上エスカレートさせるべきではないと、日本を牽制した。

だけど、こんなのは、尖閣をきちんとコントロールするために、民間人から都が買い上げるというだけの話。尖閣をコントロールできないようにしているのは中国。中国は都に買われてしまったら、自分が尖閣を制御出来なくなるから、"双方が努力していくべき"なんて言っているのだろう。これが外交。

だから、日本側も、「おっしゃる通りです。東シナ海の排他的経済水域問題について、日本は国際司法裁判所や国際海洋法裁判所に付託する事を貴国に要請しています。中間線で合意できるよう双方努力しましょう。」と素知らぬ顔で言ってやればいい。

ともあれ、尖閣購入問題は、この海域を日本が守り切れるか否かの分水嶺になるような気がしてならない。

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この記事へのコメント

  • opera

    日本の主張する日中中間線ラインは、国際法上も認められ、なおかつ日本の権益を最大化する実に巧妙なものだと言われています(外務省は国際法の解釈・運用だけはピカイチだそうです)。このラインだと、海底資源の大部分は日本側に含まれ、しかも日本が先に実効支配をしてしまいました。また、中国のガス田は日本側の埋蔵資源の端からストローでかすめ盗るようなものだとも評されていますね。
     中国に「やられた」感があるのは当然です。ただ、中国の主張する沖縄トラフは、大陸棚理論の一種で理が無いわけではないのですが、日本が同意しない限り国際的に認められる可能性は皆無です。
     マスゴミはこのことをほとんど報道しませんが、尖閣諸島領有問題の背景にはこうした事情があることを国民とりわけ政治家は肝に命じて、日本の国益に基づく毅然とした態度を取るべきだと思います。

     話は変わりますが、唐突に以下のようなニュースも報道されていました。
    ◇自衛隊がフィリピン基地使用 日米が検討開始、パラワン島有力
    http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120424/plc12042408000008-n
    2015年08月10日 15:25
  • 白なまず

    今回の記事とは直接関係ありませんが、タンカーの新技術なので、ご参考です。

    【暴れホースで海賊を威嚇 - アンチ・パイレイシー・カーテン #DigInfo 】
    http://www.youtube.com/watch?v=gamTzUars0U&list=UUjGStT5Wk2xBYfNYDxY6fXQ&index=2&feature=plcp

    【50メートルの巨大な帆を自動制御して推進する次世代省エネ帆船 #DigInfo 】
    http://www.youtube.com/watch?v=Tu6nO_LCxfQ&list=UUjGStT5Wk2xBYfNYDxY6fXQ&index=3&feature=plcp
    2015年08月10日 15:25

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