わずか3日で通達を撤回した農水省

 
「食品メーカーなどの独自の規制を否定するものではない」
鹿野農水相 於:4/23

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4月20日、農林水産省は、スーパーや食品メーカー、外食産業などの業界団体(270団体)に対し、国が設けた放射性物質の基準を守るよう求める通知を出したに関わらず、わずか3日でこれを撤回する騒ぎがあった。

これは、スーパーや食品メーカーなどが、国よりも厳しい独自基準を設けて自主検査を実施し、「『放射性物質不検出』の食品しか売りません」としている動きがあり、その動きに歯止めを掛けようと狙っての通達。

ところが、この通達に対して、小売業界・消費者から、「ゼロになったっていい」、「国が言うべきことじゃない」と猛反発。流通大手の「イオン」は自社プライベートブランド商品を中心に、「測定で検出されないこと」との独自基準を掲げ、「お客様の気持ちを最優先にしてきた。対応を変えるわけにはいかない」としているし、茨城沿海地区漁業協同組合連合会の小野勲会長は、「消費者に安全な魚を送るためだ。国の基準を守らないならまだしも、より厳しくやって、なぜ余計なことを言われるのか」とコメントしている。

それで、結局23日になって、鹿野農水省の「独自基準は否定しない」発言となり、事実上の撤回に追い込まれた。

くだんの通達は、「食品産業団体の長」宛で「食品の放射性物質に係る自主検査における信頼できる分析等について」というもので、農林水産省食料産業局長からのものと、農林水産省食料産業局食品小売サービス課長・食品製造卸売課長からのものの計2通出されていた。

内容そのものはどちらも同じで、「科学的に信頼できる分析結果を得るために、別添の信頼できる分析の要件に従え」および「過剰な規制と消費段階での混乱を避けるために自主検査でも国の基準値に従って判断せよ」というもの。

そして、御丁寧にも、厚労省の登録検査機関又は、厚労省お墨付きの分析機関の一覧を載せ、ここで検査せよ、と言わんばかり。



国はこの4月から、食品に含まれる放射性セシウムについて、1キロあたり100ベクレル、牛乳や乳児の食品で同50ベクレルという、従来基準から5倍に強化した新基準値を設けているのだけれど、国はこの基準で十分安全だから、それを守れという。

通達で、"科学的に信頼できる分析結果を得るために"と言われると、如何にも特別な分析装置を持った機関での測定以外は信頼できないかのように聞こえてしまうのだけれど、科学的に信頼できる分析結果というのは、あくまでも、「正しく測れています(より正確にいえば、何時何処で、誰が測っても同じ結果になります)」というだけのことであって、その値が安全なのか安全でないのかは、また別の判断だということ。

科学的に100%間違いない測定方法による結果であったとしても、危ない値はやっぱり駄目。問題なのは、どの値が危ないかの線引きになるのだけれど、低線量被曝の影響が分からない以上、買う方としては、なるべく危なくないものを買いたいとなるのは、ある意味当然。

もしも、民間の独自基準が過剰だというのであれば、そう消費者を説得し、納得させなくちゃいけない。その努力を政府がやっていないから、やっぱり信頼されない。

例えば、福島県のスーパー「いちい」は、食品中の放射性セシウムを、自社の測定機器(FNF-401)で検査検出限界10ベクレルで検査して、その検査結果を店頭で公表している。

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FNF-401とは、応用光研株式会社が開発した簡易型の放射能測定装置で、ヨウ素131I、セシウム134Cs、及びセシウム137Csからの微量なγ線を検出して、それぞれの放射能濃度を測定するγ線用のNaI(TI)シンチレーション検出器。検出限界値は、測定時間1000秒で、10Bq/kgまたはL以下、測定時間4000秒だと、5Bq/kgまたはL以下にまで精度が上がるから、国の新基準にも十分対応できる。

現在では、市民測定所やスーパー、 食品宅配、通販の自主検査用として多数導入されているようだ。

スーパー「いちい」は、日々の測定結果をファイルにとじて、消費者が閲覧できるように売り場ごとに置いているそうなのだけれど、それは「どの数値なら安全、安心なのか、専門家も結論が分かれる。測定値を正直に公表し、消費者の判断に委ねるしかない」ということのようだ。

検査結果は、「いちい」のホームページでも、閲覧でき、その測定方法までも公開している。もう出せるものは全部出すという感じ。

だけど、この真摯な姿勢が大切。自分達で出来るだけのことを全力で行い、その判断については消費者に委ねる。そこに、信頼と安心が生まれる。

政府が決めた新基準について、政府が安全だといくら叫んでも、消費者が一向に振り向かないのであれば、それは政府が消費者から全く信頼されていない以外の何物でもない。

まぁ、原発事故の際にSPEEDIの情報を出さず、ただちに問題ないとだけ言って、隠蔽し続けてきたのだから、信頼されなくても、むべなるかな。民主党は自身の過去の行いによって、そのツケを支払わされている。


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この記事へのコメント

  • とおる

    > 「科学的に信頼できる分析結果を得るために、別添の信頼できる分析の要件に従え」

    何やら、原発事故発生後にSPEEDI情報を提供しなかった事に似ていますね。
    そんな内閣が、「科学的に信頼できる」のか疑問の原発再起動に邁進しています。
    2015年08月10日 15:25
  • ちび・むぎ・みみ・はな

    国がやるべきことはどこまでなら
    大丈夫だと言うことだろう.
    役人にはできない仕事だ.
    しかし, 現在, 政治家はどこにいるのか?

    まあ, こうやって風評の中で日本国民が
    バラバラになっていくのだろうか.

    科学的知識とは何だろうか?
    ある所で判断が下せないなら,
    知ることは何の役に立つのだろうか?

    現在の広島・長崎をみて誰もそう思わんのかな.
    2015年08月10日 15:25
  • 白なまず

    ここまで来ると笑えませんね。本当に科学技術に基づいて正しい事をすれば良いだけなのに、都合の良い部分のみを使い、都合の悪い事(本当に混乱する?)が起きないように規制を掛けようとしても、国の閾値より厳しい民間のチェックを否定しても本当に意味ないですね。その昔の馬力規制とかと同じご都合主義。こんな調子だと、将来最低燃費は3Okm/L をクリアしないて駄目だけど、45km/L を越えては駄目とかマヌケな規制をだすかもしれませんね。自衛隊の武器使用でも拳銃は良いけれど、ライフルは駄目とか、ジープは良いけれど、装甲車は駄目だとか同類だと思います。
    2015年08月10日 15:25

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