大飯原発再稼働と身から出た錆

 
4月13日、野田首相と関係3閣僚は、関西電力の大飯原発3、4号機の再稼働を「妥当」と判断し、福井県に再稼働を求める方針を決定した。

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これは、関西電力の原発依存度が高く、再稼働なしの場合、関西地区での電力不足が起こり得るという懸念を受けてのこと。

水力発電の拡充などで供給力を高めた場合での最新の試算によると、原発なしでの供給力は、2631万キロワットで、昨夏並みの需要で5.5%供給力が不足し、一昨年並みの猛暑では、18.4%の供給力不足になる恐れがあるとしている。

ここで、大飯原発2基の計236万キロワットを足すことで、昨年夏並みの需要であれば、2.9%の余力が出るという。ただし、この試算は去年の15%節電を実施することが前提となっているものだし、一昨年並みに猛暑になって需要がぐっと伸びれば、もうアウト。

関西電力の岩根茂樹副社長は、大飯の2基が稼働しても厳しいとして、今夏も節電要請をする方針としている。

筆者は、電気という、普段当たり前につかっていたものを、去年の夏、いきなり15%も節電できたことだけでも凄いと思うのだけれど、節電した分、個々の家庭レベルでも、企業レベルでも、余裕度が無くなっているわけで、いくら節電を唱えてもどうしようもないラインが何処かで出てくる。

例えば、工場などの生産ラインでは、電気の安定供給が最低限の条件で動いているものが多く、自家発電といっても、最低限のシステムを一時的に殺さないようにするためのもので、電力なんてすぐ復旧するという前提のものが大半。こちらに、「夏場の電力ピーク時に自家発電装置を稼働させてピークをしのげるのか?現場の人に聞いてみた。」というツイッターの纏めがあるのだけれど、電力が止まることがどれくらいの影響を及ぼすのかよく分かる。

その意味では、政府がなんとか電力の安定供給を確保しようと再稼働を急ぐのは分からなくもない。だけど、そこはそれ、民主党政権のこと、地元や関係団体への十分な説明と根回しが出来ておらず、軋轢を生んでいる。

4月14日、枝野経産相は福井県庁に赴き、西川知事らと会談。大飯原発3、4号機の再稼働を要請した。枝野経産相は約30分かけて3、4号機の安全性や再稼働の必要性について原稿に目を落としたまま説明したそうなのだけれど、西川知事と、おおい町の時岡忍町長は、政府の手法に批判を強める大阪市の橋下徹市長や、原発30キロ圏内に属する関西圏の首長が再稼働は拙速と反発していることを取り上げ、「こうした状況で県民の理解を得るのは困難」と同意は先送りした。

特に、西川知事は枝野経産相が国会答弁で「日本全国が地元」と発言したことに言及し「ぼんやりした状況ではいけない」と関西圏の理解を得る努力が不足していると強く批判している。



原発の再稼働において、法律上は自治体の同意は不要なのだけれど、地元の同意を求める理由は、立地の道県、市町村と電力事業者とが結ぶ原子力安全協定に、重大事故などで原発が停止した場合、運転再開時に「事前協議」すると明記されているから。ただし、周辺自治体はこの対象とはなっていない。

ただ、だからといって、周辺自治体に何の説明もなく、再稼働だとされても、周辺自治体は心配になるだろうし、きちんと説明してくれと望むのは当然だといえる。それに、枝野経産相の「日本全国が地元」発言が本心なのであれば、それこそ日本全国を回って説明しなくちゃいけない。

大飯原発の再稼働に反対している、大阪市の橋下市長は、4月11日、再稼働ための8条件を提示し、23日に藤村官房長官に説明する方向で調整していたのだけれど、今回再稼働の決定をうけ、「決定した後では意味がない」と取りやめる意向を明らかにしている。

その8条件とは、次のとおり。
1.原発から100キロ以内の自治体の同意を得る
2.電力需給を徹底検証
3.独立性の高い原子力規制庁の設立
4.使用済み核燃料の最終処理体制の確立
5.安全基準を根本から作り直す
6.新安全基準に基づく完全なストレステストの実施
7.事故発生を前提とした防災計画と危機管理体制の構築
8.事故収束と損害賠償など原発事故で生じる倒産リスクの最小化

ここで、1については、福島原発事故並みの事故が起こった場合、放射性物質の拡散範囲をシミュレーションしたところ、周辺100キロの範囲に拡散する恐れがあるとなったからで、その意味では、原発周辺100キロを"地元"としているものと思われる。

また、橋下氏は、大飯原発の再稼働について、ツイッター上で、「皆さん、原発の再稼働の是非については色々ご意見があるかと思います。しかし本質的な問題として、民主党 政権が進めている再稼働のプロセスは絶対に間違っている。統治として成立していません。安全性の確認は、基準と適合性のチェックが必要。そしてこれは、専門家に委ねざるを得ません」 と、原子力安全委員会が「安全」と明言していない点を厳しく批判している。

だけど、いまの制度では、原子力安全委員会が安全についての判断の権限を持っていないから、そこまで求めるのは難しいかもしれない。ただ、だからといって、何一つ聞かなくてもいいとするのは、多少誠意に欠ける。

本当に地元や周辺住民に理解を求めようとするのであれば、あらゆる識者から意見を聞いた上で、見解を纏める配慮はあっていい。



4月15日、橋下氏は、阪維新の会所属市議のパーティーで、再稼働を目指す野田政権について、「国民に重要な情報を隠したまま決断する政治は追放しなくてはならない。維新は民主党と連携しない方針を固めた」と、次期衆院選で民主党打倒を目指す考えを正式に表明し、維新の会として民主党とは連携しないと宣言した。

これに対して、民主党の輿石幹事長は同じく15日、京都市内で記者会見し「維新の会は政権を打倒すると明言したわけだから、受けて立つ。政権与党として、エネルギー政策にしても大都市構想にしても、明確な政策を打ち出して国民に選択していただく」と述べている。

ということで、次期衆院選に原発再稼働の是非が争点に上がる可能性が出てきたのだけれど、これが争点になった場合、おそらく民主党には不利に働くだろう。なぜなら、たとえ、理屈の上で、原発再稼働が正しい政策だったとしても、それ以前に民主党自身が国民から"信頼"を失っているから。

どんなに、もっともらしく、そのとおりと思えるような"理"を説いたとしても、発言する本人が嘘つきであれば、その"理"は民衆には届かない。

北朝鮮からミサイルが発射されたら、防御するのは当たり前といった分かりやすい事例であれば兎も角、原発再稼働しなくても電力が足りるのか足りないのかといった、いまひとつはっきり分からないような問題について、判断しなければならない時、それを訴える人の説得力というか信頼感というものが大きく影響してくる。

それは、例えば、過去の実績であったり、言動が一貫しているかということだったりするのだけれど、どんなにデータを並べても分からない問題に直面したとき、最後の最後には、その人が信頼できるかどうかが決め手になる。

その意味では、最早、民主党は信頼を無くしてしまっている。余りにも、嘘が多すぎた。まぁ、海江田氏が経産大臣であれば、浜岡原発停止のときのように、しっかり根回しをして、もう少し状況がマシになっていたかもしれないけれど、それでも、今の状況をひっくりかえすところまでは難しいと思う。

それもこれも、民主党政権の力不足は当然として、それ以上に、信頼を失っている部分が大きく響いている。橋下氏が「決められない政治から脱却する」と主張すれば、それが支持され、いざ、政府が再稼働を"決める"と、地元からは説明が足りないと反発され、橋本氏からは、統治として成立しないと批難される。

今年の3月頃、野田首相は「2人のツケを払わされている」と愚痴ったといわれている。その2人とは、もちろん、鳩山元首相、菅前首相のこと。後を引き継いだ野田首相の立場からいえば、多少気の毒にも思えないではないけれど、身から出た錆。そのカルマの清算は次の総選挙で行われることになる。


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この記事へのコメント

  • とうし

    3》「足りない今夏はやもえない…」と一世に一転した京都府知事,滋賀県知事,大阪市長の家族も同様原発近くに移住†

    嫌な人は人事としか思ってなかった滓やろう†

    関西,日本が次のステージのモデルケースを示す為、電力使用配分と節電を経て原発依存脱出国リーダーシップをとると思てただけに…がっかり↓↓…

    1日位の時間を争わない会社で、夜間勤務も元々ある企業に夜間稼働の方をメインにしてもらえないか相談してみたり
    勿論足りないかも?のピーク時以外運転配分協力してくれる企業を早い者勝ちで募り、電気代割引時間により大小適用,安全確保出来る程度のLED電球進呈等でサポートさせてもらうなり

    一般家庭も、小児,老人は無理せず適温使用か、元気な方は高温時になる前から公共施設で過ごしてもらったり…して

    使用時間配分したり…

    夏の節電だぜ一般家庭なら安全性は配慮しながら19時位まで点灯を控えめでいて貰えるように促したりも出来るし

    病院とか一秒を争う企業だけ停電しないように電力供給を区別管理できひんもんなんか?
    ご老人小児宅は一時間位きれる位やったら大丈夫やろし…必要な時間に割高は可哀想やし,無理な
    2015年08月10日 15:25
  • ちび・むぎ・みみ・はな

    消費税は考へずと政権を簒奪した嘘付党
    その増税首相がなにをかいはん.

    このまま嘘付と時代遅れの革命維新の会が
    喧嘩をしてくれると嬉しい.
    その間に消費税10%を撤回するなら
    自民党こそ漁夫の利を得る.

    谷垣氏にその智恵があればね.

    しかし, ガソプー大臣のお蔭で嘘付党は
    対米ではTPPどころでは無くなるのでは.
    官庁は米国様々だから.
    2015年08月10日 15:25
  • とおる

    > 今年の3月頃、野田首相は「2人のツケを払わされている」と愚痴ったといわれている。…身から出た錆。

    野田首相は、
    ・管政権の財務相
    ・鳩山政権の副財務相
    という要職を占めて、時の政権を支えていた責任を自覚できないのでしょうか。
    デタラメ・無責任政党の民主党の性からは抜けれないようです。
    2015年08月10日 15:25
  • sdi

    > 今年の3月頃、野田首相は「2人のツケを払わされている」と愚痴ったといわれている。
    原発再稼動問題については、最大の禍根は停止するとき『何故、この原発を停止しなくてはいけないか』を決めないまま、次々に停止させていったことにあります。そういう点で菅前首相(当時の民主党執行部)の責任は大きい。その点、野田首相本人も一員だったのですから愚痴をごぼす心理になるのはともかく、それを口にする責任はないですね。最初の対処に失敗すると後の処理のコスト諸々が膨大になるケースの見本ですね。枝野大臣には再稼動ため、全国の原発所在地を行脚してもらいましょう。当然の義務ですから。
    原発問題に限らず、民主党は「何故こうなったてしまったのか?」「何がそうさせたのか?」といった「何故?」と問いかけて原因を追究することについて熱意が乏しいように私には見えます。
    特定の個人や団体、社会制度の(彼らの主観からみて)悪い点や気に入らない部分「だけ」を糾弾して、その悪い点「だけ」を潰す(壊す)ことに熱心だったではないでしょうかね。
    今回の原発再稼動は、民主党が他の誰かを悪者にして逃げることも目をそらすこともし難い「現実の壁」
    2015年08月10日 15:25

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