4月13日朝、北朝鮮が長距離弾道ミサイルを発射し、途中で爆発・空中分解し、失敗に終わった。
田中防衛大臣は、午前8時23分、「午前7時40分ごろ、北朝鮮から何らかの飛翔体が発射され、一分以上飛行したあと、洋上に落下した」と正式発表した。
北朝鮮のミサイルは、防衛省の10カ所のレーダーで捕捉され、午前7時45分から54分まで飛行していたことを確認していて、アメリカもミサイルを補足。発射から81秒後に爆発し、10分後に複数のレーダーから消えた、としている。
発射したミサイルは全長30メートルで、形や大きさは2009年に発射された『テポドン2号』とほとんど変わっておらず、この「テポドン2号」の改良型をさらに修正したタイプと見られている。
海上自衛隊の元海将補の田口勉氏によれば、公開映像で、1段目の下の部分に、ロケットエンジンの噴射口が4つ確認できることから、これまで推測されていたとおり、中距離弾道ミサイル『ノドン』を4本束ねたもののようだ。
これまでも、北朝鮮は、『テポドン2号』の発射に何度も失敗している。アメリカのマサチューセッツ工科大学のセオドア・ポストル教授らの分析によれば、2006年に打ち上げられた、『テポドン2号』は、1段目を分離することなく発射から約40秒後に空中分解したとされ、また、2009年に打ち上げた『テポドン2号』は、3000キロ以上飛行したものの、3段目の切り離しに失敗し、弾頭に搭載した「衛星」は太平洋に落下したとしている。
そして、今回は、発射後、一分半と持たずに爆発。強がっていた割には、お粗末な結果。
先程、『テポドン2号』の1段目は『ノドン』を4本束ねたものだと言ったけれど、2段目は、旧ソ連の潜水艦発射型弾道ミサイル「SSN6」とされ、今回も同じくそれが使われているのかについては、残骸等を回収することで明らかになると思われる。
韓国国防省によると、北朝鮮の3段式ミサイルは、北朝鮮北西部の東倉里(トンチャンリ)からの発射後、2分ほどで機体が二つに分裂し、上空151キロまで上がった後に落下。最終的には20個ほどに分解し、残骸は韓国の西方沖100~150キロの海上に広範囲に落ちたとしている。韓国軍は残骸を回収し、原因などを探るとしている。
北朝鮮では、発射から4時間半経った正午過ぎに、朝鮮中央通信が「成功しなかった」と異例の報道をしているけれど、今回の発射に際して北朝鮮は、事前に海外のメディアや技術関係者を招待していて、日本やアメリカ、ロシア、フランス、イギリス、中国など各国の記者が6日と7日に平壌入りしていた。
また、北朝鮮は、イランのミサイル、衛星開発に携わっているシャヒード・ヘンマット・インダストリアル・グループ(SHIG)の技術者ら12人の代表団を極秘で招いており、発射実験を視察させたと見られている。SHIGはイランの中距離弾道ミサイル「シャハブ3」の開発などを担当し、北朝鮮のミサイル協力にも関与しているとされ、高推力エンジンを使ったミサイル発射技術や3段式ミサイルの切り離し技術などに関心を持っているとされる。更に、イラン側は実験データなどの供与の見返りとして多額の打ち上げ資金の拠出を申し出ているといわれている。代表団は発射後も滞在し、打ち上げ失敗の分析結果などを北朝鮮と共有するようだ。
故金正日総書記の元専属料理人を13年間務めた藤本健二氏は、北朝鮮でのミサイル発射は、事前準備に半年から1年以上かかることから、金正日総書記が亡くなる前に発射は決まっていたと考えるべきだとコメントしている。更に、極軌道での軍事衛星を打ち上げることで、自らをアメリカにも負けない軍事的強国だとアピールする狙いがあったという。
ミサイルの発射された4月13日、北朝鮮は、最高人民会議の12期第5回会議を平壌で開いて、金正恩氏を統治機構の最高位である国防委員会第1委員長に付けて、党、軍、統治機構の全権を掌握させ、形式面の権力継承作業を終わらせているけれど、本当は、金正日の"遺言"を息子の金正恩が成し遂げることで、権威継承のシンボルとその完成を狙っていたのだと思われる。
だから、その意味では、今回のミサイル発射失敗は、北朝鮮にとっては、かなりのダメージであるのは間違いない。しかも、海外プレスまで招待しておきながらの失敗だから、どこかで失地回復を狙ってくることは十分考えられる。
既に、いろんなところで指摘されているように、3度目の核実験を強行してくることも、十分警戒する必要がある。
今回のミサイル発射について、北朝鮮は発射するなという国際的圧力を無視して、強気で突っ張って、発射を行ったのだけれど、ミサイルが空中分解するという無様な結果に終わった。
これをみて、筆者は、金正恩は基本的に"運がない"人物なのではないかと感じている。一番肝心要の大勝負で、コケてしまう。いわゆる自滅型。
まぁ、これは、筆者の単なる印象にしか過ぎないのだけれど、国家指導者に運があるかないかは、その国の明暗を分ける。
今回のミサイル発射で、北朝鮮に対する国際的圧力はまた一段と強まることは間違いない。自身の権威継承のシンボルが空中爆発したことは、何やら今後を暗示している気がしてならない。

この記事へのコメント
sdi
今後おそらく核実験を実施しようとするでしょうが、それだけの体力があの国に残っているかさすがに今回はやや疑問ですね。
ス内パー
駄菓子菓子氏(3年ほど前に市況板でチラ裏を投下していたコテ)曰く
・今回の発射実験はイラン、ロシアなどの援助で行われていて見返りを充分得ている
・実験目的は1段目がきちんと失敗すること(過去のテポドン発射失敗の原因を究明した)、3段目の分離発火が成功すること
・実験目的は達成し国内の体制固めも磐石なため失敗宣言という名を与えて実をとる余裕がある
謝ったら負けなあの民族にしてはあっさり敗北宣言してたり符号が合うあたりがなんとも。
クマのプータロー
ppo
金正日の遺書を公開…「中国は近いが最も警戒すべき国」
http://japanese.joins.com/article/368/150368.html?servcode=500§code=500