「いま総理の足元でいろんな液状化が起こっているのはすべてそれに起因すると私は思います。せめてマニフェストの問題点をしっかり反省し、撤回して、けじめをつけていく。それでなければ私は嘘の片棒をかついで増税に賛成するわけにはいかないということは明確に申し上げておきます」自民党 谷垣総裁 於:4/11 党首討論より
4月11日、今国会での党首討論が行われた。
野田首相と、自民党の谷垣総裁との党首討論は、谷垣氏が、民主党の造反予備軍や国民新党の連立離脱騒動といった、足元の乱れを突きつつ、法案審議について、国会でどう運営していくのかの具体的な提案がないと指摘したのに対して、野田首相が社会保障と税の一体改革は大事なテーマで、待ったなしだから、是非、議論を進めさせて欲しいと答えるという具合に、双方の押し問答ばかりで、あまり身のある討論ではなかったというのが正直な筆者の印象。
ただ、それより酷かったのが、今回初めて党首討論に臨んだ、みんなの党の渡辺喜美代表。みんなの党が党首討論に立つことができたのは、自民党の谷垣氏の持ち時間から5分間を譲られたからなのだけれど、渡辺代表の討論は、意気込みが空回りしているのか、みんなの党はこうだ、ああだと自分のところの宣伝ばかりが目立った。
曰く「みんなの党は首相公選法案を提出した。首相公選を実現しよう」、曰く「民主党は増税の前にやるべきことをやっていない。みんなの党は身を切る改革をやる」、曰く「消費税は地方の財源にすると、みんなの党はずっと言ってきた。」、曰く「原発の安全基準も泥縄だ。」という具合で、あれもこれもと、短い時間の中に詰め込むものだから、正直言って、討論というよりは独り演説に近かった。
たった5分しか持ち時間がないのだから、事前に自民・公明と打ち合わせした上で、論点を絞って効果的に質問すべきではなかったか。
公明党の山口代表は、自民党の谷垣氏が少し触れた、国会運営について民主党からのアクションがないことや、社会保障と税の一体改革についての具体策がなんら示されていない点、石油の価格高騰に対して政府が何もしていない点など、政府がやっていない点、弱みの部分を効果的に質問していた。
野田政権は、国会運営を後回しにして、密室談義で事を進めるきらいがあるし、野田首相自ら、増税一本槍ばかりを強調しているものだから、今、対応しないと拙い部分に絞って質問されるのは、野田首相にとっても痛いところ。実際、山口代表の質問に対して、野田首相は、反論らしい反論もできず、その通り務めると答えるのが精一杯だった。
その意味では、谷垣氏が、民主党は"けじめ"をつけていないと総論的な討論をしたのに対して、山口氏は各論をついてくるといった具合に、自民・公明のセットとして見ると、それなりの連携が取れていたように見えなくもない。
それと比較すると、みんなの党の渡辺代表の、自分の宣伝ばかりの討論は稚拙に映ったし、「消費税を地方の財源にしないのか」という、わずかに野田首相に質問できたことについても、「消費税を地方に移管したとして、年金も医療も介護も子育ても地方でやってくれるのか。消費税を地方に移管すると、地方交付税が無くなるが、大多数の首長は反対するのではないのか」と切り返されている。
渡辺代表は、それに答えることをせず、「間接税含めて地方に渡せばいい、調整は地域で話し合って決めたらいい」と漠然とした主張をしただけ。
更には、民主党政権は出来損ないの自民党政権だと言いたい放題ではあったのだけれど、"出来そこないの自民党"という言葉をつかうあたり、ちょっと自己中というか、自分がその自民党から、時間を譲ってもらった立場であることを忘れている。
実際、野田首相から、「自民党の枠でご質問されているんでしょ。出来損ないの自民党とかね、それちょっと表現おかしいですよ。」と軽くいなされてしまっている。
まぁ、始めての党首討論で、舞い上がっている部分があったのかもしれないけれど、次の衆院選で第3極を目指そうという党の代表ということを考えると、配慮に欠けていることは否めない。
ただ、全体を通して、野田首相の受け答えを見ていて、筆者には、どうも野田首相は、もう腹をくくったかのような印象を受けている。それは、自分が首相の職についているのは、今国会が最後だ、という覚悟とでもいうべきもの。
野田首相は、10日の読売新聞などのインタビューで、消費税率引き上げ関連法案について、今国会での成立を「最低の条件」、「基本中の基本」という表現で、継続審議を認めない意向であることを強調している。
筆者には、野田首相は、今国会で増税法案が成立しなかったら、身を引く覚悟を固めているのではないかと思う。まぁ、今の民主党の支持率では解散は考えにくいから、総辞職を選ぶ可能性の方が高いと思うけれど、少なくとも、自分はもう長くないと悟っているように見える。
その答えは、もうしばらくすれば、明らかになるだろう。

この記事へのコメント
とおる
「待ったなし」の割りには、閣議決定・法案提出から、「待った」状態。
最高裁判決で「違憲状態」と指摘された衆院「1票の格差」と、民主党の「比例定数削減」の「一体改革」。
鳩山政権の時も「不祥事の一体改革」(母親からの子供手当て、普天間基地移設が迷走し辺野古へ)。
管首相の時も、「不祥事の一体改革」が有ったような気がします。
どうやら、民主党は一つづつ解決する気が無いのか、相手の嫌がる事を抱き合わせて飲ませる「一体化」が好きなようで。
ちび・むぎ・みみ・はな
谷垣総裁が消費税10%の旗を下ろさないから.
つまり, 財務省からすれば, 自民でも良い.
それは永田町向けの高等戦術かも知れないが,
決して国民を向いて言っていることではない.
デフレ克服を主張しながら消費税10%の矛盾.
こんなところを見ると国民は小泉時代以来の
意気の上がらない欝々たる気分を思い出す.
いっそ維新の党にでも, と思うのは当然.
維新の党が嘘付党を置き換えれば, 自民党は
持たないだろう.
だから, 自民党は永田町向けの高等戦術で
身を滅ぼすかも知れない.
なぜ消費税10%の旗を下ろせないか.
そこに自民党の抱える問題があろう.
もっとも, 増税首相が谷垣総裁を見切っている
と言う解釈もある.
opera
野田首相がどれほど消費税率引き上げ関連法案の成立に意気込んでも、本年度の予算には直接関係ありません。また、このままでは予算関連法案、とくに財源を定める特例公債法案が成立しないことはほぼ確実です。となると、6~8月にかけて次々に予算の執行が停止いていき、国政が大混乱することは明らかです。
民主党やマスゴミは、そうなった場合でも協力しなかった自民党が悪いとでも言い逃れるつもりかもしれませんが、どう考えても予算を成立させることは与党民主党の責任でしょう。
野田首相が消費税増税法案が成立しなかった場合に辞任しようがしまいが、予算の執行停止ともなれば、この問題の打開策は解散総選挙しかないはずです。そのことに対する自覚というか危機感が民主党執行部から感じられないのはなぜなのか。また、マスゴミもほとんど報道しない意図はどこにあるのか。
今の日本の政治状況は、実に異常な状態にあるいってもいいのではないでしょうか。