民主党執行部も、何やらガタガタしてきました。
1.粉飾の2012年予算
4月5日、2012年度予算が成立した。尤も、12年度の予算案は5日午後の参院本会議で野党の反対多数で否決されている。この予算案は、参院の否決後、代表者による両院協議会でも纏まらず、5日夕方の衆院本会議で、衆院の議決優越に基づいてようやく成立に漕ぎ着けたもの。
予算規模は、一般会計総額90兆3339億円で、過去最大だった前年度の92兆4116億円を下回ってはいるけれど、東日本大震災の復興予算3兆7754億円を特別会計に計上し、更に、基礎年金国庫負担の財源2兆6000億円も年金交付国債とし、一般会計に組み入れなかったため見かけ上そうなだけ。実質的な歳出は過去最大の96兆円超になる。
年金交付国債とは、年金積立金を運用する独立行政法人に国債を引き受けさせ、その額を、年金積立金から取り崩して使うというもの。
積立金の取り崩し分は、消費税増税の税収分から返却することになっているだけで、交付国債の発行時点で政府支出は発生せず、予算総則に書き込むだけ。従って、基礎年金の国庫負担分が無くなった結果、12年度予算の社会保障費は約26兆3000億円と、前年度の28兆7079億円を下回り、借金の元利払いに充てる国債費以外の政策経費も68兆4000億円程度に抑制される。
更に、交付国債は通常の国債と違って、新規発行扱いされないので、12年度予算の新規国債発行額も、約44兆2000億円と、政府の「約44兆円以下」という発行目標も守れる。
ただ、当然のことながら、消費税増税分から積立金を返却するときには一般会計の歳出として扱われる。つまり、事実上の歳出延期で、返済を先送りしただけ。
野田首相は、消費増税を説明する時には、何かにつけ、「次の世代の負担を減らすため」だとか「将来にツケを回さないため」とかいうのだけれど、人にそういっておきながら、自分の足元の予算では、思いっきり、将来にツケを回している。しかも、成立するかどうかも分からない消費増税の税収を財源にしているのだから、博打もいいところ。
それに、過去の例をみても、消費増税では、税収が増えないことが分かっている。消費増税しても税収が増えなかったら、何を財源にする積りなのか。
野党は、年金交付国債を「粉飾決算だ」と批判しているけれど、当然、このままでは、予算執行に不可欠な公債発行特例法案に反対することは目に見えている。
7日になって、政府は、「年金交付国債」の財源を赤字国債に切り替えることができるかどうかの検討に入っている。これは、事実上の「年金交付国債」を見直し。予算を通した翌日に、その予算を見直すという。そんな馬鹿なことをするくらいなら、最初から赤字国債を発行すればよかった。政権交代はや3年目になっても、予算編成は覚束ない。
2.亀裂が入り始めた民主党執行部
さて、その焦点の消費増税の国会でも審議について、野田首相と民主党執行部の間で温度差が見え始めている。
野田首相および、岡田克也副首相は、今月中に審議入りさせて、今国会中の成立に意欲を燃やしているのだけれど、その一方、党執行部は、党内の増税反対派との対立激化を懸念してか、5月の大型連休明けを念頭に置いているようだ。
輿石幹事長は、10日に、首相や閣僚を経験した党所属議員を招待する花見会を開催する。関係者によると、花見会の招待状は、増税法案の閣議決定前の3月28日付で送付され、会場は、東京・芝の「とうふ屋うかい」で、30人ほどが集まる見通し。現職閣僚は含まれておれず、樽床伸二幹事長代行が同席すると言われている。
もちろん、その目的は、輿石氏が党内融和を図るためなのだろうけれど、どうやら、小沢氏も出席する意向と見られているから、党執行部としても、花見会での感触を踏まえた上で、今後の対応を考えるのでないかと思われる。
先日来の政務三役を含む党役職の大量辞任についても、マスコミなどは、小沢グループの政務三役10人のうち辞表を提出したのは4人にすぎないことを取り上げて、小沢氏の求心力が低下したとかいうけれど、党執行部が、花見会を行なって、反対派の融和をしなければならなくなっている時点で、小沢氏の求心力がどうこうは別として、党執行部にダメージを与えていることだけは確実だと言える。
花見会でどんな話が行われるかは分からないけれど、少なくとも、小沢氏から輿石氏には、何らかの要求は伝達されるだろう。輿石氏は、増税法案について、国会に提出するだけして、採決せずに先送りするあたりを落としどころにしているのではないかとも言われているのだけれど、本当のそれで決着がつくかどうかは分からない。
確かに、国会に法案を提出して、採決しないというのは、今国会で成立を目指す野田首相と、法案提出することから反対している小沢氏とのちょうど真ん中、足して二で割るあたりではあるのだけれど、それで双方が納得してくれるかどうか。それほど両者の考えの間には開きがある。
4月5日、麻生元総理は、麻生派の例会(為公会)で、増税法案について「法案を一体いつから、どの委員会で審議するのか、そうしたことすら決まっていない。普通は、法案を提出した政府・与党側が野党側に、特別委員会設置等の話をしてくるものではないか。ところが、それを心配しているのが野党側で、与党側の方針が決まっていないというのは、『やる気があるのか』という感じがする。」と述べている。
こうしたことを考えると、民主党執行部は増税法案については、党を割らない程度にゆっくりやろうとしているではないかと思われる。
だけど、野田首相は、その逆で一日でも早くやりたがっている。4月7日、兵庫県西宮市内で記者団に対して、消費増税法案について「連休明けから審議すると誰も決めていない。環境が整えばなるべく早くやるのが党の方針だ」と語り、「率直に一体改革やその他の重要法案について議論させてほしい」と、野党との党首会談を直接呼びかけている。
筆者には、動きの鈍い執行部に業を煮やして、野田首相は、半ば独断専行的に、自分で動いて、法案を通そうとしているのではないかと思えて仕方がない。それほど焦った動きに見える。
当然、そんなバラバラな動きに野党が乗ってくる筈もなく、自民党の谷垣総裁は「国対委員長なり幹事長が整理するのが道筋だ」と拒否。公明党も「法案の扱いは国会で考えればいい」と党首会談には慎重な姿勢。
だから、増税法案については、民主党執行部は、今国会で無理に成立させることはないと見切り始め、野田首相だけが今国会成立に固執し、民主党執行部も、野田首相(+岡田副首相)とそれ以外に分裂しつつあるのではないかとさえ。
ここからは、筆者の単なる印象にしか過ぎないのだけれど、増税法案が今国会で成立しなかったら、野田首相は辞任するかもしれない。なんとなくそんな気がしてきた。

この記事へのコメント
ちび・むぎ・みみ・はな
さすれば今の無理難題も理解できる.
官僚のロジックは「旨く機能しないのは力が弱いから」
だから, 事態が混乱するほどチャンスがあると見る.
勿論, ある特定の官僚が考えているわけではない.
いわゆる「負の集合知」とも言える自然発生的なもの.
各々の役人がやりたいようにやる結果できるもの.
嘘付党はズブズブになるが増税首相は心配しない.
多くの小物嘘付党員は財務省の個別説明で個別打破.
兎に角, 谷垣総裁ではどんなチャンスも無駄だろう.
一説によれば, 谷垣総裁には既に丁寧な御説明が
財務省からなされている由. そうだろうね.
ス内パー
私は必要ないと思いますが谷垣さんを下ろすなら誰がトップに立つべきですかね?
ちなみにちびさん推薦の稲田さんはありゃまだ無理ですぜ?
クマのプータロー
てにをはの問題で恐縮なんですが、予算で「粉飾決算」という見出しはスマートではありません。「決算」が余計です。参考までに…
日比野
m(__)m