さく梅の一もとゆゑに常葉なる 木々もみながら色にこそなれ

 
4月6日、国民新党の亀井静香、亀井亜紀子の両氏が、国民新党からの離党を表明した。

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表向きは、党の混乱の責任を取る形での離党表明なのだけれど、下地幹郎幹事長が招集した会議が前日夜に行われ、自見庄三郎、松下忠洋、森田高、中島正純、浜田和幸の5人が出席し、その場で、亀井代表と亀井政調会長を解任することを決めたのだという。新代表には、自見氏が就任すると発表している。

ダブル亀井の痛撃」のエントリーで、筆者は、連立維持を求める議員が自分達の意見を通すのであれば、議員総会の場で、亀井代表を説得するか、亀井代表を代表から解任しなければならなかったはずだ、と指摘したのだけれど、国民新党に残った6人は、遅ればせながら、解任という手段に出たようだ。

もっとも、亀井政調会長によると、議員総会は代表が招集するもので、幹事長が招集して代表が不在の議員総会というのはあり得ない。ゆえに、下地幹事長らが主張する、議員総会による、亀井代表および亀井政調会長の解任は嘘なのだそうだ。

実際、離党記者会見においても、亀井代表は、国民新党代表のまま離党する、と述べている。

亀井政調会長は、下地幹事長が、自見大臣を辞めさせるから連立に留まってほしいと亀井代表に懇願したかと思うと、次には「私がお伴するから党を一緒に出ましょう。」と言い、その裏では民主党に対して新党を結成しても、連立を組んでくれるかと打診。挙句の果てには、亀井代表を解任したと発表する行動に対して、新党にすると政党助成金が入らないから、国民新党を乗っ取る方を選んだのではないかと批判している。

その政党助成金なのだけれど、総務省が4月6日、2012年分の政党交付金額を決めていて、国民新党は、4億4200万円の支給となっている。政党交付金は年4回に分けて支給されるのだけれど、その申請には、党の法人登記書類を必要とする。ただ、登記上は亀井氏が代表となっているから、今月10日に締め切られる1回目の支給申請では、実際と登記上の代表者が異なることになる。果たしてこれで支給されるのか懸念されていたのだけれど、総務省は「法人格が付与されていれば、交付されることになる」と、問題ないという方針のようだ。



新代表となった自見氏は、同じく4月6日に、野田首相と首相官邸で会談し、「日本経済の再生と社会保障改革によって国民の安心をつくる」、「郵政民営化法改正案の成立と郵政事業の早期の健全化を図る」などの連立合意書に署名、民主党との連立政権の継続を確認している。

これについて、亀井亜紀子氏は、「いつまでもあの6人相手に争っているのはバカらしいと考えている。ゴミは捨てろ、といわれた」と述べているし、また、今の国民新党は、結党したときの国民新党ではなくなっている、6名のことはスパッと切り捨てて次の動きをしようと決断したとも発言しているところを見ると、何の未練もないかのようにさえ見える。

亀井亜紀子氏は、議員になる前は、父である亀井久興・元衆院議員の秘書を務めていて、国民新党の結党時の苦労を目の前で見てきた。亀井亜紀子氏は、離党記者会見で、除名や解任等に関する党の規約に不備があったと認めながらも、「国民新党結党当時、5人のメンバーを揃えるのも、非常に大変なこともあり、誰かを除名するとか、解任するとか考えもしなかった。そうした同士達で立ち上げたのが国民新党だったのだ」とコメントしていたのが印象に残った。

だから、表面では、気にしていない風を装っていたとしても、本心では、謀反を起こした6名に対して、ハラワタが煮えくり返っているのかもしれない。

筆者は、件の「ダブル亀井の痛撃」の記事を、"国民新党という小政党の分裂が、もう一波乱を呼ぶかもしれない"、という一文で締めくくっていたのだけれど、早くも、離党という形で波乱が起こった。亀井氏は敗北した。

まぁ、離党といっても、国民新党という小さな政党での出来事であり、波乱というほどのものでもない、という見方もあるとは思うけれど、国民に与えた印象は大きい。

それも、国民新党が分裂した、とか、亀井氏が離党したという事実ではなくて、「損得勘定抜きで、筋を通した議員」が抜けて、「謀反を起こして、権力にしがみつく議員」が残った、というイメージ。おそらく、時間が経つにつれ、国民には、そちらの印象しか残っていかないだろうと思う。この亀井氏の離党で、言葉は悪いけれど、連立政権には、"残り滓"の方が残ったというイメージが付いてしまった。

だから、これは、当然、次の選挙に影響するだろうし、また、民主党内の増税賛成派、反対派双方にも影を落とすと思われる。なぜなら、今回の離党劇は、「筋を通す」議員なのか、それとも、「権力にしがみつく」議員なのかという切り口を、国民に見せつけてしまったから。

おそらく、これからしばらくは、民主党の各々の議員も、「筋を通す」タイプなのか、「権力にしがみつく」タイプなのかという目線で国民に見られるようになる。たとえば、消費税増税法案に反対していても、いざ党議拘束がかかった途端、腰くだけになる議員がいたとしたら、「権力にしがみつく」タイプだと見做され、支持されなくなるかもしれない。更に、自分の意見を表明せず、党の決定だからといって、唯々諾々と従うタイプも同じ仲間と見なされる恐れだってある。

もしも、そうした事態を避けたいのであれば、少なくとも、各議員は、自分の見解を明瞭に発信する必要がある。その意味では、今後、増税法案に賛成であれ、反対であれ、自らの"正当性"をそれぞれに主張していく流れが起きてくるのではないかと思っている。


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この記事へのコメント

  • sdi

    国民新党ってもともとは綿貫氏が「反郵政民営化」のために結成した政党です。亀井氏は知名度と政治家としての能力を買われて外部から招聘された大物CEO、といしうのは当初の位置づけだったと私は見ています。ですから、亀井氏以外の国民新党の面々にとって亀井氏が党の代表として民主政権に参画しマスコミに露出していることに対する反感が鬱積していたのかもしれません。
    まあ、動機はともかく事象としては「コップの中の嵐」以外のなにものでもありません。
    2015年08月10日 15:25
  • 白なまず

    何故か西郷隆盛の言行が浮かびました。【http://ja.wikipedia.org/wiki/西郷隆盛】

    「人は、己に克つを以って成り、己を愛するを以って敗るる」
    「己を利するは私、民を利するは公、公なる者は栄えて、私なる者は亡ぶ」
    「人を相手にせず、天を相手にして、おのれを尽くして人を咎めず、我が誠の足らざるを尋ぬべし」
    2015年08月10日 15:25
  • とおる

    国民新党の内紛に紛れて、より大きな物が隠蔽されています。
    「連立離脱」をしているのに、何も無かったかのようにして閣議決定を行い、政権に有利になるように他党の代表が交代するまで待って、「連立」再合意を行い、何も無かったかのように連立政権を維持。

    私は、次の(1)の時点で「連立離脱」と見ていますが、「連立離脱が無い」と見る野田首相は、
    ・(1)~(2)の間、国民新党の代表は誰という認識か。
    ・「連立離脱が無い」という根拠は何なのか。「連立離脱」の要件は何と考えるのか。
    ・(3)の合意をする理由は何なのか。(やましさの隠蔽)
    を追求(説明)されることになります。

    (1)30日、亀井代表が野田首相に「連立離脱」を通知。
    (2)5日、国民新党の多数で自見代表(自称)を選出。
    (3)6日、野田首相と 自見代表(自称)が「連立継続確認」合意。亀井代表が離党。
    2015年08月10日 15:25

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