「いつ選挙しても、維新または維新系は最低50議席はとりますし、下手すると100ですよ。でも、国民は維新の議員たちという画像と番組を一度見たいんです。だから、お見せするしか方法はありません。維新塾の2000人がどういう方々か、存じませんが、早く「一度やらせてあげれば」いいんですよ。行きつ戻りつ、日本の民主主義、日本の選挙がイギリスレベルになるのには、10年みればいいでしょう。それなら学習能力、低いほうじゃないですよ。必ず「国民の平均以上の政治家は持てない」とわかります。」
1.ちらちら出始めた「解散先送り論」
民主・自民に解散先送り論がちらほらと出てきているようだ。
3月24日、自民党の石破氏はテレビ東京の番組で、「解散しても本当に勝てるのか。公明党と一緒になって過半数を取れるのか」と述べ、現時点で解散しても、勝算はないとの見方を示した。
というのも、3月中旬に自民党は、近畿圏の「選挙情勢調査」を行ったのだけれど、その結果が惨憺たるものだったらしい。何でも、近畿2府4県の48小選挙区は、橋下氏の維新の会が全体の8割で勝利し、比例区も加えると77議席中60議席を確保するとの予測結果が出たのだという。
「維新の会近畿を席巻す」のエントリーでも触れたけれど、3月16日から18日に、読売新聞社が近畿2府4県の有権者を対象に行なった世論調査でも、次期衆院選の比例近畿ブロックへの投票先として、「大阪維新の会」に投票するとした人が24%とトップになり、2位の自民党の18%、3位の民主党の10%に対して大きく差を開けている。
この維新の会の勢いに恐れをなした、民主・自民が、解散先送りに傾きだしているのではないかとも言われている。3月25日には、自民党の森元首相が松山市の講演で「国のためにこうあるべきだと谷垣さんが思うなら、賛成してしっかり副総理に入ればいい」と、民主党との大連立を促す発言をし、「自民党も民主党も立て直さないと、橋下氏の勢力には勝てない」との懸念を示している。
だから、民主は言うに及ばず、自民の首脳陣も相当に焦りを感じている可能性がある。維新の会が近畿2府4県で比例区合わせて60議席も獲るのなら、一気に第3勢力として浮上する。この勢いが首都圏や全国にまで飛び火したらと考えると気が気ではないだろう。
そこへ、トドメを刺すかのように、維新の会は、橋下市長を全国行脚させるという計画が持ち上がっている。これは、「維新政治塾」が、選挙ブロックごとに塾生の街頭演説研修をする際に、橋下氏も同行するというプラン。
維新の会関係者は、「橋下氏は6、7月ごろまでに、大阪都構想の方向性を固める意向。それと並行して、週末を中心に全国行脚に出ることを検討している。維新の会の政治塾の塾生を居住地のブロックごとに分けて街頭演説研修させる予定だが、そこに橋下氏が同行してマイクを握り、『地方分権』や『既成政党の限界』などを訴えれば、かなりの人の心をつかむはずだ」という。
確かに、維新の会は地方組織を持っていない。だから、それをカバーする為に、維新の会の"看板"たる橋下氏が地方各地を遊説して支持を集めてゆくというのは理に適ったやり方。
それに、先日入塾式が行われた、維新の会の政治塾の塾生候補者、計2262人は、山形県を除いて、全国に広がっている。勿論、大阪府在住の塾生候補が741人とダントツで多いのだけど、東京都でも360人、兵庫、京都、奈良、愛知、福岡、埼玉、千葉、神奈川あたりでも50人以上の塾生候補がいる。
だから、かねがね橋下氏が発言しているように、その質は別としても、全国で300人の候補者を擁立するだけの"タマ"は確保していると見ていいだろう。
2.消費税増税に反対する橋下氏
その橋下氏は、消費税増税については、今のところ、反対の立場を取っている。この間もツイッターで「朝日新聞は狂っている」とこき下ろしている。その内容の一部を次に引用する。
そもそも民主党のマニフェストには消費税増税の記載は一切なし。記載がなくても時の状況で政治家は行動を起こせると言うのが僕の考えだが朝日新聞はマニフェストに書いていないことはするな!と猛批判してきた。民主党は色々言い訳しているが、一般人の理解では消費税は上げないとはっきり言っていた。
統治機構も年金制度も抜本的な変革はなにもない。そんな中でカネが足りないから消費税を上げるって、そんなの通るわけがない。小沢先生の行動の方が民主党の議員としては筋が通っている。そもそも野田首相が消費税増税を掲げて代表選に出たことが間違い。これは国民との約束違反だ。
朝日新聞はまだ民主主義が分かっていないようだ。野田首相は消費税を唱えて代表に選ばれたことを、小沢先生が従う根拠にしているが、それは民主党内部の話し。民主党内部の話しよりも政党は国民との約束、対外的約束が一番重要だ。民主党はその理解が不十分だ。
だから国内問題と外交問題もごちゃまぜにしてしまった。国内問題で海外との約束も簡単に反故にした。今回は国民との約束まで、党内の代表選の事情で反故にするつもりだ。どちらに政治家としての理があるか。それは小沢先生に決まっている。
党内手続きの代表選と国民との約束の総選挙を朝日新聞はごっちゃにしている。民主党の代表選はマニフェストに縛られる。そのマニフェストがダメなら面倒でも選挙と言う手続きを踏まえなくてはならない。小沢先生が民主党の決定に従わなければならないという朝日新聞は狂っている。「朝日新聞がもうフラフラになっている」 橋下大阪市長 4/4 ツイッターより抜粋
とまぁ、言っていることは正論。朝日新聞の御都合主義を批判し、民主党に対しても、小沢氏の行動の方が筋が通っている、と評価している。これを小沢グループ議員が聞いたら、さぞかし勢いづくだろうと思いきや、案の定、小沢氏側近の一人が、橋下氏のツイッターのコピーをばらまくなど大はしゃぎしているという。
こうなると、増税反対派は増々勢いづくことになる。既に、政務三役と党役職の辞任は30人近くに及んでいる。これ以上、造反者を出すことがあれば、衆院での採決時に否決されかねない。
野田首相は、4月4日の予算委で、消費増税法案の扱いについて「党議拘束がかかる」と、造反議員は処分すると牽制して見せたけれど、審議も始まっていない今の段階で、党議拘束というカードを切ってしまう辺り、相当焦っているのではないかと思われる。
党議拘束という踏み絵は、最後の最後で踏ませてこそ、効果があるものなのに、今の段階で踏み絵を出してしまったら、対策を考える時間を与えるだけ。それこそ、維新の会と連携して生き残りを図る議員が出たっておかしくない。
4月2日に民主党の木内衆院議員が、増税法案の国会提出に反対して、党執行部に離党届を提出しているけれど、時事通信によれば、木内氏は、石原都知事を党首とする新党構想を意識して行動しているとみられているそうだ。
その石原都知事は、4月4日に、橋下市長と会談していて、翌5日には、橋下市長が、維新の会の政治塾の講師に石原都知事を招くことを発表している。また、石原新党の名称も「日本維新の党」になるという案も一部で取り沙汰されていて、石原新党と維新の会の連携があるのではと噂されている。
だから、現時点で、党議拘束なんかを持ち出してしまったら、自らの生き残りをかけて、身の振り方を考える議員が他に出てきてもおかしくない。特に、維新の会と連携できるなんてのは、相当魅力的に映るだろう。
民主党増税推進派と増税反対派、そして、自民党に、維新の会に石原新党。更にいつ解散があるのかという読み。いろんなパラメータが重なって、どうにも混沌としてきた。
野田首相としてみれば、早期解散すれば、民主が負けることは目に見えているから出来ない。かといって、今のままでは、増税法案が否決される可能性がある。否決されたら、総辞職か解散かの選択を迫られる。それが嫌なら、国会に法案を提出だけして採決せずに引き延ばすしかないけれど、そうしたら、野田内閣は求心力を失い、"惰性の内閣"となって、決められない政治が続いていく。すると、増々維新の会に支持が集まるから、もっと解散できなくなる。
悪循環の無限ループは、目の前にまで迫っている。

この記事へのコメント
とおる
こんな野田政権が、いつまで続くのやら。
ちび・むぎ・みみ・はな
消費税反対, TPP反対を主張できなかったのか.
自民党執行部の戦術のまずさばかりが目につく.
谷垣・石破の様な古いタイプの政治家が
仕切ってきたためだろう.
理念は大事だ, しかし「かくあるべし」と
いう理念にひきずられるのでは主客転倒.
戦後世代の作った組織には理念がはびこる.
朱子学徒には理念ほど都合の良いものはなく,
組織を良くするため理念ほど役立たずはない.
しかし, 今だに谷垣氏はマニフェスとが何鱈と
理念で戦おうとする.