昨日のエントリーの続きです。
事前審議を含めた増税法案の閣議決定を巡る政府の混乱について、野党側は痛烈に批判している。
公明党の山口代表は「国民新党・亀井代表が『連立を離脱する』と言ったままの状態で、これが国会に出される状況となっております。こんなことでは与党が、この法案の成立に向けて総理を支えて、審議が行われていくのかどうかすらも危ぶまれる状況であります」と法案成立どころが審議すら怪しいと批判している。
そして、自民党の谷垣総裁は、この件について、3月30日のぶら下がり会見で次のように述べている。
「民主党内でも色々な混乱があってここまで来たわけですが、結局この問題の背景には、「政権交代のルールは何なんだ」という問題があると思います。自民党政権が長く続いている時代は、一内閣一課題みたいなことで、「自分は消費税をやるんだ」ということで済んでいたわけです。
ただ、政権交代があるということになりますと、どうしても現政権との差別化を図ろう、違うことを打ち出そうという欲求に駆られるわけですね。その一番悪い例は、要するに財政的なバラマキというか、大きな政府としてのサービスを財政的には小さな財政で賄える。こういう誘惑に駆られるわけです。
典型的なデマゴークの手法ですね。民主党のマニフェストにはそういう所があった。それを次の政権交代の時にも繰り返していたら、日本の政治は悪くなる一方です。
今回の民主党や国民新党の混乱の背景にあるものは、そういうことにけじめをつけていない、そこにこの混乱の原因があるのだと思います。そうしますと、やはりこれを解決するには、きちっとけじめをつけていく。解散総選挙ということを私は言っているわけですが、そういうことが必要だというのが私の基本的な認識であります。」3月30日 谷垣総裁 ぶら下がり会見にて
と、二大政党制による政権交代の弊害として、互いに相手の党との違いを出そうとして、"煽動政治"に陥る危険があると警告し、それをストップするには、「けじめ」をつける必要がある。今回の民主党や国民新党の混乱もその「けじめ」をつけていないからだ、と批判している。
これは、結構重要な点で、言ったことを守らなかったり、嘘をつく、言い訳ばかりで責任を取らない、といった「けじめ」をつけない態度は、国民からの信頼を、一番に失墜させる。まぁ、その意味では、選挙というものは過去の政権運営に対して、強制的にその「けじめ」をつけさせるものだともいえるけれど、谷垣氏は、同じぶら下がり会見で、解散総選挙が一番わかりやすい「けじめ」だとしながらも、解散以外の「けじめ」があるかどうかは首相が考えることだ、とボールを投げ返す発言をしている。
だから、今のところ、自民は、話し合い解散でも、大連立でも、どうとでもいけるようにフリーな態度を取っているように見える。それは、自民党内でも色んな意見に分かれていることの裏返しでもあるから、自民としても、野田政権の出方をもう少し見たいというのもあるかもしれない。ただ、野田政権は今回のゴタゴタでひとつの弱点を曝け出したように思う。それは、事前審査で焦点となった、景気条項に数値目標を入れるかどうかという点。
今回、野田政権は、増税法案の景気条項に数値目標を入れることは、最後まで譲らず、再々修正案でも、数値は入れたものの、それを増税の条件とはしなかった。この部分が野田政権として譲れない一線であるということが明らかになった。
野党にしてみれば、野田政権が3党協議で法案成立を目論んだとしても、景気条項の数値目標を増税の条件にしなければ賛成しない、とつきつけてやるだけで、間違いなく、3党協議は決裂する。増税法案成立に命を懸けるとまで発言した野田首相は、その瞬間に進退窮まってしまう。つまり、野党は、「経済成長率の数値目標を増税の条件にするカード」という、野田政権を追い詰める最強のカードを手に入れたと言える。
今後は、自公がこのカードを有効に使うことで、野田政権を揺さぶってくることが予想される。ただ、先日、自民党の森元首相がテレビ番組で、「谷垣さんは、増税に協力すべきだ」と発言しているように、自民党も、党内が解散一本で纏まっているわけでもないという事情がある。もしも、大連立の声が自民党内で高まってくるようなら、このカードを出すのは難しくなる。だから、自民とて、野田政権を追い込むのは、まだまだ簡単な話じゃない。
また、一方、野田政権側も、輿石幹事長が画策しているように、法案を提出だけして、採決せずに、だらだらと引き延ばして、来年の衆院任期一杯まで居座る可能性もある。この場合は執行部が、成立に命を懸ける野田首相を説得させられるかどうかにかかっている。正直どう転ぶか分からない。
波乱の幕開けがきたように思う。

この記事へのコメント
ちび・むぎ・みみ・はな
自民内部が増税反対に傾きつつある現れか.
まともな本を少しでも読めば現時点での
増税は大変にまずいことは理解できる.
理解できないのは嘘付党にしても
自民党にしても執行部付近の人達.
しかし, 嘘付増税首相は焦ってはいない.
なぜなら, 増税方案が通らなくとも
嘘付党ないで内閣打倒の動きは出ないから.
嘘付党の誰でも解散は恐い.
増税に関しては暫く睨み合いが続くだろう.
例え, 法案が通ってしまっても,
税制の問題だから, 時期政権で修正は可能.
困るのは人権法案に命をかける輩が
増税の後ろで頑張っていることか.
人権法案に関してはそれこそ自民党でも
一枚岩ではないし, 公明党の動きも不透明.
鶴の一声で賛成に回る可能性は常にある.
税率を官僚が勝手に変えてしまう国だから,
外国人に対する取締りは危ない状態になっている
と想像できる.
嘘付政権は存在するだけで危険だと
理解しなければならない.
sdi
また古い話か、と顔をしかめる方もいるかもしれませんが、竹下内閣が消費税を成立させたとき翌年度の予算案は消費税成立を前提にした予算が組まれていました。まあ当時は自民党が両院とも過半数(ただし安定多数ではなかったように記憶)しめていましたから、党内の意思統一ができれば法案成立は十分可能という好条件でしたが。
ところが、当の予算案が中に浮いて暫定予算確実という状況です。消費税税率アップの変わりに国債の大量発行によって、今年を凌いで来年に再チャレンジというウルトラCもありえなくもないのですが当の民主党執行部と財務省が承知するとは思えません。なぜなら、東北地方を中心とする震災復興事業への予算支出により(財務省はじめ霞ヶ関の方々にとっては不本意な)景気の上向きもしくは景況感の改善があるのは今年度のみだからです。来年度もそれが続く保障はありません。彼らは「今年が最後のチャンス」と思っているでしょう。